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第1回 エンジニア向け健康管理術
エンジニア向け健康管理術 2023.10.27
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エンジニアによくある疾患と原因・心と体を整える2つのケア

監修: 垂水 良介

精神保健指定医・日本精神神経学会専門医・指導医・日本医師会認定産業医・日本児童精神医学会認定医

エンジニアによくある疾患と原因・心と体を整える2つのケア

「体の調子が悪い・・・」「最近眠れない・・・」など、
ご自身の身体の状態でお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

それは、エンジニアとして働く方によくある疾患かもしれません。心や体の不調は、原因を考え、過ごし方を見直すことで改善していくことが大切です。

そこで本記事では、エンジニアによくある疾患・お悩みと、考えられる原因をご紹介します。また、心身の健康を整えるための「セルフケア」と「ラインケア」という考え方についても解説します。

エンジニアとして今後も長く健康に働いていくために、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を監修した人

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垂水 良介 医師

令和3年 慶應義塾大学大学院医学研究科卒業。

精神保健指定医・日本精神神経学会専門医・指導医・日本医師会認定産業医・日本児童精神医学会認定医

もくじ
  1. エンジニアがかかりやすい疾患・お悩み
    1. こころの病(うつ病・不安障害など)
    2. 不眠症
    3. 腰痛・関節痛
    4. 眼精疲労
    5. 胃腸炎
  2. エンジニアが体調を崩す主な5つの原因
    1. 長時間の労働
    2. 人間関係のストレス
    3. 仕事・将来への不安
    4. 運動不足
    5. 食生活の乱れ
  3. 健康を整えるセルフケアとラインケアの重要性
    1. 個人で心がける「セルフケア」
    2. 周囲の協力が必要「ラインケア」
  4. まとめ

1.エンジニアがかかりやすい疾患・お悩み

まずはエンジニアがかかりやすい疾患・お悩みについて5つご紹介します。

1-1 こころの病(うつ病・不安障害など)

よくある疾患として、精神的なお悩みを抱えている人は多いようです。
エンジニアの方は真面目で几帳面な性格の方も多いので、仕事の中で無理をしてしまって、ご自身でも気づかないうちに「うつ病」や「不安障害」などを発症してしまいます。
他にも、精神的な疾患には以下のようなものがあります。

病名 特徴
うつ病 気分障害の一つであり、精神的ストレスや身体的ストレスなどの影響によって脳がうまく働かない状態です。
不安障害・パニック障害 突然パニック発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態です。パニック発作には「発汗、窒息感、吐き気、手足の震え」などがあり、「死んでしまうかも」と不安に思ってしまうことが特徴です。
総合失調症 脳が混乱してしまい、様々な働きをまとめることができなくなる疾患です。「陽性症状」と「陰性症状」があり、健康なときには無かった状態が現れることを陽性症状、健康な時にあったものが失われる状態を陰性症状と呼びます。
依存症 アルコール依存症・薬物依存症・ギャンブル等依存症など。やめたくてもやめられない、自身のコントロールを失った症状全般を依存症と言います。
解離性障害 自分が自分であるという感覚が失われる疾患です。意識や記憶、思考などが分断されて体験されているように感じることが特徴で、かつては「ヒステリー」と呼ばれていました。
強迫性障害 強迫性障害は強過ぎる不安やこだわりが日常に支障を及ぼす疾患です。自分ではそんなに気にしなくても大丈夫だとわかっていても、意思に反して頭に思い浮かんでしまう強迫観念。その行動をしないと落ち着かない強迫行為などが特徴の疾患です。
適応障害 自分の置かれた環境に上手く適応できず、強い不安な抑うつ気分などによって社会生活に支障をきたす状態のことです。

※上記は一部です。

1-2 不眠症

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「不眠症」などの睡眠に関するお悩みも多いです。
睡眠は体だけではなく脳を休める重要な時間なので、「不眠」「過眠」などは健康に影響を及ぼす疾患になります。
睡眠にお悩みを抱えている方は、放っておかずに生活を見直すことが大切です。

