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書評「成功する要求仕様 失敗する要求仕様」

アラン・M・デービス (著),萩本 順三 (監修), 安井 昌男 (監修), 高嶋 優子 (翻訳), 日経BP

設計・開発

概要

完璧な仕様書の作成には莫大なコストがかかり、あいまいな仕様書では多大なリスクをはらむ。限られたスケジュールのなかで、ユーザのニーズに合った、過不足のない「ちょうど十分な」要求仕様を作成するには、どうすればよいのか。開発プロジェクトの現場において多くのSE、マネージャが悩むこの課題に正面から取り組む一冊。
要求を導き出し、トリアージ(優先順位)を付け、仕様として文書にまとめ、変更要求を管理する。こうした一連の要求マネジメントをわかりやすく解説する。要求仕様作成に携わる技術者、管理者に薦める。

本書の使い方

第1章、第5章:要求とそのマネジメントの考え方の概要を学ぶことが出来る。すべての読者に一読を薦める。
第2章~第4章:要求マネジメント、変更要求マネジメントの具体的なノウハウを学ぶことが出来る。要求仕様作成を担当する読者は一読の上、必要に応じて該当箇所を再読することを薦める。
付録:各章を読了し、理解したうえで、要求マネジメントタスクのクイックリファレンスとして利用できる。

何を学べるか

第1章 はじめに
本書の問題意識を述べる。要求とは何か、それ取得するためにどれくらいの時間をかけるべきなのか、を考察した上で、システムを構築するために必要な、過不足のない「ちょうど十分」な要求を得るためには、「要求マネジメント」が必要である、と著者は述べる。要求マネジメントは「要求の導き出し」、「要求のトリアージ」、「要求の仕様化」から構成されることを説明し、その重要性を解説する。

第2章 要求の導き出し
要求マネジメントの最初の活動である「要求の導き出し」の考え方と、その重要性、開発プロセス全体における役割と影響の大きさを説明する。その上で、実際にステークホルダーとコミュニケーションを行い、要求を導き出すための効果的なテクニックを紹介する。

第3章 要求のトリアージ
「要求の導き出し」で残らず引き出した要求に対して、優先順位を付ける作業である「要求のトリアージ」について解説する。要求にトリアージを付けなければ、ほぼ確実に製品の提供は遅れる、と著者は説く。要求、コスト、スケジュールを満たすための「基本トリアージ」、およびその他の要因とのバランスを取るための「高度なトリアージ」のテクニックを解説する。

第4章 要求の仕様化
要求を「導き出し」、「トリアージ」を行ったならば、次はそれを「仕様化」するプロセスに移る。仕様化とは、要求のからあいまいさをなくし、開発者が誤読したり、別の想定をする可能性が低い状態にまで詳細に文書化する作業である。要求文書の役割、求められる品質、そして仕様化のための種々のテクニックを解説する。

第5章 要求は変化する
第2章~第4章の要求マネジメントを行って、要求仕様を作成しても、開発プロジェクトの途中で、要求は頻繁に変更される。それに適切に対応するためには要求変更のマネジメントが必要であると著者は説く。要求変更のしくみ、変更要求の追跡方法、変更要求に対する取りうる選択肢の選び方、変更に対応しやすいアーキテクチャの構築のコツ、などを解説する。

第6章 まとめ
「要求の導き出し」、「要求のトリアージ」、「要求の仕様化」の要点、並びに「要求変更マネジメント」の要点をまとめる。

付録
付録A『クイックレシピ』:要求マネジメントで必要とされるタスクを簡潔にまとめる。
付録B『要求文書の例』:本書内で事例として取り上げた交通制御システムの要求をサンプルとしてリストにまとめる。