システム開発と同様、テスト工程においても進捗管理は必要です。しかし、開発現場ではExcelなどを利用して手作業で進捗管理を行っている場合も少なくありません。その場合、全体的な進捗状況を把握しにくかったり、Excelシートの誤操作・メンテナンス負担などよって工数を取られてしまったりするデメリットがあります。
今回は、テストの進捗管理で必要な要素や、管理ツールを導入するメリット・デメリットについて解説します。
また記事の後半では、テスト管理ツールの選び方やよく使われるツールを6つご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- もくじ
1.テストの進捗管理とは?
ソフトウェアテストにおけるテストの進捗管理について詳しく解説していきます。
1-1 テストの進捗管理の目的
ソフトウェアテストの場合、進捗管理とはテストの実行状況を把握することに加え、テストケース数や不具合の発生状況、不具合修正と再テストの実施状況までを包括的に管理することを指します。
さらに、このようなテストケースのプロセス管理はもちろん、テストケースのバージョンを管理したり、標準化されたテストケースを蓄積し再利用を促したりする仕組みがあると、より品質の高い進捗管理を行うことができるでしょう。
1-2 効率的に進捗管理を行うポイント
「テストプロセス」「テストケース」「テストの標準化・再利用」といった管理の内容に加え、テスト全体の管理方法も大切なポイントになります。
効率的に進捗管理を行うためには「視覚的な情報共有・情報管理を行うこと」がポイントになります。例えば、ソフトウェアテストの工程においてテストの規模が大きくなるにつれ、テスターの人員が増え、チーム体制で分担する必要もあるでしょう。
多くの人員がテスト工程に関わる場合、テストの実施状況や進捗の度合いを視覚的に共有し把握することが重要です。
2.テストの進捗管理を行う主な2つの方法
テストの進捗管理方法として、ファイルで管理する方法とテスト管理ツールを使用する方法があります。
それぞれについて解説していきます。
2-1 ファイルで管理する
Excelなどのファイルで進捗管理を行っている現場は、まだまだ多いといえます。
しかし、Excelはあくまでも表計算ソフトのため、ソフトウェアテストの進捗管理として使用する際、以下の懸念点があります。
- 情報の更新が煩雑になる
- 誤操作の可能性がある
テストケースを作成し共有する場合、Excelを使用しても特に大きな問題はないかもしれません。しかし、複数人で管理し、状況に応じて計画した内容を改善・修正していく過程においては管理が煩雑になってしまいます。
また、テストケースやテスト計画を複数人で共有した上で、Excel上の情報更新が頻繁に発生する場合は、操作を誤るリスクがあります。
例えば、Excel上で入力制御が柔軟に行えず、マスタデータなどの重要な情報が書き換えられてしまい、それに気づかないまま他のデータ更新がなされることもあるでしょう。メンバーの数が多ければ多いほど、エラーが起きたときの原因追求にも時間がかかってしまうため注意が必要です。
2-2 テスト管理ツールを使う
テストの進捗管理は、テスト管理ツールを使うという方法もあります。
1章で、ソフトウェアテストの進捗管理において、視覚的な情報共有・情報管理を行うことが効率化のポイントになることをご説明しました。テストの進捗管理専用のツールを導入することで、ファイルで進捗管理を行う懸念点の解消が期待できます。
そのため、テストの進捗管理はテスト管理ツールを使用して行うことをおすすめします。
次章からテスト管理ツールを導入するメリット・デメリットについてご説明していきます。
3.テスト管理ツールを導入するメリット
テスト管理ツールを導入するメリットについてご紹介します。
3-1 管理するファイルが大幅に減る
ファイルを使って、テスト工程に関わる全ての項目を一括管理することは、難しいものです。例えば、テストケースだけではなく不具合の報告や修正状況・再テストの結果までを管理しようとすると、シート数が膨大になってしまう可能性もあります。
テスト管理ツールを利用すれば、ツール上に必要な情報を登録すれば済むため、ファイル管理の必要がなくなります。度重なるテストケースの変更やテスト計画の変更などに対して柔軟に対応することが可能になり、ファイルのバージョン管理や複数ファイルにまたがる修正作業が大幅に減るでしょう。
3-2 テスト工程に必要な情報の包括的な管理が可能
バグの管理を、Redmineなどの不具合・インシデント管理システムで行っている場合もあるでしょう。Excelなどのファイルで進捗管理をしている場合、記載された情報を転記する必要が生じます。
テスト管理ツールの中には、不具合・インシデント管理システムと連携しているものもあるため、包括的な管理を行うことが可能になります。
4.テスト管理ツールを導入するデメリット
テスト管理ツールを導入するデメリットとしては、コストがかかることです。無償で使用できるツールもありますが、有償ツールを使用する場合はその分ランニングコストがかかってしまいます。
これから導入する場合は、その分の予算を取っておく必要があるでしょう。
5.テスト管理ツールの選び方
テスト管理ツールには、いくつか種類があります。そのため、プロジェクトに合ったツールを選ぶことが大切です。
まずはプロジェクトにどのような課題があるのかを洗い出し、どのような目的で導入を検討するのかを明確にしましょう。
