クラウドサービスの登場により、企業は初期投資や運用工数を気にすることなく、インターネットを経由して手軽にさまざまなサービスを利用できるようになりました。
クラウドサービスの存在自体は知っていても、何を基準にサービスを選択すればよいのか迷っている方も多いのではないでしょうか。
今回は3大クラウドサービスの比較一覧やクラウドサービスを利用するメリット・デメリット、選定するときのポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
- もくじ
1.クラウドサービスとは
クラウドは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、データやアプリケーションなどのコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのことをいいます。
クラウドサービスとは、インターネットを経由して、コンピュータリソースやサービスをオンデマンドで利用できるサービスの総称になります。
ユーザーは自分のコンピューターに依存せず、インターネット環境があれば遠隔のサーバーに保存されたデータやアプリケーションにアクセスできるようになります。
参考:総務省 平成30年版 情報通信白書のポイント「クラウドサービスの概要」
2.3大クラウドサービスの比較一覧
クラウドコンピューティングの分野で最も広く利用されている以下3大クラウドサービスを比較して紹介します。
- Amazon Web Services (AWS)
- Microsoft Azure
- Google Cloud Platform (GCP)
Amazon Web Services (AWS) | Microsoft Azure | Google Cloud Platform (GCP) | |
---|---|---|---|
提供元 | Amazon | Microsoft | |
特徴 |
最も広範なサービスと機能を提供するクラウドプラットフォームで、コンピューティング、ストレージ、データベース、機械学習、分析、セキュリティなど、非常に多くのサービスが利用可能。 グローバルに展開しており、広範なリソースと高いスケーラビリティを提供している。 |
Microsoftのクラウドサービスプラットフォームで、特に企業向けのサービスに強みを持っている。 アプリケーションの開発、データベース管理、AI、IoT、データ分析など、豊富なサービスを提供し、Microsoft製品(例:Windows Server、SQL Server)との統合が得意。 |
Googleのクラウドサービスで、特にデータ分析や機械学習の分野で強力な機能を持っている。 BigQueryやTensorFlowなど、データ処理やAI関連のサービスが充実しており、Googleの技術力を活かした高性能なサービスが提供している。 |
これらのプロバイダーは規模・機能・信頼性・セキュリティの面で非常に高い評価を受けており、世界中の企業や組織に利用されています。それぞれに特有の強みがあるので、ここからは詳しく紹介していきます。
2-1 「ストレージ」での比較
クラウドストレージはデータの管理や運用を効率化し、ビジネスの柔軟性を高めるための強力なツールです。
3大クラウドサービスが提供しているストレージサービスの一部を比較してご紹介します。
Amazon Web Services (AWS) | Microsoft Azure | Google Cloud Platform (GCP) | |
---|---|---|---|
種類 | Amazon S3 | Azure Blob Storage | Cloud Storage(GCS) |
特徴 | 高可用性、高耐久性、スケーラブルなオブジェクトストレージ。データのアーカイブ、バックアップ、コンテンツ配信などに使用される。 | スケーラブルなオブジェクトストレージ。データのバックアップ、アーカイブ、ビッグデータ分析などに使用される。 | 高可用性、高耐久性を持つオブジェクトストレージ。データのアーカイブ、バックアップ、データレイクなどに使用される。 |
ストレージクラス | 標準、低頻度アクセス(IA)、グローバルファイルシステム(Glacier)、One Zone-IA など、利用頻度に応じた異なるストレージクラスがある。 | プレミアム、ホット、クール、アーカイブ など、アクセス頻度に応じた異なるストレージクラスがある。 | スタンダード、ネアライン、コールドライン、アーカイブ など、アクセス頻度に応じた異なるストレージクラスがある。 |
ストレージサービスの料金比較はサービスの種類や使用量によって異なるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
参考:
AWS https://aws.amazon.com/jp/s3/pricing/
Azure https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/storage/blobs/
2-2 「運用管理」での比較
クラウドサービスにおいて運用管理は、効率的にサーバーを運用するために不可欠といえます。
3大クラウドサービスにはそれぞれ、ログ監視、自動復旧、権限管理などの機能が備わっており、これらの機能を活用することで運用負荷を軽減し、コスト削減にも繋がります。
