利用される想定端末の機種が多いソフトウェアの開発を行っている場合、多端末検証の実施は欠かせません。
さまざまな機種が流通していることもあり、スマートフォンやタブレットなど、どの機種までテストを行うと良いのか、悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。
多くの機種で検証できれば安心はできますが、多くなればなるほどコストがかかります。
今回は、多端末検証を行う際の、端末選定や管理のポイントについて ご紹介します。
- もくじ
1.多端末検証とは
多端末検証とは、ソフトウェアのテスト時に、複数の端末で動作確認を行うテストのことです。
利用される想定端末の種類が多いソフトウェアの場合は、納期やリソースなどの事情で、テストできる端末、テストできない端末が生じます。
Androidがその代表的な例で、多岐にわたるメーカーからスマートフォンが製造されており、解像度やセンサー、カメラなど性能が大きく異なります。
またスマートフォンに搭載されるOSにも違いがあるため、すべての組み合わせでテストを行うのは不可能です。そのため、動作確認を行う端末を絞らねば なりません。
利用者の数が多い端末を選ぶのはもちろん、ユーザーシェア率や端末のスペックなどから、ポイントを押さえて端末を選ぶことが重要です。
多端末検証については、こちらも併せてご覧ください。
2.多端末検証実施の5つの手順
多端末検証を行う際には、以下5つの手順に沿って行います。
- プラットフォームを絞る
- 挙動可能範囲の決定
- 動作保証範囲の決定
- 予算の決定
- 機種の絞りこみ
それぞれの手順について、詳しくご紹介します。
2-1 プラットフォームを絞る
まずは、プラットフォームを絞ります。
スマートフォンアプリのプラットフォームでいうと、大きくAndroidとiOSが考えられます。
端末の種類は豊富にありますが、iOSアプリをAndroidの端末で確認する必要はありません。
そのため、アプリを動作できる端末を確認し、大まかに機種を絞ります。
プラットフォームを絞っておくだけで、その後の検討時間を大幅に減少することが可能です。
2-2 挙動可能範囲の決定
プラットフォームを絞ることができたら、続いてプラットフォームでの挙動可能範囲を決めます。
システムを開発するツールやコードなど、バージョンの違いによって、アプリの動作ができるOSのバージョンが決定します。
システム開発担当に聞き、挙動範囲の決定を行いましょう。
2-3 動作保証範囲の決定
挙動可能範囲の決定が完了したら、次はプラットフォームでの動作保証の範囲を決定します。
例えば、Android5.0以上で動作できるアプリを作成する場合、Android5.0の端末では辛うじて動くレベルにするのか、もしくは動作するからにはアプリとして使用できるレベルまで対応するのか、などを確認しておかなければなりません。
予算やコストの問題も発生するため、責任者との話し合いが必要になるでしょう。
2-4 予算の決定
動作保証範囲の決定ができたら、検証端末にかけられる予算を決めます。
多端末検証にかけられる予算やコストを、現実的な範囲内で決定します。
これまでの情報を集め、その結果から適した端末を持たない場合は新しく購入する、レンタルするなどの別のタスクが発生します。
そのため、端末の選定はテストを行うことが決まった際の最優先事項として取り掛かることが良い でしょう。
2-5 端末の絞りこみ
予算の決定が済んだら、最後に端末の絞りこみを行う手順です。
端末によって左右される情報を収集します。
OSのバージョンやデバイスのシェア率など、複数の観点から絞りこみを行いましょう。
端末の絞りこみ に関する解説は、以下で詳しくしています。
3.テスト端末選定のポイント項目5つ
多端末検証を行う際の、テスト端末選定時のポイントは5つです。
- シェア率の高さ
- メーカーのバランス
- OSのバージョン
- 画面サイズ・解像度
- スペック
上記5つのポイントについて、詳しくご紹介します。
3-1 シェア率の高さ
利用者の多い端末は、積極的にテストを行う必要があります。
ただし、それのみで良いわけではありません。
端末特有の不具合が起きたときに、シェア率の高い端末を優先的に不具合修正するなど、判断基準として使いやすいです。
また国内外でシェア率は異なるため、ターゲットを見定めてテストする端末を判断するようにしましょう。
3-2 メーカーのバランス
メーカーの違いにより、動作が異なることが多くあるため、できるだけ多岐にわたるメーカーで確認したほうが良いでしょう。
