【2022年注目】IT、ICTのトレンドキーワードを解説!政府白書から見る現状分析と今後の予測とは?

最終更新日時:2022.07.01 (公開日:2022.01.26)
【2022年注目】IT、ICTのトレンドキーワードを解説!政府白書から見る現状分析と今後の予測とは?

今回は『DX白書2021』や『情報通信白書』など、政府が刊行する白書(政府白書)や関連する資料などから、2022年にトレンドになりそうなIT、ICT関連キーワードに関連する動向や今後の予測をまとめてみました。
抽出したキーワードはQbook読者の方々なら見慣れたものが多いかもしれませんが、若干、ニュアンスが異なると考えられるものもあります。ご自身の理解を最新のものにアップデートする意味でもぜひ参考にしてみてください。

もくじ
    1. 2022年にトレンドになりそうなキーワードは?
    2. 注目のトレンドキーワードの背景にある状況は?
    3. 今後、バズりそうなキーワード一覧
    4. まとめ

2022年にトレンドになりそうなキーワードは?

今回、主に参照するのは『情報通信白書』『DX白書2021』をはじめとする様々な白書などです。多くは総務省や独立行政法人の公式サイトで無料閲覧可能になっています。

「情報通信白書」とは?

『情報通信白書』は、総務省が情報通信分野の産業現況や動向、1973年から政策を毎年、取りまとめている白書です。IT(情報技術)およびICT(情報通信技術)に対する政府の戦略・政策と進捗状況や、国内外の動向や調査資料などがまとめられています。なお当初は『通信白書』という名称でした。また、総務省では、毎年度、情報通信分野において重点的に取り組むべき施策(予算・税制・制度改正等)を『ICT政策大綱』としてまとめています。

「DX白書」とは?

日本のIT戦略を技術・人材の両面から支えるために設立されたIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)がIT社会の動向を調査・分析してまとめている白書です。2009年から『IT人材白書』、2017年から『AI白書」が刊行されてきましたが、昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴ってITとビジネスが密接な関係になってきたことから、これらが統合されて新たに『DX白書 2021』となりました。

こういった「白書」などでどのようにIT、ICT関連キーワードが言及されているか見ていくことにします。

1. 「デジタルトランスフォーメーション」

「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)」は、『DX白書 2021』と白書のタイトルになり、テーマの中核に据えられていることからも非常に重要なキーワードだと認識されていることが分かります。日本の成長戦略を示すものとして、今後しばらくはIT、ICTにおける重要キーワードの1つとして使われていくことになりそうです。

『令和3年 情報通信白書』では、デジタルトランスフォーメーションは一般的に使われている定義は厳密には一致していないとして、物質的な情報をデジタルに変換するデジタイゼーション(Digitization)とサービス提供方法をより良く構築するデジタライゼーション(Digitalization)と区別した上で以下のように定義しています。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること(『令和3年 情報通信白書』1-2-2-1より引用)」

2. 「データサイエンティスト」

DXを推進する上で、重要な人材と位置づけられているのがデータサイエンティストです。

データサイエンティストの重要性は『平成26年版 情報通信白書』ですでに指摘されていました。ここでは、データサイエンティストの明確な定義は存在しないと前置きした上で「単に企業内/組織内のデータを集約して処理するだけの人材ではなく、そこから有用な知見を引き出した上で、企業の意思決定に活かすことのできる人材(「平成26年版 情報通信白書」より引用)」と解説しています。DXによる事業変革の中核を担う人材を示すキーワードとして、今後しばらく注目を集めていくことになりそうです。

3. 「AI」と「IoT」

コンピュータやインターネットの処理速度が飛躍的に向上したことで、人工知能(AI)の高度化、モノのインターネット化(IoT:Internet of Things)が進みロボットも進化。『平成30年版 情報通信白書』ではこの流れを業務効率化の視点などから導入目的を「業務の自動化」「可視化・分析」「その他・業務支援」と分類・概観しています。『令和3年版』では、すでにAIによる業務の効率化の取り組みが実用レベルで進んでいて、現在「安心・安全で信頼性のあるAIの社会実装」が推進されているとしています。

