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資格対策特集 2022.01.11
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JSTQB FLシラバスがバージョンアップ! 2021年2月試験から新しいシラバスが適応! ポイントを解説

執筆: 三堀 雅也

バルテス・ホールディングス株式会社 R&C部 主任研究員

JSTQB FLシラバスがバージョンアップ! 2021年2月試験から新しいシラバスが適応! ポイントを解説

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はじめに

バルテスで、テスト業務に関する研究開発、人材育成を担当している三堀と申します。

これまで、Qbookでは、「JSTQB 認定テスト技術者資格」(以降、JSTQBと呼称)のご紹介や、試験対策講座としてメジャーバージョンアップなどで、JSTQBについてご紹介してきました。

2020年、コロナ禍の影響はJSTQBにもおよび、2020年8月の試験が中止となりました。2021年2月の試験は開催される見込みとなりましたが、そのような中、2020年6月28日に、Foundation Level(以降、FLと呼称)のシラバスがバージョンアップしたのはご存じでしょうか。

今回のバージョンアップの内容は、JSTQBのWebサイトにてリリースノートで分かるようになっていますが、こと細かくは記載されていません。

そこでバルテスでは、バージョンアップしたシラバスの詳細を調査しました。その結果、2019年3月27日に行われたメジャーアップデートのような大規模な改修ではありませんが、変更点は少なからずあることが分かりました。皆さん、試験勉強への影響が気になるのではないでしょうか。

そこで、本稿では、バージョンアップしたシラバス「JSTQB-SyllabusFoundation_Version2018V3.1.J02」の変更点について解説したいと思います。

2021年2月13日に開催予定となりましたJSTQB FL試験では、現在の最新バージョンである「JSTQB-SyllabusFoundation_Version2018V3.1.J02」が準拠されることが見込まれます。試験を受ける方はぜひ参考にしてください。

今回のバージョンアップは何が変わったの?

では今回のバージョンアップで、シラバスはどのように変わったのでしょうか?
一番大きなポイントは、内容の一部が削除、整理されたという点です。

リリースノートで公開されているシラバスの変更内容をざっくりまとめると、以下の4つに分類されます。

  1. 説明文の追加、変更、削除
  2. 説明文の構成の変更
  3. キーワードの追加、削除
  4. 表現や誤記の修正

変更内容は試験に影響するの?

今回のバージョンアップによる変更点の中で、試験に影響する可能性が高いポイントがいくつかあります。では、そのポイントは何なのか。前述した4つの分類に沿って、解説していきたいと思います。

1. 説明文の追加、変更、削除

この変更点が、今回のバージョンアップの中で、最も試験勉強に影響が大きいものと思われます。というのも、これまで定義されていなかったことが加わっていたり、これまで定義されていたものが無くなったり、変わっていたりするからです。

試験勉強へ影響しそうなポイントに絞って、以下に解説していきます。

第1章 1.1.1 「テストに共通する目的」の箇条書き

【以前のバージョン(Version2018.J03)】
  • 要件、ユーザーストーリー、設計、およびコードなどの作業成果物を評価する。
  • 欠陥の作りこみを防ぐ。

↓変更

【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
  • 欠陥を防ぐため、要件、ユーザーストーリー、設計、およびコードなどの作業成果物を評価する。

【以前のバージョン(Version2018.J03)】
  • 故障や欠陥を発見する。
  • (以前に検出されなかった故障が運用環境で発生するなどの)不適切なソフトウェア品質のリスクレベルを低減する。

↓変更

【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
  • 欠陥や故障を発見し、ソフトウェアの品質が不適切になるリスクレベルを軽減する。

まずは、こちら。箇条書きの部分が変わるというのは、試験に影響する可能性が高いです。試験で出題される問題の選択肢には、シラバスの文章がそのまま引用される場合があるからです。箇条書きで書かれているところは、特に引用される可能性が高いのです。

2章 2.1.2 「状況に応じたソフトウェア開発ライフサイクルモデル」

ソフトウェア開発モデルを適合させる際の考慮事項に関して、箇条書きが追加

【以前のバージョン(Version2018.J03)】
  • 該当文章なし

↓追加

【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】

ソフトウェア開発モデルをプロジェクトおよびプロダクトの特性に適合させる必要がある理由は次のとおり。

  • システムのプロダクトリスクの違い(複雑なプロジェクトまたは単純なプロジェクト)
  • 多くのビジネス部署がプロジェクトまたはプログラムに参加している(シーケンシャル開発とアジャイル開発の組み合わせ)
  • プロダクトを市場に投入する時間が短い(テストレベルの統合および/またはテストレベルでのテストタイプの統合)

続いてこちらも箇条書きですが、こちらは新しく追加されたものとなります。新しく追加されたところは押さえておかないと、ここに関する問題が出題された場合に何も答えられなくなってしまいます。追加箇所はよく確認しておきましょう。

