現代の私たちの生活は、数えきれないほど多くのソフトウェア搭載機器やシステムによって支えられています。家電製品、交通機関、ガス電気などの生活インフラから始まり、携帯電話や、ショッピング、ビジネスにおける業務システムなど、ソフトウェアの存在なくして、私たちの生活は考えられません。
こういったソフトウェアは事前にテストをしてから世に送り出されています。客観的な視点からソフトウェアの評価テストを行うのが「第三者検証」です。
今回は、「第三者検証」とは何か、メリット・デメリットについて解説していきます。記事の後半では、質の高い第三者検証の会社を選ぶポイントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- もくじ
1.ソフトウェア開発における「第三者検証」とは?
ソフトウェアを世の中に送り出すためには、必ずテストが必要です。
この章では、ソフトウェアテストの必要性と、第三者検証とは何かを解説します。
ソフトウェアテストの必要性
テストは、ソフトウェアのトラブル回避のためにもとても重要です。高性能なソフトウェアは構造も複雑で、使用中にトラブルが起こる可能性も考えられるため、事前にテストを行いさまざまな環境下で運用可能かどうかを確認しておく必要があります。
仮にテストを行わずにソフトウェアをリリースした場合、以下のようなリスクが生じるおそれがあります。
・コスト増加
・時間の損失
・信用、ブランドイメージ低下
・システム障害や事故
不具合の修正にはコストも時間もかかりますし、一度大きなトラブルが起これば企業のイメージ低下はおろか、企業そのものの存続の危機にもつながります。ソフトウェアの品質を高めるとともに、後々のリスクを最小限に抑えるためにもソフトウェアテストは必要です。
第三者検証とは
「第三者検証」とは、開発にかかわっていない第三者がテスト対象のソフトウェアもしくはシステムの品質の検証や評価を行うことを指します。
第三者が検証を実施することで、検証の客観性や信頼性などが高まる、コストが削減できるなど、様々なアドバンテージが期待できます。
2.第三者検証のメリット
第三者検証のメリットは以下の4つです。
- 見逃しがちな不具合の発見率が高まる
- テスト要員の常駐が不要になりリソースを開発に専任できる
- コスト削減につながる
- 信頼の担保と資産として活用できる
それぞれ解説していきます。
見逃しがちな不具合の発見率が高まる
第三者検証を行うことで、開発担当者では見逃しがちな不具合の発見率を高めることができます。なぜなら、誰でも「自分の間違いは自分では気づきにくい」からです。
人間の脳は「思い込み」から自由ではありません。とりわけ、自分が作ったソフトウェアを自分がテストする場合「ちゃんと動くはずだ」あるいは「ちゃんと動いてほしい」という「思い込み」が働きます。そのため、ソフトウェアテストにも第三者による検証が有効です
また、「作り手の視点」と「使う側の視点」が違うというのも、開発者が間違いを見逃しやすい理由の一つです。ソフトウェアテストで発見することができる不具合には、いくつか種類があります。仕様書に記載された正常系の機能操作などは、比較的、開発担当者や運用担当者自身が行った場合も不具合は発見できるでしょう。
しかし、仕様書に記載が薄くなりがちな、異常系操作や、エラー処理、禁則処理、割り込み処理など、「特定条件下でのみ発見される不具合」は、一般的なテストでは手薄になりがちな傾向があります。
また、テストでは、システムの機能面だけでなく、使い勝手の良さ、安全性や利便性などにも着目し、いわゆる非機能要件の観点からの検証も必要です。こういった非機能面における不具合は開発期間が切迫し、時間的余裕がない場合に見落としてしまいやすい傾向があります。
だからこそ、先入観のない第三者の視点やさまざまなテスト経験・スキルを持つテストエンジニアが第三者検証を行うことにより、見逃しがちな不具合の発見率が高まるのです。
テスト要員の常駐が不要になりリソースを開発に専任できる
第三者検証をテスト工程に導入することの2つ目のメリットは、テスト要員を常駐させる必要がなくなることです。「テスト」と「開発」を切り分けることで、テストに使用していた人的リソースを開発業務に専念させることができます。
コスト削減につながる
3つ目のメリットは、第三者検証を導入することがコスト削減につながるということです。
