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歴史に残るバグ・IT犯罪 2024.05.31
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「ナイジェリアの手紙」とは? ネットを使い世界に広がる国際詐欺の被害から身を守るための基礎知識

執筆: 大木 晴一郎

ライター

「ナイジェリアの手紙」とは? ネットを使い世界に広がる国際詐欺の被害から身を守るための基礎知識

「ナイジェリアの手紙」という言葉をご存知でしょうか?

「ナイジェリア詐欺」や「419詐欺」等々、様々な別名がある、FAX、電子メールなど通信技術を悪用した詐欺の元祖ともいえる存在です。人間の心理を巧妙に突く手口によって、なんと2005年には「※イグノーベル賞」を受賞するほど世界を席巻しました。

その手口は、時代ごとにトレンドを取り入れながら進化を遂げ、日本でもオレオレ詐欺と手口の類似性が指摘されています。今回は中でも電子ツールを利用した同型の詐欺についてまとめてみました。

※イグノーベル賞とは、人々を笑わせ考えさせた研究に与えられる賞。ノーベル賞のパロディーとして設立された。(詳細は2章)

もくじ
  1. 「ナイジェリアの手紙」とは?
    1. 「419詐欺」としても知られる国際的詐欺
    2. 「ナイジェリアの手紙」の実例
    3. なぜ、多くの人が騙されるのか?
    4. メディアで話題になった事例に似せた詐欺も増えている
  2. 「ナイジェリア詐欺」がイグノーベル賞を受賞
  3. 「オレオレ詐欺」との類似と相違点
    1. 「オレオレ詐欺」と「ナイジェリアの手紙」
    2. 日本特有の社会的・文化的背景を利用
  4. 世界的に広がり、バリエーションも"増加中"
    1. インターネットの普及とともに世界的に広まる
    2. バリエーションは増えている!様々な詐欺手口
    3. 手口の「共通項」
    4. 「主戦場」はSNSに移行している?
  5. 詐欺から身を守る4つの防御策
    1. 不審なメールやメッセージは無視する・ツールを活用する
    2. 個人情報・極秘情報は慎重に扱う
    3. 信用できる最新情報を得る
    4. 5-4.「落ち着く」「考える」
  6. まとめ

1.「ナイジェリアの手紙」とは?

1-1 「419詐欺」としても知られる国際的詐欺

「ナイジェリアの手紙」、別名「ナイジェリア詐欺」は、「419詐欺」「419事件」としても世界中に知られている国際的詐欺の一種です。

なぜ、その名に「ナイジェリア」を含んでいるのかというと、1980年代ごろからナイジェリアを中心に広まった国際的詐欺だからです。「419詐欺」の419とは、ナイジェリアの刑法419条のことです。この資金洗浄を規制する刑法に抵触する犯罪であることから419が冠せられることになりました。

手口は非常にシンプルですが、不思議なことに効果的です。

まず詐欺師は、被害者に対して電子メールやFAX、SNSメッセージを送って「多額の財産や遺産、宝くじなどの当選金といった大金が手に入る」と噓をつきます。

話に乗ってきた被害者に対して「入金の手続きを進めるためには、一時金(または手数料、税金など)の支払いが必要になる」と金銭を要求します。電子メールの内容は、ほとんどの場合、緊急性や何らかの危険、独占的なチャンスであることを強調していて、被害者が迅速に対応しなければその機会が失われると感じさせるような内容になっています。

そして、騙されてしまった被害者がお金を渡すと、詐欺師は姿を消す......という流れです。

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何らかの形で被害者を信用させて詐欺をする手口であることから、信用詐欺の一種といえます。信用詐欺の加害者は、詐欺師以外にもペテン師、コンフィデンスマンなどと呼ばれます。

同型の詐欺として、19世紀に発生した「スペインの囚人」、日本の「M資金詐欺」などが有名です。近年では「ビジネスメール詐欺(BEC)」の被害が非常に大きくなっています。

今では、発信元はナイジェリアだけではなく、世界各地に広がっています。手口も多様化していますので、文字通りの「ナイジェリアの手紙」ではなくなっていますが、依然として関連報道は続いています。

1-2 「ナイジェリアの手紙」の実例

「ナイジェリアの手紙」や「ナイジェリア詐欺」、「419詐欺」で検索すると、いくつか実例を見いだせますが、悪用を禁じる意味でしょうか、実際のものは掲出が少なくなっています。

内容としては、次のようなメールの流れが典型的です。

「私はナイジェリアの王子で、莫大な遺産を相続する権利を持っています。しかし、その遺産を海外に移すために、信頼できる協力者が必要になりました。あなたの銀行口座を使わせていただければ、報酬として遺産の一部をお支払いします」

古臭い内容だ、とタカを括らない方がよいかもしれません。なんと2016年にも実例が報告されているのです。

1-3 なぜ、多くの人が騙されるのか?

