近年、ソフトウェア開発における品質保証(QA)の重要性がますます高まっています。その品質保証をリードし、中心的な役割を担う職種が「QAエンジニア」です。ソフトウェアの品質を左右するQAエンジニアには、さまざまなテストスキルが求められます。
本稿では、QAエンジニアに求められるテストスキルや、その習得方法について解説します。これからQAエンジニアを目指す方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1.QAエンジニアに求められる主な6つのテストスキル
QAエンジニアにとって、テストスキルは欠かせません。しかし、ひと口に「テストスキル」といってもその範囲は広く、単にテストを実行できるだけでは不十分です。
ここでは、QAエンジニアに求められる主な6つのテストスキルについて解説します。
- テストプロセスの基礎知識
- テスト設計スキル
- テスト技法の知識・活用スキル
- テスト管理スキル
- テスト文書の作成スキル
- テスト自動化の知識・実践スキル
1-1 テストプロセスの基礎知識
幅広いテストプロセスに関わるQAエンジニアには、テストプロセスの基礎知識が必須です。テスト計画からテスト分析、テスト設計、テスト実装、テスト実行、テスト完了までの一連の流れを把握し、各プロセスの進め方を理解していることが求められます。
テストプロジェクトの状況によっては、QAエンジニアが他メンバーをサポートする役割を担うこともあります。適切なサポートを行うためには、テストプロセスの基礎知識をしっかり網羅し、状況に応じて必要な知識を活用できることが大切です。
1-2 テスト設計スキル
QAエンジニアには、高いテスト設計スキルが求められます。テスト設計は、ソフトウエアの品質を保証するために、テストの方針を決定する重要なプロセスです。テスト設計に基づいて、テストケースを作成していきます。テスト設計スキルが不足していれば、テストの実施漏れ・不具合の流出につながります。
そのため、テストの目的やテスト対象の要件・仕様を正確に理解し、それに沿ったシナリオ・パターンを漏れなく作成できることが重要です。網羅性の高いテストケースを作成できれば、ソフトウェアの不具合を的確に検出し、品質向上に貢献できるでしょう。
1-3 テスト設計技法の知識・活用スキル
QAエンジニアには、幅広いテスト設計技法の知識と、それらの活用スキルが求められます。テスト設計技法とは、テストケースやテストデータの決定を効率化するための方法論です。適切なテスト設計技法の活用は、テストプロセスの効率化やテスト品質の向上につながります。
テスト設計技法には「同値分割法」「境界値分析」「デシジョンテーブル」など、さまざまな種類があります。各テスト設計技法の基本を理解したうえで、テスト対象やシーンに応じて選定・活用できることが重要です。
1-4 テスト管理スキル
QAエンジニアには、テストプロジェクトを計画どおりに進行するためのテスト管理スキルが不可欠です。テスト進捗やテスト環境、不具合などを確実に把握し、計画との乖離時が発生した時や問題が発生した時には適切に対処することが求められます(コントロール)。
QAエンジニアは多くの場合、テストプロジェクト全体を管理する立場を担います。テストプロジェクトを成功させるためには、QAエンジニアがテスト管理を正しく主導していくことが重要です。
なお、テスト管理の業務内容やスキルに関する詳細は、次の記事を参考にしてください。
関連記事:ソフトウェアテスト管理とは?業務内容や必要スキル、おすすめツールを紹介
1-5 テスト文書の作成スキル
QAエンジニアにはテスト文書の作成スキルが欠かせません。テスト計画書やテスト設計仕様書など、テストプロジェクトで使われるテストドキュメントはさまざまです。それらに必要な情報や正しい書き方を理解し、分かりやすく漏れのないテスト文書に仕上げることが求められます。
テストドキュメントは、テスト情報の明文化や情報共有といった重要な役割を果たします。
誰が見ても理解・実行・再利用できる、正確で網羅的かつ一貫性のある高品質なテストドキュメントを作成できなければ、チーム内での誤解や混乱を招きかねません。
1-6 テスト自動化の知識・実践スキル
QAエンジニアにとって、テスト自動化の知識や実践スキルの重要性が高まっています。ソフトウェアの進化にともないテストケース数が増加し、手動テストの負担軽減や生産性向上が課題となっているためです。
自動テストの実現にあたっては、QAエンジニアが中心的な立場を担うことになるでしょう。そのためには、テスト自動化に用いられるツールやフレームワークの使い方を理解し、適切に導入・運用できることが求められます。
