はじめに
「ソフトウェア品質技術者資格認定」(以後、JCSQEと記載)とは、一般財団法人「日本科学技術連盟(日科技連:JUSE)」が主催する、ソフトウェア品質に関する知識を身につけた技術者を認定する資格です。
なお、Qbookでは、JCSQEの目的や取得するメリットに関して、日本科学技術連盟 SQiPソフトウェア品質委員会委員長である野中 誠 教授にインタビュー内容の掲載や、JCSQE(初級)の試験対策に活用できるアプリ「テス友」をリリースをしています。興味をお持ちの方は本記事と併せてご覧ください。
来る2021/11/13(土)に第27回初級ソフトウェア品質技術者資格試験、第12回中級ソフトウェア品質技術者資格試験が行われる予定です。JCSQEのシラバスはソフトウェア品質の知見をまとめた「ソフトウェア品質知識体系ガイド -SQuBOK Guide-」という書籍を元に作成されています。2020年11月に「ソフトウェア品質知識体系ガイド -SQuBOK Guide-」の第3版(以降、SQuBOKガイド V3と呼称)が発行されました。JCSQEのシラバスはそれに伴い、改訂されています。試験要綱において、今回の試験から、新しいシラバスを適用することが発表されています。
本記事では初級のシラバスの改訂内容を紹介します。
シラバスの改訂内容はさまざまありますが、これまでに無かった新しい分野が追加されているところもあります。試験を受験する予定の方は、ぜひご参考にしてください。
JCSQEシラバスの変更ポイントは大きく分けて3つ
試験要綱に掲載されている通り、JCSQEシラバスはSQuBOKガイド V3に対応しています。SQuBOKガイド V3の主な改訂内容は、下記が挙げられています。
〈主な改定内容〉
- 「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」カテゴリの新設
- 「ソフトウェア品質の応用領域」カテゴリの新設
- 国際規格の改訂への対応と従来の知識の整理
上記の改訂により、JSCQEシラバスには「内容が新規に追加されたもの」、「構成が変更されたもの」、「用語が変更されたもの」の3つが発生しています。それぞれを後の章で紹介します。
SQuBOKガイドやシラバスの改訂を知らずに勉強して始めていた方でも、その勉強がすべて無駄になってしまうわけではありません。JCSQEの目的として、「この資格認定制度は手段に過ぎません。大事なことは、ソフトウェアの品質向上に関する包括的かつ体系的で本質的な知識を身につけ、効果的な策を継続的に実施して頂くことです。」(https://www.juse.jp/jcsqe/greeting/より引用)と掲げられています。シラバスが改訂されても、試験の本質的な部分は変わらないので、冷静にシラバスの改訂内容を把握しましょう。
JCSQEシラバスの改訂内容と試験への影響
ここからは、SQuBOKガイド V3の改訂によるシラバスの変更点の詳細を紹介します。
シラバスへの新規追加
前述のとおり、SQuBOKガイド V3で「ソフトウェア品質の応用領域」カテゴリが新設されたことで、シラバスに以下が新規に追加されています。SQuBOKガイド V3を読み、内容を把握しておくようにしましょう。
〈追加となっている知識領域〉
- 人工知能システムにおける品質
- IoTシステムにおける品質
- アジャイル開発とDevOpsにおける品質
- クラウドサービスにおける品質
- オープンソースソフトウェア利活用における品質
シラバスの構成の変更
前章でSQuBOKガイド V3の改訂内容として「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」カテゴリの新設と国際規格の改訂への対応と従来の知識の整理があると紹介しました。これにより、SQuBOKガイド V3では、V2と比較して「内容の見直し」と「内容の拡充」が行われています。
これに伴い、SQuBOKガイドV3では、章節項の構成が一部変更されています。ここでは、学習対象となっている用語の関連を基に、V2とV3間の節で、単独の節で対応していないものを紹介します。併せてV3において記載が削除された内容も紹介します。
特に、「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」カテゴリの新設により、セキュリティやプライバシーに関しては、SQuBOKガイドV3において、大きく記載が増えています。構成の変更に合わせて、学習対象の用語にも変更が入っているものがあります。V2を読んだことがある方も、V3を読み、最新の内容を理解しておきましょう。
用語の変更
学習に影響を与えるものと影響がないものがあります。それぞれ紹介します。
学習に影響があるものは、ソフトウェア品質モデルに関する内容です。SQuBOKガイド V2ではISO 9126シリーズとISO 25000シリーズについて触れられていましたが、SQuBOKガイド V3においては、ISO 25000シリーズに統一されています。ISO 25000シリーズに関して内容をしっかりと確認しておきましょう。
学習に影響がないものとしては、「シラバスの構成の変更」にも記載していますが、SQuBOKガイド V2で「使用性」としていたものが、SQuBOKガイド V3において「ユーザビリティ」と変更されています。こちらは表現の変更にとどまるので、学習には大きな影響はないでしょう。
まとめ
SQuBOKガイドの改訂によるシラバスの更新の注意点は下記の通りです。
内容の新規追加
最も影響が大きい部分となります。SQuBOKガイドV3を読み、最新の動向を把握しておきましょう。
シラバスの構成の変更
構成が変更になったことにより、学習対象の用語にも影響が発生しています。変更点はシラバスを見て確認し、SQuBOKガイドV3に記載されている内容の理解を深めましょう。
用語の変更
ISO 25000シリーズに関して理解を深めておきましょう。それ以外に関しては、表現の変更となるため影響は小さいですが注意しておきましょう。
おわりに
2021/11/13(土)に予定されている試験が、シラバスが改訂されてから初めて行われる試験となります。コロナ禍は長引いていますが、試験自体は現段階では実施される予定です。実施については、JCSQEのホームページで案内される予定ですので、こまめに確認をしながら少しずつ学習を進め、万全の態勢で受験できるようにしましょう。
今回の情報が、JCSQE(初級)の受験を検討されている皆様の学習の参考になれば幸いです。