QC七つ道具は、この言葉のとおり、単なる道具です。
今回は、QC七つ道具のそれぞれのご紹介と、品質を管理するのに、これらの道具をどう使うのか解説していきます。
1.「QC七つ道具」とは?
「QC七つ道具」とは、QC(Quality Control:品質管理)に用いるための、7つの道具の総称のことです。
- グラフ
- パレート図
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- 特性要因図
- チェックシート
QC七つ道具とはどんなものであるか、次章から簡単にご紹介します。
「新QC七つ道具」に関しては別コンテンツで紹介しております。あわせてご覧ください。
2.QC七つ道具のそれぞれ
まずは、QC七つ道具である「グラフ」や「ヒストグラム」、「パレート図」などがどんなものなのか、簡単に説明します。
① グラフ
グラフは、状況をグラフィカルに可視化して全体の傾向を掴むためのもので、品質管理では必須のアイテムです。
グラフにもさまざまな種類があり、代表的なものとして、折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなどがあります。グラフは日常生活でも目にすることが多く、馴染みがあるものと思われます。
馴染みのあるグラフにも、使い方のコツが2つあります。
1つ目は、データをグラフ化するにあたり、何を把握したいのか、その目的によって、用いるグラフの種類を適切に選ぶことです。
たとえば、折れ線グラフは時系列などの変化を見るのに便利です。他に、棒グラフは大きさの違いを比較するために、円グラフは割合を見るために用います。
グラフを作成するにあたり、そもそも何を把握したいのか、目的をはっきりさせて、適切な種類のグラフを用いることが大切です。
逆に、グラフの種類を、特に意図を持たずになんとなく選んでやると、そこからどんな情報が得られるか分からなくなり、せっかくグラフ化してもあまり役に立たない、ということになるものです。
2つ目のコツは、グラフだけでなく、表も一緒に見ることです。
グラフは全体の傾向を掴むには非常に便利ですが、細部を把握するには分かりにくい時もあります。そんな時には、グラフだけに頼るのではなく、表も併せて見ることも必要です。「全体の傾向を把握するのはグラフで」「細部を見るのは表で」というように、目的によって使い分けるのが良いでしょう。
② パレート図
パレート図は、評価対象のデータを降順で棒グラフにし、かつ、その要素の全体に占める割合を累積折れ線グラフで表示したものです。
以下に例を示します。以下のパレート図は、不具合を原因別に分類したものです。
このパレート図から、不具合Aが一番多く全体の29%を占め、また、不具合Aと不具合Bの二つで、全体の半分以上である53%を占めることが分かります。
このように、パレート図を使うと、問題・事象が起きる原因は、何が支配的なのかが分かりやすくなります。
③ ヒストグラム
ヒストグラムは、連続値を持つ分析対象が、どのように分布しているのかを把握するのに用います。ヒストグラムは、度数分布図とも呼ばれます。
以下に示すヒストグラムの例は、「バグが発生して完了するまでに何日かかっているか」を表しています。
バグ対処の所要日数は、その平均値なども求めますが、ヒストグラムで表すと、そのバラつきや偏重の状況が分かりやすくなります。
④ 散布図
散布図は、2つの変数の相関性を見るため、データをプロットしたものです。
以下は、プログラム規模と開発工数の関係を見た散布図の例です。
このように、2つの要因にどんな相関があるかを調べ、見積りなどの予測に使ったり、対処すべき要因を特定したりします。
⑤ 管理図
管理図は主に工程管理をするためのものです。
以下に管理図の例を示します。
管理図の作るには2つのステップがあります。まず、管理限界の上限値と下限値を定めます。次に、管理対象の測定値を日別にプロットし、折れ線グラフにします。
この管理図を使って、バラつきが発生していないか監視します。
管理図を監視していて、限界値を越えて異常が発生しそうな傾向が見てとれたら速やかに対処し、問題が起きないように予防します。管理限界を越えてしまっていたら、問題が小さなうちに対処します。
⑥ 特性要因図
特性要因図は、ある事象を構成する要因を階層構造で一目で分かるようにするものです。
以下の例は、「ロボットが暴走する」という問題を引き起こす原因を、特性要因図で表したものです。
特性要因図は形が魚の骨のように似ているため、フィッシュボーンとも呼ばれます。
⑦ チェックシート
チェックシートは、漏れなくチェックできるようにするためのものです。
以下は、デザインレビューのチェックシートの例です。
チェックシートは、○×などの結果を記入するだけでなく、計測値を記録するタイプのものもあります。フォームは特に規定のものはなく、各所でそれぞれ工夫して運用されています。
3.QC七つ道具のまとめ
QC七つ道具とはどのようなものなのか、それぞれ見てきました。各道具の目的をまとめると以下のとおりです。
グラフ | データが指し示している傾向を可視化 |
---|---|
パレート図 | 問題・事象の原因は、何が支配的なのか把握 |
ヒストグラム | 分析対象が、どのように分布しているのか、バラつきや偏重を把握 |
散布図 | 2つの要因の相関性を把握 |
管理図 | 管理限界内の許容範囲内に収まっているか、限界値を越えているか確認 |
特性要因図 | 問題・事象の原因を、階層構造で一目で分かるように可視化 |
チェックシート | 点検、確認を漏れなく一覧化 |
QC七つ道具のそれぞれの違いは、どんな観点でどんな傾向を見るのか、という点にあります。
共通していることは、いずれの道具も、状況をまとめて俯瞰するためのものである、ということです。
4.QC七つ道具は"単なる道具"である
これらQC七つ道具を、品質管理にどのように用いるか、ここが一番大切なところです。
品質管理にグラフなどは必要不可欠ですが、とにかくグラフなどを作れば用は足りるということではありません。
例えば、何か問題・課題があったとします。それに対処するには、以下のようなステップを踏むことがあります。
上記のステップは、「QCストーリー」と呼ばれているもので、品質管理の進め方をまとめたものです。
何か問題があって対処しようとしても、やみくもに取り組んでは、なかなか成果は出にくいものです。ロジカルに、計画的に取り組むことが必要です。
今回ご紹介したQC七つ道具は、上記ステップの青の部分でよく使われます。
- グラフなどを駆使して「現状を把握」
- 特性要因図などで「要因を整理」
- 対策実施後の「効果の確認」で、再度データを取得して傾向を掴んで確かめる
プロジェクト遂行中での品質管理も、考え方は同じです。
品質管理の計画を立て、状況をモニタリングし、何か問題・課題が見つかれば対策を施し、その効果を確認します。このサイクルを何回も繰り返します。その過程で、グラフなどを必要な時に必要なものを使います。
つまり、品質管理やプロジェクト管理を行うにあたって、「何を」「何のために」「どうしたいのか」、ここの意図が最初にあり、その次に、目的や意図に見合った適切な道具を使うことが大切だということです。目的が曖昧なままに、道具などの手段を先行して議論しても、なかなかまとまらないものです。
「品質を管理する」「プロジェクトを管理する」という目的のために、その道具として「QC七つ道具」があると捉えると良いでしょう。