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受験対策がスキルアップに!『ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE)』の立案者に聞いた、認定取得で得られる効果とは?

最終更新日時:2021.06.07 (公開日:2021.06.01)
受験対策がスキルアップに!『ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE)』の立案者に聞いた、認定取得で得られる効果とは?

『ソフトウェア品質技術者資格認定』(JCSQEJUSE Certified Software Quality Engineer)とは、一般財団法人「日本科学技術連盟(日科技連:JUSE)」が主催する、ソフトウェア品質に関する知識を身につけた技術者を認定する資格です。QA担当者だけでなく、PMや開発者など、ソフトウェアに関わるすべての人を対象としているのが特徴です。今回は、JCSQEの目的や取得するメリットなどを日本科学技術連盟 SQiPソフトウェア品質委員会 委員長である野中 教授に伺いました。

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JCSQE ソフトウェア品質技術者資格認定

実施 

  • 初級試験(年2回)
  • 中級試験(年1回)

JCSQE』=『ソフトウェア品質技術者資格認定』とは?

  • エンジニアがJCSQEを取得するメリット
  • 受験対策がスキルアップにつながる
  • 大きな広がりを見せる、JCSQEの輪
  • 努力の結果を客観的で信用できる「形」に

プロフィール

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野中 誠 氏

東洋大学 経営学部 経営学科 教授 日本科学技術連盟 SQiPソフトウェア品質委員会 委員長

「IT」と「経営」を主題に、現代において、デジタルと経営が一体化している意義を考察し、品質にも関連付けた教育を展開。研究者として、ソフトウェアの品質研究に携わり、なかでもデータに着目し、客観的な事実を基に品質改善・向上を進める、組織的な施策や品質改善手法などの論究を重ねている。「JCSQE」には、資格の運営に関わる委員会の委員長として企画段階から深く関わっている。

JCSQE』=『ソフトウェア品質技術者資格認定』とは?

――JCSQE』とは、どんな資格認定でしょうか?

野中氏JCSQEJUSE Certified Software Quality Engineer:ソフトウェア品質技術者資格認定)は、2008年にスタートした、ソフトウェア品質に関する認定資格です。すべてのソフトウェア技術者に品質技術を持ってもらうことがコンセプトの中心にあります。

なぜ、このコンセプトかというと、一つには「ソフトウェアの品質を改善・確保するのは技術である」という当たり前のことをしっかり認識してもらいたいと考えているからです。「気合いと根性でなんとかする」のではなく、エンジニアリングとして、品質の課題に対して技術をもって対処するのだという認識をJCSQEを通じて世の中に広げたいと思っています。

そして、個人のスキルの範囲のみならず、活動を組織的に展開していくことも含めて、品質技術を多くの人に身につけていただきたいという想いがJCSQEには込められています。

――JCSQEは、どんな人が受けたらよい資格ですか?

野中氏「ソフトウェア品質」に関わる肩書きや役職、役割を持って仕事をされている方に、ぜひ受けていただきたいと思っています。日科技連をはじめとする、私たちの目的の一つが、一定以上のソフトウェア品質の知識を持ったエンジニアをサーティファイ(証明・保証)することです。自信を持って、社内でも存在感を発揮してもらいたいと考えています。

一部で見られているような、「品質に関わる人たちは、開発に関わる技術を持たない人」と考えられるのはよくない風潮です。品質に関わる人がその業務に求められる専門性を持って、チームや開発に貢献して、お客様に価値を届ける専門的な仕事をしているという認識をJCSQEで広めていきたいと思っています。

――JCSQEはどのくらいの人数が受けていて、合格率等はどのくらいでしょうか?

野中氏今、JCSQEWEBサイトを見ると、あと少しで受験者数が1万人になるところです(注:収録は20214月にオンライン会議形式で実施)。初級の合格率は、40%に少し満たないほどです。

資格試験のシラバスは、知識体系として用いる『SQuBOK Guide(スクボック;ソフトウェア品質知識体系ガイド)』のバージョンアップに伴って変わってきます。このたび、SQuBOK Giudeが第3版になったことで、AIやクラウドの品質保証など、技術的なトピックが広がりを持ってきました。これに伴ってJCSQEがカバーする範囲も広くなり、JCSQEの難易度がすこし上がったように感じられることになるかもしれません。ただ、今後のソフトウェア技術の進化を考えると、これらは知識として必要ですので、安易に難易度を下げるようなことはしない方針です。

――知識や実力を保証することから考えると、「JCSQEを持っている人は信用できる」ということにもつながりますね。

野中氏やはり、努力して知識を得て、それをベースに仕事をされる方をJCSQEでサーティファイしていきたいので、その方向性は維持していくことになります。ものすごく難しい資格ではありませんが、決して簡単なではない初級試験になっています。

エンジニアがJCSQEを取得するメリット

――JCSQEを取得するメリットについて、どのようなことを想定されておられますか?

野中氏ソフトウェアの品質に関わる仕事をされる中で、一定の知識を持っていることが、日科技連やSQiPといった、第3者によってサーティファイされていることが一つめのメリットです。

もう一つのメリットとしては、JCSQEのベースとなる『SQuBOK』を学ぶことで、ソフトウェア品質の知識体系が頭に入り、かなり知識の範囲が広がることです。少なくとも、資格試験に向けた勉強をすることで、キーワードレベルで関心事を広げることができます。そして、結果的にキーワードや言葉が標準化できるため、他のエンジニアとコミュニケーションをとりやすくなることにメリットを感じていただけたらうれしいです。

――資格試験をきっかけに世界が広がるというのは大きなメリットですね。ところで、今、資格試験ブームといわれることもありますが、一般の人たちがJCSQEの初級に挑戦する価値はありますか?

