エンジニアは、IT社会を支える欠かせない存在です。IT業界では女性エンジニアの活躍も広がりつつあります。しかし、実際にどのくらい女性エンジニアがいるのか、年収はどのくらいなのか、など疑問を抱える女性も多いのではないでしょうか。
本稿では「女性エンジニア」をテーマに、実態から目指すメリット・デメリット、キャリアのポイントまでお伝えします。エンジニアに興味がある女性の方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1. 女性エンジニアの実態とは
まずは、女性エンジニアの実態について見ていきましょう。ここではデータを交えて、女性エンジニアの割合と年収について紹介します。
1-1. 割合
ヒューマンリソシア株式会社の調査によると、日本のエンジニア全体における女性の割合は約18.8%です。つまり、エンジニアの5人に1人程度が女性という計算になります。
ITエンジニアの女性比率、日本は18.8%でOECD加盟国中17位、ITおよびSTEM分野卒業者の女性比率は、OECD最下位と将来の女性活躍が危惧される結果に
この数値はOECD加盟国の平均を下回っており、日本の女性エンジニア比率は国際的に見ても決して高いとは言えません。IT業界では女性の活躍が進んでいる一方で、将来的な人材バランスには課題が残されています。
1-2. 年収
IT系転職メディア「Forkwell Press」の調査によると、女性エンジニアの平均年収は約490万円です。男性エンジニアの平均年収・約600万円と比較すると、女性エンジニアの平均年収は男性の約81.7%となっています。
一方、日本全体の平均年収は男性が約404万円、女性が約303万円で、その比率は75.2%です。日本全体と比較すると、女性エンジニアの平均年収は高水準で、男女間の年収差もやや小さい傾向にあると言えます。
2. 女性エンジニアが少ない理由
女性エンジニアの人数が伸び悩む背景には、社会や業界が抱える構造的な要因があります。ここでは、具体的に考えられる3つの理由について見ていきましょう。
2-1. そもそも志望者が少ない
女性エンジニアが少ない理由の1つは、そもそもエンジニアを志望する女性が少ないためです。その背景には、学生時代における文理選択の傾向が関係しています。
高校生の進路選択に関する文部科学省のデータによると、女子は「文系コース」に所属する割合が男子よりも高い傾向が見られます。
数学や物理といった理系科目の素養は、エンジニア職を目指すうえで有利に働きます。文系出身でもエンジニアになることはできますが、理系と比べて別進路の選択肢が多いため、結果的に志望者数は少なくなりやすいでしょう。
2-2. ワークライフバランスの障壁
エンジニアは、プロジェクトの繁忙期や突発的なトラブル対応などにより、残業や休日対応が発生しやすい職種です。女性が出産や育児といったライフイベントを迎える場合、家庭との両立が難しくなるケースも少なくありません。
実際、厚生労働省「第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況」によれば、女性の正社員比率は25~29歳で最も高く、その後35~39歳にかけて急減し、以降もほぼ横ばいのまま推移する「L字カーブ」を描いています。また同資料によれば、日本における女性の無償労働時間(家事や育児など)は男性の約5.5倍です。こうしたデータから、出産・育児などのライフイベントが女性の就業継続に大きな影響を与えていることがうかがえます。
そのため、長時間労働が前提となるような働き方は、ワークライフバランスの観点から大きな障壁になりやすいです。実際に、子育てとの両立が難しいと感じて離職を選ぶケースもあり、職場の定着率を下げる要因の1つになっています。
2-3. 採用現場で不利になるケースがある
残念ながら、採用現場で女性が不利な扱いを受けるケースも一部には存在します。たとえば「出産や育児で早期に離職するのではないか」といった先入観が、採用判断に影響を与えるケースも無いとは言いきれません。
近年では、多くの企業が多様性に配慮した採用活動を行っています。しかし、現場レベルでの意識や体制には、まだ改善の余地があると言えるでしょう。
3. 女性がエンジニアを目指すメリット
まだまだ女性エンジニアは少ないものの、女性にとってエンジニアというキャリアは多くの魅力を持っています。女性がエンジニアを目指す主なメリットは、次の3つです。
3-1. 年収アップ・キャリアアップを図れる
女性がエンジニアになることで、年収アップ・キャリアアップを図れます。エンジニアの仕事は実力主義の側面が強く、年齢や性別よりも成果やスキルによって評価されやすいためです。
スキルを磨き、経験・実績を着実に積み重ねていけば、昇給や昇進のチャンスを自らの力でつかめるのが魅力と言えます。高いスキルを獲得すれば人材としての価値が高まり、新たなキャリアも描きやすくなるでしょう。
3-2. 多様な働き方の選択肢がある
女性がエンジニアになれば、多様な働き方の選択肢があります。職種にもよりますが、エンジニアの仕事には在宅で完結できる業務も多いです。そのため、リモートワークやフレックスタイム制などを導入する企業も増えています。