ソフトウェアリリース後に不具合が見つかった場合、多くの修正コストがかかります。しかし第三者検証を導入し、問題点を早期発見できれば作業の手戻りを減少させ、コスト削減にもつながるのです。
最近では、実装前の仕様書のレビューの段階から第三者検証会社が参加し、仕様書の漏れ抜けや、あいまいな個所を指摘修正することによって多くのコスト削減効果が報告されています。
また、先述でも記載しましたが、テスト要員を第三者検証会社にアウトソースすることで、開発の閑散期における、常駐のテスト要員のコストも削減可能です。
信頼の担保と資産として活用できる
第三者検証会社は、テスト業務を請け負うに当たっては、テスト計画書、テスト設計仕様書、テストケース、テストサマリーレポートといった、質の高いテストドキュメントを成果物として提供できる会社もあります。
こうしたテストドキュメントは、ソフトウェアの安全保証ができるため、クライアントに対して信頼を担保することができます。
また、質の高い第三者検証会社が提供するドキュメントは、専門会社としての知見から作成するため、今後の開発プロジェクトで参照する資産としての活用が可能です。
3.第三者検証のデメリット
第三者検証はメリットも多いですが、注意すべき点もあります。失敗や後悔がないように導入する前に見ていきましょう。
依頼の費用がかかる
第三者検証は外部に依頼するものなので、開発コストとは別に費用が掛かります。上手く利用できないとかえって損してしまうので、注意が必要です。
業者によっては品質が低いこともある
第三者検証はメリットがたくさんありますが、どの業者も品質が高く安心できるとは限りません。業者によっては、品質が低い、担当によって品質に差が出て安定しないなどの場合もあります。
そのため、業者選びも重要です。次章で、質の高い第三者検証会社を選ぶポイントを解説していきます。
4.質の高い第三者検証会社を選ぶポイント
この章では、質の高い第三者検証の企業を選ぶポイントは以下の4点です。
- 体系的な自社のテストメソッドを持っている
- 自社スタッフの教育体制がしっかりしている
- 体系的なテストドキュメントを提供できる
- 各ドメインの豊富な検証経験を蓄積している
それぞれ解説していきます。
① 体系的な自社のテストメソッドを持っている
第三者検証会社として、一貫したテストのプロセスと手法を持っているかどうかは、大きなポイントです。質の高い第三者検証会社は、たとえ開発仕様書に記載されていなくても、異常系や非機能要件を漏れ抜けなくテストできるテスト観点や、テスト設計手法を持っており、開発者自身では見落としがちな不具合を体系的に見つけるメソッドを持っています。
② 自社スタッフの教育体制がしっかりしている
テストはともすれば「属人的」なものになりがちです。第三者検証テスト会社がアサインするエンジニアが人によって考え方がバラバラでは、安心して、テストを任せることができません。質の高い第三者検証会社は、ポイント1で紹介した体系的なテストメソッドを、同じく、体系的に自社のエンジニアに教育する体制を持っています。そのことにより、常に一定の質のテストサービスを提供できるようにしています。
③ 体系的なテストドキュメントを提供できる
テストドキュメントの質が高くなければ、ソフトウェア品質の保証はままなりません。テスト計画、テスト設計、テストケース、テストサマリーレポートがとわかりやすく、客観的に書かれていること。再利用可能なこと。仕様変更や時期のバージョンアップに資産として使えるレベルであることなどが、質の高い第三者検証会社を選ぶポイントです。
④ 各ドメインの豊富な検証経験を蓄積している
体系的なテストメソッドを確実にするのが、豊富なテスト経験の蓄積です。一口にソフトウェアテストといっても、組み込み系、業務系、Web系、といった、ドメインに加え、さらに専門の業務知識も要求されます。第三社検証会社を選ぶにあたっては、過去にどれだけの豊富なドメインのテスト案件を経験しているかも大事なポイントです。
質の高い第三者検証会社を選ぶにあたっては、こうしたポイントを満たしているかどうかをご検討下さい。
まとめ
第三者検証とは、開発にかかわっていない第三者がテスト対象のソフトウェアもしくはシステムの品質の検証や評価を行うことです。
近年ソフトウェアが現代の私たちの生活に占める重要性は、ますます増大しています。良い第三者検証会社をうまく開発現場に活用することができれば、ソフトウェアの品質、コスト、納期の改善に大きな効果が期待できます。
是非、第三者検証会社の利用を一度ご検討されてはいかがでしょうか。