スキマ時間にサクッと遊べる「ハイカジ(ハイパーカジュアルゲーム)」が盛り上がっています。
2022年1月~8月には、ハイパーカジュアルモバイルゲームのダウンロード数は87億を超えたといいます。
そこで、ハイカジとは何か、どんなゲームなのか、そしてビジネスマンに参考になるハイカジの戦略などを簡単にまとめてみたいと思います。
- もくじ
1. 「ハイカジ」とは「ハイパーカジュアルゲーム」の略称
1-1 「ハイカジ」とは
SNSなどを見ていると、なんだか、とても簡単そうなゲームの広告が出てくることがあります。広告では簡単そうなパズルをトンチンカンな解き方をして失敗して、「そうじゃないだろッ!」とツッコミを入れたくなり、ついクリックしてしまった......という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
これが「ハイカジ」です。この名は「ハイパーカジュアルゲーム(Hyper Casual Game / Hypercasual gameとも)」の略から生まれています(以下、ハイカジと表記します)。グラフィックがシンプルで、マニュアルをほとんど見なくてもプレイできる簡単ルール、テンポのよいプレイ感覚で、短時間で一面または一区切りまでを一気にクリアできるのが特徴です。
2022年1月~8月には、世界中で87億を超えるほどダウンロードされ、世界全体のゲームアプリダウンロード数のおよそ30%を占めるほど人気でした。
1-2 「ハイカジ」が人気の理由
ハイカジが人気なのは、「スナッカブル(気軽)」なゲームの作りにあります。上でも述べましたが、ほとんどがシンプルな操作で、短時間でサクサクとクリアできるゲームです。マニュアルを見なくてもすぐプレイできるという点が魅力となっています。
「基本的にマニュアル不用」の効果で、リリース後すぐに世界中で遊ばれるのも特徴です。日本でも、ちょっとした待ち時間、スキマ時間、仕事の合間の気分転換で遊べるのが人気の理由のひとつでしょう。
シンプルなゲームデザインなので、従来のゲームに比べ圧倒的に短い期間で開発でき、低予算ですぐにローンチできるのがメリットになっています。個人のゲーム制作者が大ヒット作を開発しているのもハイカジの特徴です。
1-3 例えば、こんなゲーム!
具体的にハイカジがどんなゲームか、人気作を見てみます。「紹介ページだけで、だいたい何をするのか分かる」感覚がお分かりいただけると思います。
ここでは、ハイカジブームの立役者(のひとつ)Voodooの「アクアパーク」と日本でハイカジを牽引するカヤックの「ドローセイバー」を一例としてご紹介します。
2. ちょっと変わった「歴史」と「ビジネスモデル」
2-1 きっかけは「VooDoo」社から
「ハイカジ」ブームの起点のひとつは、フランスのゲーム会社「Voodoo(ブードゥー)」です。Voodooは、アレクサンドル・ヤズディ(Alexandre Yazdi)氏とローラン・リッター(Laurent Ritter)氏の高校の同級生二人によって創業されました。
二人は二年ほどかけて『Quiz Run』というクイズのマルチプレイヤーゲームを開発しリリースしましたが、微妙な結果となり、より短期間でゲームを開発する必要があると痛感したそうです。そこでハイカジを開発することになりました。
その後、Voodooは大きく成長を遂げ、ゲーム販売も手掛けるようになり、現在はハイカジを代表するパブリッシャーとなっています。作品は上の『Aquapark.io』や『Paper.io』など多数あります。(下の画像は『Paper.io 2』です)。
このVoodooの躍進と、Voodooがパブリッシャーになったこと、多くのハイカジ制作者が現れたことで、ハイカジは一気に世界に広まることになりました。
2-2 「ハイカジ」のビジネスモデル
ハイカジがヒットしたのは、マニュアルなしでもすぐ分かるシンプルルールと簡単操作で、短時間でサクサク遊べる気軽さと、上手な動画広告の効果です。
動画広告で興味深いシンプルなゲームが提示され、「それはしない」とツッコみたくなる場面などが繰り広げられると、ついつい惹きつけられて、プレイしたくなってしまう人が続出しているのです。
実際にハイカジをプレイしてみると、そのほとんどが場面転換時などに広告が表示されることに気づきます。ハイカジの主な収入源は広告なのです。なかにはゲーム内課金をすることで広告を非表示にできるものもあります。
このように、人を惹きつける広告とゲーム内の広告をワンセットで展開しているのが、ハイカジのビジネスモデルの特徴です。
2-3 「ハイカジ」は当たる!?