Amazon Web Services (AWS) | Microsoft Azure | Google Cloud Platform (GCP) | |
---|---|---|---|
権限管理 | AWS Identity and Access Management (IAM) | Azure Active Directory (AD) | Cloud Identity and Access Management (IAM) |
サービス管理 |
|
|
|
ログ監視 | Amazon CloudWatch | Azure Monitor |
|
2-3 「サポート体制」での比較
クラウドサービスを利用する際に充実したサポート体制が必要不可欠です。ここからは、3大クラウドサービスが提供しているサポート体制を比較してご紹介します。
Amazon Web Services (AWS) | Microsoft Azure | Google Cloud Platform (GCP) | |
---|---|---|---|
プラン |
基本サポート: 無料で利用でき、AWSのドキュメント、フォーラム、オンラインリソースへのアクセスが可能。 開発者サポート: 月額料金が必要で、ビジネス時間内のサポート、メールでのサポート、技術的なアドバイス。 ビジネスサポート: より広範なサポートが提供され、24時間365日のサポート、電話やチャット、AWS Trusted Advisorによる推奨事項が含まれる。 エンタープライズサポート: 最も包括的なサポートで、専任のサポート担当者、24時間365日のサポート、テクニカルアカウントマネージャー(TAM)、サポートプランに応じたオンサイトサポートなど |
基本サポート: 無料で、Azureのドキュメント、フォーラム、オンラインリソースへのアクセスが可能。 デベロッパーサポート: 月額料金が必要で、ビジネス時間内のサポート、メールでのサポート。 ビジネスサポート: 24時間365日のサポート、電話サポート、問題解決のためのリソース、トラブルシューティングガイド。 プレミアサポート: 最も包括的なサポートで、24時間365日のサポート、テクニカルアカウントマネージャー(TAM)、専任のサポートエンジニア、オンサイトサポートを提供 |
基本サポート: 無料で、Google Cloudのドキュメント、フォーラム、オンラインリソースへのアクセスが可能。 スタンダードサポート: 月額料金が必要で、ビジネス時間内のサポート、メールでのサポート、リソースの管理に関するアドバイス。 デベロッパーサポート: 24時間365日のサポート、電話サポート、エンタープライズ向けの追加リソースを提供。 プレミアサポート: 最も包括的なサポートで、24時間365日のサポート、テクニカルアカウントマネージャー(TAM)、専任のサポートエンジニア、オンサイトサポートを提供 |
チャンネル |
メール、電話、チャット(ビジネスサポートおよびエンタープライズサポート):サポートポータルとコンソールを通じて、サポートケースの作成や管理が可能。 |
メール、電話、チャット(ビジネスサポートおよびプレミアサポート):Azureサポートポータルを通じてサポートケースを作成・管理。 |
メール、電話、チャット(デベロッパーサポートおよびプレミアサポート):Google Cloud Consoleを通じてサポートケースを作成・管理。 |
各社サポート体制と料金について、詳しい情報は公式サイトをご確認ください。
参考:
Azure https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/#product-pricing
2-4 3大クラウドサービスのシェア率
シンガポールに拠点を置く世界的に有名な市場調査会社のCanalysの推計によると、2023年1〜3月でのクラウドシェア率は、1位「AWS」、2位「Azure」、3位「GCP」という結果になっています。
この3つだけで、世界のクラウドサービスのおおよそ64%を占めているのが確認できます。
AWSは2023年第1四半期の主要クラウドサービスプロバイダーで、前年比16%増で総支出の32%を占め、初めて20%増を下回りました。
Microsoft Azureは、2023年第1四半期も引き続き第2位のクラウドサービスプロバイダーであり、前年同期比27%増の23%の市場シェアを獲得。
Google Cloud は直近の四半期で 30% 成長し、9% の市場シェアを占めました。
出典:Canalys
3.クラウドサービスを利用するメリット・デメリット
企業がクラウドサービスを利用することで生産性向上が期待できる一方で、課題も存在します。ここではクラウドサービスを利用するメリット・デメリットをそれぞれご紹介します。
3-1 4つのメリット
クラウドサービスを利用する主なメリットは次の4点です。
① システム構築の迅速さ・拡張の容易さ
クラウドサービスは、リソースのスケーリングが容易なので需要に応じて、簡単にリソースを増減できるため、ビジネスの成長や変動に柔軟に対応できます。また即座に利用開始できるため、新しいアプリケーションやサービスの導入が迅速で、ハードウェアの設置やソフトウェアのインストールが不要で、すぐに利用を開始できるのもメリットです。