メーカーの絞り込みは偏りが発生しないように、バランスを考えて行います。
またキャリアの選定は普及率の高いキャリアを中心に、端末の選定を行いましょう。
3-3 OSのバージョン
OSのバージョンは、およそ1年に1回のペースで新しくなっていくものです。
OSのバージョンが上がることで古いアプリが動作しなくなることがあります。
無料でアップデートが行われるAndroidは、最新版からさかのぼり5つのOSバージョンで大半のシェアが占められます。
OSの範囲は、Androidで提供されるフレームワークAPIでの修正や改訂を、バージョンで識別しているAPIレベルの単位で、 網羅することが重要です。
新しいOSが出た際には、アプリの実装が変更になっていなくても、挙動確認をしたほうが良いでしょう。
また特定のOSのみで不具合が起きる可能性もあるため、注意しなければなりません。
3-4 画面サイズ ・解像度
同じアプリであっても、画面の大きさが違うと表示が崩れることもあるため、画面サイズや解像度も考慮しなければなりません。
素材の位置がずれて見えたり位置が変わったりする可能性があり、数種類の端末でテストを行うだけで発見できる不具合であるため、事前に対策しておきましょう。
かつては 画面サイズが変更になっても画面比がそろっていることもありましたが、現在は様々な画面サイズの端末が登場したこともあり画面比がそろわないこともあります。
Android端末では多くの種類があるため、なおさら画面サイズや解像度に注意しましょう 。
3-5 スペック
端末のスペックは日々進化しています。
そのため、どの程度までスペックをさかのぼって検証を行うか、コストや予算と相談しながら考えなければなりません。
基本的な性能のほかにも、サービスに影響のあるスペックや機能についても考慮しましょう。
例えば、カメラを使用するアプリケーションの場合には、スマートフォンカメラのスペックなど、アプリケーションに影響のある機能があるときには、判断材料にできます。
4.検証端末管理の3つのポイント
検証端末を管理するときのおすすめポイントは、以下の通りです。
- 管理方法のルール化
- 端末の明確化
- 入力アプリの準備
上記3つのポイントについて、詳しくご紹介します。
4-1 管理方法のルール化
端末の管理方法をルール化しましょう。
テストに端末を使用した後どこにしまうなど、端末の管理方法を決めたほうが良いです。
また多くの端末を保有している場合は、端末を保管している場所や端末の使用者を 付箋などで書いておくのも効果的です。
付箋を貼ることにより、誰が使っているかの特定ができるだけでなく、どこに保管されていた端末であるかも把握できます。
4-2 端末の明確化
保有している端末数が多いと、どれがどのスペックの端末か分からなくなることもあります。
似たような端末が多いため、分けて管理しないと、テストのたびに探すのに時間がかかってしまいかねません。
端末の管理には、シールやテプラなどを使用します。
端末名やOSのバージョン情報、特殊な設定の端末、特殊なアプリを入れた端末など、わかりやすく記載しておくのが理想です。
メーカーや機種ごとに分けるなど、すぐに見つけられるよう端末ごとに分かるようにしておきましょう。
4-3 入力アプリの準備
端末ごとにキーボードの操作が異なり、記号の入力時などに操作に困ることもあります。
そうならないために、共通の入力アプリの準備をしておくと良いでしょう。
AndroidとiOSの2種類など、利用頻度の高い機種でマニュアル化すると、情報を探すときも苦労しません。
そのほかにも、インストールしておくアプリや共有するGoogleアカウント、iCloudアカウント、接続先のWi-Fi設定なども決めておくと便利です。
まとめ
この記事では、多端末検証とは何か、多端末検証を行う手順、検証端末の管理方法について紹介しました。
複数の端末で動作確認を行う多端末検証では、挙動可能範囲や動作保証範囲の決定をし、機種を絞りこむ必要があります。
機種の用意がない場合は購入のタスクも発生するため、テストの実施が決まったら最優先に行わなければなりません。
機種を選ぶ際には、シェア率の高さや大手メーカーを選ぶことはもちろん、画面サイズやスペック、OSのバージョンによって判断することも重要です。機種が増えるにつれ、管理も難しくなります。
どこに管理するか、端末の明確化などを決めた上で、検証端末を管理するのが効果的です。多端末検証の実施の際、ぜひこの記事を参考にしてみてください。