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開発技法・工程 2024.04.24
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「フィージビリティ・スタディ」とは?基礎知識や進め方、ポイント

執筆: Qbook編集部

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「フィージビリティ・スタディ」とは?基礎知識や進め方、ポイント

ビジネスの成否を左右する「フィージビリティ・スタディ」をご存じでしょうか。

フィージビリティ・スタディは、事業やプロジェクトの立ち上げ時に行われる作業であり、ソフトウェア開発のテスト自動化導入の際にも取り入れられることがあります。

今回はフィージビリティ・スタディとは何か、基本からわかりやすく解説します。

記事の後半では、フィージビリティ・スタディの進め方やポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

もくじ
  1. フィージビリティ・スタディとは
    1. フィージビリティ・スタディの意味
    2. フィージビリティ・スタディの目的
    3. PoCとの違い
  2. フィージビリティ・スタディで調査される4つの観点
    1. 技術的な実現性
    2. 経営的な実現性
    3. 法的な実現性
    4. 市場のニーズ
  3. フィージビリティ・スタディの進め方
  4. フィージビリティ・スタディを実施する際のポイント
    1. テンプレートやフレームワークを有効活用する
    2. 各観点に適した調査担当者を選定する
    3. 調査結果はナレッジとして蓄積する
  5. まとめ

1.フィージビリティ・スタディとは

フィージビリティ・スタディという言葉からは、意味をイメージしづらいでしょう。まずは、フィージビリティ・スタディの意味や目的、関連用語との違いについて解説します。

1-1 フィージビリティ・スタディの意味

フィージビリティ・スタディ(feasibility study)とは直訳すると、「実現性・可能性の調査」を意味します。

つまり、フィージビリティ・スタディとは、開始前の事業やプロジェクトを本当に実現できるのか、あらかじめ調査・検討することです。

さまざまな観点(後述)で調査を行い、実現の見込みが十分あることを確認したうえで本格始動させます。

業種を問わず使える手法で、前述したようにソフトウェア開発でも適用可能です。本記事では、テスト自動化を例にしながら解説していきます。

1-2 フィージビリティ・スタディの目的

フィージビリティ・スタディの主な目的は、事業やプロジェクトが失敗するリスクを最小化することです。

中小企業庁が公開する2016年の調査では、新規事業に「成功した」と回答した企業は全体の約29%にとどまっており、事業やプロジェクトの成功は決して容易ではないことがわかります。

実現性に乏しい状態で事業やプロジェクトを見切り発車すると失敗のリスクが高まります。多くの時間や資金を費やしたあげく頓挫すれば、多くの損失が生じるでしょう。

フィージビリティ・スタディは、こうした事態を防ぐために重要です。

1-3 PoCとの違い

フィージビリティ・スタディと混同されやすい「PoC」との違いを知っておきましょう。

PoC
(Proof of Concept)          

実証実験、構想の実証の意。新しいアイデアや手法の効果が見込めるのかを検証すること。

一般的に、PoCでは特定地域でのテスト販売でユーザーを巻き込み、小規模な検証を実施。

フィージビリティ・スタディ

実現性・可能性の調査の意。開始前の事業やプロジェクトを本当に実現できるのか、あらかじめ調査・検討すること。

実地の検証は必ずしも含まれない。フィージビリティ・スタディで机上調査を行ってから、その裏を取るためにPoCを実施するケースはあるが、区分けは不明確で企業によっても様々。

PoC(Proof of Concept)は「実証実験、構想の実証」を意味します。つまりPoCとは、新しいアイデアや手法の効果が見込めるのかを検証することです。一般的に、PoCでは特定地域でのテスト販売でユーザーを巻き込み、小規模な検証を行います。

一方、フィージビリティ・スタディでは、こうした実地の検証は必ずしも含まれません。フィージビリティ・スタディで机上調査を行ってから、その裏を取るためにPoCを実施するケースもあります。ただし両者の区分けは明確ではなく、企業によってもさまざまです。

