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第17回 隣のQAに聞く
隣のQAに聞く 2024.01.22
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「開発部門が事業価値を出すための時間を最大化することがQAの仕事」合同会社DMM.com 大段 智広 氏

執筆: Qbook編集部

ライター

「開発部門が事業価値を出すための時間を最大化することがQAの仕事」合同会社DMM.com 大段 智広 氏

様々な現場でQA業務に携わっている方々の「声」をお届けする『隣のQAに聞く!』。近年、ITイノベーションやデジタルトランスフォーメーションの変化によって、 QAがカバーする領域が飛躍的に拡大しつつあります。

1998年の創業以来、動画配信やFX、英会話、ゲーム、3Dプリントなど現在では60以上もの幅広いサービスを時代に合わせ柔軟に展開することでユーザーへ価値を提供してきた合同会社DMM.com。会員数4,100万以上の総合エンタメサイト「DMM.com」を運営する同社では、どのようにQA組織が運営されているか、気になるエンジニアの方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、同社の大段 智広さんにQAのミッションやQA組織を動かすポイントをお話しいただきました。

今回インタビューを受けてくださった方

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大段 智広 氏

合同会社DMM.com テクノロジー本部 QA部 QAエンジニア

2021年4月に合同会社DMM.comに入社。現在は、チームリーダーとして、プラットフォーム事業本部やオンラインサロン開発部のQA/手動テスト支援および自動テスト導入・開発支援を担当している。
社外活動としては以下に取り組んでいる。
・JSTQB (Japan Software Testing Qualifications Board)技術委員会 技術委員
・ASTER テスト設計コンテスト 実行委員 兼 U-30クラス審査委員長

もくじ
  1. テクノロジーを最大限に活用し、開発と一緒に品質を作り上げる
  2. 失敗はそのままにせず地道に潰していくことがスキルアップに繋がる
  3. 開発が挑戦しやすい環境を支える
  4. まずはQA部ができることを社内で認知してもらわなければ依頼もこない

テクノロジーを最大限に活用し、開発と一緒に品質を作り上げる

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――御社のサービスの概要と会社としてのミッションを教えてください。

DMM.comは1998年の創業からこれまで、動画配信やFX、英会話、ゲーム、3Dプリントなどのサービスを手がけてきました。総合エンタメサイト「DMM.com」は2023年現在、会員数が4,100万以上に到達し、2021年で10周年を迎えた「DMM GAMES」の会員数は3,400万人を突破。最近ではweb3やAIなど最新テクノロジーを取り入れた事業も取り扱っており、合計60以上の事業を展開しています。

コーポレートメッセージ「誰もが見たくなる未来。」を掲げ、変化と進化を繰り返しながら新しい領域への挑戦を続けていくことをミッションとしています。

――巨大な事業を展開する御社のQA/品証業務の位置づけ・ミッションを教えてください。

当社のQA部は2020年3月に設立された新しい部門です。
「DMMのテックカンパニー化」というミッションを達成するために、テクノロジーを最大限に活用し、開発と一緒に品質を作り上げていく部門として活動しています。

QA部としてのミッションは、「DMMの各事業のプロダクトやサービス開発全般の品質保証活動を実施し、ユーザーに価値あるサイトを提供し、事業成長に貢献する」です。
また、現在のQA部は事業およびその開発部門の挑戦を支えていく という考えで取り組んでいます。

――やはりBtoCでなおかつエンタメになると、求められるユーザー体験(UX)もレベルが高くなり、品質保証としても取り組む意識は大変ではないでしょうか。

元々QA部という組織がない企業だったため、品質保証活動に対しては開発の中で行なっていくスタイルでした。そのため、どのようにテストや品質保証していくかは、会社全体ではやり方が定まっていないというのが現状です。

当社のサービス自体はマルチデバイスで利用されたり、異なるブラウザを利用されるエンドユーザーがいるので、使い方も様々です。例えば動画を見るにしてもPC、ゲーム機やスマホ、最近だとVRデバイスなど、様々なデバイスが使われますよね。多様な使い方をするユーザーであっても快適に利用できるようにすることが、QA部として感じている大きな課題となっています。

――具体的にはどのような体制、プロセスで取り組まれていますか?