「ナイジェリアの手紙」のような信用詐欺に多くの人が騙されてしまう理由は、大きくは2つあります。1つは被害者の心理的な「スキ」、もう1つが詐欺師の手口です。

被害者の心理的な「スキ」を突かれる

心理的要因として、急な大金に関する話や緊急事態に対して人は正常な判断が難しくなるといわれています。「ナイジェリアの手紙」やビジネスメール詐欺では、多くの場合、多額の遺産や宝くじの当選、ビジネス上の利益をちらつかせて、被害者に「これは一生に一度あるかないかのチャンスだ」と思わせます。

このような状況では、人は冷静さを失い、リスクを見過ごしやすくなるわけです。日本で発生する「オレオレ詐欺」でも、家族や友人の緊急事態を装うことで、被害者の判断力を鈍らせ、対応させようとています。被害者の「純真さ(素直さ)」「信じやすさ」や同情といった良心を加害者は悪用し、さらに自信だけでなく、見栄といった痛い部分を突いてくるのです。

加害者の巧妙な手口

詐欺師の手口は巧妙です。信憑性を高めるためにトレンドを取り入れた背景情報を含む「ホラ話」を作り上げています。例えば、「ナイジェリアの手紙」やビジネスメール詐欺では、偽の法的書類などが揃っていることがあります。オレオレ詐欺では、本人以外にも弁護士役や警察官役が電話口に登場して、真実味を増すような"工夫"がされています。

くわえて、偶然を利用するか、または用意したアプローチ用いて被害者に「自分だけが特別に選ばれた」と信じさせるようにしています。

1-4 メディアで話題になった事例に似せた詐欺も増えている

被害者にとっても、加害者にとっても、メディアの影響力は非常に強力です。上述したように詐欺師は、ニュースや広告を巧妙に利用して、自分たちのストーリーにトレンドを取り入れ、「ホラ話」を信じさせようとします。

例えば、ニュースで取り上げられている多くの成功事例によく似た話をでっち上げ、流行りの著名人が関与しているかのように偽ります。最近、日本では、有名人を偽った投資話による詐欺被害が拡大しています。

2.「ナイジェリア詐欺」がイグノーベル賞を受賞

「イグノーベル賞」とは、人々を「笑わせ、そして考えさせる」ことを目的としたユーモラスで風変わりな研究や業績に対して授与される賞です。

この賞は、1991年にマーク・エイブラハムズ(Marc Abrahams)氏によって創設され、毎年、物理学、化学、医学、文学など幅広い分野からユニークな成果が選ばれます。ユーモアを通じて、科学・文化に対する理解と興味を深めることを目指している、今や世界から注目を集める賞です。

2005年に「ナイジェリアのインターネット起業家たち」が「ナイジェリアの手紙」イグノーベル賞の文学賞を受賞しました。

選考委員会は、ナイジェリア詐欺の受賞理由として、その詐欺手法の創造性と持続力を評価し、さらにナイジェリアの著名人の名を世界に広めたことを評価しています。ユーモアを持って世界に警告を発したといるでしょう。

実際のところ、受賞後の現在に至るまで、コミュニケーションツールを悪用した信用詐欺は持続しており、手口を多様に変化させる適応力には、ある種の創造力を感じさせます。

「ナイジェリアの手紙」のイグノーベル賞受賞は、詐欺の巧妙さと深刻さを示したといえます。

3.「オレオレ詐欺」との類似と相違点

3-1 「オレオレ詐欺」と「ナイジェリアの手紙」

日本の「オレオレ詐欺」と「ナイジェリアの手紙」は、どちらも人心を操り、被害者を騙す手口である、多くの共通点があります。

多くの人が似ていると感じるのではないでしょうか? というよりも、シナリオの基本構造はほぼ同じといるかもしれません。

オレオレ詐欺

・電話を使うことが多い

・被害者の家族や友人を装う連絡スタイル

ナイジェリアの手紙

・電子メールなどのコミュニケーションツールを使うことが多い

・顔見知りでない第三者からの連絡スタイル


異なる点は、オレオレ詐欺では、電子メールではなく電話を使うことが多いということです。その上で、詐欺師が被害者の家族や友人を装う、直接的な人間関係を狙ってくることです。家族や友人の緊急事態を偽って金銭を奪おうとします。

