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テスト技法・工程 2023.11.22
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ソフトウェア保守の必要性とは?タイミングや怠るリスク、ポイントを解説

執筆: Qbook編集部

ライター

ソフトウェア保守の必要性とは?タイミングや怠るリスク、ポイントを解説

高品質なシステムやソフトウェアを提供し続けるうえで、保守作業は欠かせません。しかし、保守作業を怠るとどのようなリスクがあるのか、詳しく把握していない人もいるのではないでしょうか。

本記事ではソフトウェア保守の必要性について、基本からわかりやすくお伝えします。保守すべきタイミングや怠るリスク、ポイントも解説するため、ぜひ参考にしてください。

もくじ
  1. ソフトウェア保守の基礎知識
    1. ソフトウェア開発における保守とは
    2. システムやソフトウェアをアップデートする理由
    3. 「内的要因の保守」と「外的要因の保守」がある
  2. ソフトウェア保守が必要となる主なタイミング
    1. 重大な不具合・品質問題の判明時
    2. OSのアップデート時
    3. 周辺機器・ソフトウェアのアップデート時
    4. 脆弱性の判明時
  3. ソフトウェア保守の必要性:保守を怠ることのリスク
    1. サービスの提供が困難になる
    2. ユーザー体験の低下
    3. セキュリティリスクに晒される
    4. トラブル対応にともなう人件費の増大
    5. 新規開発の遅延
  4. ソフトウェア保守を正しく行うためのポイント
    1. 保守の必要性を正しく判断する
    2. 必要なタイミングでこまめに実施する
    3. 開発ドキュメントの更新を怠らない
    4. 対応が難しい場合は保守サービスの活用を考える
  5. まとめ:健全なソフトウェア開発の維持に保守は欠かせない

1.ソフトウェア保守の基礎知識

最初に、ソフトウェア保守とは何か、システム・ソフトウェアをアップデートする理由について解説します。

またソフトウェア保守の2種類(内的要因の保守・外的要因の保守)についてもそれぞれ解説していきます。

1-1 ソフトウェア開発における保守とは

ソフトウェア開発における保守とは、既存ソフトウェアの利用・稼働を維持していくための作業全般のことです。不具合改修や品質改善、新環境への移行対応などを行い、既存ソフトウェアが長く使い続けられるように導きます。自社ソフトのアップデートだけでなく、周辺ソフトのアップデートを適用する作業なども含まれます。

ソフトウェアの種類にかかわらず保守作業は欠かせません。Webサービスであれば、運用環境へ更新版ソフトウェアを適用することが一般的です。パッケージソフトであれば、更新版ソフトウェアやパッチをユーザーへ配布することになるでしょう。

1-2 システムやソフトウェアをアップデートする理由

保守作業においては、システムやソフトウェアのアップデートが生じます。アップデートというと機能追加と思われがちですが、アップデートの理由は次のようにさまざまです。

  • 脆弱性、セキュリティホールへの対応
  • 新しいOSやフレームワークへの対応
  • ユーザーフィードバックへの対応

ただ機能を追加するだけではなく、リスクや環境変化に対応することもアップデートを実施する重要な理由です。

1-3 「内的要因の保守」と「外的要因の保守」がある

ソフトウェア保守は、大まかに「内的要因の保守」と「外的要因の保守」の2種類に分けられます。

内的要因の保守は、自社ソフトの不具合対応といった外部の要因によらない保守作業です。

一方で外的要因の保守は、周辺ソフトのバージョンアップといった外部の変化による影響を受けて実施する保守作業を指します。

2.ソフトウェア保守が必要となる主なタイミング

システムやソフトウェアは、適切なタイミングで保守作業を行うことが大切です。ソフトウェア保守が必要となる主なタイミングは、主に4つあります。

2-1 重大な不具合・品質問題の判明時

重大な不具合や品質問題の判明時は、ソフトウェア保守が必要なタイミングです。原因の特定や影響範囲の調査、修正方針の検討を行い、迅速にソフトウェアをアップデートしなければなりません。対応が遅れれば、後述する複数のリスクが顕在化するでしょう。たとえば、システムダウンによりサービス提供が困難になる場合もあります。

2-2 OSのアップデート時

自社ソフトが土台とするOSが更新された場合、ソフトウェアのアップデートが必要です。ソフトウェアはOSの機能に依存する部分が大きく、OSの仕様が変われば影響を受ける場合があります。ただしOSの変更内容にもよるため、必ずしも自社ソフトの動作に影響するとは限りません。そのため、アップデートの必要性の調査・検討から丁寧に行う必要があります

2-3 周辺機器・ソフトウェアのアップデート時

自社ソフトが外部の機器やソフトウェアと連携する場合、これらのアップデート時にもソフトウェア保守が必要です。たとえば、APIを用いて外部のSNSと連携している場合、APIの仕様が変われば自社ソフトも対応しなければならないでしょう。周辺機器・ソフトウェアのアップデート内容を把握し、OSと同様に自社ソフトの対応要否を判断する必要があります。

データベースやブラウザといった動作環境だけでなく、フレームワークや統合開発環境といった開発環境も調査したほうが良いです。

2-4 脆弱性の判明時

脆弱性の判明時には、ソフトウェアのセキュリティ対策が不可欠です。自社ソフトの不備だけでなく、開発言語やフレームワークなどの関連する技術の脆弱性も対策しなければなりません。

脆弱性対策情報ポータルサイト「JVN」では、日々さまざまな脆弱性が報告されています。自社ソフトのソースコードや関連する技術に脆弱性があれば、速やかな対応が大切です。