『平成30年版』での有職者へのアンケート調査では定型業務の自動化に関心が高いことが分かっています。今後、日本では人口減少やコロナ禍の影響により、労働力不足を補う意味でもAIを活用した業務の自動化が期待され、人間の役割も働き方も変化していくと予測されています。

4. 「アジャイル」と「DevOps」

DXは顧客ニーズの変化や市場の変動など不確実性が高く、技術の適用可能性が明瞭でないまま推進されることが多いため、臨機応変に対応できるアジャイル開発とDevOps的な取り組みが求められています。新型コロナウイルス感染症に対応する情報システムの構築も例外ではなく、『令和3年版 情報通信白書』では、厚生労働省の「感染者情報を一元的に管理するシステム(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS))」がアジャイル型開発とDevOpsを適用することで、実質3週間という短い期間で開発を実現し、その後の問題にも対応していると記述しています。

さらに『令和3年版 情報通信白書』では、日本がデジタル化で世界に後れを取った理由の1つとしてアジャイル型開発の導入の遅れがあると指摘。日本のデジタルインフラの整備が世界的に見て進んでいても、開発が依然としてウォーターフォール型が中心でオープン化やクラウド化への対応が遅れ、業務活用やデータ活用が進まないことでICT投資が低迷しているとしました。

『DX白書2021』では「第4部DXを支える手法と技術」の中でDXを推進するために必要な開発技法としてアジャイルとDevOpsについて詳しく解説しています。

5. 「RPA(業務自動化)」

日本の労働生産人口が減少しつつある中、生産性を向上させるための取り組み「働き方改革」が国策として進められています。従来より少ない人数でより生産性を高めるための施策として「RPA(Robotic Process Automation)」が注目されています。人手不足に対応するために、業務の自動化を可能にするRPAの導入を多くの企業が進めている状況です。

前述したアジャイル型開発とDevOpsが導入されて開発スピードが向上することで、ソフトウェア開発においてはテスト業務の自動化も進んでいくと予測できます。上記のように業務の自動化については関心が高まっているようです。しかし、『令和3年版 情報通信白書』でロボットやRPAを活用した業務の自動化の推進状況を日本、アメリカ、ドイツで比較すると、日本は最も低い数値を示していました。

注目のトレンドキーワードの背景にある状況は?

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は今後どんな使われ方をしていく?

『令和3年 情報通信白書』では、「デジタルトランスフォーメーション」は用語として一般的な定義が一致していないとしています。そして、デジタイゼーション、デジタライゼーションと対比する形でデジタルトランスフォーメーションの特徴を強調して説明しています。ポイントと思われるのは、単なるデジタル化はデジタルトランスフォーメーションではないということです。その説明として以下の記述がされています。

「社会の根本的な変化に対して、既成概念の破壊を伴いながら新たな価値を創出するための改革がデジタルトランスフォーメーションである。また、デジタルトランスフォーメーションは、あくまで企業が特定の目的を達成するための手段であり、それ自身を目的とするものではない点に留意が必要である。(『令和3年 情報通信白書』1-2-2-1より引用)」

これまで、どちらかというとデジタル化に主眼を置いた"DXのようなもの"がDXと言及されることが多かったと思います。今後は一般的には現状の使われ方が進んでいくとしても、場面によっては"デジタル化"と"DX"の用語の使い分けが求められる可能性もありそうです。

データサイエンティストをはじめとする「AI人材」不足はつづくのか?

