社員の自発的な行動を促すには? 心理的安全性を活用した具体的なテクニック5選

最終更新日時:2022.09.14 (公開日:2022.09.15)
社員の自発的な行動を促すには? 心理的安全性を活用した具体的なテクニック5選

心理的安全性とは、「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」を意味する言葉です。
今回は、心理的安全性と自発的な行動の関係性、自発的な行動はどのように育むのかについてご紹介します。

もくじ
    1. なぜ自発的に行動しない人が生まれるのか
    2. 自発的行動を促進するテクニック5選
    3. まとめ

なぜ自発的に行動しない人が生まれるのか

心理的安全性が自発的な行動を促す

メンバーが自分から考え行動してくれて、あわよくばアイデアや提案まで自分からしてくれたら、リーダーは大いに助かるでしょう。どうしたらチームメンバーは自発的に行動をしてくれるようになるのでしょうか。

その一つの鍵が「心理的安全性」です。人は安全だと分かるとより積極的に行動を起こすようになる傾向にあります。ではリーダーはどんな行動をしてあげたら、メンバーは自発的に行動するようになるのでしょうか。それは行動を促す刺激と、行動を再度起こしやすくする刺激を与えることです。「心理的安全性のつくりかた」(石井 遼介 著 日本能率協会マネジメントセンター)では、この刺激を「きっかけ」と「みかえり」という言葉で説明しています。

行動分析の、最も基本的かつ重要なフレームワークが、(中略)「きっかけ→行動→みかえり」フレームワークです。

これは「きっかけ」によって「行動」が起き、行動の後の「みかえり」が「行動」に影響を与える。つまり、人々の「行動」は「きっかけ」と「みかえり」によって制御されていると捉えます。

(「心理的安全性のつくりかた」(石井 遼介 著 日本能率協会マネジメントセンター P158より抜粋)

自発的な行動は「きっかけ」と「みかえり」から生まれる

「きっかけ」や「みかえり」といった刺激が与えられることで「行動」が変わることを、心理学では「S-R理論」と呼びます。行動を刺激(S:Stimulus)に対する反応(R:Response)ととらえて紐解いた理論です。[1]

報酬や懲罰といった刺激を与えることで自発的な行動を起こしたり自発的な行動を抑制したりするという反応が返ってきます。たとえば、レバーを押すと餌が出てくるような箱を用意してそこにネズミを放します。ネズミは初めは偶然にレバーを押しますが、レバーを押して餌が出てくること(刺激)を知ると、ネズミは次第に自発的にレバーを押すようになります(反応)。

「刺激」は行動を促す「きっかけ」と、行動したことに対して評価を返す「みかえり」の二つに分けることができます。プラスの「きっかけ」「みかえり」があると、ネズミはその「行動」をより続けるようになります。反対に、マイナスの「きっかけ」「みかえり」があると、ネズミはその「行動」を続けなくなります。

実はチームビルディング、つまり人においてもS-R理論は成立します。リーダーがプラスの「きっかけ」「みかえり」を与え続けると、メンバーの行動が変わってきます。

プラスのきっかけ/マイナスのきっかけ

人は「きっかけ」によって行動を変えます。心理的安全性に繋がるようなプラスの「きっかけ」を与え続ければ人は自発的な行動を始めるようになります。反対に心理的に非安全なマイナスの「きっかけ」を与え続ければ人は自発的な行動を控えるようになります。

たとえば、リーダーがメンバーに定期的に「質問はない? いつでも質問してきていいからね」と声をかけてあげれば、メンバーはやがてリーダーに自分から質問をしてくれるようになります。反対にいつも「今は忙しいから用件はあとにして」と伝えていればメンバーはあまり質問してくれなくなるでしょう。

また、「何か仕事のアイデアが出てきたら、なんでもいいから教えてね」と日々伝えてあげれば、それはメンバーの勇気に繋がり、メンバーは少しずつひらめいたアイデアをあなたに伝えてくれるようになります。反対に「考え事なんかせずに目の前のタスクを早くこなせよ」と言ってしまうと、メンバーは自分のアイデアを心に秘めたまま何も言ってくれなくなるでしょう。

プラスのみかえり/マイナスのみかえり

人は「みかえり」によっても行動を変えます。メンバーの行動に対して心理的安全性に繋がるようなプラスの「みかえり」を返してあげればメンバーはその行動を継続するようになります。反対にメンバーの行動に対して心理的に非安全なマイナスの「みかえり」を返していくとメンバーはその行動をやめるようになります。

たとえば、メンバーが質問をしてきたときに「質問してくれてありがとう」と返してあげれば、メンバーは今後も質問をしてくれるようになるでしょう。反対にメンバーが質問をしてきたときに「忙しい時ばかりに質問しないでよ」と返してしまうと、メンバーは次第に質問をしてくれなくなるでしょう。

また、メンバーがアイデアを出してくれた時にたとえそのアイデアが的外れでも「アイデアを出してくれてありがとう。今回は採用を見送るけど、またアイデアが浮かんだら提案してほしい」と伝えてあげればメンバーは今後もアイデアを思い浮かんだらそのアイデアを話してくれるでしょう。反対に「その提案は良くないね。もっとちゃんとした提案をもってきてよ」と伝えてしまうとメンバーは自分のアイデアに自信を失い、あまり提案をしてくれなくなるでしょう。

