デスクワークの多いエンジニアは、在宅勤務であってもそうでなくても長時間のデスクワークを避けることができません。
ここでは、長時間同じ姿勢で作業を行った場合に生じる体への悪影響、この悪影響を抑止するための方法について説明します。
抑止するためのグッズとして椅子の選び方やその他、いくつかの便利なグッズについても紹介していきます。
長時間座り続けるとどうなるか
日本人は海外の人の平均値と比較して1日を通して座って作業している時間が圧倒的に多いと言われています。
(海外20か国の平均値が5時間に対して日本人の平均値は約7時間です。*)
長時間座り続けるとどのような不具合があるのでしょうか。
*ニッセイ基礎研究所が調査した豪シドニー大学の研究データ(2012年)による
足がむくむ
長時間座り続けると足にむくみが生まれます。
これにはいくつかの理由があります。
ふくらはぎの筋肉の作用により足の先の血流を循環させる働きが作用しない、太ももやお尻の圧迫により周辺の血液の循環が損なわれる、リンパの循環が損なわれるなどです。
これらは、単に足が太くなるだけでなく疲労感や痛みの発生に繋がりかねません。
その結果、ストレスが生じ、集中力の減少につながるため効率の良い作業に支障をきたす可能性が生まれてしまいます。
肩や首がこる
長時間座り続けることによる血流の停滞は肩や首のこりも引き起こし、冷え性やめまい、目の疲れなどにもつながります。
また、首の筋肉は自律神経にも繋がっているため自律神経に関係する症状が発生してしまいかねません。
自律神経が乱れてしまうと、集中力が続きづらい傾向があるので、自分で集中力を保つ必要があるエンジニアにとっては注意したいポイントです。
ストレスが溜まりやすくなる
座ったままのずっと同じ姿勢を維持していると、肉体的にも精神的にもリフレッシュすることができないためにストレスがたまりやすくなる可能性が高まります。
ストレスが溜まると、普段の業務にも影響が出てしまうこともあり、結果的に業務効率の低下につながってしまうのです。
疲れにくい座り方のポイント
長時間座り続けることによる足のむくみや首や肩の疲労や痛みを抑えるために心がけるべきことについて説明していきましょう。
体重を負荷分散
お尻だけで身体を支えようとするのではなくお尻だけにかかっている体重を足裏にも移して、お尻と左右の足裏の三点に負荷を分散して身体を支えることにより疲れにくい座り方になります。
また、ひざと腰の角度を直角になる程度とし、背筋を伸ばして椅子に深く腰掛け、座った状態で頭を前に垂れることなく、顎を引き首の上に頭を置くように心がけましょう。
肩や首への負担を軽減することができるので、肩や首のこりの防止に繋がります。
坐骨に均等に荷重して骨盤をケア
もう一つのポイントとして、「坐骨」という骨盤の一番下にある骨を探して椅子に座り、前後左右に体を動かしたときにもっとも椅子とお尻の接触を強く感じる部分が坐骨です。
この左右のお尻にある坐骨に、均等に力が加わるようにバランスよくリラックスした姿勢で座ります。
この状態が「骨盤を立てる」姿勢で、骨盤を立てて座ることが骨盤のケアにもつながり、このような姿勢で座ることが体を正しい姿勢に保つため健康にも効果的です。
椅子の背もたれの種類
事務用の椅子は、背もたれによっていくつかのタイプに分類されます。
代表的なタイプとしてローバック、ミドルバック、ハイバック、背もたれ付きなどがあります。
背もたれがないと背筋や腰のみで上半身を支える必要があるため事務用の椅子としては向きません。
最低限ローバックタイプの背もたれが必要です。
エンジニアが従事する企業の多くでは、ミドルバックもしくはハイバックの椅子が使われることが多いでしょうが、ヘッドレストまでついた椅子を使用している職場は少ないのではないでしょうか。
ローバック
腰の高さ程度の背もたれがある椅子のことを言います。
最低限の高さと言えど背もたれによって背筋や腰の負担を軽減することができます。
また、背丈が低いため周囲に座る人の視界を遮ることがなく、価格も他のタイプの椅子と比較して比較的安価ですが、長時間体を支えて座る用途には不向きです。
ミドルバック
背もたれの高さがハイバックとローバックの中間の高さのものです。
ハイバックに比べて背もたれの高さによる圧迫感を抑えることができる利点があります。
一方で、あまり長時間の作業を行う場合には不向きですがある程度の時間、継続して作業するために使用する目的には適しているでしょう。
ローバックよりも快適さを確保しつつ、ハイバックよりも価格を抑え、人間工学に基づいた高機能モデルも増えてきていますが、ローバックやハイバックに比べると商品数が少ないのが実態です。
ハイバック
背もたれが大きく、上半身を支える高さが高くその力も強いため長時間座って作業しても疲れにくい利点があり、ランバーサポートやヘッドレスト付きなど、さらなる座り心地を追求した高機能のモデルが多くあります。
