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AI関連 2024.01.18
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余暇に楽しみたい!AIが登場するエンタメ作品30選 話題作中心にピックアップ(ネタバレなし)

執筆: 大木 晴一郎

ライター

余暇に楽しみたい!AIが登場するエンタメ作品30選 話題作中心にピックアップ(ネタバレなし)

皆さまは夏の休暇の過ごし方はもうお決まりでしょうか。今回QbookではAIに関するエンタメ作品をチョイスしてみました。

2022年、「Midjourney」や「Stable Diffusion」「DALL・E2」といった画像生成AIが流行し、その年末にリリースされた「ChatGPT」をきっかけに生成AIブームが巻き起こりました。生成AIが気軽に利用できるようになって、AIを身近に感じている人も多いでしょう。

1956年にダートマス会議で「考える機械」がAIと呼ばれるようになってから半世紀を超えており、これまで多くのエンターテインメント作品にAIが様々な形で登場しています。

本稿ではネタバレなしで、AIが登場するエンタメ作品(の一部)を一気にご紹介します。ぜひ参考にしてください。

もくじ
  1. 作中に登場する「AI」の「形態」について
    1. 人型ロボットの頭脳として機能する「AI」
    2. 体を持たない、コンピュータ上の「AI」
  2. 怖い?「AI」作品 12選
    1. ちょっとゾッとするAI映画
    2. 小説・マンガ・アニメにはAI登場作品が多い
  3. 楽しい♪「AI」作品 8選
    1. 友だちのような「AI」が出てくる映画
    2. 小説・マンガにも「楽しいAI」
  4. 「AI」との共存を探る作品 10選
    1. 人とAIとの愛と共存
    2. 「AI」は人を導くのか?
  5. まとめ

1.作中に登場する「AI」の「形態」について

コンピュータの黎明期ともいえる1950年代から、AIの研究と開発が続けられてきました。当時、超巨大だったコンピュータの性能を軽く凌駕するスマートフォンを我々が手にしているように小型化が進むなど、コンピュータの形態は変化しつづけています。

エンタメ作品にAIが登場するとき、制作者はAIについて調査して作品世界に取り込みますが、ここで見逃せないのが世相と流行です。もちろんAIにも"流行り廃り"がありますので、「当時の流行AI×世相」といったコラボレーションが行われています。ここが「AIエンタメ」の鑑賞ポイントのひとつです。

もうひとつ見逃せないのが、作中に登場するAIの「形態」です。上の世相とも近いのですが、演出側の「想い(伝えたいこと)」によっても作中AIの形態が異なることがあるようです。よって、作中での"姿"も鑑賞ポイントになってくると思います。

1-1 人型ロボットの頭脳として機能する「AI」

大切なのは、AI=ロボットではない、ということです。AIはソフトウェア技術が基本で、ロボット工学とは異なる学問です。ただ、この2つは抜群に相性が良いとされ、実際に相互補完の形で活用されている事例が数多く存在しています。イコールでは結べませんが、切っても切れない関係といえるでしょう。

大雑把な法則として考えられるのは、「AI+ロボット」の形が人型や動物に近づくと人間への友好度が増す傾向があるということです。22世紀の量産ネコ型ロボットが活躍する『ドラえもん』や『スターウォーズ』に登場するドロイドR2-D2、C3POが代表例でしょう。C-3POは600万を越す宇宙言語を話す通訳ロボットで多くの儀礼をこなすなど、AIらしい機能が豊富ですが、自慢体質です。

なお、当然はありますが、人型AIでありながら友好的でない個体も数多く存在します。こういったケースはストーリー上、重要な役割を担うことが多いようです。

1-2 体を持たない、コンピュータ上の「AI」

コンピュータルームなど専用の場所に設置された巨大コンピュータで動作するAIは、人類の脅威として作中に登場する機会が多いように思われます。巨大なコンピュータに"不気味な権威"を感じる人が多いのかもしれません。しかしながら、悪い人型AIロボットがいるように、善良な「意識だけのAI」も存在します。

このように、エンタメ作品にAIが登場するときは、その「形」に何らかの意味が込められていることが多いようです。

2.怖い?「AI」作品 12選

ブームによるものなのか、AIによるシンギュラリティ(人工知能が人間の知性を超える現象)の到来予測など様々な情報が飛び交っています。2023年には非営利団体フューチャー・オブ・ライフ・インスティテュート(FLI)がGPT-4を超える高性能AI開発の半年間停止を求める公開書簡を発表したり、日本国内でもJASRACや日本新聞協会が懸念を表明したりしています。

2-1 ちょっとゾッとするAI映画

・『AI崩壊』(2020)

・『M3GAN』(2023)

・『エクス・マキナ』(2014)

・『マトリックス』シリーズ(1999~2021)

・『アイ,ロボット』(2004)

・『2001年宇宙の旅』(1968)

・『大鉄人17』(1977)

・『SFドラマ 猿の軍団』(1974)

