2024年11月1日に映画『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』が公開されます。
このシリーズでは、スマホを落としたり紛失したりすることをきっかけにして、個人情報やデータが盗まれ、身の危険にさらされる可能性を描いた、現代社会の問題点を指摘している作品です。
そこで本記事では、スマホを落とすことで発生するセキュリティリスクや対策の基本をまとめました。
- もくじ
1. スマホを落とすだけで本当に危険か?
1-1 映画「スマホを落としただけなのに」最新作が2024年秋公開
出典:映画『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナルハッキングゲーム』
2018年、2020年に大ヒットした映画『スマホを落としただけなのに』シリーズの最新作『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』が2024年11月に公開されます。これまで、映画や原作小説、関連作品でスマートフォン(以下、スマホ)の紛失から始まるサスペンスが描かれ、多くの人々に「スマホを落としただけでこんなに恐ろしいことになるのか......」と衝撃を与えてきたシリーズだけに期待も大きい作品です。
新作映画の公開を前に、タイトルを見て、スマホのセキュリティについて考える人も多いと思います。実際、私たちの日常生活においても、スマホを落としただけで犯罪に巻き込まれる可能性はゼロではありません。
1-2 スマホ紛失・盗難の実態
実は、スマホの紛失や盗難は、現代社会において深刻な問題となっています。警視庁の統計「遺失物取扱状況」によると、令和5(2023)年中に「携帯電話類の遺失届」が219,761件も提出されていることが分かります。
ここから計算すると、東京都だけで、平均して1日に約602台の携帯電話が紛失されていることになります。おそらく、届けない人もいることや、全国規模に広げて考えてみると、この数字はあくまでも氷山の一角、ということが分かります。
MAMORIO株式会社の調査発表(プレスリリース)によると、直近5年以内にスマートフォンやタブレットを紛失した、または紛失しかけた経験がある人は11.6%にも上るそうです。
この中に盗難が占める割合がどれくらいあるか分かりませんが、ここまで見てきた数値は、一般の人々が思っている以上に、スマホ紛失の可能性が高いことを示しているように感じられます。言い換えるなら、高確率で誰もがスマホを無くす可能性があるのだといえそうです。
1-3 スマホのデータ盗難にも注意
スマホから情報だけが盗まれることもあります。よく知られているのが、公衆Wi-Fi使用時にデータを盗られてしまうことでしょう。
公衆Wi-Fiはたいへん便利なサービスですが、セキュリティ対策が不十分な場合、悪意のある第三者に通信内容を傍受される危険性があるのです。とくに、暗号化されていない無料の公衆Wi-Fiの利用は避けた方がよいかもしれません。最近では、著名な公衆Wi-Fiのアクセスポイント名を使った「騙しアクセスポイント」もあるというのだから注意が必要でしょう。VPNを使用したり、公衆Wi-Fi利用時は重要な情報の入力を控えたりするといった対策がポイントになりそうです。
1-4 現実に起こりうる不測の事態
スマートフォンを紛失または盗難された場合、以下のような不測の事態が考えられます。
まず、スマホに保存されている個人情報(氏名、住所、連絡先、SNSのアカウント情報、クレジットカード情報など)が漏洩する恐れがあります。
これにより、クレジットカードの不正利用やSNSアカウントの乗っ取りが発生し、詐欺や犯罪に悪用される可能性があります。また、ネットバンキングや決済アプリを通じて、銀行口座から不正に現金が引き出される危険もあります。
最近では、さらにスマホ自体が転売されるケースや、スマホが犯罪行為に使用されるといったケースも報告されています。
被害は連鎖的に発生することもあり、金銭的損失だけでなく、精神的苦痛や社会的信用の失墜にもつながる可能性があります。スマホを落とすことによる「危険」は映画の中だけの話ではなく、現実に起こりうる深刻な問題といえそうです。便利な反面、怖い時代になりました。
2.スマホ紛失で考えられる具体的な被害
2-1 個人情報の流出とプライバシーの侵害
スマホには、連絡先やSNSアカウント、写真、メールなど、多くの個人情報が大量に保存されています。これらが流出すると、プライバシーが著しく侵害されたり、会社の秘密が漏洩してしまったりする可能性があります。
2019年、物流会社社員が社用携帯電話を紛失し、取引先情報約300件を含む約1,000件の個人情報が流出した可能性があると報道されました。
2022年には、尼崎市の職員が公用スマートフォンを紛失し、流出可能性のある情報は少なかったものの、それ以前に市民の情報(約46万人分)が入ったUSBメモリを紛失する事件があったため、注目を集めることになってしまいました。
このような事例を見て分かるのは、スマホ紛失には、情報流出による問題だけでなく、社会的信用を失うリスクがあるということです。
2-2 位置情報など個人情報の悪用やストーカー被害
スマホを紛失して、最も不安なのが写真をはじめとする大切なデータを見られることや、位置情報や個人情報を悪用されることです。映画やドラマのように、過去の行動パターンを分析されたりして、ストーカーに利用されてしまったりすると大変なことになってしまいます。