2.フィージビリティ・スタディで調査される4つの観点

前述したように、フィージビリティ・スタディではさまざまな観点で調査を行います。フィージビリティ・スタディで調査される観点は、主に4つです。

2-1 技術的な実現性

技術的な実現性の観点では、新しい製品やサービスを実現できる技術があるか、そして自社の想定通りに取り入れられるのかを調査します。

例えばシステム画面のテスト自動化を図る場合、画面の自動操作や結果判定が可能な技術があるか調査が必要です。

2-2 経営的な実現性

経営的な実現性の観点では、予算や人員、時間等の経営資源が十分あり、現実的に開始・継続できるかを調査します。

例えばテスト自動化の場合、運用に適した人材がいるか、技術の導入に必要な予算は確保できるかといった調査が必要です。

2-3 法的な実現性

法的な実現性の観点では、新しい製品やサービスが法律に抵触しないか、将来的な訴訟のリスクがないかを調査します。

例えばテスト自動化に外部ツールを取り入れる場合、ライセンス違反となる使い方ではないか調査が必要です。

2-4 市場のニーズ

新しい製品やサービスが市場のニーズとマッチしているのかという観点での調査も必要です。

もし、市場ニーズがないところに製品やサービスを投入すれば、大きな損失を招くでしょう。

損失を回避するためには、競合他社の類似製品や自社製品の売上調査、ユーザーへのアンケート調査などを行い、市場のニーズを把握する必要があります。その際、PoCと組み合わせるケースも少なくありません。

3.フィージビリティ・スタディの進め方

事業やプロジェクトの成功の可能性を高めるため、フィージビリティ・スタディの進め方を知っておきましょう。大まかに次の4ステップで進めていきます。

ステップ1 基本事項の整理・決定

新しい事業やプロジェクトの基本事項として、まずはビジネスの概要や背景・調査対象・調査担当者・調査方法・スケジュールなどを明確化していきます。

他部署や外部機関の協力が必要な場合は、この段階で依頼しておきましょう。

ステップ2 各観点での調査実施

「技術的な実用性」「経営的な実用性」「法的な実用性」「市場のニーズ」の4つの観点に対して、調査を実施します。

調査方法は、データ分析やアンケート調査、関係者からのヒアリングなどさまざまです。複数の調査方法を取り入れ、多角的に調査データを収集しましょう。

この時点で許容できないリスクが見つかれば、その旨を記録しておきます。

ステップ3 調査結果の整理・報告書作成

調査をひと通り終えたら、調査結果を整理して報告書を作成します。調査結果は関係者と共有することになるため、客観的に見てわかりやすくまとめましょう。

調査により判明したリスク・懸念事項があれば、その対策案も検討し、記載しておく必要があります。

ステップ4 関係者との協議・評価

最後は調査結果を交えて関係者間で協議し、新しい事業やプロジェクトの実現性を評価します。

例えば、リスクや懸念事項は許容範囲内か、対策案でカバーできるかなどが協議の対象となるでしょう。仮にリスクや懸念事項が検出されなかった場合でも、不足している調査はないか、調査結果は妥当かなどを確認します。

段階で問題ないと評価されれば、事業やプロジェクトの開始が決まります。

4.フィージビリティ・スタディを実施する際のポイント

フィージビリティ・スタディの実施には、それなりの費用や時間がかかります。

フィージビリティ・スタディを成功させるために、実施のポイント3つを押さえておきましょう。

4-1 テンプレートやフレームワークを有効活用する

フィージビリティ・スタディの実施には、テンプレートやフレームワークの活用が効果的です。

テンプレートやフレームワークは、過去の経験や事例をもとに最適化されています。適切な調査項目や進め方が明確になるため、成功につながりやすいでしょう。

4-2 各観点に適した調査担当者を選定する

フィージビリティ・スタディの調査担当者は、各観点に適した人を選定しましょう。

異なる観点の調査を1人で行うと、自分の考えに固執し、客観的な視点が欠如してしまう可能性があります。

自社に適任者がいない場合は、調査会社などのサポートを受けるのもよいでしょう。

4-3 調査結果はナレッジとして蓄積する

フィージビリティ・スタディの調査結果は、ナレッジとして蓄積しましょう。

調査結果は、将来のフィージビリティ・スタディでも役に立つ可能性が高いためです。

例えば、新しいシステムのテスト自動化を図る場合、類似システムの調査結果が役に立つでしょう。

過去のナレッジに適時アクセスしやすいように、ナレッジ共有ツールなどを活用するのも効果的です。

まとめ

フィージビリティ・スタディとは、開始前の事業やプロジェクトを本当に実現できるのか、あらかじめ調査・検討することです。フィージビリティ・スタディを実施すれば、実現性を事前に評価でき、失敗のリスクを最小化できます。

ビジネスの成功には、適切なフィージビリティ・スタディが欠かせません。フィージビリティ・スタディを実施する際には、本記事の内容をぜひ参考にしてください。

なお、本記事でも触れたように、フィージビリティ・スタディはソフトウェア開発のテスト自動化でも有効です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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執筆: Qbook編集部

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バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。