一方、「ナイジェリアの手紙」やビジネスメール詐欺では、基本が電子メールなどのコミュニケーションツールを利用し、見知らぬ第三者からの連絡であるスタイルをとることが多いのが特徴です。

3-2 日本特有の社会的・文化的背景を利用

オレオレ詐欺には、日本特有の社会的・文化的背景が影響を与えているといわれています。

高齢者が家族を思う気持ちや、日本の場合、親しい人からの助けを無条件に信じる傾向が強いため、詐欺師にとっては利用しやすい「スキ」になっているという指摘もあります。

また、日本社会におけるプライバシーの重視の傾向や、警察への相談をためらうことが多いことも、被害が拡大しやすい要因とされています。

4.世界的に広がり、バリエーションも"増加中"

4-1 インターネットの普及とともに世界的に広まる

「ナイジェリアの手紙」は、インターネットの普及とともに、電子メールやSNSを利用することで世界中に広まりました。

異なる文化圏においても、詐欺師たちは現地の文化や慣習に合わせて手法を変えることで詐欺を行っており、世界中に同様の手口で詐欺を行う犯罪グループが発生しています。それもあり、外務省の「海外安全ホームページ」で注意喚起がされています。

4-2 バリエーションは増えている!様々な詐欺手口

「ナイジェリアの手紙」は、これまで述べてきたように、電子メールだけでなく、電話、SNS、出会い系サイト、対面など多様なメディア・手法を利用するようになっています。

内容には様々なバリエーションと変形型があるとされています。

遺産相続/相続代行/闇資金/支援金

ある意味、基本ともいえる手口です。実は、被害者が相続人になったと告げ手数料や税金を請求したり、正当な相続人が相続を受け取れないので、代わりに受け取ってほしいと持ちかけ手数料を支払わせたり、莫大に存在する闇資金の現金化を手伝ってほしいとするものです。最近では、支援金の受取手続きを装うものもあります。

手数料等の一時金の「立て替え」

著名な王族、政治家等が海外(被害者の現住所、日本など)で逮捕されたが、極秘に解決したいので弁護士費用等を立て替えてほしいとする手法。他にも、換金等の手数料の立て替えなどを願うものもあります。後日、お礼金を払うと約束しますが、支払われることはありません。

海外宝くじ当選

海外の宝くじに当選していると通知し、賞金を受け取るための手数料や、代行料、税金を支払うように要求してくる手法。購入した覚えのない宝くじに当選したと信じ込ませるまでのシナリオが豊富です。

ロマンス詐欺/国際ロマンス詐欺/デート・援助交際

ロマンス詐欺は、SNSや出会い系サイトを利用することが多いとされており、近年、日本では大問題となっています。詐欺師は、被害者とオンラインで親密な関係を作って、信頼を得た後で緊急事態を偽って多くの場合、「借金」の形で金銭を奪います。海外旅行中のトラブル、治療費が必要といったシナリオが使われます。

国際ロマンス詐欺では、これに「国を超えて逢いに行くための費用を出してほしい」という金銭要求がされることがあります。

事業投資型/ネットサービス設立

事業投資詐欺は、被害者に対し「投資案件に参加しませんか」と持ちかけ、参加費用や手数料、投資金として金銭を奪うものです。詐欺師は、成功したビジネスやプロジェクトの偽の証拠を提示します。上に記した闇資金の現金化を投資の形で持ちかけてくるケースもあります。最近では、上述したように、著名人が参加していたり、主催していたりすると偽り、信用を得ようとするケースが増えています。

秘密暴露/乗っ取り

被害者の何らかの「秘密」を知っていると加害者は"匂わせ"て、口止め料を支払わせようとするもの。また、被害者のコンピュータ、スマホがワームに感染しており、お金を払わないと乗っ取るという脅迫をするものも現れています。