きっかけ・みかえりと心理的安全性

プラスの「きっかけ」「みかえり」が多く与えられたチームは、自然と心理的安全性が確保されたチームになっていきます。メンバーは自分のアイデアを発言したり、チームのためになろうと自発的に行動を起こしたりするようになっていきます。

反対にマイナスの「きっかけ」「みかえり」が多く与えられたチームは、心理的「非」安全なチームになっていきます。メンバーは委縮し、リーダーから怒られないように顔色を窺い、積極的な提案や行動をリーダーの気持ちを逆なでする余計なことと判断するようになって言われたことしかやらなくなっていきます。

自発的行動を促進するテクニック5選

メンバーの自発的な行動にはプラスの「きっかけ」「みかえり」が大切です。ではリーダーのどういった行動が部下にとってのプラスの「きっかけ」「みかえり」になるのでしょうか。参考になる具体的な行動を5つご紹介いたします。

  • メンバーの行動後すぐに褒めてあげる
  • メンバーの自発的な行動の成否に関わらず、自発的な行動をしてくれたこと自体を褒める
  • 自発的な行動が成功した場合は、結果だけでなく、行動を褒めることも忘れない
  • 行動を褒めるときは、行動にいたった経緯・考えも聴いてあげる
  • 自分から実践する

メンバーの行動後すぐに褒めてあげる

行動後すぐに褒めてあげることで、メンバーはすぐにプラスの「みかえり」を受け取ることができ、自発的な行動が促進されます。

人は行動へのフィードバックが早いほどその行動を続けたくなり、行動へのフィードバックが遅いほどフィードバックの効果が薄れます。たとえばダイエットが難しいのは、デザートは食べた直後に「美味しい」というフィードバックがあるのに、ダイエットのための我慢は減量というフィードバックまでには時間がかかるからです。

チーム内の自発的な行動をすぐに褒めてあげれば、それはプラスの「みかえり」になり、メンバーの自発的な行動を促進します。

メンバーの自発的な行動の成否に関わらず、自発的な行動をしてくれたこと自体を褒める

自発的な行動の成否に関わらず、その行動を褒めてあげると、メンバーにとってプラスの「みかえり」になります。

自発的な行動はときには失敗することもあります。「仕事を効率化しようとやり方を変えてみたら、返って時間がかかるようになってしまった」ということはあるでしょう。行動が失敗したときにはみんなで振り返りはしますが、行動を試したこと自体は認めてあげると良いでしょう。そうすれば、メンバーは失敗を恐れずに再度自発的な行動を起こしやすくなり、自分から行動してくれることが増えます。

自発的な行動が成功した場合は、結果だけでなく、行動を褒めることも忘れない

メンバーの自発的な行動を褒める場合には、結果だけでなく、行動自体も褒めてあげることが大切です。

たとえばメンバーの仕事効率化のアイデアが功を奏したときは、「やったな。仕事速度が上がったな。助かったよ」と結果を褒めるだけでなく、「アイデアを整理して提案してくれたおかげだよ」と結果に繋がった行動自体も褒めてあげましょう。

行動が認められれば、メンバーは「自分のことを見てくれている」と感じ、より心理的安全性を感じてのびのびと提案を出しやすくなります。

行動を褒めるときは、行動にいたった経緯・考えも聴いてあげる

行動を褒められるようになったら、もう一歩踏み込んで、行動にいたった経緯や考えも聴いてあげましょう。

人は誰しも「他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたい」という承認欲求があります。承認欲求は深い部分まで認められるほど満たされます。たとえば好きなアクション映画があるときに、「アクション映画って面白いよね」とジャンルについて認められるよりも「その映画私も好き」と映画自体を認められる方が嬉しさが大きく、それ以上に「映画のあのシーンが好き」まで一緒である方がより嬉しさを感じます。

自発的な行動についても同様です。結果より行動を認められる方が嬉しく、行動よりも経緯や考えを認められる方がもっと嬉しいです。メンバーの行動を褒めるときは「どうしてそんな行動を思いついたんだい?」と聞いてあげるのが良いでしょう。

自分から実践する

リーダーがまず自分から実践することは、メンバーの自発的な行動のプラスの「きっかけ」に繋がります。

たとえば、

  • リーダーが自分から進んでメンバーに挨拶する
  • リーダーが自分から進んでメンバーに質問する
  • リーダーが自分から進んでメンバーに相談する

ということを実践していけば、メンバーも無意識に、

「挨拶していいんだ」
「質問していいんだ」
「相談していいんだ」
と感じるようになり、メンバーの自発的な行動が促進されます。

まとめ

今回は「心理的安全性」が生み出す「自発的な行動」について解説しました。
メンバーが自分で考えて行動し進んでアイデアや提案を出してくれるようになるためには、リーダーが適切に「きっかけ」と「みかえり」を与えてあげることが大切です。

執筆者:小谷 ひかり

バルテス株式会社 Webシステム品質サービス事業部 リーダー

業務系システムの開発・運用・保守にSE兼プロジェクトリーダー兼コンサルタントとして携わった後、バルテスに入社する。入社後は、テスト自動化プロジェクト・品質保証プロジェクトを経て、現在は品質向上支援に携わっている。また、その傍らで、専門分野である心理学の知見に基づいて、新卒社員の指導や社内委員会の品質向上に力を注いでいる。