当社の事業は多岐にわたることから、優先順位を決めて、支援しています。現状では規模が大きく、長く続いている、動画や電子書籍などの事業を対象に支援しています。

とはいえ、まだまだ全社の中でQA部として何ができるのか浸透できていない段階です。そのため、例えばテストがやりきれないところに対して私たちQA部が入っていくような、支援的な動きが主な役割となっています。

失敗はそのままにせず地道に潰していくことがスキルアップに繋がる

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――サービス品質を改善していくために、工夫しているポイントがありましたら教えてください。

QA部としては、テストが十分できないままリリースすることに対して課題感を持っています。そのため、常にテストできている状態が当たり前であり、当たり前の品質レベルを維持できる状態にしなければならないと考えています。

開発では手動でテストして検証していく部分と自動でテストしていく部分があり、手動テストは開発がなかなかやりきれないクロスデバイスやクロスブラウザのテストを推進しており、自動テストもリグレッションテストを推進しているところです。

基本的には手動テストと自動テストをセットで入れるような形でQA部としては支援していきますし、手動テストを丸ごと支援させていただき、その後に自動テストの導入を支援する、開発がやり切れないところの手動テストを支援する、といった形で入ることもあります。

――これまでの失敗談やそこからどのように挽回したのかお教えください。

私が入社した当時は、自動テストも組織的にはまだまだ進んでいない状態でした。また自動テストの推進をするにあたって、すぐに自動テストを開発して運用できるスキルもQA部のメンバーにはなかったので、開発部門も、理想である「常にテストしていますよ」という状態までなかなか持ってくことができずにいました。
そのため「自動テストを作ってから運用しましょう」と提案したものの、まず自動テストを作るのに時間がかかり、作っている間に動かなくなることもありました。

そこで、早く少ない単位でまず運用を始めてフィードバックを受けるようにし、常に自動テストが成功する状態を作り、そこから自動テストが実行できる範囲を広げていく形に切り替えました。
失敗したことはそのままにせず、地道にその都度対応して解決していくことで、こちらもある程度自動テストスキルも高くなり、今では比較的安定した運用ができるようになりました。

開発が挑戦しやすい環境を支える

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――現在、御社の部門内で課題となっていることをお教えください。

会社としてQAやテストプロセスが整備されていないので、挑戦しにくい部分があるというのが課題です。これによって「何か変更すると他のところが動かなくなるから、課題解決まで待ちましょう」という状態に陥りかねません。

当社では、開発部門の挑戦に対してQA部が積極的に支援していく役割を持っているので、開発の方がテストで疲弊することがないように、なるべく自動テストで運用し、開発部門が自分たちの事業価値を出すための時間を最大化できることに取り組んでいきたいです。

――その他にも改善したいことはございますか?

様々な事業が立ち上がる中で、品質を保証するための一連の開発プロセスを適用できている開発部門もあればできていない開発部門もあるため、できている開発部門のプロセスや、私たちがやっているQAやテストのプロセスを事業部の開発部門に展開していきたいと考えています。

まずはQA部ができることを社内で認知してもらわなければ依頼もこない

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――QAの担当者として感じているやりがいや魅力はどういったところにありますか。

まずは自分が直接触ったことのあるDMMのプロダクトやサービスに対して積極的に関われるのは、ある意味そのプロダクトやサービスが好きだからできるやりがい、のようなものがあると思います。当社では常に新しいプロダクトやサービスがあるので、「このプロダクト(またはサービス)はどういうものなんだろう」「こういうところはまずくないのかな」など考えながら、創意工夫するのが楽しいです。

またQA部が支援したことでゆとりある開発ができ、開発部門と品質状況を確認した際に「大丈夫だったよね」とお互い言えるような状況に持っていけるとやりがいを感じます。

そのためにも、まずはQA部がどういうことができるのかを知ってもらわなければ支援の依頼も来ませんし、できることも限られてきます。QA部で何か貢献できそうなことがあれば可能な限り全部やるつもりです。
QA部としてもやれることを増やし、可能な限り支援できるような形に持っていくことを大事にしています。

――今後業務を通じて達成したいことなどがあったら教えてください。

自分たちが品質保証活動を何でもやるだけでは、QA部のメンバーが大変になっていくだけになってしまうので、現在取り組んでいる自動テストの推進も該当しますが、適切な技術を使って品質保証活動をして、最適なものを作って仕組み化し、QA部がいなくても事業部の開発メンバーの方でも使ってもらえるような品質保証の仕組みを提供していきたいです。

まだQA部メンバーのスキル強化やチーム作りは道半ばなので、まずはメンバーを拡充してQA部を作っていきたいと思っています。

――QAとして働く方、QAを目指している方にメッセージをお願いします。

QAは会社によって多種多様な課題を試行錯誤して解決していくクリエイティブな職種です。やれることがたくさんあり、自分の強みを伸ばしていけば、QAとして道が開けるのではないでしょうか。そして自分がQAとして極めていき、創造的なことを考えて行くとQAとしてもっともっと楽しくなるのではないかなと思います。

――本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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執筆: Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。