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テレワークのコツ!心理学と脳科学から紐解くデスクデザイン
働き方・労働環境 2024.01.18
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テレワークのコツ!心理学と脳科学から紐解くデスクデザイン

執筆: 小谷 ひかり

バルテス株式会社 コングロマリット品質サービス事業部 マネージャー

--家だからこそできること・家だから大切なことがある--

コロナが続く中、テレワークも続いています。
2021年6月以降でもなお、緊急事態宣言の発出が繰り返されており、弊社でも依然テレワークが推奨されています。

家を仕事場にするのは、職場と異なることが少なくありません。1年間テレワークを推進してきた弊社では、テレワークと職場勤務の相違点も徐々に見えてきました。たとえば、在宅勤務のデスク環境が職場ほど充実していない家庭が多いです。特に、収入的に設備投資にお金を割くことが難しい若手社員はこの傾向が強いです。一方、テレワークは人目を気にせずに個々人のやりやすいスタイルで仕事ができるという利点もあります。

今回はこれらのテレワークと職場勤務の相違に着目し、心理学と脳科学の視点からテレワークの改良ポイントを解説します。

脳科学から紐解くデスクデザイン

植物を置く

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テレワークのデスクのデザインでまずオススメするのは、仕事机に植物を置くことです。

観葉植物をデスク周りに置くと、仕事にプラスの効果があることが研究で分かっています。豊橋科学技術大学の研究によれば、観葉植物を職場に置くと、ストレスが減少し目の疲労が緩和されるだけでなく、作業効率が7.9%アップしました。

植物の管理(水やり等)が面倒なら疑似の観葉植物でもかまいません。豊橋科学技術大学の研究によれば、疑似の観葉植物を職場に置いた場合でも、作業効率が5.6%アップしました。

テレワークであれば自分のデスクに好きな植物を置くことができ、職場に比べて水やりもやりやすいです。

私の家ではデスクだけでなく、壁からも植物をつるして飾っています。
初めて植物を飼育されるのならポトスをオススメします。水やりが週一回でよく、日光に当てなくても枯れないため、管理が簡単だからです。また300-500円程度で購入できるため、価格的にも始めやすくなっています。

デスクを自分風にカスタマイズする

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テレワークのデスクのデザインで次にオススメするのは、デスクを自分風にカスタマイズすることです。

綺麗に整理されたデスクほど生産性が高いイメージがあるかもしれません。ですが、実はそうではないことが研究で判明しています。 エクスター大学のデスクに関する研究によれば「エンパワード」なデスクの方が、綺麗なデスクに比べて仕事の生産性が32%高いという結果がでています。

「エンパワード」なデスクとは、「自分に環境を変える権限があってコントロールできている」デスクを指しています。すなわち自分風にカスタマイズしたデスクのことです。

人は自分が安心できる環境でないと集中できません。デスク周りをある程度アレンジしたり好きなものを置いたりすることで、自分にとって安心する空間を構築することができ、高い集中力に繋がります。
人目が気にならない家だからこそ、自分風にデスクをカスタマイズすることがオススメです。具体的には、家族の写真や自分の好きな小物を置くことがオススメです。

私の家ではデスク横にお気に入りのぬいぐるみを置いています。ふと視線がぬいぐるみをとらえると気持ちがホッと安心するだけでなく、仕事のちょっとした休憩にぬいぐるみをぎゅっと抱きしめるのが良いリラックスになっています。

脳科学から紐解く休憩のデザイン

運動をする

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テレワークの休憩中にやることとしてまずオススメするのは、運動をすることです。

運動が体に良いことは周知の事実ですが、運動が脳の生産性にも効果的なことが研究で証明されています。スウェーデンの研究によれば、たった2分の運動で30分~120分もの間、問題解決能力や集中力などが高まりました。

このように、仕事の合間の小休憩に定期的に運動を取り入れることが、健康にも仕事にも効果的です。在宅勤務なら人目が気にならずに仕事の合間の休憩でも気軽に運動をすることができます。

私がオススメする運動はHIITです。強度の強い運動を4分間だけ行うトレーニング方法で、短時間で高い運動効果が得られます。ストレッチや散歩などの軽い運動でも効果はあるので、自分の始めやすいものから気軽に始めてみましょう。

瞑想をする

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テレワークの休憩中にやることとして次にオススメするのは、瞑想をすることです。

瞑想とは、目を閉じて呼吸や聞こえる音に集中することで心を落ち着かせる取り組みです。瞑想をすることで自動思考を抑制することができ、結果的に仕事の集中力を高めてくれます。

自動思考とは無意識に頭に湧いてくる思考です。仕事中に突然「家のカギ閉めたっけ?」というような今の作業に関係ないことが頭に浮かんだことがあると思います。これが自動思考です。自動思考が起きているときは、目の前の作業への集中度が下がっている状態です。

