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セキュリティ 2024.01.18
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危険なサイト?「ダークウェブ」の概要を5分で解説

執筆: 大木 晴一郎

ライター

危険なサイト?「ダークウェブ」の概要を5分で解説

時折、ニュースなどで「ダークウェブ(Dark Web)」という単語を見かけてどんなイメージをお持ちでしょうか?

多くの方は「クラッカーの集まる悪の巣窟?」とか「闇サイトと似たようなもの?」といったように何となく「怖そうなサイト」という感覚を持っているのではないかと思います。

そこで今回は、知っているようで意外と知らない「ダークウェブ」の概要をまとめてみたいと思います。

もくじ
  1. 「ダークウェブ(Dark Web)」とは何か?
    1. 「ダークウェブ(Dark Web)」とは?
    2. ダークウェブとディープウェブ、サーフェスウェブの違い
    3. ダークウェブで用いられている技術
  2. ダークウェブはどんな風に使われている?
    1. 違法な取り引きと市場
    2. プライバシー保護と情報隠蔽
    3. 政治的活動
  3. ダークウェブのリスクと問題点
    1. 犯罪活動で使われることが多い
    2. 詐欺とトラブル
    3. サイバーセキュリティへの脅威
  4. ダークウェブの未来展望
    1. 厳格に法執行されていく可能性
    2. プライバシー保護のために使われる可能性
    3. 倫理的な議論が継続する
  5. まとめ

1.「ダークウェブ(Dark Web)」とは何か?

1-1 「ダークウェブ(Dark Web)」とは?

「ダークウェブ(Dark Web)」とは、匿名性が高いネットワークを経由してアクセスできるWebのことです。

具体的には「ダークネット(Darknet)」に存在しているWorld Wide Webのコンテンツ群のことで、検索エンジンでは見つけることができません。報道では、Torブラウザといった特定の匿名ソフトウェアでアクセスできるWebサイトのことをダークウェブと呼んでいることが多いようです。

★「ダークネット(Darknet)」とは?

ダークネットとは、アクセスするために特別なソフトウェアと設定、そして認証が必要なオーバーレイ・ネットワークのことです。ダークネットは2種類あり、一つはP2Pソフトウェアなどで用いられる「フレンド・トゥ・フレンド(friend-to-friend)」で、もう一つが匿名化技術「Tor(トーア)」等で利用する「プライバシーネットワーク」です。ダークネットの起源はなんと1970年代にさかのぼります。当時は、世界で初めて運用されたネットワーク「ARPANET(アーパネット)」から隔離されたネットワークという意味で使われていました。

ダークウェブを先に一言でまとめてしまうと、「触るな危険」「混ぜるな危険」のジャンルに属しています。詳しい知識や十分な対応機器等を持たずに利用するのは危ないので基本的に近寄らないのが無難です。

1-2 ダークウェブとディープウェブ、サーフェスウェブの違い

ダークウェブの他に「ディープウェブ(Deep Web)という用語を見かけたことがある方もいらっしゃると思います。他に「サーフェスウェブ(Surface Web)」もあります。まず、これらの違いをまとめてみたいと思います。

ダークウェブ(Dark Web)

前述したように、匿名性の高いネットワークを通じてアクセス可能なWebをダークウェブと言います。GoogleやYahoo!といった検索エンジンで見つけることはできません。閲覧するには、基本的に一般的なWebブラウザではなく、Torブラウザなど専用ツールを必要とするのが特徴です。

ディープウェブ(Deep Web:深層Web)

ディープウェブもダークウェブと同じく、検索エンジンでは見つけられないWebです。検索を回避し、外部からは接続できないよう設定されています。プライベート情報や機密性が高い情報を取り扱っていることが多く、ほとんどがパスワードなどでアクセスを制限しています。ダークウェブのように専用ツールを必要としないことも多いです。

ここにあるのは、ログイン認証が必要な有料コンテンツや保護されたイントラネット、データベース、Dropboxのようなストレージプラットフォームといったコンテンツが中心とされています。実はインターネットコンテンツ全体のほぼすべて(95%以上)がディープウェブだと言われています。そして、ダークウェブはこのディープウェブの一部なのです。

★「闇サイト」とディープウェブはどう違う?

事件報道でよく話題になっている「闇サイト」は、犯罪など、違法行為の勧誘を目的として運用されているWebサイトのことで、報道用語として、マスコミが造語したと言われています。以前は「アングラサイト」と呼ばれることが多かったと思います。両者はほぼ同じ意味と考えてよいでしょう。

闇サイトは、犯罪行為を請け負ったり、違法行為をする仲間を募ったり、違法なアルバイト(闇バイト)の勧誘など反社会的な行為のために使われることがほとんどで、今、問題視されています。闇サイトはパスワード保護をされていたり、ディープウェブに存在していたりすることもありますが、表層Webに存在し、隠語などを使ってやり取りされていることもあります。

サーフェスウェブ(Surface Web:表層Web)

サーフェスウェブはオープンウェブ(Open Web)とも言われます。自由に検索エンジンで見つけることができ、一般的なWebブラウザで閲覧できるコンテンツのことです。企業の公式サイトやSNS、ECサイトといった、われわれがふだん利用しているWebサイトがこれにあたります。