4章 4.1「テスト技法のカテゴリ」

「テスト技法の選択する際に検討する要因」の箇条書き

【以前のバージョン(Version2018.J03)】 【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
コンポーネントまたはシステムの種類 (削除)
コンポーネントまたはシステムの複雑さ コンポーネントまたはシステムの複雑さ
規制や標準 規制や標準
顧客または契約上の要件 顧客または契約上の要件
リスクレベル リスクレベルとリスクタイプ
リスクタイプ
テスト目的 (削除)
入手可能なドキュメント 入手可能なドキュメント
テスト担当者の知識とスキル テスト担当者の知識とスキル
利用できるツール 利用できるツール
スケジュールと予算 スケジュールと予算
ソフトウェア開発ライフサイクルモデル ソフトウェア開発ライフサイクルモデル
ソフトウェアの想定される使用方法 (削除)  
テスト対象のコンポーネントまたはシステムに関してテスト技法を使用した経験 (削除)
コンポーネントまたはシステムで想定される欠陥の種類 コンポーネントまたはシステムで想定される欠陥の種類

続いても箇条書きです。こちらは書かれていた内容そのものが一部無くなっています。無くなったところは問題の誤った選択肢として用意されるかもしれません。削除されたものと残っているものをそれぞれ把握しておきましょう。

第4章 4.2.2 「境界値分析」

境界値分析の具体例にある大きい無効同値パーティションの境界値から9が削除
【以前のバージョン(Version2018.J03)におけるイメージ図】

202012_1_1.png

【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)におけるイメージ図】

↓変更

202012_1_2.png

こちらは、シラバスに書かれている境界値の具体例の内容が変わっています。境界値の考え方に影響しますので、どのように変わったのかきちんと理解しておきましょう。
なお、上記はあくまでイメージ図です。実際のシラバスでは文章で説明されていますので注意してください。

第4章 4.2.3 「デシジョンテーブルテスト」

組み合わせ技法についての一文が削除

【以前のバージョン(Version2018.J03)】
  • 組み合わせテスト技法は、システム要件から実装した条件のさまざまな組み合わせと組み合わせごとの結果に対する仕様をテストするのに役立つ。組み合わせテストのアプローチの1つとしてデシジョンテーブルテストがある。

↓削除

【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
  • (削除)

4.2.3はデシジョンテーブルについて説明されている節ですが、以前のバージョンでは「組み合わせテスト技法」についての説明もありました。最新バージョンでは、その一文は無くなり、デシジョンテーブルについてのみの説明になっているということを認識しておきましょう。

第5章 5.1.1 「独立したテスト」

独立したテストの利点の箇条書きが追加

【以前のバージョン(Version2018.J03)】 【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
独立したテスト担当者は、開発担当者とは異なる背景、技術的視点、バイアスを持つため、開発担当者とは異なる種類の故障を検出する可能性が高い。 独立したテスト担当者は、開発担当者とは異なる背景、技術的視点、バイアスを持つため、開発担当者とは異なる種類の故障を検出する可能性が高い。
独立したテスト担当者は、仕様作成時および実装時にステークホルダーが行った仮定について、検証、説明の要求、または反証を行うことができる。 独立したテスト担当者は、ステークホルダーが行った仮定について、検証、説明の要求、または反証を仕様作成時および実装時に行うことができる。
該当文章なし ベンダーの独立したテスト担当者は、契約元の会社にある(政治的な)圧力なしに、テスト中のシステムについて正直に客観的な態度で報告できる。

こちらは再び箇条書きが増えているパターンです。実は2つ目の文章も変わっていますが、こちらは内容そのものに変更は無いので、ご安心ください。3つ目に追加されている箇条書きを押さえておきましょう。

6章 6.1.1 「テストツールの分類」

ツールの分類の数を26から13へ減少

【以前のバージョン(Version2018.J03)】 【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
テストマネジメントツールとアプリケーションライフサイクルマネジメントツール(ALM) テストマネジメントツールとアプリケーションライフサイクルマネジメントツール(ALM)
要件マネジメントツール(テスト対象へのトレーサビリティなど) 要件マネジメントツール(テスト対象へのトレーサビリティなど)
欠陥マネジメントツール 欠陥マネジメントツール
構成管理ツール 構成管理ツール
継続的インテグレーションツール(D) 継続的インテグレーションツール(D)
レビューを支援するツール (削除)
静的解析ツール(D) 静的解析ツール(D)
テスト設計ツール (削除)
モデルベースドテストツール モデルベースドテストツール
テストデータ準備ツール テストデータ準備ツール
受け入れテスト駆動開発(ATDD)ツールや振る舞い駆動開発(BDD)ツール (削除)
テスト駆動開発(TDD)ツール(D) (削除)
テスト実行ツール(例えば、リグレッションテストの実行) テスト実行ツール(例えば、リグレッションテストの実行)
カバレッジツール(例えば、要件カバレッジ、コードカバレッジ(D)) カバレッジツール(例えば、要件カバレッジ、コードカバレッジ(D))
テストハーネス(D) テストハーネス(D)
ユニットテストフレームワークツール(D) (削除)
性能テストツール 性能テストツール
モニタリングツール (削除)
動的解析ツール(D) 動的解析ツール(D)
データ品質の評価 (削除)
データのコンバージョンとマイグレーション (削除)
使用性テスト (削除)
アクセシビリティテスト (削除)
ローカライゼーションテスト (削除)
セキュリティテスト (削除)
移植性テスト(例えば、複数のサポート対象プラットフォームにまたがるソフトウェアのテスト) (削除)

