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第19回 隣のQAに聞く
隣のQAに聞く 2024.01.22
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「QEは開発と一緒になってアジャイルに品質を作り上げていく」伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 日野杉 賢祥 氏

執筆: Qbook編集部

ライター

「QEは開発と一緒になってアジャイルに品質を作り上げていく」伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 日野杉 賢祥 氏

様々な現場でQA業務に携わっている方々の「声」をお届けする『隣のQAに聞く!』。現在多様なオンラインサービスがリリースされ、社会のデジタル化が急速に進んでいます。同時にサービスやソフトウェアの品質への関心も高まりを見せており、QA・品質向上の重要性は増すばかりです。そんな中、他のチームでは、どのようにQA業務を実施しているか、気になっているエンジニアの方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 Buildサービス部の日野杉 賢祥さんにQAのミッションやQA組織を動かすポイントをお話しいただきました。

今回インタビューを受けてくださった方

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日野杉 賢祥 氏

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 Buildサービス部

1990年生まれ。テスター、QA、プログラマーと様々な業務を経験。
「強力な機能テストの経験」という募集要項を見た際に「強力な機能テストとはなんだろう?」という疑問をきっかけに面談を重ね、2020年11月にCTC Buildサービス部にQEとして入社。「QEという職種をより多くの方に知ってもらいたい」という使命を持って活動している。

もくじ
  1. 品質を向上させてお客様に良い商品を届けたい
  2. QEは開発と一緒になってアジャイルに品質を作り上げていく
  3. 依頼者側の品質に対する意識改善にも取り組むことが重要
  4. QA/QEに向いているのは他人に興味がある人

品質を向上させてお客様に良い商品を届けたい

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――これまでのご経歴をお教えください。

新卒時は、営業職を志望しており、営業として内定をいただきました。しかし入社時に社長から「やはりエンジニアを企業に売るには、まずお前がエンジニアになるべきだ」と言われ、数年ほどエンジニアとして主にデバックやテスターとしての下積みを重ねました。いつになったら営業ができるのか社長に聞いたところ「営業はもうたくさんいるからお前はこのままそっちの道でやれ」と言われ、「楽しいからいいか!」という流れで私のQAとしてのキャリアが始まりました。

――QAに興味をもったきっかけは何ですか。

エンジニアとしてソフトウェアを作る過程で、品質を向上させてお客様に良い商品を届けたいなと思うようになっていきました。そこでQAの専門性を求めていった形になります。

CTCに転職する前は上場を目指していたベンチャー企業でQAとしての力を発揮できる環境だったので、社内登壇やメディアへ露出していました。そんなときに、CTC Buildサービス部採用担当から「ぜひ、自動化エンジニアとして来ていただけないか」「あなたが品質管理専門の正社員1人目です。あなたの好きなようにできます」とオファーをいただき、「よし!やってみよう」と思いCTCへ入社しました。

QEは開発と一緒になってアジャイルに品質を作り上げていく

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――日本を代表する開発企業ではどのような体制で品質保証に取り組まれていますか?

私が入社した当時は、Buildサービス部を立ち上げたばかりの部署で、品質に責任を持っている方に正社員はいませんでした。ゆくゆくは、Buildサービス部をもっと大規模なものにし、クオリティエンジニアチーム(QE)のトップになるんだ、という夢を膨らませています。現在はまだQEのロールは私と派遣社員の方の2名体制で取り組んでいる状況です。

――Buildサービス部とは具体的にどのようなチームなのでしょうか。

SIerとしてお客さんからシステムを発注いただき納品するだけではなく、お客様と共にプロダクトを作りあげ、最終的にはお客様自体にアジャイル開発チームを内製化する所まで伴走する役割を担っているのがBuildサービス部です。開発するだけではなく、お客様組織の中にアジャイルマインドやケイパビリティが根付くように伴走する事を大事にしています。

――QAという一般的な言葉がある中で御社では"QE"という定義付けをしているのが、珍しいように感じます。そこに込められている想いはどんなものがあるのでしょうか?

