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「Rubyistって何?」プログラマーの「愛称」で知るプログラミング言語文化の雰囲気
プログラミング 更新日 2025.02.05
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「Rubyistって何?」プログラマーの「愛称」で知るプログラミング言語文化の雰囲気

執筆: 大木 晴一郎

ライター

プログラミング言語の世界には、それぞれの言語に独自の文化が根付き、コミュニティが形成されています。

そして、プログラマーたちは愛用するプログラミング言語特有の「愛称」で呼びあうことがあります。

それぞれに付けられた愛称には、言語の文化や歴史が表れていることがあり、その言語自体の特徴やコミュニティの雰囲気を反映しているといわれています。

そこで本記事では、主要なプログラミング言語を利用する人々の愛称を紹介し、その由来や意味、使われ方をまとめてみました。

もくじ
  1. プログラマーの「愛称」とは?
    1. 言語ごとに異なるプログラマーの呼び名
    2. 「愛称」が生まれる背景は?
    3. 「愛称」を用いるメリット
  2. 人気プログラミング言語別プログラマーの呼び名
    1. 「Pythonista」たちは「Python」を操る人たちのこと
    2. 「Javarista」たちは「Java」を操る人たちのこと
    3. 「Rubyist」は「Ruby」を操る人のこと
    4. 「JavaScripter」「JSer」は「JavaScript」を操る人のこと
    5. 「Gopher」は「Go」を操る人のこと
    6. 上記以外の言語では?
  3. プログラマーの「愛称」は面白い
    1. 愛称が育てる?コミュニティ意識
    2. ちょっと面白いエピソードや歴史がわかる
    3. 新たな愛称を考える楽しさも?
  4. まとめ

1.プログラマーの「愛称」とは?

1-1 言語ごとに異なるプログラマーの呼び名

プログラミングの世界では、使う言語によってプログラマーの呼び名が変わります。

例えば、Rubyを使う人は「Rubyist(ルビイスト)」、Pythonを使う人は「Pythonista(パイソニスタ)」、Goを使う人は「Gopher(ゴーファー)」と呼ばれています。

「Rubyistである私は...」と自己紹介のように使ったり、SNSなどで「Pythonistaの方に質問です」といった呼びかけがされたりすることがあります。

このような使われ方を見ていると、単なる"呼び名"ではなく、その言語への愛着やコミュニティへの帰属意識を表現しているように感じられます。「愛称」といったほうが良いかもしれません。

多くの愛称は、言語名に接尾辞を付けて作られています。パターンはいくつかあり、芸術家(artist)を表すような「-ist」、〇〇する人を表す、例えばプログラマー(programmer)のような「-er」、バリスタ(Barista)のような専門家を表す「-ista」など、言葉に関わりなく、様々な接尾辞が使われています。

それぞれ、該当するプログラミング言語の専門家や熟練者であることを示唆する意味もあります。

言語別のプログラマーの呼び方は2章で詳しくご紹介します。

1-2 「愛称」が生まれる背景は?

プログラマーの呼び方、つまり愛称は、多くの場合、言語の開発者や初期のコミュニティメンバーによって提案され、徐々にコミュニティ全体に広がっていくことが多いようです。コミュニティの中から生まれていることになります。

例えば、Rubyの「Rubyist」は、言語の創始者であるまつもとゆきひろ氏が提唱したものです。この愛称には、Rubyの大切な哲学の一つである「プログラマーの幸せ」を体現してほしいという願いが込められているともいわれています。

各言語のコミュニティは、それぞれ独自の文化や価値観を持っています。イメージではありますが、Pythonなら「シンプルで読みやすいコードを書こう」、Goなら「効率的で実用的なプログラムを作ろう」といった具合です。

愛称はそうした文化や価値観を反映し、コミュニティのアイデンティティを形作る重要な要素になっているといわれています。それぞれを見ていく前に、こういった背景を頭の隅においておくと、より意味が伝わってくるのではないでしょうか。

1-3 「愛称」を用いるメリット

プログラマーの愛称は、コミュニティ内外の様々な場面で使われています。

愛称を用いるメリットは、友好的なコミュニケーションを取るきっかけになることです。

例えば、技術カンファレンスや勉強会での自己紹介で「私はRubyistです」と名乗ることで、同じ言語を使う仲間との共通点を見出し、会話のきっかけを作ることができますし、他の言語の使用者とも立場の違いを明確にしてコミュニケーションを取りやすくしてくれます。