ハイカジは、シンプルなゲームデザインのため、短い期間かつ低予算で開発しローンチできます。
数万円の予算と数ヶ月の時間を使って一人で開発したゲームがヒットして、月に100万円以上の広告収入を得るケースもあると報道されました。
予算をかけずにスピーディーに開発できるメリットを活かし、個人のゲーム制作者がヒット作を何本も開発したり、ゲーム開発会社でも「アジャイル開発」の手法を取り入れて新作を続々と発表したりして、ヒットさせている事例も報じられています。
開発にはゲームエンジンの『Unity(Unity3D)』がよく使われています。Unityの「アセット」(部品のようなもの)を活用した開発が盛んです。
ハイカジの開発環境は低予算で整えられるので、ヒットを生むにはまず「アイデア」「発想」が大事だといわれています。まるでワンアイデアで勝負する一発芸人のように、ひとつのネタ(ゲームアイデア)が勝負を分けているわけです。
3. 「ハイカジ」の周囲の市場を概観
実は近年、ゲーム業界は低迷しており、家庭用ゲームもスマホ用ゲームも売り上げが伸び悩んでいると報じられています。
クオリティ高いゲーム作品を開発するには、多くの開発費と時間が必要ですが、業界の低迷により、大作が作りにくくなっているという指摘もあります。
その流れのなか、低予算かつ短期間で開発できるハイカジは、アジャイルの開発手法を取り入れ、細かくテストとバージョンアップを繰り返すことでヒット作を作りやすいため、開発を開始する企業や個人の参入が増えてきています。
この結果、冒頭で紹介したように、2022年1月~8月には、世界全体のゲームアプリダウンロード数のおよそ30%を占めるほどの規模にまで、ハイカジが一気に成長を遂げたことになります。
4. 「ハイカジ」の参考になるビジネススタイル
ここまでをまとめると、ハイカジの成功理由は3つあると思われます。ひとつが「気軽さ」、そして、「開発スピードの速さ」と「ブルーオーシャン戦略」です。
この3つは、ケースバイケースではありますが、ハイカジの開発以外の分野でも参考にできるビジネスの視点かもしれません。「仕事」となると何事も重厚長大に考えがちですが、ハイカジスタイルを柔軟に取り入れてみたいものです。
「気軽さ」
「スナッカブル(Snackable)」と評されることもありますが、導入のハードルが低く、スナック菓子のように、気軽にスキマの短時間でも遊べる楽しめる気軽さがハイカジの魅力です。
「開発スピードの速さ」
アジャイル(Agile)開発の手法を取り入れたり、「UNITY」とそのアセットを有効活用したりして、開発サイクルをスピーディーに回し、短期かつ低予算で作品をローンチできるので量産できる強みがあります。
「ブルーオーシャン戦略」
できるだけ他と似ていない、競争相手がいない分野を開拓したり、ゲーム内容で勝負をかけます。
実際には、ハイカジの分野はプレイヤー(開発者)が増え、レッドオーシャン化が進んでいるという指摘もありますが、ヒット作を見ると、どれも他と違う雰囲気を持っています。
何か他と違うワンアイデアであっても取り入れ、差別化を図ることが大切です。芸人さんのように「ネタ命」の一面があるように感じられます。
5.エンドユーザーの負担が小さい
140文字で投稿する(※無料ユーザーの場合)SNS「X(旧Twitter)」、ショートムービーのSNSとして話題になった「Tiktok」、Youtube等動画サイトの再生速度調整機能の搭載......など、短い文章、スキマ時間の活用を可能にするものが話題になることが増えています。
ハイカジは、広告をキーワードに語られることが増えていますが、スキマ時間でもしっかり楽しみたいというユーザーのニーズを満たしているのも確かです。
また、マニュアル的なものをほとんど読まなくても、広告などで30秒ほどの動画を見れば、「何をすればいいか分かる」単純明快さも、疲れた現代人にはピッタリで、エンドユーザーの負担が小さいのもヒットの要因といえそうです。
「ユーザーに負担をかけない」という観点も多くの方に参考になるものだと思いました。
まとめ
「ハイカジ」とは、グラフィックがシンプルで、マニュアルなしでプレイできる簡単操作が特徴のゲームです。
テンポのよいプレイ感覚で、短時間で一面または一区切りまでを一気にクリアできるのが特徴です。
スキマ時間にサクッと遊ぶことができるため、つい延々とプレイしてしまい、気づいたらスマホのバッテリーが大幅に減っていてびっくりした方もいるかもしれません。
小さな注意点としては、ハイカジには広告が多く含まれているので、セキュリティアプリの設定等で広告等に制限をかけているとうまく動作しないことがあることです。ハイカジをうまく活用して、しっかり気分転換したいですね。