1-3 腰痛・関節痛

エンジニアの方によくある疾患として、腰痛・関節痛もあります。
理由としては、長い時間同じ体勢で仕事をしていて体に負担がかかってしまうことが考えられます。
痛みを抱えたまま仕事を続けると、ヘルニアなど重度の疾患に繋がりかねないので対策していく必要があります。

1-4 眼精疲労

エンジニアの方をはじめ、パソコン仕事をされている方は「眼精疲労」などの目に関してお悩みの方も多いです。
目の疲れは軽視されてしまいがちですが、症状が悪化すると頭痛やめまい、吐き気、肩こりなど様々な体の症状に繋がることもあるため、注意が必要です。

1-5 胃腸炎

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エンジニアに多い疾患として「胃腸炎」もあります。
発症すると、嘔吐や下痢、腹痛、吐き気などの症状が出てしまうので、作業に集中できず仕事にも影響が出てしまうでしょう。
嘔吐や下痢などの症状がなくても、少しお腹が痛いと感じたら生活を見直し、医療機関で受診することをおすすめします。

2.エンジニアが体調を崩す主な5つの原因

体調を崩してしまう原因としては主に5つの原因が考えられます。
ご自身で当てはまるものがないかチェックしてみてください。

2-1 長時間の労働

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エンジニアとして働く方の中には、長時間労働される方もいます。
集中して仕事に取り組まれるのは素晴らしいことですが、身体に負担をかけないように心がけることも大切です。
以下に当てはまる方は、長時間労働によって体調を崩してしまう可能性があるので注意しましょう。

☑ 毎日残業をしている

☑ 同じ姿勢で働いている

☑ 姿勢が悪い

2-2 人間関係のストレス

エンジニアに限りませんが、人間関係のストレスも胃痛や睡眠障害など不調の原因となります。
精神面・身体面で不調を感じたら、放置せずに医療機関や産業医などに相談することが大切です。
以下に当てはまる方はストレスによる体調不良にご注意ください。

☑ 人付き合いが苦手

☑ 人の目が気になる

☑ 周りに合わせすぎてしまう

☑ 職場やチームに苦手な人がいる

☑ 周りに相談できる人がいない

2-3 仕事・将来への不安

エンジニアの方は仕事・将来への不安を感じている方も多いようです。
不安から眠れなくなってしまったり、食欲がなくなってしまったりと生活習慣にも悪影響を与えてしまいます。
以下のようなお悩みがある方は、それがストレスにつながってしまうこともあるので注意が必要です。

☑ 現在の仕事・職場に不満がある

☑ 将来、どうすればいいか分からない

☑ このまま仕事を続けてもいいのか不安

2-4 運動不足

運動不足も体調を崩す原因となります。
特にエンジニアは仕事中、外に出て動くことが難しいので、運動が不足しやすいです。
以下に当てはまる方は、運動不足の可能性がありますので意識的に体を動かすようにしましょう。

☑ 毎日の運動量が60分以下である(歩行・掃除機かけ・犬の散歩など)

☑ 休日は家でゴロゴロしていることが多い

☑ 長時間歩くと、膝や腰が痛くなる

☑ 急いで階段を上がると息切れや動悸がおきる

2-5 食生活の乱れ

長時間労働などをしていると食生活が乱れてしまうこともあります。
特に一人暮らしをされている場合、自分自身で食生活を管理する必要があるため、気を遣うことが大切です。
以下に当てはまる方は、食生活を見直すことをおすすめします。

☑ 朝食を取らない

☑ 食事の時間が不規則

☑ スナック菓子や菓子パン、ファーストフードをよく食べる

☑ あまり噛まずに早食いしてしまう

☑ 間食が多い

3.健康を整えるセルフケアとラインケアの重要性

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中では、メンタルヘルスケアとして、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要だとされています。
今回はその中から健康を整えるケアとして、「セルフケア」「ラインケア」について詳しく解説していきます。

3-1 個人で心がける「セルフケア」

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セルフケアとは、出来る範囲で、自分自身のケアを行うことです。
具体的な方法については、さまざまありますが、人によって合う、合わないがあります。
いくつか自分で試してみて、その時の気分や体調に合わせてケアをしていきましょう。