3.ソフトウェア保守の必要性:保守を怠ることのリスク

ソフトウェア保守を怠ると、さまざまなリスクの顕在化が懸念されます。ソフトウェア保守を怠ることによる主なリスクは、次の5つです。

3-1 サービスの提供が困難になる

ソフトウェアの保守を怠ることで、サービスの提供が困難になるリスクがあります。たとえば、新しいOSの重要な変更点に対応していないために、既存ソフトが正常に動作しなくなるケースもゼロではありません。スマートフォンアプリの場合、「App Store」や「Google Play」といったストアで、自社アプリが表示されなくなる可能性も考えられます。ビジネスとしての機会損失にもつながるでしょう。

3-2 ユーザー体験の低下

新しいOSやブラウザがリリースされれば、多くのユーザーはアップデートを行います。自社ソフトがこうした周辺環境に対応できない場合、リスクとして挙げられるのがユーザー体験の低下です。動作停止までは至らずとも、速度が著しく低下する、表示が乱れるなどの問題が生じることは考えられます。結果として、自社ソフトの満足度が低下し、ユーザー離れにつながりかねません。

3-3 セキュリティリスクに晒される

新しく判明した脆弱性に自社ソフトが対応できなければ、セキュリティリスクに晒されるでしょう。たとえば、サーバーへの不正アクセスや通信の盗聴などを許し、機密情報や個人情報が漏洩する恐れがあります。また、自社のシステムを犯罪に利用される可能性も考えられるでしょう。中には脆弱性対策をされる前に攻撃を行う「ゼロデイ攻撃」もあります。担当者は迅速な対応が必要です。

3-4 トラブル対応にともなう人件費の増大

ソフトウェア保守の不備によって品質問題が顕在化すれば、トラブル対応にともなう人件費の増大も懸念されます。たとえば、システムダウンから復旧するためには、問題箇所の特定やサーバーの再起動など多くの作業が必要です。また、ユーザーへの状況報告やクレーム対応も発生するでしょう。ソフトウェア保守の人件費を惜しんだ結果、トラブルが発生してかえって多大な人件費が発生することは珍しくありません。

3-5 新規開発の遅延

トラブル対応が必要となれば、保守担当者や運用担当者、開発者のやり取りが増えます。調査段階のやり取りはもちろん、再発防止を含めた対策を検討する際は開発者も巻き込むことになるでしょう。その結果、進行中の開発プロジェクトに費やせる工数が減り、新規開発が遅延することも考えられます。

4.ソフトウェア保守を正しく行うためのポイント

システムやソフトウェアの保守を行ううえで、知っておくべきポイントがあります。ソフトウェア保守を正しく行うためのポイントとして、次の4つを押さえておきましょう。

4-1 保守の必要性を正しく判断する

保守は大切ではあるものの、多くの工数を費やす作業です。保守作業の工数が必要以上にかかると、通常業務に支障が出る恐れもあります。そのため、保守作業の必要性を正しく判断すべきです。

たとえば、周辺ソフトがアップデートされた場合、自社ソフトのアップデートが必要かどうかを正確に判断することが求められます。保守しない場合のリスクや、保守にかかる工数を加味して判断すると良いでしょう。

4-2 必要なタイミングでこまめに実施する

保守の一環としてソフトウェアをアップデートする場合、必要なタイミングでこまめに実施しましょう。適切なタイミングでのアップデートを後回しにすると、複数の対応を後からまとめて行うことになり、難易度が上がってしまいます。

こまめにアップデートを行うことで対応項目が増える前に対応でき、難易度が低い分、工数を抑えやすいでしょう。保守体制にもよりますが、こまめにアップデートを実施できるのが理想です。

4-3 開発ドキュメントの更新を怠らない

保守にともない自社ソフトをアップデートした場合、関連する開発ドキュメントの更新を確実に行いましょう。開発ドキュメントが古いままだと、新しい保守担当者に代わった場合に適切な保守作業が難しくなります。

また、開発ドキュメントが正しく更新されない場合、実際のソフトウェアと食い違いが生じる可能性もあるでしょう。開発ドキュメントとの整合性を保つことも、ソフトウェア保守の大切な役割です。

4-4 対応が難しい場合は保守サービスの活用を考える

システムやソフトウェアの保守には、多くの人件費がかかります。また、適切なスキルを持つ保守担当者を確保できない場合、保守の不備が生じる場合もあるでしょう。そのため、自社だけで対応が難しい場合は、プロの保守サービスを活用することがおすすめです。

たとえばバルテス社では、Webアプリやスマホアプリの保守支援サービスを提供しています。新機種・新OSの動作確認はもちろん、脆弱性診断によりソフトウェアのリスクに対応することも可能です。専門家の力を借りることで保守の品質が高まり、結果としてトラブル対応工数の削減につながるでしょう。

まとめ:健全なソフトウェア開発の維持に保守は欠かせない

ソフトウェア開発における保守とは、既存ソフトウェアの利用・稼働を維持していくための作業全般のことです。ユーザー体験の低下やセキュリティリスクの上昇などを防ぐために、適切なタイミングで実施することが求められます。

重大な不具合・品質問題の判明時はもちろん、OSや周辺機器・ソフトウェアのアップデート時、脆弱性の判明時にも保守作業は必要です。ただし、保守作業は多くの工数を要するうえに、実施判断などには専門知識・スキルが要求されます。自社だけで保守作業が難しい場合は、外部の保守サービスを活用することも有力な選択肢です。

ソフトウェア保守を確実に行い、健全なソフトウェア開発を維持しましょう。

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執筆: Qbook編集部

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バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。