長時間自宅で作業をする人やオフィスで数時間以上継続して仕事をする人には欠かせないタイプです。
サイズが大きく高価で、部屋に設置した場合にどうしても圧迫感があります。
ヘッドレスト付き
背もたれが頭まであり、頭の部分に枕状の支持物がついているタイプの椅子のことを呼んでいます。
ヘッドレスト付きはパソコンの画面などを長時間、同じ姿勢で同じ距離にあるものを見ながら作業を行う場合に、頭をヘッドレストに預けて固定させることにより頭および首の負荷を軽減することが期待できます。
これにより正しい姿勢で座って作業を行う助けとなり、加えてハイバックの背もたれと同様に頭から背中、腰までを支えることができる利点をあわせて持っています。
椅子の背もたれだけでなく、ヘッドレストも利用して体重をバランスよく椅子全体に預けることにより体がくつろぎ、 その結果作業効率が上がり疲労感も最小限に抑えることが期待できるでしょう。
固定式ヘッドレスト
固定式ヘッドレストは丈夫なつくりになっているのが特徴で、頭になじみやすくクッション性の高いものを選ぶと快適に使えます。
ただ高さや角度が調整する方法がありませんので事前にチェックしておくことが必要です。
可動式ヘッドレスト
頭部を支持するためのヘッドレストの高さや角度を調整する手段が用意されているタイプの補助器具のことを指します。
利点として身長の高い人や低い人、首の長い人や短い人、頭を載せたときの好みの角度などを自由に設定することができるなどの点です。
そのためパソコンによる長時間作業を行う際に画面との距離を一定に保ちやすいため、目や体の疲労を抑える一定の効果があるでしょう。
他方で高機能であるため使用されている部品が多く壊れやすい、頭を載せた際にヘッドレストを固定できずに使いづらいなどの課題が発生することもあります。
背もたれの見る部分
長時間座って作業しても疲れにくい椅子を選ぶためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、主要なポイントとなる背もたれの角度と背もたれの生地について説明していきましょう。
疲れにくい背もたれの角度調節
椅子に長い間座って作業を行っても疲れにくくするためには、骨盤を立てて座ることです。
「骨盤を立てる」とは骨盤の位置を本来あるべき場所になるよう、左右のお尻でバランスよく座り、椅子の底面に対して垂直になるように座ります。
骨盤が本来あるべき状態にすることにより体にもよく健康の維持にも効果的でしょう。
骨盤を立てて座るためには、椅子に深く座るようにし、リクライニング機能を使って椅子の背もたれを100度前後に角度調節すると良いです。
背もたれの生地
メッシュ素材、ファブリック布地、レザーなどが背もたれの生地として使われる主な素材です。
メッシュは通気性が良いため全てのシーズンにおいて快適に使用することができ、見た目も良いため好んで使われますがメッシュの間にほこりがたまりやすいという欠点があります。
ファブリックの利点はその素材の性格上、色んな色合いのものを選択することができるため、室内の色調に合わせた色の選択ができる点です。
レザーは高級感があり、手入れが簡単という利点がありますが、人が座った場合に密着性が高くなるため長時間使用するには不向きであるため、見た目にこだわりたい人に合った椅子と言えます。
便利なグッズ
長時間座って作業をする場合に、快適な作業を支援する補助器具を紹介します。
後付けタイプの背もたれ
後付けタイプの背もたれは、今使っている椅子をそのまま利用しながらそこに新たに付け加えることにより、良い姿勢で長時間作業をすることを支援するためのグッズです。
基本的に背中の形状に合わせ、S字の姿勢が保てるように製作されていますので、自分の背中に合うかを事前に確認した上で購入することが必須です。
使い始めてみて、自分の体に合わないとなるとかえって体に負担を与えることになり、逆効果となる可能性があります。
また、椅子本体から簡単に取り外すことができ丸洗いできるタイプのものを選ぶと良いでしょう。
クッション
クッションは背もたれを使うか使わないかに関わらず正しい姿勢をサポートするグッズです。
お尻への圧迫を和らげることで長時間座っていても疲れにくいものや、骨盤にしっかりフィットして体の歪みを防ぎ、その結果疲労の抑止を助けてくれるものなど、種類が多い為自分にぴったりのものを選ぶことができます。
まとめ
デスクワークの多いエンジニアの人を対象として、長時間同じ姿勢で作業を行った場合に生じる体への悪影響について解説しました。
血液の流れの滞留に伴う肩や首の疲労、足のむくみやストレスの蓄積などで、この悪影響を抑えるための方法について説明しました。
紹介したグッズなども活用しながら少しでもデスクワークの助けにすると良いでしょう。