概要
システム開発において、トラブルゼロ、そして2度の仕様変更ゼロを実現し、プロジェクトを成功させてきた著者の、SEとしてのノウハウを学ぶことが出来る一冊。SEの仕事には本来定義はなく、「人」のコミュニケーションに関することが90パーセント以上であると著者は説く。会議や、計画作成における具体的な仕事術を紹介する。SEはもとより、ソフトウェア開発の管理に携わるすべての人に薦める。ベストセラーとなった2冊を一冊にまとめた完全版。
本書の使い方
第一部(第1章~第11章):委託開発における業務システム開発を成功させるにあたって「実際にSEの立場で行い、役に立った」考え方や具体的な方法を知ることが出来る。ステークホルダーとのコミュニケーション、会議、成果物、業務分析、プロジェクト運営などにおける、ノウハウを学ぶことができる。
読者の興味のあるところが読むことが出来るが、まず、第1部の通読を薦めたい。
第二部(第12章~第19章):プロジェクトを成功に導くための、「精度の高い計画」を立てるノウハウを学ぶことが出来る。実際に計画を作成する管理者担当者に薦める。
何を学べるか
第一部 成功するSEの考え方、仕事の進め方
第1章 SEの仕事は「人」が9割
業務システム開発の概要と、仕事の流れを説明した上で、著者はSEの仕事のほとんどは「人」に関するものであることを述べる。様々開発現場におけるトラブルの原因を紹介し、解決策はコミュニケーションの改善である、と著者は述べる。
第2章 失敗の原因はコミュニケーション不足
著者自身の経験として、ユーザーの不満は、操作性などの概して「小さな」問題であることを述べたうえで、その問題が発生する原因は細部におけるコミュニケーションの不足であることを指摘し、最初から詳細な仕様をきちんと作ることの重要性を強調する。
第3章 マネジメントが成否の鍵
「プロジェクトを成功させる」とはどういうことなのかを考察する。成果物を完成させ、プロジェクトの目的を達成するためには、SE、PMはなにをすにべきか。そしてそれを可能とする環境を作るために、経営者は何をすべきかなど、各階層におけるマネジメントの重要性を述べる。
第4章 コミュニケーション重視の会議術【準備編】
第4章、第5章では、著者自らが実践する、コミュニケーションを重視した会議の方法を紹介する。通常の会議における問題点を挙げたうえで、それを解決するための具体的なノウハウを展開する。本章では、事前準備として作業や、用意しておくべきツールなどを説明、紹介する。
第5章 コミュニケーション重視の会議術【実践編】
本章では、実際の会議の進め方と、そのポイントを詳細に説明する。会議をテンポよく、リラックスしたムードで進めること、会議を阻害する態度への警告、具体的な進行方法、会議中に起こりがちな問題とその回避方法の紹介、コミュニケーション技術、計画技術、情報収集技法、などを解説する。
第6章 プロジェクト初期段階の仕事術
プロジェクトでは最初の段階で、いかに信頼関係を構築できるかが重要である。初顔合わせでするべき質問や依頼事項、早い段階でのサンプルの提示、初期段階でも確認できること、などさまざまなノウハウを紹介する。
第7章 成果物作成の仕事術
「SEとプログラマ」、「SEと顧客」の間で、円滑なコミュニケーションと理解を得るためのノウハウを具体的に紹介する。ドキュメント作成方法、早期段階からのプログラムの作成するなど、手順を追って説明する。
第8章 顧客業務分析の仕事術
業務分析はもっとも重要な作業であり、そこでの理解の深さが、後工程での大きな差になる、と著者は説く。スタートダッシュで顧客業務を徹底的に理解することの重要性を述べ、顧客とコミュニケーションをとる上でのポイントを解説する。
第9章 設計・実装・テストの仕事術
これまでの章で紹介した作業を前提としたうえで、設計、実装、テスト時におけるポイントを解説する。設計と実装の承認の取り方、承認後の作業やテストの進め方を説明する。とりわけ、実際にそのシステムを使う現場実業務担当者との協力関係の重要性を説く。
第10章 プロジェクト運営の仕事術
プロジェクトを成功させるためには、SEやプロジェクトマネジャーは「コミュニケーションの成功を継続する」責任がある、と著者は説く。コミュニケーションに焦点を当て、難しいプロジェクトをいかに無理のない形で実現するようにするか、そのポイントを解説する。
第11章 業務システム開発は「伝言ゲーム」
開発現場で失敗が繰り返される原因を分析し、起こりがちな伝言ゲーム的なトラブルを紹介しつつ、改善のための要点をまとめる。
第二部 第二部 成功するSEのプロジェクト計画・運営術
第12章 名ばかりプロジェクトマネジメント
日本のIT業界におけるプロジェクトマネジメントは、きわめて稚拙である現状を解説する。その原因として、SEやプロジェクトマネジャーより、さらに上位のマネジャーが、プロジェクトマネジメントを理解していない現状があることを明らかにする。
第13章 誤解がプロジェクトを破綻させる
「計画」とは、プロジェクトの最初におこなうもの、という考え方は「誤解」であり、「業務分析から要求定義までは、計画作成のための情報収集活動」であると著者は説く。現場を知らない管理者が計画を作成することの問題点を指摘したうえで、現場でシステムを作る人間に即した計画の重要性を解説する。
第14章 上流工程はすべて計画活動
上流工程は、計画活動そのものである、という著者の考えを紹介しつつ、プロジェクトの初期段階の進め方を具体的に説明する。 プロジェクト目標(ゴール)の決定、初期段階の計画作成、現場見学、ヒアリング、業務分析とそのレビュー、要求定義、システム全体像の決定と計画作成、の各作業を順に解説する。
第15章 本当の計画、名ばかりの計画
プロジェクト・ネットワーク図による計画作成法を説明する。従来のバー・チャート中心の計画作成の問題点を示しつつ、ネットワーク図による計画作成のメリットを解説する。
第16章 ネットワーク図による計画作成術(アナログ式)
本章では、模造紙と付せんを用いた、「アナログ式」のネットワーク図の作成法を、具体的に手順を追って説明する。 WBS作成、アクティビティリストの作成、プロジェクトネットーワーク図の作成、期間、コストの算出、現実と目標のギャップの認識、プロジェクトの最適化、コミュニケーションの検討、バーチャートとコストベースラインの作成までを解説する。
第17章 ネットワーク図による計画作成術(デジタル式)
前章で紹介したネットワーク図の作成を、ソフトウェアを用いて作成する際の要点、有効なソフトウェアなどを解説・紹介する。
第18章 ネットワーク図による計画の最適化
ネットワーク図を作成し、計画を行うことにより、通常であれば納期に間に合わないプロジェクトも、納期に収めることが可能である、と著者は説く。プロジェクトを最短に収めるにあたって、ネットワーク図をどのように活用するのか、その方法を解説する。
第19章 IT業界が日本を救う
失敗プロジェクトの原因を掘り下げると、結局は「計画や計画活動に対する理解不足」にたどり着く、と著者は説く。その理由は、ソフトウェアが「目に見えないもの」だからであり、そうであるからこそ、作業を目に見える形にする計画が重要であり、もともとモノづくりに強い日本人は「見えてしまえば」本当に強い、と著者は締めくくる。