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12月からJSTQB Advanced Level テストマネージャ試験のシラバスが変わります
資格対策特集
資格対策特集 更新日 2025.09.22
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12月からJSTQB Advanced Level テストマネージャ試験のシラバスが変わります

執筆: Qbook編集部

ライター

Japan Software Testing Qualifications Board(以降、「JSTQB」と記述)が開催している、JSTQB認定テスト技術者資格 Advanced Level テストマネージャ試験(以降、「ALTM試験」と記述)についてのお話です。

2025年8月4日、JSTQBのホームページにて、ALTM試験の試験教材であるシラバスの最新バージョンが公開されました。

最新バーション
Version 3.0.J01(以降、「新シラバス」と記述)

こちらのバージョンが、なんと2025年12月からの試験に適用される予定です。
逆に言うと、2025年11月末までは、

旧バージョン
Version 2012.J04(以降、「旧シラバス」と記述)

が適用されるため、試験が変わる前にALTM試験を受験するか、試験が変わった12月以降に受験するかの選択が求められます。その選択を皆さんが正しく行えるよう、本記事では、12月から適用となる新シラバスと旧シラバスにどのような違いがあるのか、代表的な箇所を解説します。

今回の記事は速報版として、目次レベルでの比較を行い、新旧比較を行っていきます。

もくじ
  1. 目次の比較
  2. 内容の比較
    1. 旧シラバス 第1章「テストプロセス」
    2. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「状況に応じたテストマネジメント」
    3. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.3リスクベースドテスト」
    4. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.4テストドキュメントとその他の成果物」
    5. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.5テストの見積もり」
    6. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.6テストメトリクスの定義と使用」
    7. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.8分散テスト、アウトソーステスト、およびインソーステスト」「業界標準適用のマネジメント」
    8. 旧シラバス 第3章「レビュー」
    9. 旧シラバス 第4章「欠陥マネジメント」
    10. 旧シラバス 第5章「テストプロセスの改善」
    11. 旧シラバス 第6章「テストツールおよび自動化」
    12. 旧シラバス 第7章「スタッフのスキル - チーム構成」
  3. 資格の扱いについて
  4. 2025年12月の試験変更に向けて

1. 目次の比較

旧シラバスと新シラバスの目次を比較すると、目次レベルで大きく変わっていることが分かります。項目は追加されていますが、全体のページ数としては71ページから58ページに減っており(第1章~最終章まで。参考文献、索引、付録のぞく)、情報量としては新シラバスの方が少ないことが分かります。

これはおそらく、試験時間が180分から120分への変更されたことによる影響が大きいのではないでしょうか。

以下の表は、旧シラバスと新シラバスの目次の対比表です。

スクリーンショット 2025-09-11 10.18.33.png

スクリーンショット 2025-09-11 10.18.40.png

このように、「変更なし」の箇所が一部しかなく、多くの項目が追加・削除・名称変更・統合・移動されています。

新シラバスの各章のボリュームですが、第1章「テスト活動のマネジメント」は、旧シラバスの4割を占めた第2章「テストマネジメント」(一部を除く)のほか、第1章「テストプロセス」、第5章「プロセス改善」、第6章「テストツール」が一つに統合されています。そのため、全体の5割以上を占めています。

新シラバスの第2章「プロダクトのマネジメント」は、旧シラバス第2章にあった「ツールのメトリクス」と「テストの見積もり」、第4章の欠陥マネジメントの内容がまとまっています。

新シラバスの第3章「チームのマネジメント」は、旧シラバスの第7章「スタッフのスキル - チーム構成」の範囲がそのまま踏襲されており、ボリュームも大きくは変わっていません。

追加された項目として特徴的なのが、第1章の「ハイブリッドソフトウェア開発モデルにおけるテストマネジメント」と第2章の「ハイブリットソフトウェア開発における欠陥マネジメント」です。旧シラバスでは、シーケンシャル開発(いわゆるウォーターフォール開発)の内容が中心で、一部でアジャイル開発の内容が記載されていましたが、さらにそれらを統合した開発モデルであるハイブリット開発にも重点を置いていることが分かります。

