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機械学習とは?主な3つの手法や活用例、知っておきたい注意点を解説
開発に役立つ生成AI
開発に役立つ生成AI 更新日 2025.03.05
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機械学習とは?主な3つの手法や活用例、知っておきたい注意点を解説

執筆: Qbook編集部

ライター

急速に進化するAI(人工知能)が世界的に注目を集めており、AI開発に参入する企業も増えています。

こうした状況の中で、AIの進化を後押ししているのが「機械学習」です。高度なAIの実現に寄与する機械学習は、AI開発に欠かせない手法となっています。 AI開発について学ぶ上では、機械学習への理解を深めることが重要です。

そこで今回は、機械学習とは何か、AI開発の初心者が最低限知っておくべき基本をまとめて解説します。機械学習の種類や活用事例、注意点も紹介しますので、参考にしてください。

もくじ
  1. 機械学習とは?
    1. 機械学習とは
    2. 深層学習(ディープラーニング)との違い
  2. 機械学習における3つの手法
    1. 教師あり学習
    2. 教師なし学習
    3. 強化学習
  3. 機械学習の応用分野・活用事例
    1. 画像認識
    2. 音声認識
    3. 予測・分析
    4. 自然言語処理
  4. 機械学習を導入する際の注意点
    1. 機械学習の限界を理解する
    2. 目的に合った手段を選ぶ
    3. コストやリソースを管理する
    4. 学習データの偏りやノイズに気を付ける
    5. 法律や規制を遵守する
  5. まとめ

1.機械学習とは?

AIの根幹を担う技術である「機械学習」の概要や、深層学習(ディープラーニング)との違いについて解説します。

1-1 機械学習とは

機械学習とは、AIにデータを与えて学習させ、ルールやパターンを発見し人間の脳の代わりに認知・判断する手法です。

AIは、膨大なデータの中からパターンや規則性を学習し、知識として蓄積します。そして、学習データから得た知識を活用し、人間のような判断能力を実現するのです。

従来のAI開発では、AIが理解できる形に知識をデータ化して与える必要があり、非常に多くの時間がかかっていました。しかし、機械学習の登場によって、与えられたデータからAI自体が自動で知識を吸収できるようになりました。これにより、AIの精度を向上させるプロセスが飛躍的に効率化し、AI開発の進化につながったのです。

昨今では、機械学習がAI開発の根幹を担う技術として広く採用されています。AI開発を始める場合、機械学習が必須といっても過言ではありません。

1-2 深層学習(ディープラーニング)との違い

機械学習とディープラーニング.png

機械学習と関連が深い言葉に「深層学習(ディープラーニング)」があります。

深層学習とは、人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」を用いて機械学習を行う手法です。このニューラルネットワークによって、高度なデータ処理が可能となります。

一般的な機械学習では、データの中で注目すべき情報を「特徴量」として人間が設計し、与える必要がありました。しかし、深層学習ではAI自体がデータの中から特徴量を見つけ、学習の方向性を定めます。これにより、人間による機械学習の準備プロセスを大幅に効率化することが可能です。

このように、深層学習は機械学習の一種であり、AIの学習能力を向上させる手法として注目を集めています。

2.機械学習における3つの手法

機械学習でAIに学習させる具体的な手法は、主に次の3種類です。

  • 教師あり学習
  • 教師なし学習
  • 強化学習

それぞれについて、具体例も交えて見ていきましょう。

2-1 教師あり学習

「教師あり学習」とは、学習データに正解(出力すべきデータ)を付けて与える学習手法です。

付与する正解を「ラベル」と呼びます。AIは、入力データ・出力データの関係性を学習することで、正解がついてないデータを予測します。

例として、「画像に猫が含まれるか判定するAI」の教師あり学習を考えましょう。この場合、学習データとして猫の画像とそれ以外の画像(犬や人間、風景など)を大量に用意し、それぞれにラベルを付与します。

