様々な現場でQA業務に携わっている方々の「声」をお届けする『隣のQAに聞く!』。企業の営業活動における生産性を向上するために営業支援ツールSFA/CRMの普及が進んでいます。
株式会社マツリカが開発・運営するSFA/CRMは、入力自動化とAIの力で幅広い業界の営業革新をサポートしています。
国内のSFA/CRMをリードする同社では、どのようにQA組織が運営されているのでしょうか? 今回、QbookではマツリカでQAエンジニアとして活躍している西川幸博さんにQAのミッションやQA業務について伺い、同社のQA戦略や考え方について迫ってみました。
今回インタビューを受けてくださった方
- 西川 幸博 氏
株式会社マツリカ QAエンジニア
大学時代にコンピューターサイエンスとコンピューターミュージックを学び、ITと音楽のある人生を過ごそうと心に誓う。事務、テストエンジニアを経て、未来的な働き方とValueに共感し2019年に株式会社マツリカ入社。フルサラウンドシアターシステムと音楽スタジオ(防音室)のある家に住むという野望を持つ。
- もくじ
1. "何でもできる"より"誰もが使える"を目指して
――はじめに、QA業務に携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
大学では情報系でコンピューターサイエンスとコンピューターミュージックを学び、その後、IT系の会社で営業系事務やインサイドセールス、テストエンジニアなどを経験しました。
テストエンジニアとして品質を学んでいく中で、自社製品のある会社で開発にも携わりたいと思い、転職を考えていました。そんなときに株式会社マツリカに出会い、未来的な働き方と価値観に共感し、2019年5月に入社しました。
実は、転職活動時はQAではなくフロントエンドのエンジニアとして応募をしていました。しかし、面接で「QAの経験がすごくありますね。その経験を活かして弊社でもQAとしてどうですか?」と提案をいただき、テストエンジニアの経験を活かして、QAエンジニアとして働いています。
プライベートでは子どもの頃からゲームをよくやっていました。ゲーム配信や大会に出るようなことはしていませんが、このゲームの経験が、業務上でも活かせることが多々あるなと思っています。
――御社のビジョンとサービスについて教えてください。
弊社は「創造性高く遊ぶように働ける環境を創る」をビジョンに掲げ、テクノロジーの力であらゆるワークライフを支援し、人々の生産性向上と創造性の解放を実現していくことを目指しています。
メインサービスは次世代型営業DXプラットフォーム(SFA/CRM)「Mazrica(マツリカ)」で、AIを駆使して営業やマーケティングに関する情報や顧客情報を一元管理し、営業活動の生産性向上をサポートしています。
――大手企業を中心に日本でもここ10年くらいでSFA/CRMの関心が高まっていますよね。競合他社とのサービスの違いについて教えてください。
最近でも大口のお客様の契約が増えているのを見ると「やはり、求められているのだな」と感じます。競合他社さんでは外資系企業のSFA/CRMが有名ですが、弊社は日本のビジネス環境に合わせた日本人向けのわかりやすさと使いやすさが特徴で、"何でもできる"より"誰もが使える "というイメージですね。
そのほかのサービスには、法人営業のプロセスで発生しがちな「商談が前進しない理由」を解消し、スムーズな商談推進を支援するDealPods(ディールポッズ)もあり、2023年4月からリリースしています。営業活動と購買活動、双方の活動を合理化して顧客エンゲージメントと営業成果を最大化するプラットフォームとして、近い将来、他の言語や地域へも展開する予定です。
2. 開発の初期段階からジョインして提案・要望
――御社のQA/品証業務の位置づけ・ミッションを教えてください。
一般的にQAは最終フェーズのイメージがあると思いますが、弊社では開発の初期段階から参加して提案・要望を入れられるのが特徴です。いわゆるウォーターフォール型ではなく仕様を決める段階からQAがジョインし、PMとのキャッチボールがあることでQAも学びを深めたりテストケースに活かせたりしていることがよくあります。
それこそ、UX的な話でも実際にデザインを決めたりはしませんが、「そこにあるよりもこちらにボタンがある方が良いのでは?」「その色は見づらいかもしれません。」「その文言だと齟齬が出ませんか?」など、割と早い段階からQAとして提案しています。
――西川さんはフロントエンジニアで応募された経緯もあり、あらゆる部分でご自身の興味もQA業務に活かせているのではないでしょうか。
確かにそういう側面もありますね。私の場合はフロントエンドの知識が若干あるので、QAとして「こういうリスクありませんか」という意見出しとかはすることもありました。一般的なIT企業では開発エンジニアとQAが別れることが多いですが、マツリカではエンジニアとQAどっちが偉いとかもなく、対等な関係で業務ができています。
3. リモートでもコミュニケーションを円滑に
――サービス品質を改善していくために、工夫しているポイントがあれば教えてください。
コミュニケーションをスムーズに取れるよう意識していますね。たとえば、弊社では開発だけではなく営業やバックオフィスなどの職種もリモートワークができる体制になっているため、北は北海道、南は沖縄まで、住んでいる場所はバラバラです。よく「リモートワークにするとコミュニケーションが不足しがち」と言われますが、そうならないようにちょっとしたことでも「今、通話いいですか?」と気軽にコミュニケーションを取るようにしています。
またQAで何かバグを見つけたときは必要な要件を文字ベースで的確に伝えつつ、硬くならないように絵文字を付けることもよくありますよ。
――詰める感じではなく、お知らせする感じに徹している雰囲気が伝わってきます。各地で勤務されて自由に働き方が選べるのもいいですね。
そうですね。QAに沖縄在住の社員もいますが、日常的に業務上のコミュニケーションが取れていますし、毎週ある朝会や会議も問題なくできていると思います。
――QAの業務遂行にあたって工夫されている点で、ゲーマー的視点みたいなものは役に立っていますか?