2. 内容の比較

次はもう一歩踏み込んで、旧シラバスの章単位で比較していきましょう。

2-1. 旧シラバス 第1章「テストプロセス」

スクリーンショット 2025-09-11 10.18.47.png

マネジメントプロセスであるテスト計画、モニタリングとコントール、テスト終了(完了)以外の項目がばっさり削除されています。「終了基準の評価とレポート」も項目としてはなくなっていますが、旧シラバスでは非常に内容が少ない項目だったため、他の項目に吸収されたようです。

2-2. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「状況に応じたテストマネジメント」

スクリーンショット 2025-09-11 10.18.55.png

「その他の」が「さまざまな」という表現に変わっていることが分かります。前述のとおり、旧シラバスではシーケンシャル開発を中心に記載されていましたが、世の中にアジャイル開発やハイブリット開発が増えた影響で、シラバスでも、それらの開発モデルがシーケンシャル開発と同じレベルでの紹介に変わったことを表しています。

また、「テストレベル」と「テストタイプ」という表現が、新たに項目に使われています。旧シラバスでも「テストレベル」や「テストタイプ」の用語は使われていたものの、テストレベルやテストタイプごとの具体的な内容に関する記述はありませんでした。新シラバスでは、テストレベルやテストタイプごとの記述が含まれており、より実際の場面に合った考え方ができそうです。

2-3. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.3リスクベースドテスト」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.00.png

用語の「リスク」が「品質リスク」という表現に置き換わっているのが分かります。これは、ソフトウェア開発におけるリスクが、プロダクトの品質に影響のある「品質リスク」と、プロジェクト成功を妨げる「プロジェクトリスク」の2つが存在しているため、項目名を「品質リスク」とすることで、前者であることをより明確にしたかったのでしょう。

また、「リスクベースドテストに関連する成功メトリクスと困難さ」という項目が追加されており、「成功メトリクス」の内容は旧シラバスの本文に記載されているものの、「困難さ」に関しては完全新規の内容のようです。

2-4. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.4テストドキュメントとその他の成果物」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.04.png

他の章もそうですが、「その他の~」という表現を避けているのが分かります。筆者もテストマネージャ試験の学習をした際に、「その他の」が何を指しているか分かりづらいという感想を持ったので、変更は非常に喜ばしいです。

新シラバスでは「1.4.1 テストアプローチの選択」という項目が増えていますが、旧シラバスではテストアプローチという用語はほとんど登場しておらず、新シラバスで大出世しています。逆に、旧シラバスにあった「マスターテスト計画」「レベルテスト計画」という項目が無くなっていますが、こちらもシラバスの内容がシーケンシャル開発メインではなくなった影響と思われます。

2-5. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.5テストの見積もり」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.09.png

新シラバスでは、旧シラバスと比較して項目が細分化されており、ページ数も1.5ページから3.5ページと増量されています。旧シラバスで学習していた人が新シラバスでの試験を受験する場合は、注意が必要な箇所になります。

2-6. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.6テストメトリクスの定義と使用」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.15.png

こちらも同様に項目が細分化されていますが、4.5ページ→4ページとほぼ同じ分量となっています。元々1つの項目の内容が大きかったため、分割したのでしょう。

2-7. 旧シラバス 第2章「テストマネジメント」-「2.8分散テスト、アウトソーステスト、およびインソーステスト」「業界標準適用のマネジメント」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.20.png

完全に無くなりました。

2-8. 旧シラバス 第3章「レビュー」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.25.png

完全に無くなりました。元々「テストマネジメント」の視点とは少し離れた内容でしたので、削除は妥当かもしれません。

2-9. 旧シラバス 第4章「欠陥マネジメント」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.30.png