犯罪加担(密輸等)

多額の現金や密輸品を移動させるための手数料や手間賃、工賃、運賃を一時的に支払ってくれたら、その見返りとして多額の報酬を支払うという手法。共犯意識を利用しており、発覚まで時間がかかるといわれています。犯罪に加担するのは何のメリットもありません。

4-3 手口の「共通項」

ここまで見てきた「手口」のバリエーションが増えても、共通する流れとポイントがあります。すでにお気づきと思いますが、流れは大きくは2つかと思います。

利益型の流れ

(1)被害者に対して何らかの大きな「利益」が得られる話を持ちかける

(2)その「利益」を得るためには、先に何らかの「支払い」が必要だと納得させる

危機型の流れ

(1)家族か友人、または本人に何らかの「危機」が発生していると伝える

(2)その「危機」を回避するためには、何らかの「支払い」が必要だと納得させる

被害者の「そんなにウマい話があるなら、自分でやればいいんじゃない?」や「お金でその危機が回避できるの?」という疑問をどう封じるかが詐欺師にとっての「ポイント」です。

4-4 「主戦場」はSNSに移行している?

最近では、「ナイジェリアの手紙」の主要な舞台はSNSに移りつつあります。SNSは電子メールよりも個人的で信頼性が高いと錯覚させやすいためです。その最たる例が、最近急増している「国際ロマンス詐欺」でしょう。SNSを利用した詐欺は、被害者に心理的なダメージが大きく、被害が深刻化しています。

また、詐欺師は、SNSを利用することで、上で述べた被害者の疑問を封じることを考えるより先に、疑問を感じない人を探しやすくなっている一面もあるようです。

今後は、SNSを利用した「ナイジェリアの手紙」型の詐欺が増えることが予想されます。

5.詐欺から身を守る4つの防御策

「ナイジェリアの手紙」から身を守るために、いくつかの方法があります。

5-1 不審なメールやメッセージは無視する・ツールを活用する

怪しいと思われるメールやメッセージは無視し、返信しないことが最善です。リンクや添付ファイルを開かないように注意しましょう。ポイントは、自分の「眼力」つまり判断力だけに頼らないことです。近くの家族に相談するだけでなく、迷惑メール(スパム)フィルタや迷惑情報フィルタなど、テクノロジーも活用しましょう。

とくに、お使いのアンチウィルスソフトやメールソフトがそういった機能を持っている場合はためらわずに「ON」を基本にしておくとよいでしょう。

電話については、とくに高齢者の場合は留守番電話での受電を基本に考えるようにするなどの運用面での対策もポイントになってきます。

5-2 個人情報・極秘情報は慎重に扱う

身元不明な相手に対して個人情報や極秘情報を提供しないことが重要になってきます。

「警察官が銀行口座やカード番号を電話で聞くことはない」といった常識を持ち、銀行口座やパスワードなどの機密情報を決して伝えない意識を持つことが大切です。

ビジネスの場面では、予め極秘情報のやり取り方法をしっかり決めておくことが重要です。

5-3 信用できる最新情報を得る

何か疑わしいことがあれば、公式の最新情報を確認し、信頼できる人に相談することがポイントです。警察庁の「特殊詐欺対策ページ」には「ナイジェリアの手紙」以外にも詐欺に関する様々な情報がまとめられていますので、参照しておくことをおすすめします。

5-4 「落ち着く」「考える」

詐欺師はしばしば急かして、被害者の判断を誤らせようとします。まず冷静な判断が必要です。

最近では何事も「即断即決」を美徳とする空気がありますが、そこが「スキ」になっていることもあります。

落ち着いて、ちょっと考えてみるだけで被害を防ぐことができる可能性が高まります。

まとめ

「ナイジェリアの手紙」は、長年にわたり、変化と巧妙さを増し、インターネットの普及とともに、世界中に広まっています。被害者が増え続けている悲しい現実があります。

詐欺師は常に新しい方法を見つけて犯罪を行うので、最新の情報を得ることが大切です。

そして被害に遭いそうになったら、まずは落ち着いて考え、適切な防御策を講じて被害を防いでいきましょう。

歴史に残るバグ・IT犯罪
x hatenabookmark

執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。