ゲームエンジンの「UNITY(ユニティ)」はVR開発等々にも対応する高度な開発環境/実行環境で、クロスプラットフォームにも対応していることから、特に人気が高い存在です。
初心者からプロまで幅広いユーザーに支持されていて、個人や中小企業でも利用しやすい敷居の低さも魅力。
そこで今回は、Unityの基本的な概要、魅力、歴史、そしてその人気の理由についてまとめてみました。
- もくじ
1. 「UNITY(ユニティ)」とは?
Unityは、Unity Technologies(日本ではユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)が開発・販売している、統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment の略)を搭載したゲームエンジンです。
この章ではUnityの魅力と歴史について紹介します。
1-1 UNITYの魅力
Unityは、初心者からプロまで幅広い開発者に愛用されています。
月間アクティブユーザー数は2021年に28億人を超え、それ以降も順調に増加していることが同社の「Unity ゲーミングレポート」で公表されています。
映像制作やビジネスの現場で用いられるケースも増加しており、もはや、ゲームエンジンというよりも、総合的な開発プラットフォームだといってよいでしょう。
その魅力は多岐にわたりますが、ポイントは大きく3つあると思います。
① クロスプラットフォーム対応
Unityは、Windows、Mac、Linuxはだけでなく、モバイル環境(iOS、Android)、やWebブラウザ、家庭用ゲーム機(PlayStation、Xbox、Nintendo Switchなど)やVR/AR/MRデバイスまで幅広いプラットフォームでのコンテンツ開発に対応しています。
開発者はひとつのアプリケーションを開発したあと、大きな苦労なく様々な環境へと移植していくことが可能になっています。
② アセット(Asset)・ドキュメントが豊富
Unityのアセット(Asset)とは、ゲームやアプリケーションを作成するために使用するアイテム、素材のことです。
アセットは、キャラクター、3Dモデル、テクスチャ、スプライトをはじめ、サウンドエフェクトや音楽といった、視覚的または聴覚的なものです。他にも環境、スクリプト、テキストや数値データなどもあります。
Unityはこれまで多くの人々に愛用されてきたので、このアセットが豊富です。公式の「Unity Asset Store」で気軽に入手できます。
開発の際、意外に時間が取られてしまうのが、この各種素材の部分です。これを簡単に揃えられるので、テンポよく開発を進めることができます。
③ 無料プランがある
個人や小規模な企業向けに無料の「Personalプラン」が提供されています。利用条件を満たすと、無料版で作成したアプリを商利用し、収益を上げることも可能です。
このハードルの低さは、スタートアップやフリーエンジニアにとっては大きな魅力になっています。
直近12ヶ月間の総収益が10万米ドル以下の個人事業主または企業なら、Personalプランでも仕様利用可能なようです。
1-2 UNITYの歴史
Unityは、2004年に設立された、デンマークの「Over the Edge Entertainment(OTEE)」が2005年に公開したことで歴史が始まりました。同社は2007年に社名を「Unity Technologies」に変更しています。
当初はMac用のツールとしてスタートしていますが、バージョンを重ねるにつれ、現在では上述したようにクロスプラットフォームに対応し、VR、AR、MRにも対応してきました。
今では、2D、3Dゲームの開発に対応しているのはもちろん、アニメーションシステムやAI、ネットワーク機能など、開発や映像制作に必要な機能が一通り揃い、多くのユーザーが活用しています。
2.なぜ、「UNITY」が人気なのか?
2-1 人気の理由は?