また、近年はAI(人工知能)を活用したテスト自動化の普及も進んでいます。そのため、従来の自動化ツールだけでなく、テストコードの作成などに使われるAIツールの基本的な知識を身につけておくと、現場で役立つ場面が増えるでしょう。
2.QAエンジニアに有用なテスト以外の知識・スキル
QAエンジニアが理想的な品質保証を実現するためには、テストスキル以外にもさまざまな知識やスキルが必要です。その中でも代表的な5つを押さえておきましょう。
- IT業界を含めたドメイン知識
- コミュニケーションスキル
- 問題解決スキル
- プログラミングスキル
- AI(生成AI)の活用スキル
2-1 IT業界を含めたドメイン知識
QAエンジニアには、IT業界全般をはじめとする各業界・分野のドメイン知識(その業界・分野に特化した専門知識)が求められます。テストプロセスにおいて、ドメイン知識を基にテスト設計やテスト実行を行う場面が多くあります。
特に、ネットワークやデータベース、セキュリティといったIT業界のドメイン知識は、あらゆるテストにおいて重要です。それに加え、テスト対象となるソフトウェアの業界・分野に関するドメイン知識も必要となります。たとえば金融システムをテストする場合、金融業界に関するドメイン知識が必要です。
不足しているドメイン知識はテストプロセスの中でもカバーできます。しかし、事前に幅広い業界のドメイン知識を持っていれば、よりスムーズにテストプロセスを進行できるでしょう。必要に応じて、テスト計画立案の段階でドメイン知識の学習や、トレーニングの期間を設定しておくと良いでしょう。
2-2 コミュニケーションスキル
QAエンジニアにとって、コミュニケーションスキルは非常に重要です。QAエンジニアはチームメンバーだけでなく、開発者や顧客など、多くの関係者とやり取りします。正確かつスムーズに連携するためには、高いコミュニケーション能力が不可欠です。
コミュニケーションでは、双方向の意思疎通を正確・スムーズに行えることが求められます。相手の発言内容や意図を正確に理解し、自分の意見を分かりやすく伝えることが重要です。
2-3 問題解決スキル
QAエンジニアには、高い問題解決スキルが求められます。予期せぬ動作の原因を突き止めたり、テストプロジェクトの問題に直面したりするシーンは少なくありません。
そのため、問題の本質を正しく理解し、その原因を正確に特定して解決策を見つけ出せる能力が不可欠です。問題解決スキルの高いQAエンジニアは、QAチーム内外から信頼を獲得でき、プロジェクトを成功に導く役割を果たすでしょう。
2-4 プログラミングスキル
QAエンジニアにとって、プログラミングスキルは有用です。特に、テスト自動化にあたって「Selenium」などのフレームワークを用いる場合、テストコードの記述が必要です。基本的なプログラミングスキルがあれば、幅広い自動化ニーズに対応できます。
また、テスト対象の内部構造を把握して実施する「ホワイトボックステスト」では、プログラミングの知識が求められます。さらに、テスト結果の収集や可視化をプログラムで効率化・自動化できるなど、生産性向上に役立つシーンも少なくないでしょう。
近年では、AIを活用してテストコード作成を効率化する場面も増えています。しかし、生成されたコードの品質を担保するためには、QAエンジニア自身にプログラミングの知識や経験が欠かせません。そのため、プログラミングの考え方や主要な言語の知識をあらかじめ身につけておくことが理想です。
2-5 AI(生成AI)の活用スキル
近年、テストスキルの周辺領域としてAI(生成AI)を活用するスキルの需要が高まっています。生成AIをQA業務に取り入れることで、手作業の負担や人的ミスを減らせるためです。適切に活用できれば、テストプロセス全体の生産性向上につながるでしょう。
たとえば、生成AIでテストコードのたたき台を作成し、QAエンジニアが最適な形に調整すれば、ゼロから記述するよりも短時間で済みます。ほかにも、検証に必要な大量のダミーデータを生成させる、といった使い方も有効です。
ただし、生成AIの出力内容には誤りが含まれる場合もあります。最終的な品質の担保は、QAエンジニア自身が行わなければなりません。AI活用をQA業務の改善につなげるためには、的確な指示を与えるスキルや、生成物を正確に検証・修正するスキルが求められます。
3.QAエンジニアのテストスキルを身につける方法
QAエンジニアを目指す場合、必要なテストスキルを身につけるための学習が不可欠です。ここでは、QAエンジニアのテストスキルを身につけるための学習方法を3つ紹介します。
