概要
ソフトウェア開発における品質保証システムの考え方と、それを構成する要素技術や、活動、組織について解説するとともに、ソフトウェア品質保証業務の進め方、その勘どころや、ポイントを事例を交えてわかりやすく解説する本。一貫して開発を支える人々の人的側面に照準を合わせ、「人間力」を重視した品質保証システムの構築を目指している。
本書の使い方
第1~2章 ソフトウェア品質保証システムの歴史的な流れや各種国際標準の考え方を学ぶことができる
第3~5章 ソフトウェア品質保証を構成する、技術、活動、組織などの概念を整理して学ぶことができる
第6~9章 ソフトウェア品質業務を実践する上での、勘どころや注意点を学ぶことができる。
初学者は第1~2章、第3~5章を通読することを勧める。そのうえで、実務者は、関心に応じて第6~9章から実務におけるヒントを学ぶことができる。
何を学べるか
第1章 ソフトウェアの品質と品質保証システム
ソフトウェア品質を取り巻く問題点を紹介し、プロダクト品質とプロセス品質の二つがあることを説明する。また、第2次世界大戦後から始まるTQM、QCから、現在のCMMI、ISO9000シリーズまでの日本における品質保証の歴史を紹介する。そのうえで、ソフトウェアにおける品質保証とプロセス改善の重要性を解説する。
第2章 ソフトウェア品質保証のモデル
品質保証やプロセス改善の国際的な標準モデルの代表として、ISO9000シリーズ、CMM並びにCMMI、ソフトウェアライフサイクルプロセスISO/IEC12207、ソフトウェアプロセスアセスメントISO/IEC15504などを中心に、それぞれの歴史的経緯や概要を紹介する。
第3章 効果的なソフトウェア品質保証
自らの組織に適合したプロセスや品質保証の仕組みを確立するにはどのようにアプローチすればよいのか。その考え方の概要を解説する。
第4章 ソフトウェア品質保証を支える要素技術
品質保証活動を支えるいくつかの要素技術を紹介する。検証と妥当性確認、ソフトウェアレビュー、ソフトウェアテスト、定量的品質管理、ソフトウェアデータの統計的管理手法などについて、各要素技術の基本的な考え方を解説する。
第5章 ソフトウェア品質保証の体系と組織
ソフトウェア品質保証活動を成立させている体系と組織を説明する。品質保証の枠組みとして「組織的品質保証活動(トップダウン型)」「品質保証活動の日常化(ボトムアップ型)」「品質保証を支えるプロセスとその要素技術」「人間力(人間的側面)」の4つの活動要素を解説する。そのうえで、品質を良くするうえでの勘所や、効果的な改善活動のパターンを紹介する。一貫して人間力が重要であることを説く。
第6章 ソフトウェア品質保証の効果的な実践方法
品質保証活動における各実務の具体的な進め方を解説する。品質保証計画の策定の仕方、品質保証デザインの方法、組織的プロセス改善の継続のさせ方、品質保証活動を浸透させるための枠組み作りや活動のデザインとポイントなど、ドキュメントのテンプレートや事例を交えて具体的に説明する。本書の中心をなす章である。
第7章 協力会社と共に進める品質保証
多くのソフトウェア開発現場では協力会社の存在に頼らざるを得ない。したがって、「協力会社管理」の良し悪しが大きな鍵となる。本章では協力会社と連携して、品質保証システムを構築する際のポイントを、「契約」「指導」「実践」「検収」の4つのフェーズに分けて解説する。
第8章 ソフトウェア品質保証活動への影響要因とポイント
第6章で述べた実践方法を、さまざまな環境や制約条件において実際に活用する際のポイントを解説する。品質保証活動に影響を及ぼす要因を内部要因と外部要因に分けて説明する。そのうえで様々な要因の下では、どのような活動が比較的効果を上げやすいかを示す。
第9章 人間重視の品質保証活動
品質保証活動においては「人間力」が不可欠である。本章ではその「人間力」とはどのような力なのかをいくつかの角度から考察する。人間関係における影響力の分類、アサーション、EQ、マズローの動機づけ、品質保証活動の推進者像などを解説するなかで、「わくわく」した思いの湧く、人間重視の品質保証活動を模索する。