世界中でデジタル技術が活用されるようになり、ソフトウェア開発は人類にとって手放せない技術のひとつになりました。そのソフトウェア開発の発展を品質の面から支えるのがQAエンジニアです。
ソフトウェアの品質を向上させ、セキュリティを保つために、今後、QAエンジニアの必要性が増していくと考えられています。
今回は、そんなQAエンジニアを目指す方やステップアップを目指す人にお勧めの「QA本」を現役のテストエンジニアが10冊厳選して紹介します。
- もくじ
1.QAエンジニアにとって「役立つ本」とは?
QAエンジニアにとって役立つ本は、大きく以下のものがあります。
ソフトウェアテストの基礎理論や品質保証の考え方が分かる本
キャリアの浅いQAエンジニアは、なによりもソフトウェアテストの基礎理論や様々な種類を知り、品質保証の基本的な考え方を身に付けることが重要です。この土台をしっかり固めることで、逆に柔軟な思考ができるようになるでしょう。また、様々な事例やその時点でのベストプラクティスへの理解を深めていくことも大切です。
ソフトウェア開発の基礎知識・実践手法が身に付く本
QAエンジニアは、成果物をテストするだけでなく、シフトレフトの考え方でソフトウェア開発に寄り添う存在となっています。そのため、ソフトウェア開発の基礎知識や実践手法を知っておくと役立ちます。とくにアジャイル開発について理解を深めておくと良いでしょう。
テスト自動化など、最新技術やツールに関する情報が記載されている本
QAエンジニアが今後、取り組むべき課題について解説されている本は役に立ちます。テスト自動化など新たな技法等について情報が記載されている書籍を読むことが大切です。
2.QAエンジニア関連書籍、厳選10冊(順不同)
この章では、順不同で実際にQAの現場で活動するエンジニアの方々が選んだ書籍を10冊、紹介します。
①「ソフトウェア品質保証の考え方と実際」

「QAは通読すべき、QAにとって教科書的な本」
上の選者のコメントにもあるようにバイブル的な存在として広く知られている本です。Qbookでも『第1回 隣のQAに聞く 後編』で山本久仁朗氏が、本書が通称「保田本」と呼ばれており、品質保証やテストの考え方のエッセンスが詰め込まれていると紹介してくださっています。
本書では、管理面を主体とした品質保証の技術が実践的な立場から、オープン化時代を意識して解説されています。
また、日本の環境に合った内容であることもポイントだと言えます。
②「実践ソフトウェア エンジニアリング」

「QAは開発プロセス、開発手法などにも通じておくべき」
アメリカで1982年に第1版が発効されてから、世界で累積300万部を超えるベストセラーの翻訳書です。ソフトウェアエンジニアリングの「最良の手法」が解説されています。基礎知識があった方が読みやすいと、レビューされていることがありますが、上記の選者コメントにあるように、QAエンジニアが知っておくべき開発プロセスがまとめられている名著とされています。
③「はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法」
「技法を手っ取り早く把握するにはこれ」
本書はソフトウェアテストの必修技法が網羅された、タイトルにもある通り、初心者でもわかりやすい解説書です。また、経験を積んだ方でも、ソフトウェアテストの場合「自分が経験したこと以外は知らない」ケースが多いため、自分が知らなかったテスト手法や技法を理解する助けになります。選者コメントにもあるように、幅広い知識を得るために最適な一冊です。
Qbookでも以前、レビューしています。
④「見積りの方法」
「見積りに関して学ぶには、これが一番分かりやすい」
ソフトウェア開発において重要な「見積り」技術を、「品質」「コスト」「納期」といった重要ポイントを対象に解説し、実例を通じて適用方法や効果が分かる本です。
「品質管理・品質保証には、PDCAのサイクルを回すのが大事。PDCAのサイクルを回すには、Planが大切、Planを立てるには見積りが起点になる。見積りの本はたくさんあるが、見積りに関して学ぶには、これが一番分かりやすい。内容は今となっては古びているが、その骨格には揺るぎが無い。」
上記の選者コメントにあるように、見積りの考え方の骨格が身に付く本です。
⑤「ソフトウェア品質知識体系ガイド(第3版)」

