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「SQuBOK(スクボック)- ソフトウェア品質知識体系ガイド」とは?概要・目的を解説
資格対策特集
資格対策特集 2023.02.14
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「SQuBOK(スクボック)- ソフトウェア品質知識体系ガイド」とは?概要・目的を解説

執筆: 大木 晴一郎

ライター

「ソフトウェア品質知識体系ガイド(Software Quality Body of Knowledge)」は、ソフトウェアの品質保証や品質向上に関わるエンジニアに、必要とされる知識をまとめた知識体系(Body of Knowledge)のひとつです。

英語表記の頭文字を取った略称の「SQuBOK(スクボック)」の名で呼ばれており、資格『ソフトウェア品質技術者資格認定』(JCSQE: JUSE Certified Software Quality Engineer)の根幹をなすものとしても知られています。今回はこのSQuBOKの概要や目的についてご紹介します。

さらに記事の後半では、「SQuBOKを読み、学ぶ意義」について、千葉工業大学社会システム科学部の小笠原秀人教授にお話を伺い、まとめました。
ぜひ最後までご覧ください。

もくじ
  1. ソフトウェア品質知識体系ガイド「SQuBOK(スクボック)」とは
  2. 大学教授に訊く「SQuBOKを読み、学ぶ意義」(千葉工業大学 小笠原秀人教授)
  3. まとめ

1.ソフトウェア品質知識体系ガイド「SQuBOK(スクボック)」とは

SQuBOKは「スクボック」と読みます。『ソフトウェア品質知識体系』の英語表記「Software Quality Body of Knowledge」の頭文字を取った略語です。SQuBOKはソフトウェアの品質保証や品質向上に関わるエンジニアに必要とされる知識をまとめた「知識体系(BOK:Body of Knowledge)」のひとつです。

この章では、SQuBOKの概要・目的と初版から現在までのまとめをご紹介します。

「SQuBOK」とは

SQuBOKは、日本科学技術連盟(日科技連)SQiP(ソフトウェア品質)委員会と日本品質管理学会ソフトウェア部会が共同で設立した「SQuBOK策定部会」が策定しており、著作権・商標権は、日科技連が保有しています。

SQuBOKを可視化した書籍『ソフトウェア品質知識体系ガイド SQuBOK Guide V3 第3版』は株式会社オーム社より出版されています。2007年に第1版、2014年11月に第2版が出され、2021年現在の最新版は、2020年11月に発行された第3版です。

SQuBOKにはソフトウェアの品質マネジメントや品質技術に関連する技法から、事例、関連文献、国際規格などが網羅的に整理されていて、ソフトウェア品質に関するトピックの全体像が把握でき、知識が整理できるようになっています。

BOK(知識体系)とは、専門領域を構成する概念や用語、活動、ノウハウ、規格、標準といった知識をまとめたもので、様々な領域で作られています。例えば、ソフトウェアに関係する知識体系には以下のようなものがあります。

BOKは国際的な団体や欧米企業等が中心となり、まとめられることが多ようですが、SQuBOKは日本でまとめられているのが特徴のひとつになっています。品質にこだわった「ものづくり」をする日本ならではの知識体系といえるでしょう。

「SQuBOK」が作られている目的

SQuBOKは日本から発信されている知識体系です。日本のソフトウェア開発現場で蓄積されてきたソフトウェア品質に関する知識を構造的に可視化することを目指し、日本科学技術連盟のSQiP(ソフトウェア品質)委員会と日本品質管理学会ソフトウェア部会が共同設置したSQuBOK策定部会が策定しています。

2020年11月に発行された『ソフトウェア品質知識体系ガイド SQuBOK Guide V3 第3版』(オーム社)には「SQuBOKのねらい」として以下の策定目的が示されています。

  1. ソフトウェア品質に関する暗黙知の形式知化
  2. ソフトウェア品質に関する最新テーマの整理、体系化

日本でソフトウェア開発の現場で培われた品質に関する暗黙知や知識等を企業や組織を超えて共有することで、ICT技術の進化に対応して現場の対応力を高め、ソフトウェア産業の発展に貢献するのがSQuBOK策定の目的です。

「SQuBOK」の想定読者

SQuBOKはソフトウェアに関する品質保証や品質向上に携わる技術者が中心対象として編纂されているといわれています。SQuBOK第3版には、以下の利用者層を想定していると表記されています。

  • 経営層・起業家
  • 開発に携わる技術者やその管理者
  • 品質保証に携わる技術者やその管理者
  • 将来ソフトウェア業界で働くことを希望する学生の方々

対象読者は日々、広がっています。なぜなら、デジタルトランスフォーメーション(DX)等によって社会のデジタル化が進展する今、ソフトウェア品質の重要性はますます高まり、ソフトウェア品質に関わる人が増加しているからです。ソフトウェアに関わるすべての人がSQuBOKの対象読者となりうるのです。

初版~現在までの簡単なまとめ

SQuBOKなど知識体系は、技術の進化や社会の要求に応じて情報を最新のものに改める必要があり、改訂・バージョンアップが行われます。

SQuBOKは、ソフトウェアの開発技術、開発手法、ソフトウェアが使われる事物に使われる技術に加え、ソフトウェアを使う人、社会での使われ方や要求の変化の影響を受け、改定されてきました。

SQuBOKの策定は2005年9月に開始されました。2006年4月に有識者向けのα版、ついで2007年9月に一般に向けのβ版が公開され、パブリックコメントが募集された後、2007年12月に第1版『ソフトウェア品質知識体系ガイド―SQuBOKガイド』(オーム社)が出版されています。2008年10月には第1版でできていなかったパブリックコメントへの対応や、参考文献・関連論文を追加・更新した改訂版が公開されました。第1版ではソフトウェアの品質を確保するための基礎知識がまとめられています。

