心理的安全性とは? いま心理的安全性が大切な理由

最終更新日時:2022.06.14 (公開日:2022.06.13)
心理的安全性とは? いま心理的安全性が大切な理由

心理的安全性とは、「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」を意味する言葉です。上司から部下へ一方通行で高圧的なチームでは、優秀な社員は去ってしまい、入社して日の浅い社員は委縮して生産性を下げてしまう恐れがあります。

今回は、この心理的安全性とは何なのか、何故いま心理的安全性が重要なのかについてご紹介します。

もくじ
    1. 心理的安全性とは?
    2. 心理的安全性と幸福の関係性
    3. いま心理的安全性が大切な理由
    4. まとめ

心理的安全性とは?

近年、仕事の進め方が変わってきています。何よりも仕事そのものが多様化してきています。

顧客需要の多様化、人材の多様化、働き方の多様化、自社PRの多様化、サービスの多様化、技術の多様化など、様々な"多様化"が押し寄せてきています。そんな中で、人材の流動性が高まる中でマネジメント層に求められる資質もまた多様化しています。

個々の多様な価値観が認められる中、優秀な社員を自社に引き止めることはもちろん、入社してまだ日の浅い社員を活かし、一人前の社員として育て上げていくことが重要な課題の一つとしてみなされています。

そこでキーワードになってくるのが「心理的安全性(psychological safety)」です。

心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した心理用語です。エドモンドソン教授によると、「心理的安全性とはチームにおいて、他のメンバーは自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっており、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義しています。

また、書籍「心理的安全性のつくりかた」(石井 遼介 著 日本能率協会マネジメントセンター)によれば、次のように記載されています。

「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有されるの信念のこと」だと定義しました。(中略)心理的安全なチームとは、一言でいうと「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」です。
(「心理的安全性のつくりかた」(石井 遼介 著 日本能率協会マネジメントセンター P22-23より抜粋) 

リクナビNEXTが実施した「転職理由と退職理由の本音ランキング」という調査によれば、転職理由の第一位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」でした。具体的な回答を見てみると、「トラブルが発生すると『何をやってるんだ!』とまくしたてるばかり。フォローもできない上司は尊敬できない」といった内容が寄せられていました[1]。

怒りによる高圧的なマネジメントではなく、チームのメンバーが気兼ねなく発言し、自分から能動的に行動できるチームマネジメントに大切なのが、心理的安全性だといわれています。

心理的安全性の難しさ

率直な意見・素朴な質問・違和感の指摘が気兼ねなくできることは、友達付き合いでは当たり前かもしれませんが、職場の組織やチームでこの状況を作り出すのは、実際には難しいことです。

これを読んでいる読者の方が、新人や若手だった頃を思い出しみてください。

次のような経験はありませんでしたか?

・なんとなく違和感があるけどベテラン上司に言い出せずに後で問題が発覚した
・リーダーの指示が良く分からなかったが、リーダーがいつも忙しそうで質問がしづらかったので理解が曖昧なまま仕事をしたら、後で大きな手戻りにつながった

こうした例は、「率直な意見・素朴な質問・違和感の指摘が気兼ねなく言えない状況」が元で起こる問題です。つまり、心理的安全性を欠いている職場だと、余計なトラブルの発生につながる場合があります。

心理的「非」安全の事例

心理的安全性が確保されたチームの反対は、心理的非安全なチームです。

心理的非安全なチームはギスギスしていて、積極的な行動が起こしづらくなります。以下の事例から、チームメンバーの一人になったつもりでギスギスさ・行動の起こしづらさを実感してみてください。

①進捗が気になって担当者に進み具合を確認すると、担当者から上司に「あいつは嫌な奴だ」と報告された
②上司が仕事の説明をした後に「分かりましたか?」と訊かれたので「すみません。よく分かりませんでした」と答えると「はぁ?!」と怒鳴られた
③作業を進めている途中で進め方が分からなくなったので質問をしたら、嫌そうな表情でため息をつかれた

上記のような心理的非安全なチームでは、いつのまにかメンバーは必要なことでも行動しなくなります。

指示通りにやってはうまくいかないと気付いても上司の指示に従順に作業をしたり、指示通りにやることで何か指摘されても「指示通りにやりました」と保身に走ったりするようになります。