こうした職場では、働く場所や時間の自由度が比較的高く、理想のワークライフバランスを実現しやすいでしょう。たとえば自宅で仕事をしながら、空いた時間に育児や家事に取り組む、といった働き方もできます。
3-3. スキル次第で長期的に働ける
女性がエンジニアになれば、スキル次第で長期的に働けます。エンジニアは前述のように実力主義の側面が強く、スキルがあれば年齢や性別に関係なく評価されやすいためです。
実際に、40代や50代でも第一線で活躍している女性エンジニアは少なくありません。継続的にスキルを磨き、知識を深めていけば、ライフステージの変化にとらわれず自分らしいキャリアを築いていけるでしょう。
4. 女性がエンジニアを目指すデメリット
女性がエンジニアとしてのキャリアを築くうえで、いくつかのデメリットもあります。女性がエンジニアを目指すデメリットは、主に次の2つです。
4-1. キャリアプランの設計が難しい
女性エンジニアにとって、キャリアプランの設計が難しい面は否めません。前述のとおり、出産や育児を選択する女性も多く、ライフイベントとの両立に悩む場面が出てくるでしょう。長期間のブランクがキャリア形成に影響したり、働く時間や場所に制限が生じたりするケースもあります。
また、女性エンジニアの母数が少ないため、ロールモデル(お手本となる人物)を見つけにくいのも難点です。ロールモデルがいないと、自分に合った働き方や成長の方向性をイメージしにくいと言えます。
4-2. 孤独や不安を感じることがある
女性エンジニアは時として、孤独や不安を感じることがあります。職場における女性エンジニアの割合は依然として低く、チーム内に同性の同僚がほとんどいないケースも珍しくありません。
こうした環境では、些細なことを相談しづらかったり、話しの合う相手が少なかったりと、孤独感を覚えることがあります。また、キャリア形成に関して相談できる同性の先輩がいない場合、不安感が募りやすくなるでしょう。
5. 女性がエンジニアとして理想のキャリアを描くには?
女性がエンジニアとして理想的なキャリアを描くために、4つのポイントを押さえておきましょう。
5-1. 自分の強みと目指す方向を明確にする
まずは、自分の強みと目指す方向を明確にしましょう。エンジニアとして就職・転職するためには、やはり強みを活かせる分野を目指すことが賢明です。
特にIT系の経験が浅い場合には、コミュニケーション力や問題解決力など、人間的なスキルを見直すことが大切です。自身の価値観や得意分野を整理することで、理想とする働き方や進みたい分野が見えやすくなります。
5-2. 自分に合った職種・働き方を見つける
エンジニアと一口に言っても、多様な職種や働き方があります。自身のライフスタイルやキャリアプランに合った職種や働き方を見つけることが、長く活躍するうえで大切です。
たとえば、プログラムを書く「プログラマー」や、ITインフラを支える「インフラエンジニア」などが代表的な職種です。開発職だけでも、Web系やアプリ系、組み込み系といった多様な分野があります。
働き方も、会社に所属してフルタイムで働くだけでなく、在宅専門のフリーランスや副業といった選択肢も考えられます。どのような職種・働き方を目指すのかを明確に定めたうえで、将来を見据えたキャリアを設計しましょう。
なお、「えるぼし認定」(女性活躍推進企業の認定制度)を取得している企業では、会社員としてのキャリアも柔軟に築けます。たとえばバルテス・ホールディングスは、女性正社員比率が54.9%と業界平均を大きく上回り、全雇用区分で月間残業45時間未満を徹底しています。会社員としてのキャリア形成を重視したい場合は、こうした企業を選ぶのも良いでしょう。
5-3. ロールモデルやメンターを見つける
理想のキャリアを考えるうえでは、お手本となるロールモデルや、アドバイスをもらえるメンター(相談役)を見つけることが有効です。先輩女性エンジニアの働き方やキャリアパスを参考にすることで、具体的なキャリア設計のヒントが得られるでしょう。
身近にそのような女性がいない場合は、「WAKE コミュニティ」のような女性エンジニア向けのコミュニティや、「MENTA」のようなメンターを探せるサービスを活用するのがおすすめです。
5-4. スキルを磨き続ける姿勢を持つ
エンジニアとして長期的に活躍するためには、性別を問わずスキルを磨き続ける姿勢が欠かせません。技術の進化が著しいIT業界では、新たな技術が登場すれば、それまでの手法がすぐに古くなることもあります。
そのため、常に新しい知識を吸収し、スキルを拡大していく意識が大切です。転職前の準備期間だけでなく、転職後も継続的に学び続けることで、自身の市場価値を高めていきましょう。
6. まとめ
今回は「女性エンジニア」をテーマに、幅広くお伝えしました。まだまだ女性の割合は多くありませんが、エンジニアは多くのメリットを持つ仕事です。スキル次第で年収アップやキャリアアップ、柔軟な働き方を実現することもできます。
一方で、キャリア設計の難しさや孤独感といった課題もあるため、ポイントを押さえて取り組むことが大切です。これからエンジニアを目指す女性は、今回の内容をぜひ参考にしてください。