野中氏難しい質問ですね。価値があるかないかでいえば「あり」ですが、それでも、実務的な取り組みを経験されてないと、SQuBOKを読んでもよくわからないのではないか? というのが、正直なところです。一般的な情報業界、IT業界のエントリーとしては、やはり「情報処理技術者試験」になるかなと思います。

受験対策がスキルアップにつながる

――JCSQEは、初級試験は年2回、中級試験は年1回、実施されると伺ったのですが、どのような準備(勉強)をして臨めばよいですか? 『SQuBOK』の学習が中心になるのでしょうか?

野中氏はい。基本は、SQuBOKです。実は、実際の合格者の情報を見ますと、SQuBOKに一度も触れてない方も合格されていますが、そういった方は、ソフトウェア品質について高い関心を持って目を向けている方だと推測しています。このようにSQuBOKを軸にしなくても合格できる試験ではありますが、私たちとしては、日々の業務をSQuBOKのフレームワークで整理し直してから、JCSQEの資格に臨んでいただくと、かなり受かりやすくなると思っています。

――自分自身のスキルアップやレベルアップのために最適で、さらに試験にも受かりやすくなるというわけですね。

野中氏分類整理をすることによって、思考が深まっていきます。標準的なキーワードを理解しながら、あるいは実務を紐付けながら学ぶことで、結果的には業務における品質が確保され、プロセス全体の質が上がり、全体が良くなっていくことを期待しています。

――個人のレベルアップにより、所属している組織が良くなり、さらに日本のソフトウェア業界が良くなっていくという発想が根底には流れているということでしょうか?

野中氏そうですね。日科技連にソフトウェア品質の委員会が置かれたのは1980年です。まず、製造業で培ってきた品質管理やTQCTotal Quality Control)の考え方をソフトウェアにも取り入れました。その後、大規模化が進み、複雑になったソフトウェアに対して、品質管理のアプローチで問題解決をして、産業全体の成熟度を高めていこうとする流れの中でJCSQEが登場しています。ですから、JCSQEには、マネジメントのレベルを上げていきたいという想いも込められています。

大きな広がりを見せる、JCSQEの輪

――話が変わりますが、これまで、JCSQEに関わってこられた中で印象的に残るエピソードがありましたら、教えてください。

野中氏私は、この活動をする中で、いろいろな企業の方の哲学に触れることができました。企業によって品質に対する考え方や、重視していることが違っていたり、品質への想いがぶつかりあったりする場にリアルで参加させてもらえて、そこで学ぶことができたのは私にとって大きなことでした。

この熱気が、どこまで受験者に伝わるのかわかりませんが、そういった熱い議論の結果を試験問題として皆さんにお届けしていることが少しでも伝わったらうれしいですね。

――過去問題がWEBサイトで公開されていますが、その行間から熱気を読み取ることもできそうですね。

野中氏問題の解説などで、行間に込められた想いの部分は中級の方により強くあらわれている傾向があります。熱気を感じるなら中級だと思います。

――そう伺うと、初級をクリアしたら、中級にチャレンジしたくなる方も増えそうです。JCSQEへの反応はいかがですか?

野中氏少し前になりますが、JCSQEに向き合うコミュニティが生まれました。そういう方たちがSQiPソフトウェア品質委員会のシンポジウムでセッションを持って発表されている様子を見て、草の根的に広がっていることが感じられたことが、私にとっては新しい発見でした。今は、いろいろな方々によって活動が広がっていくことに面白さを感じています。

――資格試験を核にした、ソフトウェアの品質を向上させていくコミュニティができているのですね。

野中氏JCSQEが起点となって、いろいろなところで広がり、お互いが刺激をしあいながら、結果としては日本のソフトウェア産業全体が底上げされていくのが望ましいと考えていますから、とても良い流れだと感じています。

努力の結果を客観的で信用できる「形」に

――JCSQEを今後、どのように発展させていかれますか?

野中氏先ほどの繰り返しになりますが、SQuBOK Guideの第3版が出たことによって、特にAIですとか、IoTですとか、ビッグデータですとか、こういったものを取り込みながら、品質知識体系がアップデートされました。

このように、SQuBOKをアップデートし、それに伴ってJCSQEをアップデートしていくことで、知識体系と資格試験を陳腐化させないことが大切になります。資格試験で問うていることが、現場の品質保証と合わないことになってしまうと、品質保証の資格であるJCSQEの存在意義も薄れてしまいますので、世の中の変化に合わせていく、いや、むしろ先取りしていく必要があります。

そして、品質保証の対象となるソフトウェアの実現技術が変わっていったとしても、変わらないコンセプトや、基本的な考え方は継承していきます。現実の状況に合わせながら、守るべきものと変えていくべきもののバランスを取って前進していくことが大事だと思っています。

――最後に、Qbookの読者に一言、お願いいたします。

野中氏JCSQEのような資格はご自分の自信になると思いますし、スキルを客観的に評価することになると思いますので、努力の結果を、具体的な形に示す一つの道具として、JCSQEを目指していただけたらありがたいと考えています。そのための準備として、ぜひ一度、SQuBOKを手に取ってみてください。

――本日は、有意義なお話をくださり、ありがとうございました。

文・聞き手:神田富士晴

執筆者:Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。