ゲームで例えていくと、ランクや自分の立ち位置を上げるみたいなことをやるときは、まずゲーム自体を理解しないといけませんよね。会社でいうと製品自体への理解が重要になってきます。
たとえば単純にジャンプをするだとしても「どれくらいボタンを押したらどれくらい長くジャンプするか」、攻撃ボタンを押すにしても「相手がこういう攻撃をしてきたときにこの攻撃じゃないと勝てない」など、そういったことを一つ一つ理解していく点においては自然に身に付いていました。それがQAするとき自然に漏れなく自分の中から出てくるのは実感としてありますね。
4. 会社の成長と共にテスト自動化の実装が課題に
――御社の部門内で課題となっていること、改善したいことはありますか?
マツリカが会社として急成長している段階で大口のお客様が増えてきたこともあり、システムの安定性の向上やテスト自動化の実装が課題となってきました。現在、QAの部署は業務委託やアルバイトの方を含めると 10人体制ですが、テスト自動化の実施は私一人でやっているので、リグレッションテストに時間がかかっているのが現状です。
――やはり、大規模なシステムになると自動化が重要なテーマになってきますね。
そうですね。今年から自動テストを走らせており、少しずつですが成果も見えてきました。たとえば今まで回帰テストに1ヶ月ほどかかっていたとしたら、1週間ほど短縮して3週間でリリースできるぐらいの影響です。
今後は効率化を突き詰めていくのと同時に、スキルを持った人を採用し、自社でテスト自動化スキルを高められるようにしたいと考えています。少しずつテスト自動化をしていく雰囲気を業務の中に自然に取り入れられるようにしていきたいですね。
――どんなとき、QA/品証としての「やりがい・魅力」を感じておられますか?
それこそ、最初にお話したように開発の初期段階から参加できることはやりがいを感じますね。PMと仕様を決めるとき「こういうリスクありますが大丈夫ですか?」「こういうことが予測されますが大丈夫ですか?」と自分の提案・要望を入れてもらうのですが、実際にリリースして「その指摘がなかったら本当にやばかった!」と後々判明して言われたときに自分の存在意義を感じます。
これはあまり喜んでいいのか分かりませんが、リリース前の機能として確認した際に「え、そこで落ちるんだ」「強制終了されるんだ!」と変な挙動やバグが発生したのを見つけると結構面白いです(笑)。ゲームでいうなら何かのキャラが変な動きをするのを見つけたときみたいな感覚に似ていますね。
5. ゲーマーにはQAエンジニアの適性がある
――今後、業務を通じて達成したいことなどございましたらお教えください。
まず個人としては、自分からテストの自動化を提案したり、メンテや管理したりと割と自分が最初に手を挙げてやっているので、それを最後まできちんとやり遂げたいと思います。QAの部署としては、今後製品が増えていった場合に「やっぱりQAは必要だよね!」と言われるようにしていきたいですね。
――最後に、QA業務にチャレンジしたい方に向けてメッセージをお願いいたします。
開発の入口としてテスト業務は入りやすいですが、「それだけではない」と伝えたいです。
最初にお話したように、私はマツリカにフロントエンドで応募した背景があります。その理由は、前職でテスト業務を「自分の中でやりきったのではないか」「もう、できないことはないのではないか」と考えていたからです。
しかし、マツリカでQA業務に携わっていくうちに「もっとQAとしてやれることがあったな」と感じました。それこそ、テストの自動化をプログラミングしたり、スキルアップしたり...。そういうことを積み重ねていくと「開発の人たちがどういう意図で設計をしているのか」ということがだんだん理解できるようになり、面白くなってくるんです。
また、QAにはゲーム的な面白さがありますよね。私はよくYouTubeでゲームの攻略動画などを見るのですが、たとえば「このゲームがアップデートされました」となったときに、YouTuberの方たちは何がどうアップデートされたのか1つ1つ検証と分析をしていくんですね。これはやっていることがQAと同じです。私はゲーマーにこそQAエンジニアの適性があると思います。
よく、「テストは単純作業が多い」とか「QAは決まったことを継続的にやっていくだけ」と言われますが、実際にQA業務をやってみるともっと奥深くて面白いものだ、というのが私の素直な感想ですね。
――本日は、お時間いただきありがとうございました。