6章のテストツールは色々な分類と箇条書きが多く、覚えるのが大変なところなのですが、こちらは大幅に箇条書きの数が減っています。こちらも何が削除されて、何が残っているのか把握しておきましょう。

2. 説明文の構成の変更

こちらは、試験への影響は軽微だと思われます。その理由は、あくまでも構成が変わっているだけで、説明している内容に変更が無いからです。

具体的にはどのように構成が変わっているのかというと、
 ・段落の並び順が入れ替わった
 ・文章で書かれていた内容が箇条書きに整理された
 ・説明している節が変わった
などです。

具体的な変更点は以下の通りです。

該当箇所 変更点
第3章 3.2.3
レビュータイプ
箇条書きを章の最後の段落へ移動
第3章 3.2.4
レビュー技法の適用
ロールベースドレビューとパースペクティブベースドレビューの説明順を入れ替え
第4章 4.1.1
テスト技法のカテゴリと特徴
以前のバージョンの4.1.1を4.1へ
以前のバージョンの4.1.2を4.1.1へ
第6章 6.1.3
テスト実行ツールとテストマネジメントツールの特別な考慮事項
文章から箇条書きへ変更

いずれも内容そのものに変更はありません。

3. キーワードの追加、削除

追加、削除されたキーワードは、シラバス本文上でも使用されている用語であるため、試験への影響は軽微だと思いますが、1点注意しなければならないポイントがあります。

それは、第2章「ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通してのテスト」のキーワードに追加された「変更関連のテスト」です。
これがなぜポイントなのかというと、この用語は今回のバージョンアップにより名称が変更された用語だからです。以下をご覧ください。

【以前のバージョン(Version2018.J03)】 【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
変更部分のテスト 変更関連のテスト

変更された用語は、きちんと押さえておきましょう。

4. 表現や誤記の修正

こちらも、試験には大きく影響しないものと思われます。その理由は「②説明文の構成の変更」と同様に内容に変更が無いからで、修正されている内容はいずれも細かな変更です。ですが、気を付けてほしいポイントもありますので、そちらに触れておきたいと思います。気を付けてほしいポイントは用語の修正です。

【以前のバージョン(Version2018.J03)】 【最新バージョン(Version2018V3.1.J02)】
高位レベルテストケース ハイレベルテストケース
誤り エラー

いずれの用語も、意味、概念は変わりません。表現のみが変わっていますので気を付けてください。

まとめ

2020年6月28日に、JSTQB FLのシラバスが「Version2018V3.1.J02」にバージョンアップしました。バージョンアップによる変更点と注意点は以下のとおりです。

  1. 説明文の追加、変更、削除
    今回のバージョンアップで一番影響あり。何が追加されたのか、どう変わっているのか、何が削除されたのか、把握しましょう。
  2. 説明文の構成の変更
    影響は軽微。内容は変わりません。
  3. キーワードの追加、削除
    用語の変更に気をつけましょう。
  4. 表現や誤記の修正
    3と同様に用語の変更に気をつけましょう。

おわりに

コロナ禍により2020年8月の試験が中止となりましたが、JSTQB FLのシラバスがバージョンアップしました。試験は中止になっても、JSTQBが活動休止しているというわけではありません。試験再開に向けてコツコツ試験勉強に励んでいたとしても、こういった情報をきちんと押さえておかないと、「シラバスがバージョンアップしていることに気づかず、試験直前まで古いバージョンのシラバスで勉強してしまっていた!?」という事態になりかねません。

そういったことにならないよう、試験を受ける方は、JSTQBから発信される情報を定期的に確認するようにしてくださいね。

なお、私の方でも、今後JSTQBに関して新たな情報が発信されたら、以前の記事や本稿のように、引き続き解説記事をあげていきたいと思います。

2020年8月の試験が中止となる中、シラバスのバージョンが上がり、そして2021年2月試験の開催が決定しました。バージョンアップしたシラバスを確認しながら、モチベーション上げ直していくのは大変かと思いますが、本稿がそんな皆様の試験勉強の助けになれば幸いです。

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執筆: 三堀 雅也

バルテス・ホールディングス株式会社 R&C部 主任研究員

モバイルアプリ、Webサイト、ソーシャルゲームのテスト業務経験後、バルテスに入社。業務系システムを中心にテスト業務全般(管理、計画、設計、実施)に従事。またマネージャとして、オフショアとのブリッジ対応やテストプロセス構築支援といった業務も担当。その後、テスト業務に関する研究開発、人材育成を担うR&C部に異動となり、専業として従事する。取得資格はJSTQB Advanced Level(テストマネージャ、テストアナリスト)など。