ここでも「アジャイルチームにおける~」と「ハイブリットソフトウェア開発における~」といったシーケンシャル開発以外の項目が追加されているのが分かります。それ以外は、多少まとめ方や表現は変わっているものの大きくは変わっていないように見えます。

2-10. 旧シラバス 第5章「テストプロセスの改善」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.35.png

「CTP」と「STEP」に関する項目が削除されています。旧シラバスでも、シラバスの記載だけではどんな内容なのかが掴みづらい箇所だったため、削除されたことにより学習しやすくなったのではと思います。

その代わり、新シラバスでは「分析ベースのテストプロセス改善アプローチ」と「ふりかえり」が新たに追加されています。削除された2つの項目よりは、とっつきやすい内容といえるでしょう。

2-11. 旧シラバス 第6章「テストツールおよび自動化」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.39.png

「オープンソースツール」と「カスタムツール」の項目が無くなっており(内容もほぼ無くなっている)、「ツール導入のためのよい実践」「ツール選定のための技術的側面とビジネス的側面」が追加されています。

2-12. 旧シラバス 第7章「スタッフのスキル - チーム構成」

スクリーンショット 2025-09-11 10.19.44.png

構成は大きく変わっているものの、内容としてはあまり変わっていません。ただし、新シラバスの「3.1.1 4つの能力領域における代表的なスキル」に記載のスキル分類に関しては、旧シラバスと内容が異なっているため、注意が必要です。

3. 資格の扱いについて

12月からのALTM試験は、適用されるシラバスが変わる以外に、資格の名称も「JSTQB Advanced Level テストマネージャ」から「JSTQB Advanced Level テストマネジメント」に変更されます。

JSTQBを運営しているNPO法人 ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)に問い合わせたところ、「JSTQB Advanced Level テストマネージャ」と「JSTQB Advanced Level テストマネジメント」は別資格扱いになるとのことで、「JSTQB Advanced Level テストマネージャ」の資格を取得した方が「JSTQB Advanced Level テストマネジメント」の有資格者を名乗ることはできないようです。

ただ、資格自体の扱いが変わるわけではなく、さらに上位のExpert Levelを受験できる資格を得ることに違いはありません。

4. 2025年12月の試験変更に向けて

旧シラバスと新シラバスの違いについて簡単に解説しましたが、今後ALTM試験を受験する際はどちらで受験すべきでしょうか?

筆者の経験からして、日常の業務を行いながら、試験の学習を行って受験をするとなると、期間として3か月程度の学習を要します。また、合格率が非常に低く、3か月間空けなければ再受験できないため、12月までに旧シラバスの受験で不合格となると、必然的に次の受験は新シラバスでの受験となります。

よって、今まで学習を全くしておらず、これから学習を始める方であれば、新シラバスでの学習を行い、12月以降の試験を受験する方が無難と言えるでしょう。ボリュームも少なくなっていますし、内容も最近の業界の動向に合わせて改定されているため、より実務的です。旧試験の試験時間180分というのも結構大変で、集中力を維持するのが難しいため、120分と短くなったのも受験しやすさが向上しています。

また、Foundation Levelシラバスの最新バージョンであるV4.0にも適合しているため、V4.0でJSTQB Foundation Level試験を受験された方にも新試験をお勧めします。旧シラバスでは、テストプロセスの分類などV4.0の記述と上手く適合できていない箇所があるため、人によっては学習時に気になるかもしれません。

逆に、すでにALTM試験の対策を行っている方や、一度受験済みで再受験を行いたい方にとっては、今までの学習を活かせるシラバス対応の試験を受験した方が良いでしょう。弊社では、試験対策としてeラーニングコンテンツをご用意しており、現状は旧シラバスに対応した内容のため、出来るだけ早く短期間で学習を終わらせたい方も、旧シラバスでの受験を目指すメリットはあります。

2025年12月に試験内容が変わる前に受験するかどうかお悩みの方に、少しでも判断材料をご提供できれば幸いです。

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