直感的なインターフェースとアセットが便利
Unityのインターフェースは非常に直感的で使いやすく、初心者でも簡単に操作を覚えることができると評価されています。
そして、素材が扱いやすいのも便利で、Unityの強みになっています。上述したアセットストアには無料の素材も多いため、これらを活用することで、短期間でコストをかけずに高品質なゲームや映像作品を制作することができます。
まず、無料版を使って制作し、その後、ビジュアルのグレードを上げるといった使い方もでき、柔軟に開発が進められることが人気の理由になっていると考えられます。
豊富なコミュニティと教育リソース
Unityは、ユーザーが多いこともあって、世界中に多くコミュニティがあり、活動は非常に活発です。
公式フォーラムやQ&Aサイト、YouTubeのチュートリアル、公式のドキュメント類など、学習リソースの量がかなり充実しています。
初心者でも安心して、そしてコストをあまり掛けずに学習を進めることができるのはメリットと言えるでしょう。
「Personalプラン」で敷居が低い
上でも説明しましたが、個人や小規模な企業向けに無料で提供されている「Personalプラン」は、Unityの人気を支える大きな要因になっています。
初期コストをかけずに高度な開発環境を利用できるのは、初心者やスタートアップ企業には大きな魅力になっています。
2-2 「ハイカジ」であらためて注目を集めた
最近、ハイパーカジュアルゲーム(ハイカジ)と呼ばれるシンプルかつ短時間で遊べるゲームが注目を集めています。
Unityはこうしたゲームの開発にも適していて、多くの成功例が存在します。ハイカジの成功事例集で、Unityの利用が要因とされることも多く、あらためて注目されています。
また、これらの事例は動画であることも多く、実際にUnityを使用している現場を見ることで、使いたくなる人が増えたとも言われています。
2-3 Unityの広がりと成長
Unityは、ゲーム開発だけでなく、映画制作、建築のビジュアル化(ビジュアライゼーション)、自動車デザイン、教育、医療シミュレーションなど、様々な分野で利用されるケースが増えており、ゲーム以外の用途でも実力を発揮しています。
特に、ビジネスプレゼンテーションの現場では動画が必要とされることもあり、その際の制作環境としてUnityが採用されるケースが増加しています。
このような流れもあり、Unityのユーザー層はさらに広がり、その成長はますます加速しているようです。
2-4 「Unreal Engine」との比較
Unityと並んで人気のあるゲームエンジンが「Unreal Engine」です。
「Unreal Engine」は、高品質なグラフィック表現を強みとしており、大規模なプロジェクトや高度なビジュアルを求める場合に適しているとされています。
特に、リアルタイムレンダリングやフォトリアリスティックな表現が求められるプロジェクトで「Unreal Engine」が使われるようです。
比較すると、Unityは柔軟性が高く、使いやすさと機能のバランスが良く、豊富なアセットストア、活発なコミュニティ、情報量の多さが強みとなっています。
3.UNITYのはじめ方と注意点
3-1 Unityのはじめ方 基本5ステップ
Unityを始めるのは簡単です。Personalプランがありますから、公式サイトからツール、エディタをダウンロードして、インストールするだけではじめられます。
あとは、公式サイトにある初心者向けのチュートリアルに従って学習を進めることで、基本的な操作やゲーム制作の流れが身に付くようになっています。つぎのようなステップが基本になるでしょう。
① Unityのアカウントを作成する
はじめに「Unity ID」を作成します。
公式サイトの右上のアイコンをクリックして、「Unity IDを作成」を選びます。
② Unity Hubのインストール
Unity Hubは、Unityのバージョン管理やプロジェクト管理を行うためのツールです。公式サイトからダウンロードして、インストールします。
③ Unity Editorのインストール
Unity Hubを通じて、必要なバージョンのUnity Editorをインストールします。初心者は最新のLTS(Long Term Support:長期サポート版)バージョンを使用するとよいでしょう。LTSは安定しているためです。
④ 新規プロジェクト作成
Unity Hubから新しいプロジェクトを作成します。プロジェクトの種類、プロジェクト名、保存場所を設定します。
⑤ チュートリアルの活用
Unity公式サイトやYouTubeに、初心者向けのチュートリアルが揃えられています。まず、これらを活用して、基本的な操作や制作の流れを学ぶのがベストです。
3-2 気をつけておきたいこと
ここまで見てきたように、Unityには数多くのメリットがありますが、気をつけておきたいこともあります。
まず、Unityの高度な機能を利用するには、高いPCスペックが必要になることが多いようです。主に3DゲームやVRコンテンツを開発する場合は、高性能グラフィックカードや十分なメモリが必要になります。
次に、敷居が低いとはいえ、Unityは多機能なので、すべての機能を使いこなすまでにはそれなりに時間がかかるということです。特に、プログラミングをしたことがない初心者は時間がかかります。
小さなゴールをたくさん設定して、ゲームのように少しずつクリアしていくのがコツかもしれません。
4.UNITYの未来
Unityは今後も進化を続け、新しい技術やトレンドに対応していくでしょう。特に、VRやAR、AI関連分野での活用が進むと予想されています。
汎用性が高いので、今後ますますゲーム以外のジャンル、例えば医療、教育、建築といった分野で利用されることになると考えられています。その意味で、Unityの将来は非常に明るいといえます。
成功事例はすでに数多く存在しています。その中でも、上でも紹介した、ハイカジ(ハイパーカジュアルゲーム)など、インディーゲームの開発者が少人数でUnityを使って開発したゲームが世界的にヒットした事例が多くなっています。
また、大手企業でも、Unityを利用して高度なシミュレーションやトレーニングプログラムを開発した例が紹介されています。
まとめ
Unityは、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに対応したゲームエンジンです。
直感的なインターフェース、豊富なアセット、クロスプラットフォーム対応など、多くの魅力があり、多くの人々に使われるにつれ、ゲームを超えた領域で幅広い「開発プラットフォーム」として利用されはじめています。
Unityの学習と利用には時間と努力が必要と指摘されることがありますが、将来性があるので、その過程で得られる知識とスキルは非常に価値があるのではないかと思います。
無料ではじめられるので、クリエイティブな挑戦をするには最適な環境の一つと言えるのではないでしょうか。