オンラインフォーラムでも、愛称を使うことで親近感が生まれ、活発な情報交換や協力関係が育まれているようです。

企業の採用活動でも、愛称が活用されることがあります。「Gopher募集中!」といった求人は、Go言語に精通した人材を集められるだけでなく、その企業がGo言語のコミュニティを理解し、大切にしていることを示すメッセージにもなります。

また、愛称を使うことは、プログラマー自身のアイデンティティ確立にも役立ちます。自分が主に使う言語の愛称を名乗ることで、その言語に対する深い愛着や理解、専門性をアピールできるのです。

2.人気プログラミング言語別プログラマーの呼び名

2-1 「Pythonista」たちは「Python」を操る人たちのこと

Pythonプログラマーには、「Pythonista(パイソニスタ)」「Pythoner(パイソナー)」「Pythonian(パイソニアン)」「Pythonist(パイソニスト)という3つの愛称が存在します。世界中に広まるPythonコミュニティの多様性と包括性を表しているように感じられます。

最も広く使われているとされる「Pythonista」は、とくに北米のコミュニティで人気があるようです。Pythonの専門家や熱心な支持者を表現するのによく使われています。

一方、「Pythoner」は英語の一般的な接尾辞「-er」を使った素直な呼び方で、より実務的でストレートな印象を与えます。「Pythonian」や「Pythonist」といった呼び方もありますが、どのくらい使われているのかはわかりません。

この呼び名の多さは、Pythonの「The Zen of Python(Pythonの禅)」という設計思想や「TMTOWTDI : There's more than one way to do it(やり方は一つじゃない)」といった哲学を反映しているのかもしれません。コミュニティや好みによって使い分けられるところに、Pythonコミュニティの懐の深さが表現されている気がします。

2-2 「Javarista」たちは「Java」を操る人たちのこと

Javaプログラマーを表す愛称「Javarista」は、コーヒーをいれる専門家「バリスタ(Barista)」との掛け合わせで生まれました。

これは、Java言語の名前がインドネシアのジャワ島のコーヒーに由来していることから来ています。ちなみに、もともとはイタリアのBarでエスプレッソをいれる職人のことで、日本ではかなり広義に使われている名称がバリスタです。

「Javanese」は、本来、「ジャワ島人」「ジャワ語の」とジャワ島の人々や言語を指す言葉ですが、Javaプログラマーを指す愛称としても使われています。

"Javaを母国語のように使いこなせる人"というニュアンスが込められているようです。「Java Engineer」といった形式的な呼び方が使われているケースがあるのは、Javaが企業で使われていることが多いからかもしれません。

2-3 「Rubyist」は「Ruby」を操る人のこと

Rubyのプログラマーを表す「Rubyist(ルビイスト)」という名称は、Rubyを作った、まつもとゆきひろ氏が提唱したものです。

RubyのWEBマガジン『Rubyist Magazine』の記事「Rubyist Hotlinks 第1回」でまつもと氏自身が「Rubyist って名前を作ったのは僕なので (笑)」と発言されています。

上述したように、この愛称には、「プログラマーの幸せ」というRubyへの思いが込められているように感じられます。Rubyistたちがプログラミングを楽しむ文化、雰囲気は、Rubyカンファレンス「RubyKaigi」や、『Rubyist Magazine』などを通じて、世界中に広がっています。

2-4 「JavaScripter」「JSer」は「JavaScript」を操る人のこと

JavaScriptプログラマーには「JavaScripter(ジャバスクリプター)」と「JSer(ジェイサー)」といった愛称があります。「JavaScripter」は、WEB開発の専門家というニュアンスがあるといわれています。

「JSer」は、より簡潔で親しみやすい呼び名として、とくに日本のコミュニティで広く使われているようです。「JSer」はオンラインフォーラムやSNSでの使用頻度が高く、JavaScriptコミュニティの活発な交流を支える重要な要素となっています。短くて判読しやすいのも人気の理由かもしれません。

2-5 「Gopher」は「Go」を操る人のこと

Goのプログラマーを表す「Gopher(ゴーファー)」という愛称は、他の言語とは一味違う特徴的な由来があります。

この名は、Goの公式マスコットキャラクターであるホリネズミ(Gopher)が元になっています。

Goの公式サイトのキャラクター紹介ページを見ると、キャラクターの名は「The Go Gopher」というようです。

gopher.png

出典:The Go Gopher - The Go Programming Language

ホリネズミが地中を掘り進むように、新しい技術を探求し続けるプログラマーの姿勢が表現されています。

2-6 上記以外の言語では?

