第1回ソフトウェア工学 × QA最前線

「プロセスを改善すると高品質なソフトウェア開発を実現する組織文化が創造できる」千葉工業大学 小笠原 秀人 教授

最終更新日時:2022.03.24 (公開日:2021.11.17)
「プロセスを改善すると高品質なソフトウェア開発を実現する組織文化が創造できる」千葉工業大学 小笠原 秀人 教授

ソフトウェア工学やQAに関する様々な角度からの研究について、研究者の方にお話を伺う『QA最前線!』。デジタルトランスフォーメーション時代といわれ、品質向上・QAの重要性が高まる現代において、QAに関してどのような研究が行われているのか、研究・教育の現場がどのようになっているのか、注目されている方も多いのではないでしょうか? そのような視点から、本記事では最前線で活躍されている研究者にインタビューをして皆さまにお伝えします。今回は、千葉工業大学 社会システム科学部の小笠原 秀人 教授にお話をいただきます。

今回インタビューを受けてくださった方

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小笠原 秀人 教授

千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科
千葉工業大学 社会システム科学研究科 マネジメント工学専攻

1990年4月、株式会社東芝に入社。入社以来、ソフトウェア生産技術(メトリクス活用、不具合管理、静的解析、テスト設計/管理、プロセス改善など)に関する研究・開発およびそれらの技術の推進・展開活動に従事。東芝に在籍中の2011年12月に、電気通信大学情報システム学研究科 社会知能情報学専攻 博士課程 を修了し、博士(工学)を取得。2018年3月に東芝を退社し、4月から千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科に教授として着任。

もくじ
  • プロセスをしっかり定着させないと新しい技術は入っていかない
  • ビジネスとアカデミズムの間にギャップはない
  • システムやソフトウェアの品質はプロセスの品質に左右される
  • 現場にいるエンジニアは"幅の広さ"を持っておく
  • "Heaven helps those who help themselves" (天は自ら助くる者を助く)

プロセスをしっかり定着させないと新しい技術は入っていかない

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――これまでのQA業務や研究に関するご経歴をお教えください。

1990年に大学を修士卒業して東芝に入社し、ソフト技術センターというソフトウェア工学を中心に研究開発する組織に入りました。それから約28年、現場に寄り添った研究開発をしています。

最初の10年間は、不具合管理や構成管理、メトリックスに取り組みましたが、なかなか定着せず「どうしてなのか?」と悩んでいました。そんな時期にプロセス改善に出会いました。プロセスをしっかり定着させないと新しい技術が入っていかないと分かり、その後はソフトウェア技術とプロセス改善の二本柱で研究を進めています。そして、4年前に千葉工業大学の教員になりました。

――最初に不具合管理等の研究をされた「きっかけ」は何だったのでしょうか?

当時、携帯電話の開発が爆発的に広まっていて、バグが山ほど出ていました。そのバグをどうやって管理するかが課題になっていたのです。ツールもなかったので、まず、不具合管理プロセスを整備することにしました。最初に帳票を作り、その帳票の回覧方法を定義して運用しました。しかし、やはり手作業でやるのは無理だということになり、そのころ登場したWeb技術を使って、Webベースのシステムを作って社内で展開することにしたのです。面白かったですね。

――そのとき、どのようなことに「面白さ」を感じられたのでしょうか?

ソフトウェア開発は、結局、「人」だということでした。人と人でいろいろな会話をすることや、人の動きをしっかり考慮した上でツールを作ったり、それを皆に説明したりするといった事がすごく面白いと感じられました。製品開発の現場をサポートした際も、皆でモノを作り、節目のタイミングで打ち上げなどをするうちに、この仕事に入り込み、楽しくなっていった感じですね。

――楽しさの中で苦労されたことはありましたか?

先ほども話した点ですが、いろいろ良い技術や新しいツールを導入しても、なかなか定着しないことに悩みました。バージョンアップしていくシリーズ製品の開発など、既存の制約が多くある中に新しい技術を入れていくのは、現場の人々に納得してもらいながら進めていかないと上手くいきません。そういった点が難しく苦労したのですが、見方を変えると面白いところだった気もします。

――不具合管理やプロセス改善について研究されてきて、今後、どのように発展させていかれますか?

ソフトウェア開発プロセスの改善への取り組みは日本だけではなく、世界でも広がっていて、事例を共有・発表する場が増えてきています。日本SPIコンソーシアムや日本科学技術連盟で開催されているシンポウムなどにも改善事例は多く積み上がっています。これらを今まで以上に上手く活用できるようにしていきたいです。

また、現在、ソフトウェアの規模は大きくなり、複雑さも増していて、テストが大変になってきていますから、テストの自動化、とくにシステムテスト寄りの自動化には、今後、注力していきたいと考えています。

執筆者:神田 富士晴

ライター

株式会社アスキー、株式会社光栄、株式会社ビレッジセンター等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集、ソフトウエア制作を経験。その後、企業公式サイト運営やコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター・マンガ...