3-1 参考書を読む
テスト技法やテスト設計など、QAエンジニアに必要な知識を学べる参考書は数多くあります。参考書には必要な知識がまとめられており、体系的に学習できます。
次の記事では、QAエンジニアにおすすめの参考書を10冊紹介しています。参考書でQAエンジニアについて学びたい方は、ぜひ参考にしてください。
3-2 資格取得を目指す
テストやソフトウェア品質に関する資格は数多くあります。こうした資格取得を目指して対策学習すれば、体系的に必要な知識を身につけることができます。
また、QAエンジニアにとって有用な資格であれば、転職の際に役立つでしょう。
QAエンジニアを目指す方におすすめの資格を下表にまとめました。
| 資格名 | 概要 |
|---|---|
| JSTQB認定テスト技術者資格 | テスト技術者に求められる幅広い知識を証明できる資格 |
| ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE) | ソフトウェア品質全般の知識を証明できる資格 |
| IT検証技術者認定試験(IVEC) | テスト現場の実務に役立つ知識を証明できる資格 |
3-3 学習サービスを利用する
効率的にテストスキルを学びたい方には、オンラインで使える学習サービスの利用がおすすめです。
高品質な教材を用いることで、基礎から応用まで体系的に学べるだけでなく、実務に役立つノウハウを効率的に習得できます。
なお、社員のテストスキルを効率的に高めたい企業の方は、ソフトウェア品質教育サービス「バルデミー」をご活用ください。ソフトウェアテストの現場で役立つ知識を集約したコンテンツを通して、質の高いオンライン学習が可能です。
4.QAエンジニアのテストスキルに関するQ&A(よくある質問)
最後に、これからQAエンジニアを目指す方が抱きやすい、テストスキルに関する疑問にお答えします。
Q1.未経験からでもQAエンジニアのテストスキルは身につきますか?
未経験でも、QAエンジニアに求められるテストスキルの習得は十分に可能です。近年では高品質な学習サービスが充実しており、体系的に学ぶための環境が整っています。適切な教材を選び、段階的に学習を進めれば、基礎スキルは着実に身につくでしょう。
ただし、QAの実務で主戦力として活躍するためには、現場での経験が求められるケースが少なくありません。どれほど十分な知識を備えていても、実践量が不足していると実際の業務で適切に活かすのは困難なためです。関係者との連携や予期せぬトラブルへの対応など、座学だけでは補いきれないノウハウも存在します。
そのため、未経験からいきなりQAエンジニアを目指すよりも、QA業務に近い現場で経験を積むのが現実的です。たとえば、最初は現場でテスト実行を担当するテスター業務からスタートし、実践的なスキルを磨いていきます。現場の基本的な業務に慣れていけば、徐々に業務範囲を広げていくことも可能でしょう。
それでも、参考書での独学や資格取得に向けた勉強を通して基礎を学んでおくと、現場でのキャッチアップが早まります。知識の土台があれば、テスト設計などの上位スキルへスムーズにステップアップできるでしょう。
Q2.手動テストと自動テスト、どちらを優先して学ぶべきですか?
まずは手動テストを優先して学び、その後に自動テストへ進むのが一般的です。手動テストの学習を通して、テスト設計の基本やバグを発見する視点など、品質保証の基礎を固められます。自動テストを実践する際にも、手動テストで培った基礎が役立つでしょう。
たとえば、手動テストでは「どの操作で不具合が起きやすいか」「どの条件を変えて確認すべきか」などを自分で考えながら検証します。こうした経験を重ねることで、重要な確認観点や優先的に自動化すべきテストを判断しやすくなります。
自動化だけを先に学ぶと、テストケースの設計意図を十分に理解できず、必要な確認項目を見落とすこともあります。そのため、手動テストの学習で土台を固めたうえで自動テストの学習に進むほうが良いでしょう。
まとめ
QAエンジニアには、テスト設計スキルやテスト管理スキルなど、さまざまなテストスキルが求められます。
また、コミュニケーションスキルや問題解決スキルなど、テストスキル以外にも多くのスキルが求められる職種です。
QAエンジニアを目指す場合は、必要な知識・スキルをしっかり習得する必要があります。参考書や学習サービスなどを活用し、QAエンジニアの学習に取り組みましょう。
基礎を学んだ後は、資格取得や現場での実践を通して、さらなるスキルアップを目指すことをおすすめします。