瞑想をすることでこの自動思考を抑制し、目の前の作業に集中する時間を長くしてくれます。アメリカのウェイクフォレスト大学とノースカロライナ大学の共同研究によれば、一日20分の瞑想を週4回行うだけで、日々の集中力が最大50%UPします。

瞑想は座禅を組んだり目を閉じてじっとしたりしますので、人の邪魔が少ないテレワークの方が職場よりも取り組みやすく、効果も得やすいです。

私は朝の業務開始前に10分瞑想をし、仕事の合間の休憩で5分ずつ瞑想をしています。初めて瞑想を実施する人には、Youtube等の動画サイトに投稿されている瞑想用の動画を使うことをオススメします。5分から30分まで幅広い瞑想時間の動画が無料で視聴することができます。

昼寝をする

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テレワークの休憩中にやることとしてその次にオススメするのは、昼寝をすることがオススメです。

昼寝は眠気を取るだけでなく、思考力の向上にも繋がることが研究で分かっています。NASAの研究によれば、約25分の昼寝をすると、認知能力が34%、注意力が54%向上します。昼寝は仕事の生産性をあげるシンプルで良い方法です。

昼寝をするなら「コーヒーナップ」という方法がオススメです。コーヒーナップとは、コーヒーを一杯飲んで15分程度仮眠する方法です。広島大学の研究によれば、コーヒーナップの方がコーヒーを飲まずに昼寝したときよりも眠気の抑制効果が2倍高かったです。

私は昼寝のついでにホットアイマスクを目に当てています。電子レンジで温めて目に当てることで、昼寝の時間を目の疲労回復の時間としても活用しています。

心理学から紐解くテレワークの心理

テレワークにこそ大切なサイキングアップ

サイキングアップとはリラクゼーションの反対の行為です。

体や心のストレスを抜く行為であるリラクゼーションに対して、体や心のストレスを高める行為がサイキングアップです。仕事を始める前にはリラクゼーションもサイキングアップもどちらも大切な行為です。なぜなら、高い生産性の仕事をするためには、ストレスが高すぎても低すぎても良くないからです。

これは心理学の世界では「ヤーキーズ・ドットソンの法則」として知られています。「ヤーキーズ・ドットソンの法則」とは最高の生産性のためには適度なストレスが重要だということを表した法則です(下図)。心理学者のロバート・ヤーキーズとJ.D. ドットソンが発見しました。

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(ここラクより)

ヤーキーズ・ドットソンの法則にたいして、リラクゼーションとサイキングアップは下図の関係になっています。過度なストレスを抜くのがリラクゼーションであり、ほどよくストレスを取り入れるのがサイキングアップです。

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(弊社作成)

日本の職場ではストレスが過多な傾向にあります(下図)。そのため、職場での生産性にはリラクゼーションが大切です。一方、テレワークでは職場に比べて緊張感が少なくなりがちです。そのため、テレワークの生産性を向上するためにはサイキングアップが有効になってきます。

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(ストレスケア・コムより)

サイキングアップとしてもリラクゼーションとしても、ルーティンを作ることが効果的な方法になります。

実は職場に出勤するときは無意識にルーティンが成立しています。みんなが何気なく毎朝行っている「①出社する→②鞄を置く→③コートを脱ぐ→④パソコンを起動する→⑤コーヒーを入れる」というような一連の動作は、適度なリラクゼーションを生むルーティンになっています。

一方在宅勤務では直前まで別のことをしがちです。
直前まで寝ていたり、子供を幼稚園に送っていたり、ゲームをしていたり。在宅勤務は職場の出勤と比べて仕事に向けた一連の動作が決まっていないことが多いです。だからこそ、意図的にサイキングアップに繋がるようなルーティンを取り入れることが大切です。

私もテレワークでは、ルーティンをしてから仕事に取り組むようにしています。具体的には以下のルーティンを組んでいます。
「①家の周りを散歩する→②着替える→③洗顔する→④英語を勉強する→⑤瞑想する→⑥コーヒーを飲む→⑦業務を開始する」
自分に合ったルーティンがサイキングアップやリラクゼーションに繋がり、テレワークの生産性を高めてくれるでしょう。

テレワークだからこそ影響が大きくなりやすい透明性の錯覚

透明性の錯覚とは「あなたのことはあなたが思うより相手は知らない」という心理的錯覚です。具体的には、「"言わなくても分かるでしょ"と思っていたら何も伝わっていなかった」というような認識の齟齬が例として挙げられます。

透明性の錯覚は職場で働いているときよりも、在宅勤務のときの方が大きくなりがちです。なぜなら、テレワークではカクテルパーティ効果が働かないからです。

カクテルパーティ効果とは、人の「音声情報を無意識に選択して聞き取る」という能力によって生まれる状況把握効果です。職場では意識しなくても同僚の立ち話が聞こえてきたり、チームメンバーの振る舞いなどが目に入ったりします。そんな何気ない会話や仕草には、実は仕事に影響する情報が詰まっていて、それがメンバーの状況理解に繋がっています。たとえば、仕事メンバーは上司とお客様の作業スケジュールの会話などから「作業の変更が入りそうだ」といった状況把握を無意識に行っています。

