書評「実践的ソフトウェア測定」
John McGarry (著) , Cheryl Jones (著), Beth Layman (著), Elizabeth Clark (著), David Card (著), 古山 恒夫 (翻訳), 富野 寿 (翻訳) , 構造計画研究所(発行)/共立出版(発売)
設計・開発
概要
ソフトウェア開発および保守の組織が、ソフトウェア測定概念を用いて、いかに実務的かつ妥当なやり方で、有効な測定プロセスを導入できるか。本書は、ISO/IEC15939ソフトウェア測定プロセス規格の制定に直接関わってきた実務レベルの業界リーダ達が書き下ろした、ソフトウェアの測定と、プロセスおよびプロダクト改善の、実践的ガイドブックである。本書の測定概念はCMMIでも実証されている。ソフトウェア測定に携わる実務家向けの一冊。
本書の使い方
第1章~第2章、第8章:ソフトウェア測定の基本的な概念を学ぶことができる。
第3章~第7章:ソフトウェア測定における個々のアクティビティを学ぶことができる。通読の上、業務に当たりながら個別の該当する章を再読することを勧める。
付録A~B:測定における具体的な事例を挙げる。読者の興味関心に応じて参照することができる。
何を学べるか
第1章 測定:基本的概念と実践
第1章ではソフトウェア測定の概観を示す。測定がソフトウェア開発組織をどう支援するか、また、測定がどのように企業の資源となりうるかを説明する。またプロジェクトレベルと組織レベルの測定の関係を明らかにする。そして実践的ソフトウェア計測(PSM:Practical Software Metrics)の2つの主要概念である、「測定情報モデル」と「測定プロセスモデル」を紹介する。
第2章 測定情報モデル
第2章は、測定情報モデルについて解説する。特定プロジェクトの測定計画を立てるためには、測定情報モデルを設定し、定義された情報ニーズを生産プロセスおよび製品に結びつける必要がある。測定情報モデルの概要と、様々な用語について、詳しく説明する。また測定情報モデルと測定計画を関連付けて説明する。
第3章 測定計画の作成
第3~7章では、個別の測定アクティビティを詳しく解説する。 本章はその最初の章であり、測定計画を取り上げる。測定計画のアクティビティを3つに分けて、①情報ニーズの特定と優先順位づけ、②測定量の選択と定義、③プロジェクトプロセスへの測定プロセスの統合、の順に説明する。
第4章 測定の実施
第4章は測定の実施アクティビティについて解説する。測定データの収集、分析の仕方、そしてまとめた結果を提言する方法について解説する。 とりわけ分析は実施アクティビティの主要なタスクである。分析タイプの紹介、情報ニーズと課題の関連付けの仕方などを紹介する。
第5章 分析の技法
第5章では、第4章を受けて、主要な3つの分析タイプについて解説する。3つの分析タイプとは、①見積もりの分析、②実現可能性の分析、③実績の分析、である。それぞれの考え方を、固有の技法も含めて詳しく解説する。
第6章 測定の評価
第6章では測定アクティビティの評価について解説する。測定が効果的で妥当なものであったか。プロジェクトで用いた測定量、プロジェクトの測定プロセス、それぞれについてのアセスメント、評価、改善について説明する。
第7章 コミットメントの確立と維持
これまでの章では、計画から実施を含む測定プロセスについて述べた。しかし、どんなに測定プロセスの定義が優れていても、組織内で効果的に実施できなければ価値はない。本章では、プロジェクト測定プロセスを適切に導入するにあたって、組織の要求に目を向けたコミットメントの確立と、維持について解説する。また測定の「教訓」についても説明する。
第8章 ソフトウェアで成功を収めるための測定
第8章では、本書に示した概念を簡単に振り返ってまとめる。そして、ソフトウェア測定の主要な成功要因を明らかにする。とりわけ、組織文化が、測定の効果的な利用を支援することの重要性を説く。
付録A 測定の枠組みの例
ソフトウェアプロジェクトに一般的に適用される測定枠組みの詳細例を示す。 マイルストーンの完了、作業単位の進捗、要員工数、財務実績、ソフトウェアの規模と安定性、欠陥数、欠陥密度、応答時間、プロセス標準への準拠性、プロセス効率、技術の適合性、顧客からのフィードバックなどを示す。
付録B 情報システムでのケーススタディ
典型的な情報システムのための測定プロセスの実例を示す。
付録C 「シナジー」コピー機でのケーススタディ
ソフトウェア改良プロジェクトにとって、測定がどのように適用できるかを示す。