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書評「「派生開発」を成功させるプロセス改善の技術と極意」

清水 吉男 (著) , 技術評論社

マネジメント

概要

開発現場のほとんどは「派生開発」である。にもかかわらず派生開発においてトラブルが頻発するのは「派生開発」に合った開発プロセスが無いことが原因である、と著者は説く。著者自身が考案し、現場で培ってきた、派生開発に合ったプロセスである「XDDP」の考え方と実践のノウハウをまとめた本。
機能の変更や追加に対して、納期を遅らせることなく、高品質のソフトウェアを開発するための、実践的な方法論を学ぶことができる。

本書の使い方

第1章は派生開発の現状とその問題点を分析する。示唆に富み一読を勧めるが、XDDPを知りたいのであれば、第2章から読み始めてもかまわない。第2章はXDDPの概要を知ることができる。
第3章、第4章はXDDPの具体的な活用法が詳細に記載されている。精読の上、疑問点や関心に応じて、何度も再読することを勧める。(開発実務者)
第5章はXDDPを取り入れる効果を知ることができる。時間がない場合は第2章、第5章を読むことで、XDDPの概要と効果をつかむことができる。(プロセス改善を担当するマネージャ、品質保証担当者など)

何を学べるか

第1章 派生開発の現状
ソフトウェア開発の大半は派生開発である。派生開発の中で起こる代表的なトラブルを、現場の技術者が実際に陥りがちな実例を克明に紹介する。機能追加に伴った変更ミス、納期遅れ、変更モレなど、派生開発が同じような失敗を繰り返すのは、要求に見合ったプロセスが実行されいないことがその原因であることを浮き彫りにする。

第2章 派生開発プロセス「XDDP」の提案
派生開発の特徴である、「既存のソフトウェアに手を加える」、「短納期である」、「部分しか理解していない」という制約に対して、著者が考案した、派生開発に合ったプロセス、「XDDP(eXtreme Derivative Development Process)」を提案する。「XDDP」の考え方、および、どのようなプロセスと成果物で構成されているかを知ることができる。

第3章 XDDPによる変更のプロセス
XDDPの中心である「変更のプロセス」に焦点を当てて解説する。変更要求から変更仕様を抽出する方法やその際の注意点、ソースコードから変更仕様の該当箇所を見つける「スペックアウト」のテクニック、重要なツールである変更要求トレーサビリティ・マトリックスの作り方、変更設計書の使い方、ソースコードを変更する際に開発者の足並みをそろえる方法などを説明する。

第4章 追加のプロセスとXDDPを支えるものたち
派生開発のもう一つのプロセスである、「機能追加のプロセス」とそれに関連した「移植」について解説する。「追加機能要求仕様書」の作成方法を説明する。また派生開発における「品質要求」のあり方やXDDPの成果物を使ったレビューのあり方についても説明する。「一人プロジェクト」になりがちな派生開発に適した要件管理、見積もり方法も解説する。リファクタリングとのコラボレーション、分散開発や並行開発、インクリメンタル開発においてXDDPのプロセスを対応させる方法についても触れる。

第5章 XDDPの効果
派生開発の場面でXDDPを使うことの効果について、実際の事例に基づいて説明する。工数が大幅に短縮し納期が遅れない、仕様変更と変更ミスの大幅に減少する、レビューでバグの過半が発見される、デスマーチから脱出できる、一人プロジェクトでも失敗しないなど、バグが一気に減少し、変更仕様や変更設計書を書いてからソースコードを変更しても遅れない理由について説明する。

付録 変更設計書テンプレート
変更設計仕様書のテンプレートに、記入例と、各記入項目の説明を掲載する。