サーフェスウェブはインターネットコンテンツ全体のごくわずか(3~4%)であると言われています。言葉通り、インターネットの表層にあるコンテンツです。

1-3 ダークウェブで用いられている技術

ダークウェブで使われる中心的な技術は、アメリカ海軍調査研究所(U.S. Naval Research Laboratory)が出資して開発した「オニオン・ルーティング(Onion routing)」と呼ばれるものです。オニオン(玉ねぎ)のように何層ものレイヤーで情報を隠して、情報通信の秘匿性を確保するのが狙いです。

オニオン・ルーティング技術はその後、「The Onion Router」を縮めて「Tor(トーア)」と呼ばれるようになりました。Torを使うと、匿名通信が可能なため、自由な通信とWeb閲覧に制限がある国々で利用されたり、アングラ活動で利用されたりするようになりました。

日本でTorの知名度が上がったのは、2012年に発生した「パソコン遠隔操作事件」がきっかけです。犯人がTorを悪用していました。

2.ダークウェブはどんな風に使われている?

2-1 違法な取り引きと市場

ダークウェブは上でも少し触れましたが、Torを使い、犯罪に使われるケースが目立っています。2018年に発生した「仮想通貨NEM流出事件」でも犯人グループはTorを利用しており、これが大きく報じられることになりました。

このように、ダークウェブは、違法な商品やサービスを取り引きしたり、換金するための市場として利用されたりしています。よく報じられているのは、違法な薬物の売買、盗まれたデータのやり取り、ハッキングツールの流通などです。簡単に言えば、犯罪者が捜査機関に隠れてインターネットを利用するために使われることがあるということです。

2-2 プライバシー保護と情報隠蔽

違法な取引きに使われる一方、ダークウェブは匿名性とプライバシーを提供するため、インターネット通信に規制や検閲が掛けられ利用に制限がある国々で利用されたり、ジャーナリストなどが言論の自由を守るために重要なツールとして利用していることもあります。

しかし、逆にこれを悪用して情報隠蔽・隠滅などのために利用されていることもあります。表裏一体の関係になっています。

2-3 政治的活動

一部の国では、ダークウェブは政治的活動家に利用されていると言われています。活動情報や活動家間のコミュニケーションが暗号化され、匿名で行われていることになります。

3.ダークウェブのリスクと問題点

3-1 犯罪活動で使われることが多い

前章で述べたように、ダークウェブは違法な活動、犯罪活動と深く関連していることが多くなっています。匿名ゆえに捜査機関の活動が難しいことも指摘されていて、現在は、社会的な安全上の脅威として認識されているケースが増えています。

3-2 詐欺とトラブル

ダークウェブは犯罪活動の情報交換等で使われるだけでなく、ダークウェブ上の取引きも詐欺行為やトラブルが非常に多いとされています。これは、ダークウェブの信頼性の低さによるものです。一般人が真偽を見分けるのは難しいという指摘もあり、「触るな危険」のジャンルとなっています。

3-3 サイバーセキュリティへの脅威

ダークウェブでは、違法コピーされたソフトウェアやコンテンツや、サイバーセキュリティに関するツールや情報が入手できます。セキュリティ情報や高度なコンピュータ知識を求めてダークウェブを利用する人も多いようです。

マルウェアの作成キットやサイバー攻撃方法のマニュアルが販売されていることもあり、社会的には新たな脅威が生み出される場所になっているという指摘もあります。

4.ダークウェブの未来展望

ダークウェブは今後、どのように使われていくのかは分かりませんが、道具であり、"使われ方"が問題になっているため、今後も存続し続け、関連技術は発達を続けると予測されています。しかし、これを追跡、発見する技術も高度化すると考えられるため、いたちごっこの様相が続くと見られます。その上で、今後どうなっていくかを考えてみます。

4-1 厳格に法執行されていく可能性

悪用されている以上、ダークウェブ上の違法活動への監視は今後、強化され続けるでしょう。技術の進化によって、匿名性の壁は堅く、高くなっていますが、監視に用いられる手法やツールも開発され、発達を続けるでしょう。

これにより、ダークウェブを利用する犯罪者が逮捕される確率が高まる可能性があります。また、厳罰化も進むと思われます。

4-2 プライバシー保護のために使われる可能性

プライバシーを重視するユーザーは、ダークウェブを利用して自分自身のデータと通信を保護するようになる可能性があります。現在、セキュリティの強化と匿名性の維持は一部で重要な課題となっていることから、今後、ダークウェブから新たなプライバシー保護ツールや暗号化技術が生まれる可能性があると言われています。

4-3 倫理的な議論が継続する

現在も、ダークウェブは倫理的な議論を引き起こしています。これは、プライバシー権と法執行の関係、情報の自由と濫用、犯罪活動での悪用対策など、さまざまなテーマがあり、これらには多くの倫理的な問題が含まれています。これら、ダークウェブに関する議論は今後も活発に行われることになると思われます。

まとめ

ダークウェブは、複雑で、多種多様な利用目的で使われていることもあり、今後も議論が続くと思います。そして、無知識・無防備で利用するには危険な場所であり続けるでしょう。

目まぐるしく技術や利用方法が変化していることもあり、ダークウェブの未来は不透明と言えるかもしれません。その意味では、今後の報道などでその動向が気になる存在といえます。

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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。