先ほど紹介した、MAMORIO株式会社の調査結果(スマートフォンの紛失についての実態調査)でも、67.1%の人が、スマホを紛失した際の心配事として「最大」と回答しています。個人情報の悪用については、映画「スマホを落としただけなのに」でも恐ろしく描かれている部分だと思います。
2-3 誹謗中傷や不正アクセス、なりすまし犯罪
スマホを紛失すると、悪意のある第三者によって「なりすまし」が行われることがあります。たとえば、SNSアカウントにログインされて、本人になりすまし誹謗中傷を投稿されたり、他人を傷つけるような行動が取られたりするなどです。
また、他人の名前を使って不正な取引や犯罪行為が行われる可能性もあるため、スマホを失った場合には速やかに対策を講じる必要があります。
ネット上での「なりすまし」そのものを直接禁止する法律は、現在、存在しないようです。なりすましは他の犯罪行為に直結しやすいので、事前対策が重要になってきます。
2-4 電子マネー等の悪用や犯罪などの不正利用
スマホには、オンラインバンキング(銀行)アプリや電子マネー関連アプリがインストールされていることが多く、これらが不正利用されると大きな金銭的被害につながるという指摘があります。とくに、パスワードが簡単に推測できるものだったり、二段階認証が設定されていなかったりすると、被害のリスクが高まります。
また、詐欺行為への利用が最も懸念されます。銀行アプリや電子決済サービスが不正に利用されてお金を引き出されたり、商品を購入されたりするだけでなく、スマホを利用して、架空請求や詐欺に利用されることもあります。最近、報道でもよく見かける事例となっています。
少し古い記事ですが、国民生活センターの相談部の方が紹介する形で、紛失スマホの悪用事例がいくつか報じられています。
3.スマホを落としても悪用されないための対策
スマホを落とした際に悪用されないための対策としては以下のような方法があります。
- 端末のロック設定(パスワード、パターン、指紋認証、顔認証など)
- 端末の暗号化
- SIMカードのロック設定
- アプリ、サービスのパスワードを複雑にし、しっかり管理する
- 二段階認証や多要素認証を導入する
- 「デバイスを探す」機能やリモートワイプの利用を検討する
- セキュリティアプリを活用する
詳しく解説していきます。
3-1 基本的な対策は「端末のロック」と「暗号化」
スマホを落としたり無くしたりした場合、悪意ある第三者に入手されてしまうと、不正アクセスや情報漏洩のリスクが大きくなります。このリスクを軽減する基本的な対策として、「端末のロック」と「暗号化」はとても有効とされています。
端末のロックの設定は必須です。パスワード、パターン、指紋認証、顔認証などの方法があり、これにより第三者が簡単に端末にアクセスすることを防ぎます。次に、端末の暗号化もデータの不正読み取りを困難にできるため推奨されています。
検討しておきたいのが、SIMカードのロック設定です。なぜかというと、スマホからSIMカードが抜き取られ、別の端末で使用されることを防止できるからです。
3-2 厳重にしたいのが、アプリ、サービスのパスワード管理
各アプリやサービスには、できるだけ異なる複雑なパスワードを設定しましょう。パスワード管理アプリを利用すると、多数のパスワードを安全に管理できます。また、定期的にパスワードを変更することも重要です。
スマホ紛失時の悪用リスクを軽減するためには、重要なアプリやサービスのパスワード管理が極めて重要だといえます。基本的で効果的なセキュリティ対策になります。
基本は、各アプリやサービスには可能な限り(1)異なる、(2)複雑なパスワードを設定するとよいでしょう。こうしておけば、仮に一つのアカウントが乗っ取られても、他のアカウントへの影響を最小限に抑えることができるはずです。
多数のパスワードを安全に管理するには、パスワード管理アプリの利用が効果的です。場合によっては、これらのアプリに搭載されていることが多い、複雑なパスワードを生成する機能を利用することも考えましょう。管理の手間はかかりますが、より安全になることは間違いありません。
3-3 二段階認証や多要素認証を導入する
二段階認証・多要素認証は、悪意ある第三者による不正アクセスを防ぐ効果的な対策として重要です。二段階認証を設定することで、たとえパスワードが漏洩しても、第三者がアカウントにアクセスすることを効果的に防ぐことができます。
この認証方式は、通常のパスワード入力にくわえて、別の認証要素を追加することで、セキュリティを強化します。とくに、SNSアカウント、メールアカウント、金融関連のサービスアカウントといった、個人情報を集中して扱う重要なアカウントには必須の設定といってよいでしょう。
一例ですが、パスワードを入力した後に、スマートフォンの認証アプリに送信されるワンタイムコード(パスワード)を入力するといった、認証ステップが追加されています。手間はかかるようになりますが、万が一、スマホを紛失しても、重要なアカウントが簡単に乗っ取られるリスクを大幅に低減できます。
3-4 「デバイスを探す」機能やリモートワイプの利用を検討する
