ソフトウェア開発に取り組む企業の間で、「QAチーム」を設置する動きが広がっています。
QAチームは、ソフトウェアの品質を守る要となる存在です。とはいえ、その具体的な役割や立ち上げ方については、あまり知られていません。
そこで本稿では、QAチームの役割から立ち上げ方、成功のポイントまでお伝えします。QAチームの立ち上げや、その活動への参画に関心がある方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1. QAチームの主な役割
QAチームは品質保証のエキスパートとして、多岐にわたる役割を担います。QAチームの主な役割は、次の4つです。
1-1. 品質問題の流出防止
QAチームは、ソフトウェアの品質を守る最後の砦です。
ソフトウェア製品が市場に出る前に、さまざまなテストを通して不具合を徹底的に検出することで、リリース後にユーザーが品質問題に直面するリスクを大幅に軽減できます。高品質なソフトウェア製品を届け、企業の信頼性を守るために不可欠な存在です。
1-2. 顧客満足度の向上
QAチームは、明らかな不具合だけでなく、「使いづらい」「分かりづらい」といったユーザー目線の課題にも対応します。
開発者が気づきにくい操作性や表現の違和感を拾い上げることで、実際のユーザーがストレスなく利用できるソフトウェアを目指すのです。結果として、顧客企業の評価やリピート率の向上にもつながります。
1-3. 品質管理の合理化
QAチームは、品質管理に関する意思決定にも関与し、企業・組織としての判断を支える存在です。
たとえば、ブレのない品質判断を可能にするために、テストの合否基準やリリースの判断基準などを明確化します。また、テストやレビューの標準化・自動化を推進することで、品質管理に関わる業務の効率性と確実性の向上につなげます。
1-4. 開発の効率化
QAチームは、結果として開発の効率化にも寄与します。
QAチームが品質保証を担うことで、開発者は安心して本来の業務に集中でき、生産性を高めやすくなるでしょう。また、不具合分析から得た知見などを提供することで、開発プロセスの改善につながり、不具合の抑制や手戻りの削減も期待できます。
2. QAチームを立ち上げる際にすべきこと
QAチームを新たに設置する際には、さまざまな事前準備が不可欠です。ここでは、QAチームを立ち上げる際に必要となる、主な7つのタスクについて解説します。
- 目的の明確化
- チーム体制・人員計画の検討
- 予算や人員の確保
- プロセスや品質基準の明確化
- マニュアルやフォーマットの整備
- 利用するツールや外部サービスの選定
- 関係部署との連携体制の構築
2-1. 目的の明確化
まず取り組むべきは、QAチームを立ち上げる目的を明確にすることです。
QAチームの運営には相応のコストがかかります。その投資に見合った成果を得られるよう、「リリース後の不具合削減」のように明確な目的を掲げるべきです。
また、「チームとして○○件の不具合を検出する」など、具体的な数値目標を設定することも重要です。目的や目標が定まれば、チームの活動方針がぶれにくくなります。
2-2. チーム体制・人員計画の検討
QAチーム立ち上げにあたっては、必要な役割やスキルを洗い出し、適切な人員配置を検討する必要があります。
たとえば、全体の管理を担うリーダーやテスト実行を担うメンバー、テスト自動化の専門家など、さまざまな人員が必要です。
どのような人員がどれだけ必要か、全体としてどのようなチームに組み上げるか、しっかり計画を立てましょう。
2-3. 予算や人員の確保
QAチームの活動に必要なコストやリソースを見積もり、予算や人員を確保する必要があります。
これには、経営層の承認が欠かせません。テストツールの導入費用、専門人材の採用費用など、必要な予算を具体的に提示し、承認を得ましょう。
また、計画したチーム体制に応じた人員の確保も重要です。自社で人員を確保できない場合は、外部からの調達も視野に入れると良いでしょう。
2-4. プロセスや品質基準の明確化
QAチームの運用を円滑に進めるため、品質保証のプロセスや品質基準を明確にしておきましょう。
たとえば、テストの進め方や合否基準、検証すべき観点などを明確にします。外部の標準や規格、IT業界のベンチマークなどを参考にするのも効果的です。
