コンピュータエンジニアリングに関わる資格には、「情報処理安全確保支援士」や「マイクロソフト認定プロフェッショナル(MCP)」といった情報技術者の資格やネットワーク構築のための資格など、さまざまなものが知られていますが、その中の1つに「JSTQB 認定テスト技術者資格」があります。
この資格はソフトウェアテストに関する資格ですが、具体的にどのような知識や能力が試され、取得することでどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、エンジニアのスキルアップに役立つ「JSTQB 認定テスト技術者資格」についてご紹介します。
- もくじ
1.JSTQB 認定テスト技術者資格とは
「 JSTQB 」 とは 「 Japan Software Testing Qualifications Board」の略称であり、日本におけるソフトウェアテスト技術者資格の運営組織です。JSTQB 認定テスト技術者資格は、JSTQB が運営している認定資格のことを指します。
JSTQB は「ISTQB」(各国のテスト技術者認定組織が加盟している国際組織)の加盟組織として認定されているため、JSTQB の認定資格は世界的に通用する国際資格なのです。
現代社会で生きる私たちは、自動車の車載ソフトウェアやPC・スマートフォンなどのアプリや機能など、老若男女問わずソフトウェアに囲まれています。その他にも、社会インフラ・企業システムなど、私たちの身の回りには多くのソフトウェアが存在します。ソフトウェアが生活に欠かせないものとなっている今、私たちの健康や財産の安全はソフトウェアに委ねられているともいえるのです。
ソフトウェアが私たちの生活に浸透し身近なものになった結果、ソフトウェアの不具合も発生しやすくなり、その不具合を発見するためのソフトウェアテストの需要も拡大していきました。信頼できるソフトウェアテストを漏れなく効率よく実施するためには、技術力や知識、経験などが必要です。エンジニアにテスト技術がなければ安全で高品質なソフトウェアの完成は難しく、ソフトウェア開発自体が頓挫してしまう可能性もあります。
このような状況の中、業界全体でソフトウェアの信頼性を守る「テスト技術の向上」のために、テストを行うエンジニアの技術力を計る、JSTQB 認定テスト技術者資格が設立されたのです。
2.JSTQB 資格試験の難易度
Foundation Level|平均合格率は約60%
JSTQB 認定資格にはレベル「Foundation Level」と「Advanced Level」があります。
Foundation Level は、ソフトウェアテストに関する基礎的な知識を問う問題構成になっており、特定の分野だけではなくソフトウェアテスト全般に対する理解力が求められる試験です。最新の5回を平均すると合格率はおよそ60%です。
Advanced Level|平均合格率は約20%
Advanced Level は、2018 年 4 月時点での JSTQB 公式サイトの Advanced Level の資格種別は、テストマネージャ、テクニカルテストアナリスト、テストアナリストの3種類があり、そのうち、テストマネージャとテストアナリストの2種類の資格認定試験が実施されています。
テストマネージャはテスト全体のマネジメントや計画、提案などテストを取り仕切るマネージャーとしての能力が試され、テクニカルテストアナリストは、システムの性能、セキュリティなど信頼性や保守性に関連するリスクを認識し分類する能力が試されます。
テストアナリストはテストケースの選択や実施などアナライズの能力が試される試験です。合格率は多少の上下はありますが、直近5年間の平均で見るとおよそ20%です。
ただし、Advanced を受験するには Foundation に受かっていることと、現場での業務経験を 3 年以上持っている必要があります。
3.JSTQB 資格を所有する3つのメリット
エンジニアとしてのスキルアップにつながる
JSTQB 資格を所有することで、テストエンジニア、QA エンジニアのスキルアップにつながります。
また、もともと勉強を積み重ねて知識を取り入れていた方も、ソフトウェアテストに関する基本的な知識を体系的に理解できます。
ソフトウェアに関する共通理解が持てるようになる
知識やスキルが広がることでメンバー間に自身で説明し、テストに関するメンバーの認識やズレ、齟齬をなくし共通の理解をもてるようになります。
例えば、ソフトウェアテストで用いられる用語や概念には、似たような意味の言葉が複数存在します。(エラー・欠陥・バグ・不具合・故障など)
同じ言葉でも人によって認識が異なっていて微妙な理解のずれが生じてしまうケースもあるので、ソフトウェアテストの一般的な基礎知識を学ぶことで、こういった認識のズレを減らすことができます。
ソフトウェアテストの客観的なスキルの証明になる
第三者機関による資格発行は、客観的に見てもスキルを証明できるものになります。
特に、「Advanced Level」は合格率も20%程度と低くハイレベルな資格です。
こういった資格を所有していることで、プロジェクトに選出されたり転職に役立ったりと、さらなる活躍の場が期待できます。
4.JSTQB 資格の受験方法と費用
JSTQB 資格試験を受験する際は、JSTQB のホームページから Web 申し込みを利用して行いましょう。
試験料は「Foundation Level」も「Advanced Level」も22,000円(税込)です。
試験開催地は、東京や大阪、札幌など各都市の任意の会場で開催されます。
出題範囲は ISTQB テスト技術者資格制度のシラバスから出題され、テスト形式は設問に対して複数の選択肢の中から正しい解答を選ぶ選択問題です。
資格の申し込み方法や試験費用等は、JSTQB の公式ホームページで確認をするようにしましょう。
5.JSTQB 資格試験の勉強法
参考書を買って勉強する
市販されているJSTQB資格試験用の教材を使用する方法です。教材を読み込んで独学で勉強したい方におすすめします。
ただし、現状日本ではFoundation Level の参考書はありますが、Advanced Level の参考書は市販されておりません。
JSTQB公式シラバスを読む
公式サイトにアップされているシラバスを教材として使用する方法です。公式サイトには、シラバス、用語集、サンプル問題の記載があります。
必要な知識はそれらにまとめられていますが、シラバスはあくまで必要な学習事項を表したものです。
具体的に内容をイメージしたり、問題を解くためには業務知識を参考書等で補ったりする必要があります。
Web サイトやアプリを活用する
JSTQBの資格試験準備には、Webサイト・アプリを活用する方法もあります。
知識を定着させるには、読み物でのインプットだけではなく実際に演習問題でアウトプット することが重要です。
当社が作成するオンライン講義「eラーニング」や 、JSTQB のシラバスも収録しているアプリ「テス友」など、既存のWebサイト・アプリを活用して効率的に勉強しましょう。
おわりに
現代人の暮らしを支えているソフトウェア。インフラの1つともなっているソフトウェアの信頼性を保証するには、ソフトウェアテストが欠かせません。JSTQB 認定テスト技術者資格試験の勉強をすれば知識も体系的に整理され、Advanced レベルを所有していればトップエンジニアの証明にもなります。
高いスキルを持つエンジニアがいれば、企業自体が業界の中で信頼されやすくなり、スムー ズなやり取りを行うことができるようになるでしょう。
関連サイト
JSTQB 認定テスト技術資格 公式サイト
JSTQB 認定テスト技術資格についての費用や受験方法、シラバスなど記載されています。
http://jstqb.jp/index.html
テス友 アプリ
JSTQB 主催のソフトウェアテスト技術者資格認定試験(Foundation Level)対策用の勉強アプリ。シラバス及び用語集などもアプリ内に掲載、通勤通学などの隙間時間を利用して勉強できます。合格後もシラバスや用語集掲載のため、いつでもテス友で調べることが可能です。
https://itunes.apple.com/jp/app/jstqb-shi-yan-fl-wan-quan/id867403516?mt=8(iOS 版)
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.vmt.jstqbflapp(Android 版)