いわゆる「QA」はお客様目線でエンジニアとは別動隊のイメージで作業されている会社が多いですよね。そもそも品質は独立しているものと考えて、エンジニアが作ったものをテストする役割があります。それに対してクオリティエンジニアである「QE」は、開発と一緒になってアジャイルに品質を作り上げていく、そういう想いで立ち上げた経緯があります。

QEはQAよりさらに開発やプロダクトの内部に入り込んでいるエンジニア、とイメージしていただければわかりやすいのではないでしょうか。必要があれば私たちQEは実装のレビューや単体テストの結果のレビューもやっています。

――サービスの設計や構想段階からエンドユーザーに接するところまで、全てQA/QE目線でチェックしているということですね。

「広く浅く」というよりも、「広く、そして一部は"超"深く」のようなイメージがあります。
そのため、新しいプロジェクトや技術が次々に出てきて、非常に幅広い知識が求められます。置いていかれないよう常にキャッチアップし整理していかなければなりません。業務の合間を縫ってうまく勉強時間を確保して、楽しくやらせていただいている状況です。

もちろん、ソリューションオーナー、ソリューションアーキテクト、ソフトウェアエンジニア、DevOpsエンジニア、UX/UIデザイナーといった専門性を持った方々もチームにはいますので、そういった信頼できる方々と一緒に業務を進めています。

依頼者側の品質に対する意識改善にも取り組むことが重要

――これまでの失敗談・苦労があればお教えください。

今まさに課題感を感じていることは、顧客側、依頼側の品質に対する意識改善が難しいという点ですね。
さまざまなテスト会社様のお力もあって、お客様も「テストや品質は大事だよね」と考えてくださっていますが、「自動化って必要なの?」というような反応の方も多く、そういったお客様に対してテスト自動化の重要性を説得することに日々失敗しているのが現状です。

10年、15年前は、何だったら「テストもいらなくない?」という雰囲気さえありました。やはりそこに踏み込んでいって10年後にはむしろテスト自動化が当たり前の状況を作りたいと思っています。今はそこに向けて活動を全力でやっているものの、いかんせん私の力だけでは難しいですね。

――品質を担保して考えるエンジニアが増えることで、顧客側にも意識が広まっていきそうですね。

そういうことを成功体験として積んでいけば「やはり自動化をやらなきゃいけないね」とご理解いただける方も増えると思うので、今回のこの取材を皮切りにどんどん発信していきたいです。

QA/QEに向いているのは他人に興味がある人

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――QA/QEのチームを運用するとき、チームにはどんな人材が向いていると考えますか?

技術的な面でいうと、実はそんなに重要視はしていません。なぜなら技術は後からでも何とでもなりますし、お客様の状況や案件によって使う技術も変わってくるからです。ですから、技術面については最低限の基礎さえ押さえていればいいと思います。その上で、私がチームに欲しいなと思う人材は、「他人に興味がある方」ですね。むしろ、そこが一番大事だと思います。この仕事は本当に人を見なければ務まりません。

――チームを運営する上で意識されていること、気を使ってらっしゃることがあれば教えてください。

チーム全体を通して意識していることは、とにかく会話をするようにしていますね。
あとは、その人の「人となり」を知ろうと努めています。雑談が始まってうちとけていくのを意識し、その人が今どういう状態で何に困っているのかを見ることはとても重要です。チームでは毎日「朝会」をやっており、その際に何か悩みや行き詰まりを抱えているような雰囲気を感じたり、いつもより少し元気の無さそうな様子を感じるメンバーに対しては個別で「何かありましたか?」「どうしました?」と声かけるようにしていますね。

――今後、QA/QEの活動を通じて達成したいことはありますか。

私が使いたいサービスを全て自動化して世に出していきたいです。また自分自身も顧客として利用して、家族や友人に「これは俺が作ったんだよ。自動化も全部やったんだ。品質が良いでしょう」と自慢できるのが理想です。もちろん、まだまだほど遠いですけどね。

――QA/QEとして働く方、目指している方にメッセージをお願いします。

この仕事はやることが非常に多く大変ですが、もしQEに興味があったらぜひ私にお声掛けください。QEのキャリアパスは定まっていないのが現状なため、今叩き台を作っている最中です。そこにはQEとして必要なマインドや知識スキルを定めて「今はレベル2だけど、これができたらレベル3だよね」というような状態に完成度をあげていきたいと考えています。

もしQAとして満足されていない方がいたら私がQEとしての業務を全部教えるので、一緒に働きましょう。

――本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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執筆: Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。