② 初期費用・運用費用の削減
クラウドサービスは初期投資が少なく、必要な分だけリソースを利用するため、ハードウェアやソフトウェアの購入・保守コストが削減できます。一般的に従量課金制で使用した分だけ費用を支払えばよいので、無駄なコストが発生しにくいのがメリットです。
③ 可用性の向上
クラウドサービスプロバイダーは、最新のセキュリティ対策やコンプライアンス基準に対応しており、データの暗号化やアクセス制御など、強固なセキュリティが提供されることが多いです。最新のテクノロジーやソフトウェアが自動的にアップデートされるため、常に最新の機能やセキュリティパッチを利用できます。
④ 利便性の向上
クラウドサービスには、業務プロセスを効率化するためのツールや機能が豊富に用意されています。例えば、コラボレーションツールや分析ツールなどが簡単に利用できます。また複数のデータセンターに分散しているため、サービスの中断リスクが低く、ビジネスの継続性が保たれます。
3-2 3つのデメリット
クラウドサービスを利用する主なデメリットは次3点です。
① セキュリティの担保
クラウドサービスを利用することで、データがプロバイダーのサーバーに保存されます。
これにより、データ漏洩や不正アクセスのリスクが増す可能性があるため、特に機密情報を扱う場合にはセキュリティ対策が重要となります。
◆クラウド診断サービス
Qbookを運営するバルテスでは、AWS・Azure・Google Cloudの3大クラウドに加え、SalesforceやGoogle Workspace・Microsoft 365を対象に利用状況におけるセキュリティ上の問題がないかを確認するサービスとして「クラウド診断」を提供しています。
IaaS/PaaSからサーバレス(FaaS)、コンテナ(CaaS)まで利用形態に合わせたプランをご用意していますのでぜひご活用ください。
② 改修コスト・通信コストの増加
クラウドサービスは使用量に応じて課金されるため、利用状況によっては予想外のコストが発生することがあります。
メリットでは「初期投資が少ない」と説明しましたが、リソースの利用状況を適切に管理しないとコストが増加する可能性があるため注意が必要です。
また、クラウドサービスはインターネットを介してアクセスするため、ネットワークの遅延や接続の品質に依存します。これによりアプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性もあるため、対策として通信コストが増加する場合もあります。
③ カスタマイズ性の不足
クラウドプロバイダーが提供する機能や設定には制限があり、特定の業務プロセスや独自の要件に合わせた変更が難しく、ユーザーが自由にカスタマイズできないことがあります。
また、他のシステムやアプリケーションとの統合が難しい場合があるため、既存の独自システムやレガシーシステムと統合する際に調整が必要になるので注意しましょう。
4.クラウドサービスを選定するときのポイント
ここからはクラウドサービスを選定するときのポイントをご紹介します。ポイントを総合的に考慮して、自社のニーズに最適なクラウドサービスを選定しましょう。
4-1 ビジネスニーズを明確化する
まずは自社のビジネスニーズや要件を明確にし、それに合ったクラウドサービスを選ぶことが重要です。たとえば、データストレージが多い・計算能力が必要・特定の業務プロセスに対応した機能が必要など、具体的なニーズを整理します。その上で自社のニーズに最適なモデルを選びましょう。たとえば、開発プラットフォームが必要ならPaaS、特定の業務アプリケーションが必要ならSaaSを選ぶことが考えられます。
4-2 セキュリティとコンプライアンス対応状況を確認する
クラウドサービスのデータの保護やセキュリティ対策、コンプライアンス要件への対応状況を確認します。
データの暗号化、アクセス制御、バックアップの取り扱いなど、セキュリティ機能が十分であるかをチェックしましょう。
4-3 コストと料金体系を把握する
サービスを利用する前にコストの明確な把握が必要です。料金体系(従量課金、定額料金など)を理解した上で、自社のビジネスニーズや予算に合ったプランを選びましょう。
また、予想外のコストが発生しないように、料金の透明性も確認することが重要です。
4-4 サポートとカスタマーサービス体制を確認する
問題発生時に迅速に対応してもらえるか、サポート体制や対応の速さを確認しましょう。
電話やメール、チャットなどのサポートチャネルが充実しているかどうかも重要です。
他のユーザーや企業のレビューをチェックして、サービスの使いやすさだけでなく、サポート体制なども実際のユーザーの体験や意見が参考になります。
まとめ
クラウドサービスの特徴と利用するメリット・デメリットについて解説しました。クラウドならインターネットを経由し、初期投資のコストを抑えて生産性向上が期待できます。
クラウドサービスの導入を検討している方は、今回、ご紹介したような選定するポイントを理解し、自社のビジネスニーズに合ったサービスを利用しましょう。
なお、クラウドサービスに限らず、IT関連のノウハウに関する理解を深めたい場合は、当サイト「Qbook」をご活用ください。
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