そんな「懸念」を考えるのに最適なシミュレーションがAI登場エンタメ作品かもしれません。突然、暴走をはじめ人間を攻撃するAIと科学者が戦う日本映画『AI崩壊』(2020)や、子守用AIロボットの暴走を描く逆ドラえもん作品『M3GAN』(2023)は、FLIの懸念とは視点が異なる気もしますが、AIの怖さを表現しています。

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映画「M3GAN」公式サイトより

第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞を受賞した『エクス・マキナ』(2014)は人間とAIの共存をスリラー的な視点から描いています。超有名なヒット作『マトリックス』シリーズ(1999~2021)では仮想世界を中心舞台に人間とAI(コンピュータ)の壮絶なバトルが繰り広げられました。

複数の古典的な名作SF小説をベースに人間とロボット(AI)の関係を警察ドラマの視点で見せてくれるのが『アイ,ロボット』(2004)です。小説も映画もバイブル的存在感なのが『2001年宇宙の旅』(1968)。本作で監督のスタンリー・キューブリックは科学的に正しい表現を追求したとされています。登場する人工知能「HAL(ハル)9000」の行動をその観点で見直すのも面白いかもしれません。

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映画「2001年宇宙の旅」映画.comより

実は、1970年代の子供向け特撮番組にもAIが登場します。『大鉄人17』(1977)に登場する敵ブレインは作中では「電子頭脳」と表現されていますが、今でいう、シンギュラリティに到達したAIです。地球環境を保全するために建造されたブレインは地球にとって最大の災害は人間と結論し、攻撃を仕掛けてきます。人間を守る巨大ロボット「17」も同様のAIを搭載しており、なんと言語を自己学習するなどして進化する様子が描かれます。

科学考証に力を入れた特撮番組『SFドラマ 猿の軍団』(1974)にも、人類滅亡を画策するAI「UECCOM(Universal Ecosystem Control Computer)」が登場します。

2-2 小説・マンガ・アニメにはAI登場作品が多い

・小説『ニューロマンサー』(1984)

・戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)』(1929)

・漫画『火の鳥 未来編』(1967~1968)

・アニメ『AIの遺伝子』

小説やマンガには非常に数多くのAIが登場しています。SFジャンルでは人気テーマのひとつであることや、想像力を掻きたてられるのか、相性が良いようです。爆発的に作品数がある中から、ここでは古典的な名作を中心に紹介します。

SF小説『ニューロマンサー』(1984)には、限定的なスイス市民権を持つAIが重要"人物"の一人として登場します。登場するAIや仮想世界、ガジェットにより壮烈なイメージを作り出した「サイバーパンク」を代表する作品です。その後のSFに多大な影響を及ぼした記念碑的作品だと思います。

チェコの作家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)』(1929)は人類史上はじめて「ロボット」という語が使われた作品です。このロボットの脳や体はバイオ技術で作られており、行動はプログラムされていますが、あるきっかけで自我を持ちます。日本では手塚治虫のマンガ『火の鳥 未来編』(1967~1968)では、国家をAIが運営し、戦争に至るドラマが描かれました。

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火の鳥 未来編 手塚治虫オフィシャルサイトより

最新作では、2023年7月に放映が開始されたテレビアニメ『AIの遺伝子』ではシンギュラリティ後の世界が舞台になっており、注目を集めています。

3.楽しい♪「AI」作品 8選

エンタメ作品に楽しい「AI」が登場するとき、それは世界観というよりも「キャラクター」として描かれることが多いように感じられます。そこで、すこし「キャラより目線」で楽しいAI作品(の一部)を上げていくことにします。

3-1 友だちのような「AI」が出てくる映画・ドラマ

・映画『ショート・サーキット』(1986)

・映画『チャッピー』(2015)

・映画『アイアンマン』シリーズ(2008~2013~2019)

・ドラマ『ナイトライダー』(1982~1986)

・映画『スターウォーズ』シリーズ

・ドラマ『仮面ライダーゼロワン』

『ショート・サーキット』(1986)は偶然、人工知能に感情が芽生えたロボットが主人公です。このロボットは「S.A.I.N.T.(Strategic Artificially Intelligent Nuclear Transport)」という戦闘用のもので、当時からAIの悪用が危惧されていたのだと感じます。ストーリーは親子で楽しめるもので人気作となり、続編も作られました。

犯罪防止がテーマのひとつになっている『チャッピー』(2015)に登場するのも攻撃ロボット。キャッチコピーは「チャッピー...それは、余命5日間の人間になりたかったAI」でした。

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チャッピー | ソニー・ピクチャーズ公式より

人間をサポートするAIも友だちのような存在です。『アイアンマン』シリーズ(2008~2013~2019)には人工知能ジャービスとフライデーという補佐役が登場します。システムの一部として機能しているので体はありませんが、ときジョークを飛ばすなど何らかの知能を有していることが分かります。

