心理的安全性とは、「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」を意味する言葉です。リーダーからメンバーへの一方通行的で高圧的なチームでは、優秀な社員はのびやかに仕事ができる会社に去ってしまい、入社して日の浅い社員は委縮して生産性を下げてしまいます。
今回は、テレワークにおける心理的安全性の作り方をご紹介します。
- もくじ
1.テレワークと心理的安全性
テレワーク中のコミュニケーションが課題になっている
テレワークが進む中でコミュニケーションが一つの課題になっています。特に、上下関係がある間柄でのコミュニケーションについて、テレワークで課題が生まれてきているようです。ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社の報告によると、79%にも上る社員がテレワークにおいて上司とのコミュニケーションにストレスや不快さを感じたことがあると回答しています。 [1]
また、テレワークが進んで雑談がなくなってしまったことも課題になっています。職場で仕事をしていたことは隣に座っているチームメンバーとちょっとした雑談が起きていましたし、喫煙室や自動販売機の前などでも自然と会話が生まれていました。ですが、サイボウズ チームワーク総研の調査によれば、テレワークになってからは業務に直接関わらないコミュニケーションの時間が0分になってしまった人が4割もいました。[2]
心理的安全性は人間関係への安心感です。人間関係を作る大切な要素の一つがコミュニケーション。そのコミュニケーションが芳しくなければ心理的安全性も確保できません。テレワークでの心理的安全性について語るとき、コミュニケーションは大きなテーマになってきます。
テレワークでは心理的安全性が低下しやすい
テレワークでは心理的安全性が低下しやすいです。
例えば、メンバーが作成した資料をリーダーに送ったとします。オフィスに出社していたときは会議に奔走しているリーダーの姿を見て「いまリーダーは忙しそうだ」と直接分かります。
しかし、テレワークではリーダーの忙しさが見えづらくなります。実際は、リーダーは忙しかっただけなのにメンバーは「資料のクオリティーが低かったのかな」といった推測をしてしまい、心理的安全性の低下につながります。
また、テレワークはオフィスと比べて相談をいつすればいいかを見極めるのが難しいです。同じオフィスにいれば上司はそこにいるので、直接チャットや声かけをしなくても上司の仕事の忙しさが見て取れます。自然と暇やスキマ時間を見つけて相談の声をかけることができます。しかし、テレワークでは上司の状況はオンラインのカレンダーからしか見えません。
オフィスで働いていた場合、上司のスケジュールが一日中打合せで埋まっていても、早めに打合せが終わったタイミングで声をかけることができますが、テレワークでは上司は本当に一日中埋まっているように見えてしまいます。
テレワークでは「反応を返さない」という状態自体が1つのメッセージとしてメンバーに伝わってしまうのです。
2.テレワークの心理的安全性を引き上げるテクニック
テレワーク中の心理的な安全性を確保する方法として、大きく以下の3つの方法があります。
- 声の色や表情に気を付ける
- フランクな交流の場を設ける
- スタンプなどで反応を返す
声の色や表情に気を付ける
心理学で有名な研究の一つに「メラビアンの法則」があります。これは声や表情と言っていることが違う場合に、人は話している内容より声色や表情をより正しい情報として受け取るという習性です。つまり、言葉では感謝を伝えていても、声色や表情が伴っていなかったら、相手はマイナスの言葉として受け取ってしまう可能性があるということです。
たとえばZoomで何かの考え事をしながらメンバーの報連相を聞いているとき、"心ここにあらず"で返事をしてしまい、「ありがとう」の一言のトーンが低くなったり無表情になったりすることもあるかと思います。
そのような場合、メンバーは「自分のしたことは間違っていたのでは?だからこんなに冷たく対応されるんだ」と不安を覚えてしまう可能性があるでしょう。
最近のテレワークでの通話ではカメラを付けないことも少なくありません。コロナ以前に比べて一層「声色」「声のトーン」「声の表情」が大切になってきています。
フランクな会話の場を設ける
テレワークでは、交流が減るだけでなく、コミュニケーション自体がとりづらくなっています。
サイボウズ株式会社の調査によれば、約53%の人が「テレワーク中のコミュニケーションはしづらい」と回答しています。