職場でできるもの

  • 軽いストレッチ
  • 呼吸を整える
  • 腹式呼吸をする
  • コミュニケーションを図る

休みの日・日常でできるもの

  • 体を動かす
  • 今の気持ちを書いてみる
  • 「なりたい自分」に目を向ける
  • 音楽を聞いたり、歌を歌う
  • 積極的に笑う時間をつくる
  • 快適な睡眠をとる
  • 仕事から離れた活動をする

3-2 周囲の協力が必要「ラインケア」

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ラインケアとは、部長や課長などの管理監督者が中心となって、部下の健康状態を把握し、職場環境改善に向けて強い指導力を発揮していく方法です。
従業員のメンタル管理は主に3つのステップで実施していきます。

ステップ1:「いつもと違う」部下に気づき、話を聞く
ステップ2:ストレス要因を把握し、職場環境を改善する
ステップ3:部下の職場復帰をサポートする

ステップ1:「いつもと違う」部下に気づき、話を聞く

部下の健康状態を把握するためには、部下のいつもと違う様子に気付くことが重要になります。
遅刻や早退・欠勤が増える、ミスや事故が増える、表情や動作に元気がないなど、これまでと比べて変わった様子があれば話を聞いて状況を確認することが大切です。
そして、産業医のところに行かせる、あるいは管理監督者自身が産業医のところに相談に行く仕組みを社内で作っておくことが望ましいでしょう。

ステップ2:ストレス要因を把握し、職場環境を改善する

管理監督者として、部下のストレス要因となるものを把握し、職場環境を改善していく働きも重要です。
職場環境のストレス要因としては主に以下の3つがあります。

  • 作業環境境(温度湿度、照明、騒音など)
  • 作業方法(作業スペースや作業姿勢、身体や感覚器官への負荷など)
  • 人間関係
  • 組織形態(指揮命令系統、責任や権限などの仕組み)

ストレス要因を特定し、できるところから改善に働きかけていきましょう。

職場環境改善の5ステップ

  1. 職場環境の評価
  2. 職場環境のための組織づくり
  3. 改善計画の立案
  4. 対策の実施
  5. 改善の効果評価

ステップ3:部下の職場復帰をサポートする

ラインケアの一つとして、職場復帰のサポートも大切になります。
一定期間、休職していた人は「周りの人にどう思われているだろう」「また前のように仕事はできるだろうか」など、さまざまな不安・心配を抱えて復帰をします。
そのため、管理監督者はその気持ちを受け止めて、復帰後の支援を行うことが重要です。

職場復帰支援の際に、心がけておきたいポイントは以下の3点です。

  • 原則として元職場に復帰だが、職場要因の有無や適正配置の観点からも改めて業務を検討する。
  • 主治医や産業医の意見を踏まえて、その時の復帰者の健康状態に見合った業務を与え、本人の状況を確認する時間を設ける
  • 定期的な通院加療が必要なことが多いため、通院のための時間の確保に配慮する。

引用:eラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」より

管理監督者の方は、上記を考慮した上で部下の健康を管理していくようにしましょう。

まとめ

今回の記事ではエンジニアの方に多い健康のお悩み・疾患についてご紹介しました。
体調不良の原因には以下のようなものがあります。

  • 長時間の労働
  • 人間関係のストレス
  • 仕事・将来への不安
  • 運動不足
  • 食生活の乱れ

調子が悪い状態を放っておくと、重大な病につながってしまうこともあるので、少しでも調子が悪いと感じたら産業医・医療機関に相談するようにしましょう。

また、心と体のケアの方法として「セルフケア」と「ラインケア」をご紹介しました。
セルフケアは自分で自分を管理するための方法ですが、それでも体調不良が改善しない、悩みが解決しない場合は「ラインケア」を頼ることも大切です。

エンジニア不足が深刻になりつつある今、長く健康に働いていくことはご自身だけでなく所属されている企業・チームにとっても重要なことです。
今回の記事を参考にして、健康を整えていきましょう。

エンジニア向け健康管理術
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監修: 垂水 良介

精神保健指定医・日本精神神経学会専門医・指導医・日本医師会認定産業医・日本児童精神医学会認定医

令和3年 慶應義塾大学大学院医学研究科卒業。