『情報通信白書』が指摘するようにデータサイエンティストの明確な定義はないようです。そこで、ここでは「IT人材需給に関する調査(経済産業省)」で「AI人材」としてまとめられている中にデータサイエンティストが含まれるものとして考えてみましょう。

日本全体が人口、労働力が減少傾向にあることもあり、今後、多くの業界で人材不足が課題となると予測できます。これはデータサイエンティストも同様です。上記の調査ではその需要と共有のバランスから「AI人材」は2018年時点で約3.3万人不足し、2020年時点では約4.4万人不足、2025年時点で約8.8万人~9.6万人が不足すると予測しています。

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今後、バズりそうなキーワード一覧

上記のキーワードや状況等から、今後、注目や期待を集めそうなキーワードを抽出してみました。

1. 「メタバース(Metaverse)」

米Facebookが社名をMeta(メタ)に変更したことなどで、2021年の話題となったメタバース。<超(meta)>と<宇宙(universe)>をかけ合わせた造語です。メタバースについて、「インターネット白書 2008(インターネット白書編集委員会)」では「ネット上の3次元仮想空間」であると説明されており、コンピュータやネットワーク上に構築された仮想空間のことを指します。

もともと1992年に発表された小説「スノウ・クラッシュ」(ニール・スティーヴンスン)に記述されたことから広まった言葉で、それほど新しくはない概念です。2000年代後半には、Linden Lab社が提供するバーチャル空間「セカンドライフ」が大きな注目を集めました。

『令和3年 情報通信白書』には「AR/VR」として「現実にない世界又は体験し難い状況をCGによって仮想空間上に作り出す技術」と解説されました。今後は消費者向けのエンターテインメント分野以外でも企業の利用が進み、「堅調に拡大すると予想されている」と記されています。

高い注目度がありますが、歴史やバックグラウンドが豊富なこともあり、誤用や誤解がないように気をつけたい用語だと考えられます。逆にいうと、煽りのように用いられる「メタバース」にどんな意味が込められているのか注意していく必要がありそうです。

2. 「フェデレーテッドラーニング(Federated Learning)」

フェデレーテッドラーニングは連合学習と訳されることが多いようです。2017年に米Googleから出された概念です。データを集約せずに分散した状態で機械学習を行う手法で、端末から「改善情報」だけを抽出して暗号化してクラウドに送り返すというフィードバックを繰り返して学習を深化させていきます。ユーザーの個人情報などのデータは端末から外に送り出す必要がないためセキュリティが担保されます。

『DX白書 2021』では、慎重に扱う必要があるヘルスケアデータなどに関してデータ秘匿性を維持しつつ機械学習を効率よく進めることが可能になるのがフェデレーテッドラーニングであると指摘しています。

3. 「ジェネレーティブAI(Generative AI)」

これは、アメリカの調査会社Gartner(ガートナー)が2021年10月に「Gartner IT Symposium/Xpo Americas」で発表したものです。データからコンテンツやオブジェクトを学習して新しく独自のモノを生成する機械学習手法で、ソフトウェアコードの作成などに活用できます。Gartnerはこの技術が使われる割合が増加していくと予測しました。人材不足を補うためにジェネレーティブAIを利用するといった文脈で使われるかもしれません。

4. 「ノーコード/ローコードツール」

『DX白書 2021』では、ノーコード・ローコードツールを以下のように説明しています。人材不足解消の視点から今後も注目を集めていく技術だといえそうです。

「プログラミング言語を使わない、あるいは一部簡単なプログラミングでシステム実装を可能とするツールである。従来は専門的な知識を持つエンジニアでないと開発が難しかった業務アプリケーションを非エンジニアである業務部門のメンバーでも開発を可能とすることが最大のメリットであり、IT人材不足の補完にも寄与する。(『DX白書 2021』より引用)」

全体を通してみると、デジタルトランスフォーメーションを中核にそれを駆動する技術(AIなど)、人材(データサイエンティストなど)関連のキーワードが注目を集める図式がつづいていくと感じられます。

まとめ

コロナ禍において、人々の働き方や生活様式は大きく変化しました。オミクロン株の登場で2022年の状況についても引き続き接触制限が続くことが予想され、今回取り上げたようなテクノロジー系のキーワードの重要性が高まることが予測されます。
将来の予測が難しい時代となっているからこそ、こうしたトレンドキーワードの動向は機敏に捉えていきたいものですね。

執筆者:神田 富士晴

ライター

株式会社アスキー、株式会社光栄、株式会社ビレッジセンター等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集、ソフトウエア制作を経験。その後、企業公式サイト運営やコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター・マンガ原作者として記事の企画・取材・執筆に取り組んでいる。