たとえば猫の画像には「猫」、それ以外には「猫でない」といったラベルを付与します。これらの学習データを与えることで、AIはどのような画像か猫で、どのような画像が猫でないかを学習するのです。

2-2 教師なし学習

「教師なし学習」とは、学習データに正解(ラベル)を付けずに与える学習手法です。

AI自体が、学習データの中に隠れたパターンや規則性を見つけます。そもそも何が正解か分からない、あるいは明確な正解が存在しないケースに適しています。

例として、「顧客データをもとに顧客を分類するAI」の教師なし学習を考えましょう。

この場合、年齢や購入履歴などの学習データを用意しますが、具体的なグループ名などは付与しません。購買傾向の類似性などをもとにAI自体が顧客層を分類します。

これにより、人間が気づかない傾向や特徴をAIが発見してくれるのです。

2-3 強化学習

「強化学習」とは、AI自体に試行錯誤させながら、最適な選択肢を模索させる学習手法です。

機械がとった行動に対し賞罰を与えることで、機械が試行錯誤を行い問題を解決します。

AIは、入力に対して出力すると、その結果に応じた「報酬」を受け取ります。この報酬を最大化できるよう、どの行動が最も有効かを探索しながら学び続けます。明確な目標は存在するものの、その達成方法や最適な行動が分からないケースに適しています。

例として、「囲碁将棋で最善手を探索するAI」の強化学習を考えてみましょう。

この場合、AIは無数の局面を試行しながら、何が好手(高報酬)で何が悪手(低報酬)かを学びます。繰り返し学習を続けることで、AIは最善手をより高精度に選べるようになります。

3.機械学習の応用分野・活用事例

機械学習によって作られたAIは、さまざまな分野で応用されています。ここでは、機械学習の代表的な応用分野・活用事例を4つ紹介します。

  • 画像認識
  • 音声認識
  • 予測・分析
  • 自然言語処理

3-1 画像認識

画像認識は、AIに画像データの内容を解析させ、文字や物体の有無、画像の種類などを認識させる応用分野です。機械学習によって得た画像データのパターンや規則性に関する知識を活用し、未知の画像を認識します。

画像認識の活用事例としては「AI-OCR」が挙げられます。AIを利用したOCR技術は、画像データ上の文字を識別する技術です。

手書き・印字された書類をスキャンすることで、AIが高精度にテキストデータへ変換してくれます。請求書や契約書などの処理を自動化できるため、業界を問わず事務作業で有効に活用されています。

ただし、特徴的な手書き文字や特殊な言語の文字だと、AIの学習データが不足しているために認識精度が下がる場合があります。AIの誤認識を見逃さないよう、人間によるチェックが欠かせません。

3-2 音声認識

音声認識は、AIに音声データの内容を解析させ、話された内容や音声の種類などを認識させる応用分野です。機械学習によって膨大な音声信号のパターンをAIが学習することで、音声に含まれる言葉を識別します。

音声認識の活用事例としては、Apple社の「Siri」といったスマートフォンの「音声アシスタント機能」が挙げられます。

ユーザーが話しかけた内容をAIが解析し、指示内容を把握することで、検索などの操作を音声で実行可能です。

ただし、騒音や複数の声が含まれる音声だと、AIが正確に認識できないケースがあります。

3-3 予測・分析

予測・分析は、AIに大量のデータに隠されたパターンや規則性を探索させ、現状の傾向や将来の動向などに役立てる応用分野です。

機械学習によって過去のデータを膨大に与え、回帰(xとyとの関係性から数値の予測)や分析(データが属するカテゴリーや種類が何かを判定)といった処理の経験を積ませることで、AIに予測・分析の能力を持たせます。

予測・分析の活用事例としては、製造業や金融業などで用いられる「異常検知システム」が挙げられます。たとえば金融業の異常検知システムは、正常な取引・異常な取引のパターンを膨大に学習しており、異常な取引を素早く検知することが可能です。