2014年11月には『SQuBOKガイド 第2版」(オーム社)が出版されました。第2版では要求分析、設計、実装といった開発に関する品質技術と専門的品質特性のソフトウェア品質技術の副カテゴリが追加されています。さらに第1版から7年間にあった国際規格の更新に対応し、使用性やセキュリティ、セーフティ等の品質特性、モバイルアプリケーション開発に関する項目が更新、追加されました。

6年後の『SQuBOKガイド 第3版」(オーム社)は2020年11月に出版されています。第3版では以下の項目が改定内容として示されています。

(1)「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」カテゴリの新設
社会の課題解決に対応するため、第2版の使用性やセキュリティ、セーフティに関する品質技術と第1章のプライバシー部分がまとめられ、新設の「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」となっています。

(2)「ソフトウェア品質の応用領域」カテゴリの新設
この新設カテゴリでは、人工知能、IoT、アジャイル開発、DevOps、クラウドサービス、オープンソースソフトウェア利活用といった領域の品質の概念、品質マネジメント、品質技術等々が解説されています。

(3) 国際規格の改定への対応と従来の知識の整理
第2版から更新されている国際規格に対応しています。

2.大学教授に訊く「SQuBOKを読み、学ぶ意義」

SQuBOKを読む意義について、千葉工業大学社会システム科学部の小笠原秀人教授に話を伺いしました。

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小笠原 秀人 教授

千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科
千葉工業大学 社会システム科学研究科 マネジメント工学専攻

1990年4月、株式会社東芝に入社。入社以来、ソフトウェア生産技術(メトリクス活用、不具合管理、静的解析、テスト設計/管理、プロセス改善など)に関する研究・開発およびそれらの技術の推進・展開活動に従事。東芝に在籍中の2011年12月に、電気通信大学情報システム学研究科 社会知能情報学専攻 博士課程 を修了し、博士(工学)を取得。2018年3月に東芝を退社し、4月から千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科に教授として着任。

小笠原教授の研究についてはこちらの記事で紹介しています。

Q1.「SQuBOK」を読む意義とは?

社会がデジタル化されていく中、ソフトウェア品質の重要性は高いものとなっています。

SQuBOKでソフトウェア品質に関わる知識の全体像を把握することで、ICT技術の変化により柔軟に対応でき、より的確に品質向上を図ることができるようになるのが「SQuBOKを読む意義」のひとつです。

ソフトウェア品質の知識体系がまとめられている意義はとても大きいと考えています。世の中のベストプラクティス、取り組みを知ることが大事です。

Q2.「SQuBOK」の効率の良い読み方は?

知識体系全般にいえることですが、あらゆる知識がまとめられているため、読み物として「面白い」ものではないかもしれません。したがって、何か分からない時に必要に応じて読むということを基本にするのが良いと思います。

また組織として活用する際には、勉強会や説明会を行い、みんなで理解を深めるという方法を検討するのが良いと思います。

加えて、SQuBOKをベースにした資格試験『ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE)』を受験するのもSQuBOKの効率の良い読み方のひとつだといえます。

Q3.旧版を読むべきか、最新版を読むべきか?

旧版も古本屋などで売られていますが、読むなら基本的に最新版が最適です。

SQuBOKガイドは先行して様々な取り組みをされた方々の知識・知恵を吸収し、品質技術を学ぶと同時に新技術にも対応できるスキルを身につける土台を作るために読むからです。
知識体系の変遷を追うことで、知識をより深いものにしたいのであれば、過去版を紐解く価値はあるといえるでしょう。

Q4.資格試験JCSQEは「SQuBOK」から出題されている?

SQuBOKは『ソフトウェア品質技術者資格認定』(JCSQE)の主参考書籍になっています。

JCSQEは一般財団法人「日本科学技術連盟(日科技連:JUSE)」が主催している、ソフトウェア品質に関する知識を身につけた技術者を認定する資格で、QA担当者だけでなく、PMや開発者など、ソフトウェアに関わるすべての人を対象にしています。

(Qbookでは、以前、JCSQEの内容や受験する意義について、東洋大学の野中教授にお話をお伺いしています。)

Q5.資格試験「JCSQE」を受けた方が良い?

JCSQEを取得する価値のひとつは、ソフトウェア品質に関わる仕事をしているエンジニアが一定水準以上の知識を得ていることが日科技連、SQiPといった第三者によって認証されることです。

また、JCSQEの受験対策によって知識の幅が広がり、エンジニア自身のスキルアップにつながることも見逃せないメリットとなっています。

Q6.ソフトウェア品質管理部門は「SQuBOK」を常備しておくべき?

ソフトウェアの品質に関わる部門でSQuBOKを常備しておく意味は大きいと考えられます。

先輩方の取り組みや・知恵を体系的に知り、品質技術を学ぶことで品質管理力の向上が期待できます。部署内の勉強会などで活用したり、チームでJCSQEに挑戦したりすることも有意義です。

また、千葉工業大学の小笠原教授は「ソフトウェアの改善を推進する立場の方、マネージャーはSQuBOKを必要に応じて利用できるようにしておくと良いと思います。」と述べています。

まとめ

SQuBOKをはじめとするBOK(知識体系:Body of Knowledge)を学ぶことで、短時間で多くの知識を効率よく得ることができ、品質管理や開発力の向上が期待できます。

そういった実利的な面とともに、多くの先人達の足跡を知ることで、自分が携わる仕事に誇りを持てるようになるのもSQuBOKを読む意義のひとつといってよいでしょう。

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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。