他の言語でも、それぞれ特徴的な愛称が存在します。順不同で紹介してみたいと思います。

「C++」と「C#」

「C++」と「C#」のプログラマーは、言語名に「-er」を付けた「C++er(シープラプラー)」「C#er(シーシャーパー)」と呼ばれることが多いようです。直接的でわかりやすい呼び方だと思います。

「Swift」

Appleが開発した「Swift」プログラマーは「Swifter(スウィフター)」と呼ばれます。言語名の単語の意味「Swift(速い)」と相まって、かっこよさが表現されています。

「PHP」

「PHP」の開発者は「PHPer(ペチパー)」と音的に面白い名称で呼ばれています。この親しみやすい響きは、PHPが持つ敷居の低さを表しているのかもしれません。

「Rust」

「Rust」のプログラマーを表す「Rustacean(ラステイシャン)」の由来は「Gopher」に似ています。Rustのキャラクター「Ferris」はサイトを見れば一目瞭然、カニです。

Rustaceanは、Rustと甲殻類(crustacean)を掛け合わせた造語で、Rustコミュニティが親しみやすさやユーモアを大切にしている様子がうかがえます。

Ferris.png出典:Rustacean.net: Home of Ferris the Crabより引用

「Elixir」

「Elixir」のプログラマーを指す愛称「Alchemist(アルケミスト)」はちょっと変わった由来です。

Elixirが「錬金術でできた薬(不老不死の霊薬)」を意味することから、その開発者を「錬金術師(Alchemist)」に例えています。ちょっと洒落た呼び名です。実際にElixirには錬金術由来と思われる用語(mix)等が使われています。

他にも「Elixirist(エリクシスト)」と呼ばれることがあります。

「Kotlin」

「Kotlin」のプログラマーは「Kotlineer(コトリニア)」と呼ばれます。「Engineer」と「Kotlin」を組み合わせた造語です。

「Dartisan(ダーティサン)」は、Dart言語のプログラマーを表し、「Dart」と「artisan(職人)」を組み合わせています。

3.プログラマーの「愛称」は面白い

3-1 愛称が育てる?コミュニティ意識

プログラマーの愛称は、技術的な専門性を示すだけでなく、コミュニティの結束力を高める重要な役割を果たしています。同じ愛称を持つ者同士が出会うことで、自然と会話が生まれ、情報交換や協力関係が促進されます。

とくに、初めてプログラミングを学ぶ人にとって、愛称の存在は大きな意味を持ちます。

例えば、「Pythonista」という呼称を知り、自称することでコミュニティに参加していることが実感できることがあるようです。何よりも楽しいですし、継続的な成長につながる重要な要素となると思います。

3-2 ちょっと面白いエピソードや歴史がわかる

ここまで見てきたように、プログラマーの愛称は言語やコミュニティの歴史や考え方を表していることがあります。また、GoのGopherのように、マスコットキャラクターから、愛称として定着して一般化し、広がりを見せるケースもあります。

また、JavaのJavaristaやJavaneseのように、言語が命名された由来であるコーヒーや地理との関連性を巧みに取り入れた遊び心が表現されています。

硬くなりがちなプログラミングの世界に、遊び心とユーモアをもたらしているといるでしょう。愛称の由来からは、いろいろなことがわかります。

3-3 新たな愛称を考える楽しさも?

新しい言語やフレームワークが登場するたびに、コミュニティ内では新しい愛称を作ろうとする動きがあります。この過程は、単なる名付けにとどまらず、その技術への理解や愛着を深める機会にもなっています。

今後は、人工知能関連など、様々な技術の進化や新技術、新言語の誕生とともに新たな愛称やキャラクターが生まれ、広まっていくでしょう。

その過程が、プログラマーたちの創造性を刺激し、コミュニティの活性化につながっているといるのかもしれません。

まとめ

プログラミング言語の愛称は、その言語の文化や哲学を映し出す鏡であり、コミュニティの結束力を高める重要な要素です。

一見シンプルな呼び名の背景には、それぞれの言語やコミュニティが大切にする価値観が詰まっています。

これらの愛称を知ることは、プログラミングの技術だけでなく、その奥深い文化的側面を理解する入り口となりそうです。

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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。