標準化されたプロセスや品質基準を適用することで、QAチーム全体で運用 のブレを防ぎ、品質保証のプロセスそのものの品質を確保できます。
2-5. マニュアルやフォーマットの整備
QAチームの活動を効率的かつ標準的に行うため、マニュアルやフォーマットを整備しておきましょう。
たとえば、テスト手順書や不具合報告書のテンプレートなどを用意します。マニュアルやフォーマットがあれば、一定のルールに沿って業務を遂行できるため、個人のスキルに依存しない安定した運用が可能です。
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2-6. 利用するツールや外部サービスの選定
QAチームの業務を効率化するため、利用するツールや外部サービスの選定も不可欠です。
たとえば、テスト管理ツールやバグ管理ツールなどを選び、導入を検討します。QAチームの目的や予算、プロジェクトの規模や開発体制などを考慮して慎重に選定しましょう。
外部のQA支援サービスを活用する選択肢もあります。
2-7. 関係部署との連携体制の構築
QAチームの成功には、開発チームや運用チームなど、関係部署との密な連携が欠かせません。
円滑な情報共有や意思疎通のため、関係部署との連携体制の構築を図りましょう。組織全体に関わる取り組みのため、経営層も含めた関係者間での協議・合意形成が大前提です。
誰を窓口とするか、どのように連絡を取るか、定期的な打ち合わせの有無など、できる限り詳しく取り決めておきましょう。
3. QAチームの立ち上げを成功させるためのポイント
QAチームの立ち上げは、単に人員を集めるだけでは成功しません。QAチームの立ち上げを成功させるためのポイント4つを押さえておきましょう。
3-1. 目的や存在意義を明確にする
QAチームの立ち上げを成功させるためには、まず「なぜQAチームが必要なのか」を考え、その目的と存在意義を明確にしましょう。
目的や存在意義があいまいだと、その後の計画もぶれてしまいます。目的や存在意義を全社員に共有することで、理解や協力を得やすくなります。
3-2. 品質保証の有識者を確保する
品質保証の有識者を確保し、QAチームの中心に据えましょう。品質保証に関する専門知識と経験を持つ人材がいれば、活動全般を高いレベルで進められます。
有識者を通して品質保証の基盤を整えることで、チーム全体のスキル向上にもつながるでしょう。
3-3. 開発経験者を取り入れる
QAチームには、開発経験者を取り入れることが理想です。開発チームとQAチームには密接な連携が求められるため、相互理解を促進しやすい開発経験者の存在は大きいと言えます。
開発側の視点を理解する人がいるほうが、開発チームとの連携はスムーズになるでしょう。
また、開発者の視点を取り入れたテスト設計や、より実践的な不具合分析ができるため、品質保証の精度も高まります。
3-4. 必要に応じてプロのサポートを受ける
QAチームの立ち上げに必要な社内のリソースやノウハウが不足している場合は、プロのサポートを受けることが効果的です。
QAチームの立ち上げを専門とする外部サービスを活用することで、豊富な経験と最新の知見に沿って的確なサポートを受けられるでしょう。
Qbookを運営するバルテスでは、アジャイル・ウォーターフォール問わず対応可能なQAチーム立ち上げ支援サービスを提供しています。
開発チームが開発に集中できる体制づくりや、不具合・品質に関するナレッジの蓄積を促進し、プロジェクトの品質向上に役立てられます。
QAチームの立ち上げで課題を感じた際は、ぜひ弊社サービスをご活用ください。
まとめ
QAチームとは、ソフトウェア開発における品質保証(QA)を専門とするチームのことです。
品質問題の流出防止や顧客満足度の向上、品質管理の合理化、開発の効率化など、QAチームはさまざまな役割を担います。
QAチームを立ち上げるにあたっては、多くの準備作業が必要です。QAチームの立ち上げに適した人材を確保できない場合は、プロのサポートを受けることも検討しましょう。
QAチームを立ち上げる際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。