しかし、テレワークではカクテルパーティ効果を生み出すような何気ない情報がメンバーに入ってきません。そのため、職場よりも透明性の錯覚、つまり「あなたが思っているより、メンバーは状況を分かっていない」という認識の齟齬が発生しがちです。

テレワークでの認識の齟齬を防ぐためには、状況や作業の変更を職場で働くときよりも明確な表現で伝えることが大切です。

テレワークに起こりがちな肯定的ストロークの欠如

ストロークとは「人との接触から得られる刺激」です。仕事においては、部下やチームメンバーに対する働きかけのことを指しています。ストロークには肯定的なものと否定的なものがあり、メンバーに対する肯定的なストロークが欠如すると仕事に悪影響を与えることが分かっています。

肯定的なストロークには「褒める・微笑む・心から頷く・応援するようにボンと肩を叩く」といった行為が該当します。一方、否定的なストロークには「怒鳴る・非難する・嘲笑する・殴る」といった行為が該当します。肯定的なストロークが蓄積されると、人は自信を持ち自分から積極的に行動するようになります。反対に否定的なストロークが蓄積されると、人は憂鬱になり自信を失い自分から行動ができなくなっていきます。

チームメンバーは自分にとって肯定的なストロークを十分に得られると、仕事のやる気がでたり自分から率先して仕事を引き受けたりするようになります。反対にチームメンバーの肯定的なストロークが欠如すると、指示待ちになったり指示に対するプラスアルファの働きができなくなったりします。このように、生産性の高いチームを作るためには肯定的なストロークが大切です。

しかし、テレワークでは肯定的なストロークが欠如しがちです。なぜなら、テレワークの通話・チャットでは用件だけの会話になることが多いからです。職場ではちょっとした素振りやちょっとした雑談から肯定的なストロークを受け取ることも少なくありません。しかし、テレワークでは身振り手振りは見えず雑談も少なくなる傾向があります。そのため、テレワークではチームメンバーの肯定的なストロークが不足する可能性が高まります。

テレワークでは、職場で働くときよりも意識してメンバーを褒めたりメンバーに感謝を伝えたりすることが大切です。

おわりに

今回ご紹介したように、テレワークと職場勤務にはさまざまな違いがあります。テレワークの利点・テレワークの欠点をそれぞれ理解し、利点は活用し欠点は対策しながらテレワークを効率化していきましょう。

参考URL
  • 屋内緑化/屋内緑化レポート 2015/March.vol-2 | 屋内緑化推進協議会
    http://okunairyokka.jp/data/report2.pdf
  • 観葉植物 ポトスの育て方! 挿し木や水挿しでの増やし方、育て方のコツ | LOVEGREEN
    https://lovegreen.net/plants/p105689/
  • 1日4分 話題の筋トレ「HIIT」で体脂肪が落ちる | ヘルスUP フィットネス
    https://style.nikkei.com/article/DGXMZO11481080Q7A110C1000000/
  • マインドフルネス瞑想で集中力が50%もアップ! 脳科学研究
    https://note.com/kruchoro/n/n91648b239c9f
  • ヤーキーズ・ドットソンの法則とは?最適な緊張感が最高のパフォーマンスをもたらす | LEARN TERN
    https://learn-tern.com/yerkes-dodson-law/
  • ルーティン動作が非アスリートの集中力と作業精度に及ぼす効果/科学・技術研究 | J-STAGE
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sst/6/1/6_85/_article/-char/ja/
  • コミュニケーションスキルとは?心理学の専門家に聞いた、ビジネスで活かせる5つのコミュニケーション術 | 東洋大学
    https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/business/communication_skills/
  • カクテルパーティ効果とは?興味のある情報はよく聞こえる心理作用を利用しよう | ferret
    https://ferret-plus.com/5087
  • より良い人間関係の基本は「ストローク」にあり | コーチビジネス研究所
    https://coaching-labo.co.jp/archives/2655
  • 睡眠負債を一気に解消しリフレッシュ 噂の習慣「コーヒーナップ」とは? | CREA
    https://crea.bunshun.jp/articles/-/22851
  • 「時間がない」という焦りや不安を解消する心理学 | 心理学で仕事を楽に生きたいブログ(ここラク)
    http://hell-madaka.com/「時間がない」という焦りや不安を解消する心理-1169.html
働き方・労働環境
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執筆: 小谷 ひかり

バルテス株式会社 コングロマリット品質サービス事業部 マネージャー

業務系システムの開発・運用・保守にSE兼プロジェクトリーダー兼コンサルタントとして携わった後、バルテスに入社する。入社後は、テスト自動化プロジェクト・品質保証プロジェクトを経て、現在は品質向上支援に携わっている。また、その傍らで、専門分野である心理学の知見に基づいて、新卒社員の指導や社内委員会の品質向上に力を注いでいる。