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書評「ソフトウェア品質保証入門―高品質を実現する考え方とマネジメントの要点」

保田 勝通 /奈良 隆正 (著) 日科技連

テスト

多くのプロアスリートが、スランプに陥ったとき、見直すのが「型(フォーム)」です。
どんなスポーツにも、また学問、芸事にも、「基本の型」は存在します。それは、ソフトウェアテストやソフトウェア品質保証も同様です。迷ったときに還るべき「基本」であり、「原点」を持つことは、人が成長する上で欠かせません。テストとは。品質保証とは。悩んだとき、迷ったとき、進むべき方向性を考え直したいとき。本書は多くのエンジニアにとって、道を指し示してくれる本となるでしょう。

概要

ソフトウェア品質保証の考え方と実務における要点を一冊にまとめた本。品質保証の考え方を概観することができます。類書に比べて、記述量はコンパクトにまとめられていながら、経験に裏打ちされたエッセンスが詰まっており、開発現場で長年活用され、生き残ってきた技術が、わかりやすく解説されています。
初学者から、ベテランまで、プロジェクト管理者、開発設計者、テスト担当者など、開発に携わるすべての人が折に触れて参照できる内容となっています。

本書の使い方

ソフトウェア品質保証の大枠の考え方と技術を知りたい場合は
第1章 ソフトウェア品質保証の考え方
第2章 ソフトウェア開発と品質保証の方法
をまず読むとよい。

第3章 フィールド保証
第4章 品質検証・評価の主要技術
は、独立して興味のある部分から読み進めることができるが、
第1章、第2章を一度通読してから、実務の折に触れて、読むと様々なヒントが得られるだろう。

第5章 人材育成
第6章 いま求められている品質保証
比較的、短いページにまとめられているが、問題意識のある人には多くの示唆が得られる。

付録
多くの現場で活用されてきた品質指標(メトリクス)、不具合分類が、使い勝手が良く一覧で掲載されており、実務者のリファレンスとして活用できる。

何を学べるか

第1章 ソフトウェア品質保証の考え方
1.1 品質とは
「品質とは何か」から始まり、ソフトウェアの品質特性を説明する。また設計品質とプログラム品質の二つの品質のとらえ方を説明する。

1.2 ソフトウェアの品質保証の問題点
ソフトウェア品質保証の難しさがどこにあるのか、ソフトウェアの特質として「論理の大規模集合体」と「目に見えないもの」という特質に着目して分析する。

1.3 品質保証の考え方
「品質保証」の定義をから始まり、欧米、そして日本における品質保証の考え方を紹介したうえで、日本における「品質管理」の考え方を解説する。

1.4 ソフトウェア検査のあり方
検査の定義、組織、工程を解説し、あるべきソフトウェア検査を概観する。

1.5 ソフトウェア品質保証の組織と体系-ソフトウェア品質保証システム
品質保証の仕組みであるソフトウェア品質保証システムをどのように体系化、組織化すべきかを説明する。

第2章 ソフトウェア開発と品質保証の方法
2.1 開発基盤の整備
品質保証の前提条件として、整備しておくべき開発基盤について概観する。

2.2 開発計画レビューと検査計画
開発プロジェクトにおける失敗要因を列挙・分析し、それら失敗を避けるための開発計画書と検査計画書の要点を解説する。

2.3 高品質設計の要点
設計工程で高品質を作りこむためのチェックポイントを解説する。品質設計、信頼性設計、性能設計を説明する。

2.4 デザインレビューとドキュメント検査
デザインレビューの重要性は周知でありながら、なぜうまくいかないのか。問題点の分析から始まり、成功のためのポイントを解説する。

2.5 テストと品質管理
テスト工程における、不良予測と不良摘出目標値管理について解説する。あわせて不良摘出状況管理図を用いた品質評価・分析の方法も解説する。

2.6 製品検査の準備
製品検査において重要なのは検査項目の設定である。その視点、技法、ノウハウを述べる。

2.7 製品検査
実際の製品検査における検査内容を紹介し、製品検査の開始条件、不良が発生した際の対応、合否判定条件、などを解説する。

2.8 システム検査
コンピュータシステムを最終的に品質保証するためのシステム検査について紹介する。

第3章 フィールド保証
3.1 フィールド保証活動
製品引き渡し後の品質保証活動である、アフターサービスについて解説する。とりわけクレーム処理を中心に説明する。

3.2 稼働品質管理と尺度
製品引き渡し後の稼働実施データを管理、分析し、問題点をフィードバックする、稼働品質管理について解説する。様々な品質尺度も紹介する。

3.3 再発防止策
障害発生に対する再発防止策について、個々の障害に対応するミクロ的なアプローチと、開発プロセスを改善するマクロ的なアプローチを解説する。

第4章 品質検証・評価の主要技術
4.1 レビュー技術
代表的なレビュー方式を紹介し、あわせてレビューを成功させるための要点を解説する。

4.2 テスト技術
テストの方法論として、内部仕様テストと外部仕様テストの二つのアプローチを解説し、テスト戦略やテスト技術、テスト項目設計技法などを紹介・解説する。

4.3 品質評価技術
品質を管理するためには計測しなければならない。代表的な品質評価プロセスモデルを紹介・解説する。

4.4 品質評価メトリクス
適用実績のある、信頼性を主体とするいくつかのメトリクスを整理して紹介する。

4.5 各種品質管理技法の活用
日本における代表的な品質管理技術である「QC7つ道具」「新QC7つ道具」「実験計画法」「FMEA」「FTA」などを紹介・解説する。

第5章 人材育成
5.1 教育の重要性
ソフトウェア開発は個人に依存する部分が大きく、教育が重要であることを述べる。

5.2 品質管理教育の方針
品質管理教育における3大方針である「躾ける」「教える」「啓蒙する」を紹介する。

5.3 躾(しつけ)教育
人財育成の主要な要素である「躾ける」について解説する。

5.4 品質管理教育
人財育成の主要な要素である「教える」について解説する。

5.5 全員運動-品質向上活動
人財育成の主要な要素である「啓蒙する」について解説する。

5.6 グローバル化時代の教育のあり方について
今後、求められる教育の諸分野を紹介する。

第6章 いま求められている品質保証
6.1 流通ソフトウェア製品の品質保証
開発主体からパッケージ購入主体へと変化するグローバルな流れの中で、今後求められる品質保証像を考察する。

6.2 グローバルスタンダードへの対応
日本におけるソフトウェア産業の現状の課題を分析し、ソフトウェア品質管理の再生に向けての展望を考察する。

付録
付録1 品質指標一覧
付録2 不良分類