書評「ソフトウェア品質会計―NECの高品質ソフトウェア開発を支える品質保証技術 」

書評「ソフトウェア品質会計―NECの高品質ソフトウェア開発を支える品質保証技術 」

誉田 直美 (著) , 日科技連出版社

カテゴリ:マネジメント

概要

品質会計は、NECのソフトウェア開発現場で考案され、30年近い実績を持つ品質管理手法である。本書は長年NECの品質保証業務に携わり、この品質会計に考案当初から関わってきた著者が、自らの経験を踏まえて、そのノウハウをわかりやすく解説する。実際に開発現場で品質会計を使用する際の参考になるよう、具体例が多く記述されており、読者の便が図られている。

本書の使い方

第1章は品質と品質会計のまとめである。
急いで品質会計の内容を把握したければ第2章を読むことで概要をつかむことができる。
第3章は品質会計の適用方法を、具体的に解説している。
第4章は導入事例を提示しており、第3章の内容を具体的に展開する際のヒントとして活用できる。
第5章、第6章は、品質会計を組織的に導入する際の仕組みと改善のポイントを学ぶことができる。

何を学べるか

第1章 ソフトウェアの品質と品質会計
ソフトウェアの品質、および品質を確保するための具体的なポイントをまとめたうえで、品質会計が生まれた背景と発展の歴史、その効果を解説する。実際にNECにおいて、品質会計を導入した1985年からの1997年までの12年間で「出荷後バグ20分の1」、「上工程バグ摘出率80%」を実現したことが紹介される。

第2章 品質会計のフレームワーク
品質会計を構成する各技法を解説する。 品質会計の技術体系は、「バグ目標管理技法」と「バグ予測・見直し技法」により構成される。 まず「バグ目標管理技法」は、「上工程品質会計」と「テスト工程品質会計」の2つから構成される。とりわけ「上工程品質会計」は、バグを「作りこみ工程」と「摘出工程」の両面から目標管理する手法であり、品質向上に大きな効果がある。また「バグ予測・見直し技法」は、「回帰型バグ予測モデル」「品質判定表」「バグ傾向分析」「バグ分析と1+n施策」「バグ収束判定」の5種類の技法により構成されることが説明される。品質会計で使われる品質会計表などの帳票類も紹介される。

第3章 品質会計によるマネジメントの進め方
ソフトウェア開発の開始から保守に至るまでのライフサイクルに沿って、品質会計を適用する方法を、具体的に説明する。バグの目標値の設定から始まり、上工程品質会計、テスト工程品質会計、テスト工程終盤、出荷判定、プロジェクトの反省、保守に至るまでの、それぞれのプロセスにおけるマネジメントのポイントを解説する。とりわけ品質会計においては、バグ件数などのデータによるマネジメントだけでなく、現場に行って内容を確認することの重要さにも注意を促している。

第4章 品質会計のケーススタディ
あるソフトウェア開発事例を題材にして、その開発開始から機能設計工程、上工程の終了分析、テスト工程、出荷判定、プロジェクト反省を経て終了までの開発経緯を追いながら、品質会計の具体的な適用方法を解説する。品質会計が、実際に現場でどのように適用され、バグ目標と実績の差異を扱うのかが理解できるように構成されている。

第5章 品質会計の効果をあげる組織的な仕組み
品質会計の効果を挙げる組織的な仕組みを解説する。たいていの組織がつまずく、最初のデータ収集の段階をいかに乗り越えるか、から始まり、開発現場への品質会計の導入、品質保証の仕組みの構築、品質保証部門の設置、開発技術の標準化、組織的品質フォローアップの仕組みの構築まで、品質会計の効果を引き出すための組織活動のノウハウを紹介する。

第6章 品質会計の効果を引き出す方法
組織的な仕組みを整備した組織が、さらに品質会計の効果を最大限に引き出すために考慮すべき事項を説明する。具体的には「小集団活動」、「ソフトウェア工学の利用」、「品質中心の組織文化」、「まがいものの技術に惑わされない」「強い思いをもつ」などの考え方が紹介される。 これらの事項は品質会計のみならず、ソフトウェア品質を向上させるうえでも参考になる。