「これで勉強するというよりは、通読して全体像を把握し、自分は何を知らないのかを知る」
ソフトウェア品質に関する膨大な知識と技術を整理して体系化してあるのが「ソフトウェア品質知識体系ガイド」通称「SQuBOK(スクボック:Software Quality Body of Knowledgeの略)」です。
資格試験『JCSQE(ソフトウェア品質技術者資格認定)』の教科書としても知られています。選者コメントにあるように、これ一冊あればソフトウェア品質について、SQuBOK刊行時点で必要とされる知識の概要がわかります。QAエンジニア必携本の1冊ともいってよいかもしれません。
なお、「SQuBOK」「JCSQE」については、以前、Qbookで解説していますので、そちらも参照してください。
⑥「体系的ソフトウェアテスト入門」

「初学者もIEEE829-1998ソフトウェアテストドキュメント標準が学べる」
選者からは「ドキュメント体系はIEEE829ではあるが、各テストドキュメントは一通り網羅されています。」とコメントがされているこちらの本は、国際標準IEEE829に準拠したソフトウェアテストの方法論「STEP(Systematic Test and Evaluation Process)」を解説しています。
「活用ガイド」「教科書」としても読める書籍として、Qbookでも書評を掲載しています。
⑦「SEC BOOKS 共通フレーム2013」

「開発の全体像を把握するにはこれです」
ソフトウェア、システム、サービスに関係する人々が"同じ言葉を話す"ことができる共通の枠組みとして策定されたのが「共通フレーム2013」です。
2007年版から内容が更新され、ソフトウェアやシステム、サービスの構想から開発、運用といったライフサイクルを通じて必要な項目、役割等が規定されています。また、国際規格「JIS X 0160:2012」をベースにISO/IEC/IEEE 29148の要素も取り入れられています。選者コメントにもあるように開発の全体像が把握できます。
⑧「初めてのアジャイル開発」

「アジャイル開発の全体像が掴める」
初めてアジャイルでソフトウェア開発に取り組む、初心者向けの入門書です。スクラムやXP、UP、Evoいった注目すべき4つの開発手法を学び、アジャイル・反復型の開発の長所だけでなく短所も含めて総合的にアジャイル開発の全体像が学べる良書です。選者コメントでも「アジャイル開発の全体像を把握するためには良かったです。」と記されていました。
⑨「実践的ソフトウェア測定」

「定量的にソフトウェアの品質を分析・評価するための足掛かりに」
本書は、システムおよびソフトウェアエンジニアリングの測定プロセス規格「ISO/IEC15939」の制定に関わってきたリーダー陣が記した実践ガイドブックです。ソフトウェアの測定とプロセスおよびプロダクト改善のノウハウが書き下ろされています。選者からは「定量的にソフトウェアの品質を分析・評価するための足掛かりとして有用な書籍である」とコメントがありました。
⑩「ソフトウェアテストの教科書」

「世界一わかりやすい、テストの教科書」
バルテス株式会社による、世界一わかりやすい「テストの教科書」の増補改訂第2版。
第1版は2012年に出版で累計発行部数22,000部を突破し、初学者でも、品質を決定づけるテスト工程の全体像と実施方法がよくわかると好評で、2021年に版が重ねられました。
2021年8月出版の改訂版は13,000部に上り、技術書としては異例のシリーズ累計35,000部を突破しています。
ソフトウェアテストの基本から、様々な技法を体系的に身に付けることができます。
まとめ
今回は、QAエンジニアの方へおすすめな本を10冊ご紹介しました。
QAエンジニアが学びを深めるには、「JCSQE」などの資格試験を目標にして知識習得を進めると効率が良いこともあります。
初心者であるなら、まず入門書で基礎知識を身に付けてから、「ソフトウェア品質知識体系ガイド(第3版)」などを読み、資格試験以外にも実践を通じて視野を広げていくのがお勧めです。
スキルアップを目指している方は、ぜひ本記事で紹介した本を読んでみてはいかがでしょうか。