また、ツールによって機能性やUIはさまざまです。選ぶポイントをいくつか絞って比較してみるのも良いでしょう。例としては「テストケースが作成しやすいか」「管理がしやすいか」「現状の運用に導入しやすいか」などです。
無料トライアルがあれば、一度試してみてから導入を決めることをおすすめします。
6.よく使われるテスト管理ツール6つをご紹介
最後によく使用されるテスト管理ツール6つをご紹介します。テスト管理ツールの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
6-1 QualityTracker
「QualityTracker」はバルテスが提供している、クラウドベースでテスト実行時の進捗管理、テストケースの管理ができるテスト管理ツールです。
EVMを採用し、工数=仕事量ベースで管理することによって、各テストの進行状況がリアルタイムで表示され、正確な進捗管理をすることができます。
また、テストケースをデータベースで機能や観点と紐づけた状態で管理することでテストケースの資産化を実現し、開発工程における検証作業の全体的な時短も期待できます。
テスト管理者、プロジェクト管理者、テスト実行者などプロジェクト参加者全員が作業全体を見ることができ、その進捗状況から、管理者はテスト実行者のタスク振り分けを随時行うことで、そのプロジェクトの効率化が可能となります。
50人まで無料で使えるトライアルも実施しているため、まずは無料版で試してみましょう。
6-2 TestRail
「TestRail」とは、ブラウザ上で利用できる有償のテスト管理ツールです。主に実行結果確認の工程を管理・効率化させるために必要な機能を兼ね揃えています。
テストの実行に際して、例を挙げると下記のような管理が可能です。
- テストケースに優先度を振ることができる
- テストケースの実行にかかる見積もり時間を入力できる
- テストケースの実行にかかった時間を計測できる
- テストケースごとにエビデンスファイルを添付できる
- テストケースの検索・ソートができる
- 利用者ごとにユーザー権限設定ができる
- タスク・プロジェクト管理システムであるJIRAと連携できる
上記に加えて連携できるAPIも公開されているので、利用用途に応じてカスタマイズできます。
6-3 TestLink
「TestLink」とは、Webアプリケーションのテスト管理ツールです。オープンソースなので、誰でも気軽に利用でき、利用者に合ったカスタマイズも可能です。非常に幅広い範囲のテスト工程を管理することが可能なため、導入実績もあり、利用ユーザーが多いツールだといえます。
TestLinkで可能なのは、主に「テストケースの管理」「テストの進捗状況の管理」「テストに関わる組織の管理」です。機能が幅広く、テストケースのインポート/エクスポートにも対応するなど外部連携も充実しているため、テスト工程の包括的な管理が可能になるツールです。
さらに、Redmineなどの不具合・インシデント管理システムとの連携も可能なので、テスト工程で発生したバグの情報を、実行しているテストケースとの関連づけをしながら蓄積していくことも可能です。
6-4 PractiTest
「PractiTest」はテスト計画から実施までリアルタイムでテスト全体を確認できるSaaS型のテスト管理ツールです。
カスタマイズ可能なダッシュボードで、全体の状況を把握するだけでなく各フェーズの進捗も視覚的に分かるツールになっています。
また、一度作成したテストを他の異なる製品のテストに再利用することができ、テスト資産を活用できます。
テスト修正回数を減らし、修正の抜け漏れもなくすことができるため、テストプロセスの効率化も可能です。
6-5 Qase
「Qase」はテスト項目の作成や実施、バグ管理、テスト結果の分析など、幅広い機能が搭載されたSaaS型のテスト管理ツールです。
4つの料金プランがあり、無料で使用できるFreeプランもあります。
「Qase」ではTestSuiteでテスト項目を階層的に管理することができます。テストケースはドラッグ&ドロップによる移動できるため、柔軟に管理することが可能です。「GitHub」や「JIRA」など、様々なツールと連携できる点も大きなメリットです。
6-6 qTest
「qTest」はアジャイルテスト管理と、品質保証プロセスの効率化が可能なテスト管理ツールです。
リリース計画からテスト実行、不具合管理までのトレーサビリティを提供し、案件管理を実現します。
アジャイル開発ツール「Jira Software」と統合することで、アジャイルにより開発されたソフトウェア品質の向上も可能です。ソフトウェアの品質をレポート化・可視化し、ソフトウェア品質保証のプロセスを支援する機能も備えています。
まとめ
今回の記事では、テスト管理ツールを導入するメリット・デメリットについてご紹介しました。
テストの進捗管理において重要なのは、必要なテスト項目をチームの規模やニーズに応じて適切な管理方法で管理できることです。
つまり、「テストプロセス」「テストケース」「テストの標準化・再利用」のうち、必要な情報を必要な関係者に対して視覚的に情報提供できる方法が理想的といえます。
「テストの品質をもうワンランクあげたい」「煩雑なテスト工程を効率化したい」といった要望をお持ちでしたら、ぜひこの機会にテスト管理ツールの導入を検討してみてください。