ただし、異常な取引のパターンは常に変化するため、AIの学習を継続的に行う必要があります。

3-4 自然言語処理

自然言語処理は、AIに人間の言葉を解釈させる応用分野です。機械学習によって大量のテキストデータを与え、単語の関係性や文法のパターンなどを学習させます。AIは、与えられた言葉を単語で区切り、語順などから文の構造や文意を把握します。

自然言語処理の活用事例としては、カスタマーサポートなどで用いられる「チャットボット」が代表的です。

チャットボットは、自然言語処理によってユーザーからの問い合わせ内容を把握し、事前に定義されたルールにもとづき自然な言語で回答できます。また、昨今注目の「生成AI」も、自然言語処理によりユーザーの指示内容を把握します。

ただし、人間の言語には膨大なパターンがあり、現状の自然言語処理では精度を確保できないケースも少なくありません。たとえば、多くの意味を持つ単語や、あいまいな指示を正確に解釈することは難しいといえます。

4.機械学習を導入する際の注意点

「機械学習により作られたAI製品を購入したい」「独自のAIを機械学習で開発したい」という方も多いのではないでしょうか。

機械学習を導入する際には、次の注意点5つを把握しておきましょう。

  1. 機械学習の限界を理解する
  2. 目的に合った手段を選ぶ
  3. コストやリソースを管理する
  4. 学習データの偏りやノイズに気を付ける
  5. 法律や規制を遵守する

4-1 機械学習の限界を理解する

機械学習の限界を理解することが大切です。

機械学習により開発されたAIは万能ではありません。学習データが不足または偏っている場合、不適切な出力が生じる可能性があります。

たとえば、異常検知システムがイレギュラーな画像データに対応できず、誤検知を起こすことも考えられます。「機械学習でミスをゼロにしたい」のように過度な期待は避けましょう。

4-2 目的に合った手段を選ぶ

機械学習を導入する際には、目的に合った手段を選びましょう。

目的によって、適したAI製品や独自開発の必要性は変わってきます。既存のAI製品で目的を達成できる場合もありますが、自社のニーズに対応できるAI製品がなければ独自開発が必要です。

コストや期間、実現性を考慮して、目的の達成に向けて最適な手段を選ぶことが大切です。独自開発する場合は、目的に応じた学習手法やアルゴリズムの選定が求められます。

4-3 コストやリソースを管理する

機械学習を導入する際には、コストやリソースを適切に管理しましょう。

既存のAI製品を導入するとしても、独自開発するとしても、それなりのコストが必要です。

独自開発する場合は、機械学習用のサーバーといったリソースも確保しなければなりません。機械学習に必要なコストやリソースを正しく把握し、予算内で収まるように効率的な運用が求められます。

4-4 学習データの偏りやノイズに気を付ける

機械学習を用いてAIを独自開発する場合は、学習データの偏りやノイズ(異常データ)に気を付けましょう。

AIの品質は学習データの品質に依存します。偏りやノイズが多いと、AIが得る知識の品質が下がり、アウトプットの精度も下がってしまいます。

そのため、AIに与える学習データは偏りなく十分な量を収集し、異常なデータは排除しましょう。

4-5 法律や規制を遵守する

機械学習を用いてAIを独自開発する場合は、必ず法律や規制を遵守しましょう。特に、AIに与える学習データを収集する際には、他社・他者の著作権侵害に注意が必要です。

著作権で保護されているデータを無断で学習に使うと、法的トラブルに発展するリスクがあります。

学習データの収集時には適切な許可を得たり、学習目的の利用が許可されたデータを活用したりするなど、法的に問題のない方法で行いましょう。

まとめ

機械学習とは、AIにデータを与えて学習させ、意思決定や問題解決などの能力を持たせる手法や技術です。主な手法としては、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」があります。

機械学習は画像認識や音声認識、予測・分析、自然言語処理など、さまざまな応用分野で活用されています。

独自のAIを開発するとしても、既存のAI製品を導入するとしても、何らかの形で機械学習には関わることになります。AI開発に興味がある方は、今回の内容を参考に機械学習への理解を深めておきましょう。

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執筆: Qbook編集部

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バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。