特にチームのメンバーの立場にいることが多い20代30代の人ほどその傾向が強く、約60%の20代30代の人が「テレワーク中のコミュニケーションはしづらい」と回答しています。具体的には「相手の顔が見えない、状況が分からない」「タイミングが難しい」といった回答がありました。[2] また株式会社スコラ・コンサルトの調査によれば、テレワークについて「出社時と比較して、職場のメンバーとの雑談機会は減りましたか?」と聞いたところ、雑談が減ったと感じる人が約85%に上り、「かなり減った」という回答も約64%を占めました。[3]
メンバーがコミュニケーションをしやすくするためには、意図的に交流の場・機会を作っていくことが大切です。特にアジェンダが決まっている打合せではなく、オフィスでのちょっとした雑談のようなフランクな会話ができる場を設けることが大切になってきます。
スタンプなどで反応を返す
「チャットや通話ではなく、スタンプ等でリアクションする」というのも一つのコミュニケーションです。
ChatworkやSlackなど、最近のチャットアプリではリアクション機能がついているものが多くあります。このリアクションがフランクな自己開示に繋がります。無口で堅い印象の上司がネコのスタンプを押したことがきっかけで、メンバー一同のその上司への抵抗感が良い意味でガラッと崩れたり、リアクションのおかげで直接会話の機会がない相手への親近感が生まれたりします。
3.テレワークで設ける3つの「雑談」の場
朝会/昼会/夕会
弊社では毎日、朝会や昼会や夕会を開くチームも多いです。
同様にそれぞれの会で仕事の話を始める前にアイスブレイクな雑談をする時間を設けているチームも散見されます。週末の過ごし方について自由に話したり、最近ハマっていることについて語ったり、リーダーが出会ったちょっとした笑い話を共有したりしているようです。
こういった雑談がテレワーク中の心理安全性の低下を防ぐ一つの策になっています。
ペアワーキング
ペアワーキングとは、2人がタッグになって、一緒に相談をしながら作業を進めることです。開発業界では「ペアプログラミング」という開発手法が有名です。
これは直接だけでなくテレワークにも応用できます。
Zoomなどで画面を相手に共有した状態で、二人一組で会話を重ねながら作業を行います。若手社員の育成とチームワークの向上に効果があると知られています。報連相だけのコミュニケーションをするのではなく作業自体も一緒にやることで、メンバー同士の信頼が深まるだけでなく、作業ミスの軽減や、業務知識の共有にも繋がります。
テーマトーキング
「テーマトーキング」もオススメです。
テーマトーキングとは、ゲーム、外食、スポーツなど共通のテーマで話すことです。共通のテーマで話すと、自然と似ている点が見つかります。好きなゲームが好きだったり、同じ苦手な食材があったり、競技は違えどお互いスタジアムにスポーツを見に行ったりするような共通点が見つかるものです。人は似ていることがあると、相手を親しく感じる習性があります。
これを心理学では「類似性の法則」と呼びます。自分の趣味をベースにテーマトーキングに入ってもいいですし、相手の趣味を聞いて相手に合わせてテーマトーキングをしていくのもいいでしょう。
もう一つオススメなのは「週末トーク」です。
金曜日に「今週末なにするの?」と話をし月曜日に「先週末はどうだった?」と話をしてみると、お互いの意外な一面を見つけることがあります。ちょっとした趣味を知ったり、ちょっとした得意なこと・苦手なことを知ったり、相手の仕事以外の過ごし方を垣間見えたりします。
プライベートな会話がメンバー同士の自己開示に繋がりますし、週末トークからテーマトーキングに推移することも少なくありません。
まとめ
今回は「テレワーク」と「心理的安全性」の関係について解説しました。
テレワークでは職場での勤務と比べて心理的安全性が低下しやすい傾向にあります。だからこそ、テレワークではリーダーから進んで心理的安全性を確保する施策に取り組む必要があります。
本記事で紹介した交流の場/機会を参考に、ぜひチームのコミュニケーション改善に取り組んでみてください。
参考URL
[1] リモートでの上司とのコミュニケーションにストレスを感じたことのある部下は約8割
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000058857.html
[2] テレワークでの職場内コミュニケーション
https://teamwork.cybozu.co.jp/blog/telework-communication.html
[3] テレワーク下の雑談に関する実態調査
https://www.scholar.co.jp/knowledgebase/id=5309