このようなチームになってしまうのは、メンバー一人一人の姿勢に問題があるのではなく、チームリーダーとしてのマネジメント・チームビルディングに問題があるのです。

心理的安全性と幸福の関係性

経営学と心理学の幸せに関する三つの大発見

21世紀に入ってから、経営学や経済学について心理学的側面での研究が進んでいます。
たとえば中華街の肉まんを例に出すと、中華街にはたくさんの肉まんの店がひしめき合っています。「消費者は中華街の一番安くておいしい肉まんの店に集まる」というのが従来の経済学の見解でしたが、実際には「人々はたまたまその日に人が並んでいる肉まんの店をおいしい店と判断して自分達も並ぼうとする」ということがバンドワゴン効果という心理学的側面から解明されています。

同様に、生産性を取り扱う経営学についても心理学の研究が進んでおり、ここ20年で心理学は大きな3つの事実を発見しました。[2]

発見1. 「幸せな人や組織は生産性や創造性が高く、健康で離職しにくく、株価も高い」
発見2. 「幸せだから生産性が高いのであって、その逆ではない」
発見3. 「幸せは訓練で高められ、良い人間関係が最も重要」

以上の発見により、職場の生産性を上げるためには幸福度を高めることが大切であることが分かりました。幸福度を高めるために重要な要素の1つが人間関係の向上であり、人間関係の主要な要素の一つが「心理的安全性」です。

いま心理的安全性が大切な理由

心理的安全性とパフォーマンス

心理的安全性が高いほど、パフォーマンスが高いことが研究で判明しています。
ハーバード大学の研究では、心理的安全性の異なる51のチームを測定しました。その結果、心理的安全性が高いほど、結果としてチームパフォーマンスが高くなりました。その理由は学習行動でした。心理的に安全なチームほど学習行動が盛んに行われ、結果的に高パフォーマンスに繋がりました。

「VUCA」正解のない時代が始まっている

しかし、AI技術の急速な発展や、新型コロナウイルスといった感染症の蔓延、それに伴う社会的なシステムの変化等、現在は将来の活動予測がどんどん難しくなっています。このように将来的な予測のしにくい状況をVUCA(ブーカ)という言葉で言い表すことがあります。

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)をまとめた表現です。元々軍事で使われた言葉です。アメリカとロシアの冷戦が終結し、核兵器ありきだった戦略が不透明な戦略へと変わったことをVUCAと表現していました。その後、2010年代にビジネス的に変化が激しい世界情勢に突入すると、今のビジネスの情勢もVUCAと表現されるようになりました。

現在の社会経済は極めて予測が困難になっています。たとえば、リーマンショック・スマートフォン、Uber、Airbnbなどは、誰も予想していなかった変化です。様々な"多様化 "が押し寄せてきている中で、何が正しいのか簡単にはわからない状況が生まれています。以前だと正しかったことが、現在はそうとは言い切れなくなっています。失敗を恐れず新しいことに挑戦していく姿勢が求められているのです。

まとめ

予想が難しく明らかな正解がない時代には、「様々な視点からの率直な対話の元、模索や挑戦をして失敗や実践から学べる人員」が大切になります。
トップダウンのマネジメントではうまく行かなくなった今の時代、仕事のチームには心理的安全性が必要です。「メンバーが、率直な意見・素朴な質問・違和感の指摘を安心して気兼ねなく言える」からこそ、メンバー全員から多様なアイデアが生まれてきます。心理的安全性が確保されていれば、メンバー間の議論が盛り上がり、模索や挑戦が進むでしょう。

もし、メンバーの成長やチームビルディングが上手くいっていないと感じられたら、今回ご紹介した「心理的安全性」を意識してみてはいかがでしょうか?

執筆者:小谷 ひかり

バルテス株式会社 Webシステム品質サービス事業部 リーダー

業務系システムの開発・運用・保守にSE兼プロジェクトリーダー兼コンサルタントとして携わった後、バルテスに入社する。入社後は、テスト自動化プロジェクト・品質保証プロジェクトを経て、現在は品質向上支援に携わっている。また、その傍らで、専門分野である心理学の知見に基づいて、新卒社員の指導や社内委員会の品質向上に力を注いでいる。