「PM」という言葉は不動産業界や製造業など、さまざまな業界において異なる意味合いで使われます。IT業界においては、PMは開発プロジェクトに不可欠な存在です。
今回は、IT業界におけるPMとは何か、概要を解説します。PMの年収・需要・難易度や、目指すための方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1.IT業界におけるPM(プロジェクトマネージャ)とは?
IT業界においてPMといえば、一般的に「プロジェクトマネージャ(Project Manager)」を指します。
まずは、PM(プロジェクトマネージャ)の概要や、関連用語との違いを押さえておきましょう。
1-1 PM(プロジェクトマネージャ)とは
PM(プロジェクトマネージャ)とは、ソフトウェア開発プロジェクトの計画や運営、管理を行う職種のことです。
開発プロジェクトの責任者であり、予算や人員、日程といった重要な事項を決定する権限を持ちます。また、ソフトウェアの納品先となる顧客とのやり取りも重要な任務です。
開発プロジェクトにアサインされたメンバーは、PMが決めたプロジェクト計画に従って開発を進めます。PMが誤った指針を示せば、開発プロジェクト全体が誤った方向に進むでしょう。そのためPMは、開発プロジェクトを成功に導くうえで重要な存在です。
1-2 PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)との違い
PMに関連した言葉に「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)」がありますが、両者は異なります。
PMOとは、プロジェクトマネジメント(PMの業務)を支援する部門やチームのことです。PMの代理ではなく、あくまで補佐的な立ち位置で企業の開発プロジェクトを支援していきます。PMとPMOを混同しないように注意しましょう。
なお、PMとPMOの違いについて詳しくは、次の記事を参考にしてください。
1-3 PL(プロジェクトリーダー)との違い
PMと混同されやすい職種に「PL(プロジェクトリーダー:Project Leader)」があります。
PLとは、現場で開発プロジェクトを牽引するリーダーのことです。メンバーの進捗管理や問題発生時のサポートなどを行い、開発プロジェクトを成功に導きます。
一般的に、PLはPMの部下にあたる立場です。PMは開発プロジェクトの方針に沿ってPLを指揮し、それに従いPLが現場での舵取りを行います。PMは開発プロジェクトを統括しますが、現場のメンバーを直接指揮することは基本的にありません。
立ち位置は異なりますが、開発プロジェクトの成功にはPM・PLともに重要となります。
2.PMの主な仕事内容
PMの主な仕事内容は、次の3つです。これらは、開発プロジェクトの成否を左右する重要な責務といえます。
2-1 プロジェクトの計画
開発プロジェクトを立ち上げるにあたって、計画を立案するのはPMの重要な役割です。顧客のニーズや自社のリソース状況などを考慮し、プロジェクト全体の目的や予算、日程、人員などを決定します。
開発プロジェクトの発足後は、PMの計画に沿って進行していきます。開発プロジェクトを成功させるためには、まずPMが適切なプロジェクト計画を立案することが重要です。
2-2 プロジェクトの管理
開発プロジェクトの発足後は、プロジェクトが問題なく進行しているかをPMが管理します。ただし、メンバー単位での進捗管理などを行うのは基本的にPLの役割です。PMはプロジェクト単位で遅延や人員不足、予算超過などが生じていないか管理します。
開発プロジェクトとしての問題が発生している場合、PMには適切な対応が求められます。たとえば、プロジェクト遅延が発生している場合は、人員補充やリスケジュール(計画見直し)などが必要でしょう。
2-3 ステークホルダーとの折衝
PMは開発プロジェクトの責任者として、各ステークホルダーとの折衝を行います。たとえば遅延の挽回が難しいために、顧客に相談して納期の調整を行うケースもあります。人員が不足している場合は、関連部門の管理者に人員を融通できないか打診が必要でしょう。
PMには、各ステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取り、良好な関係を築いていくことが求められます。メンバーレベルで解決できない問題は、PMが主導して解決しなければなりません。ステークホルダーとの関係を保ちつつ協力を得るために、高い折衝力が必要です。
3.PMの平均年収・需要・難易度
PMの仕事に関心がある人は多いでしょう。ここではPMという職種の平均年収・需要・難易度についてお伝えします。
3-1 平均年収
「求人ボックス 給料ナビ」によれば、PMの平均年収は約630万円です(2024年3月時点)。
一方、国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年分)」によれば、日本全体の平均年収は約458万円です。
よって、PMの平均年収は高水準といえるでしょう。PMには豊富な経験やスキルが求められ、大きな責任が伴うため、収入も高くなりやすい傾向にあります。
ただし、同じPMでも年収には大きな差があります。PMとして収入を高めるためには確かなスキルを身に付けることが重要です。
3-2 需要
Webの求人媒体では、多くの企業がPMの募集を行っており、需要は高い傾向にあります。
プロジェクトの責任者であるPMは、建設業や製造業など、多くの業界で需要が高まっており、PMのスキルを身に付ければIT業界に限らずビジネスで活躍できる可能性があるでしょう。
3-3 難易度
PMの代表的な資格であるIPA(情報処理推進機構)の「プロジェクトマネージャ試験」の令和5年度の合格率は13.5%です。資格はPMになるための必須条件ではないものの、容易に取得できるレベルではないといえるでしょう。
IPAが「高度IT人材」と位置付けるPMには、高いマネジメントスキルやコミュニケーションスキル、豊富なビジネス知識などが求められます。
そのため、PMを目指すのであれば十分な学習が欠かせません。
4.PMを目指す方法
PMは需要が高いものの、すぐに転職できるほど難易度は低くありません。PMを目指す場合、次の2つの方法をおすすめします。
4-1 他エンジニア職種からのキャリアアップを目指す
IT業界未経験の場合、すぐにPMを目指すことは難しいでしょう。PMにとって、ソフトウェア開発現場の経験から得た業務知識やノウハウは重要です。マネジメント職の経験者であればPMへの転職の可能性は上がるものの、未経験だと不利になってしまいます。
そのため、まずは他エンジニア職種に転職して経験を積み、そこからキャリアアップを目指すのがベターです。PMを見据える場合、まずは要件定義や設計などを行う「SE(システムエンジニア)」、前述のPLなどを目指すとよいでしょう。
4-2 PM関連の資格取得に向けて学習する
PM関連の資格取得に向けて学習することもおすすめです。PMになるための必須資格はないものの、資格を取得することで知識やスキルを客観的に証明できます。IT業界未経験であっても、高難度の資格を取得していれば転職の成功率は上がるでしょう。
PM関連の資格としては、主に次の2つが挙げられます。いずれかの取得を目指して学習するとよいでしょう。学習の過程で体系的にPMの知識を身に付けられます。
資格名 | 概要 |
---|---|
プロジェクトマネージャ試験 | 日本のIPAが主催する「情報処理技術者試験」の一区分。国家資格のため国内での知名度が高く、実務経験がなくても受験できる。 |
PMP(Project Management Professional) | 米国のプロジェクトマネジメント協会が主催する国際資格。IT業界に限らないプロジェクトマネジメントの知識を証明できる。受験には実務経験が必要。 |
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まとめ
PM(プロジェクトマネージャ)は、ソフトウェア開発プロジェクトの計画や運営、管理を行う職種です。開発プロジェクトの成否を左右する重要な存在であり、昨今ではIT業界のみならず需要が高まっています。
ただし、PMには豊富な知識が求められるため、難易度は決して低くありません。PMを目指すのであれば、高品質な学習を積み重ねることが大切です。
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