スマホの紛失や盗難時に、個人情報や重要なデータの悪用を防ぐ効果的な対策として、「デバイスを探す」といった紛失対策機能やリモートワイプ(遠隔消去)があります。これらの機能を事前に設定しておくことで、スマートフォンを紛失した際に迅速かつ効果的に対応することができます。
具体的にいうとiPhoneユーザーは「iPhoneを探す」機能を、Androidユーザーは「デバイスを探す」機能です。
機能としては、紛失したデバイスの位置を特定し、画面をロックしたり、アラーム音を鳴らしたりすることができます。さらに重要なのは、リモートワイプ機能です。この機能を使用すると、遠隔で端末内のデータを完全に消去し、情報流出を防ぐことができます。
このように、紛失対策機能を活用することで、スマホを紛失しても、個人情報や重要なデータが悪用されるリスクを大幅に低減できます。あらかじめ、これらの機能の使用方法を理解し、設定しておくことが推奨されます。
3-5 セキュリティアプリを活用すれば公衆Wi-Fiも安心
セキュリティアプリの活用も有効な対策の一つです。公衆Wi-Fiを利用する際には、不正アクセスやデータ盗難のリスクが高まるため、セキュリティアプリによる保護は必須かもしれません。導入前に、自分が使用する範囲を保護機能がカバーしているかを確認してください。
公衆Wi-Fiについては、加えて、VPNを活用して通信を暗号化するといった対策も有効とされています。
また、セキュリティアプリによっては、紛失時のスマホ位置特定機能が搭載されていることもあり、紛失時に端末の場所を把握することができます。
一部のアプリでは、端末を拾った人の写真を自動的に撮影する機能や、画面にメッセージを表示する機能なども提供されています。これらの機能は、端末の回収可能性を高めるだけでなく、不正使用を抑止する効果もあるとされています。
4.スマホを落とさないための対策
そもそもスマートフォンを紛失しない、盗難されないために、いくつかの対策を日常的に取り入れることがポイントです。
4-1 「物理的な対策」をする
スマホを落とさないためには、ストラップやスマホケースの活用が効果的です。
ストラップやケースを派手なものにすることで、カバンの中で迷子になりにくくなるだけでなく、目につきやすくなるので、忘れたり、盗難されたりするリスクが軽減されるといわれています。
ファッションスタイル、生活スタイルに合うなら、ショルダーバッグのようにスマホを身体から下げるストラップやケースを活用することも考えられます。
4-2 「習慣づけ」による対策をする
「どこに置いたか忘れた」という状況を避けるために、スマホの置き場所を固定しておくことも大切です。家の中では、必ず同じ場所にスマホを置いたり、カバンの中では決まったポケットに入れたりするなどして習慣化しておきましょう。
スマホを定位置に置き、使用後には、必ず定位置に戻したかを確認する習慣をつけることで、紛失のリスクを軽減できます。とくに外出先でスマホを使用した後は、必ず定位置にスマホを戻したことを確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
4-3 盗難防止・追跡アプリの使用
前述した、盗難防止・紛失時の追跡アプリを導入しておきましょう。
iPhoneの「iPhoneを探す」やAndroidの機能を使えば、スマホの現在地を追跡できます。
5.もし、「スマホを落としてしまったら」どうする?
スマートフォンを落としてしまった場合、落ち着いて以下の手順で対応するとよいとされています。
- まず、探す!
落とした場所が分かっている場合は、すぐにその場所を確認しましょう。周囲の人に声をかけたり、店舗や施設のスタッフに問い合わせたりするのも有効です。 - 位置情報サービスを利用して探す
iPhoneの場合は「iPhoneを探す」、Androidの場合は「デバイスを探す」機能を使って、スマホの位置を特定しましょう。 - 遠隔操作でロックをかける
上記(2)のサービスを使って、遠隔でスマホをロックし、個人情報を保護します。 - キャリアに連絡する
契約しているキャリアに連絡して、回線の一時停止を依頼します。これは不正利用を防ぐためです。 - パスワードを変更する
スマホに保存されていたアカウント(メール、SNSなど)のパスワードを、別のデバイスから変更しておくと安心です。 - 警察に届け出る
ここまで探して見つからない場合は、近くの警察に「遺失物届」を提出しましょう。拾得者が警察に届け出てくれている可能性もありますので、あきらめずに探しましょう。 - どうしても見つからないとき......
可能なら、データの状況を確認したうえで、リモートワイプの使用が可能なら検討します。データの保管を忘れないようにします。そして、スマホの紛失保険などに入っている場合は、利用することも考えるとよいでしょう。
まとめ:「スマホを守って自分も守る」
スマホには、ある意味、「自分自身が保存されている」といえるほど、多くの個人情報や決済情報が保存されています。
万が一、落としてしまっても、冷静に対処することが大切です。あらゆる方向から、個人情報の保護と端末の回収の可能性を考えるようにしましょう。
スマホを落とさないためには、物理的な対策、習慣づけ、そして万が一に備えたアプリの導入が効果的です。
これらの対策を取り入れることで、スマホを安全に管理し、紛失や盗難のリスクを最小限に抑えられます。日ごろからバックアップを取っておくことで万が一の際にも被害を最小限に抑えられるでしょう。