アメリカの特撮テレビドラマ『ナイトライダー』(1982~1986)に登場する主役「車」「ナイト2000」には、人工知能「K.I.T.T.(キット:Knight Industries Two Thousand)」が搭載されています。自分で考えて言葉を話し、行動(走行)することもできるドリームカーで当時大人気となりました。ちなみに、その影響と思われますが、SNSで「Knight Rider」や「Knight2000」「KITT」を含むハンドルネームを見かけたら、40代以上の男性の可能性が高いという都市伝説的な話もあります。

冒頭にも記しましたが、『スターウォーズ』シリーズには、R2-D2やC-3PO、BB-8といったかわいらしいドロイドが登場します。日本では、AIをテーマにした特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』に人間に友好的なAIが登場します(仮面ライダーなので、当然、敵も多いですが......)。

3-2 小説・マンガにも「楽しいAI」

・小説『銀河ヒッチハイクガイド』(1979~1992)

・漫画『ドラえもん』

2005年に映画化もされた小説『銀河ヒッチハイクガイド』(1979~1992)には、マーヴィンというシリウス人工頭脳株式会社が開発したロボットが登場します。GPP機能(Genuine People Personality:人間そっくりの人格)が搭載されていて、すこし根暗ですが、それには訳があります。

日本の国民的マンガ『ドラえもん』にも人にやさしい人工知能搭載ロボットが数多く登場します。本作では"知能"というよりも"人情"(人工人情)の方が適切かもしれませんね。

4.「AI」との共存を探る作品 10選

AIの存在意義等々にフォーカスして人間との共存を描いたり、新たな共存方法を模索したりする作品もあります。前述した『M3GAN』『エクス・マキナ』をはじめ、ほとんどの作品が内包しているテーマだともいえますが、とくに共存テーマが強く感じられる作品の一部を紹介します。

4-1 人とAIとの愛と共存

・映画『her/世界でひとつの彼女』(2013)

・映画『A.I.』(2001)

・ドラマ『ブラック・ミラー』(2011~)

・アニメ『イヴの時間 Are you enjoying the time of EVE ?』(2008~2009)

・映画『イヴの時間 劇場版』(2010)

・ドラマ『新スタートレック』(1987~1994)

『her/世界でひとつの彼女』(2013)は、コンピュータのOS(人工知能を有するOS)に恋をする男の姿を描いています。たしかな世界観があり、第86回アカデミー賞脚本賞を受賞しました。『A.I.』(2001)は母と子の愛を少年型ロボットの視点で描いたSFファンタジーです。AIについて得るものは少ないかもしれませんが、愛や感情とは何かしんみり考えさせてくれます。

SFドラマ『ブラック・ミラー』(2011~)は1話完結ということもあり、多くのAI関連のエピソードがあります。その中の1エピソード『Be Right Back』(シーズン2:2013)では、亡くなった人のデジタルデータを用いて人格を再構築(デジタルで再現)するコンセプトが示され注目を集めました。2020年12月になると、Microsoftが人間の画像や音声といった様々なデータを使ってAIで再現するチャットボットを構築技術の特許を取得したことが明らかになり、『Be Right Back』の影響かとSNSを中心に話題になりました。このエピソードはよく引用されているようです。

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ブラック・ミラー | Netflix (ネットフリックス) 公式サイトより

日本のクロスメディア作『イヴの時間 Are you enjoying the time of EVE ?』(2008~2009)では人間型ロボット(アンドロイド)が実用化された時代を舞台に人間とアンドロイドの関係が描かれています。まとめて見るなら、全6話のアニメを再編集し新作シーンを追加した『イヴの時間 劇場版』(2010)がおすすめです。

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イヴの時間|スタジオリッカ公式サイトより

共存の意味で興味深いのは、SFテレビドラマシリーズ『新スタートレック』(1987~1994)に登場するデータというキャラクターです。ドラマの性質上、あまり深く考える必要がない点でもありますが、「感情チップ」と呼ばれるアイテムが存在し、人間関係、人とAIの関係にとって「感情とは?」と考えさせてくれます。

4-2 「AI」は人を導くのか?

・小説『月は無慈悲な夜の女王』(1966)

・小説『鋼鉄都市』(1953)

・小説『ソラリス』

・ゲーム『デトロイト ビカム ヒューマン』

アメリカのSF小説『月は無慈悲な夜の女王』(1966)には冗談を理解するAI・マイクが登場します。知名度は『2001年宇宙の旅』のHALの方が上だと思いますが、マイクもSFファンにはおなじみの名物的な存在です。進化しすぎたAIと人間との関係のひとつを見せてくれる小説です。

同じアメリカのSFミステリ『鋼鉄都市』(1953)では、人間とヒューマンフォーム・ロボット(AI)がバディを組み、殺人事件の謎を解き明かします。その過程において、当時の視点でとなりますが、人間とAIの関係が丹念に描かれており興味深いです。名作とされており、『はだかの太陽』『夜明けのロボット』と続編も発表されています。

SF小説『ソラリス』には、AIは登場しませんが、人間以外に知能を持った存在が登場します。人間以外が知能を持ったとき、どんな関係になるかを考察する上で興味深い作品です。

フランスのゲーム『デトロイト ビカム ヒューマン』はアクションアドベンチャーゲームの体裁をとっていますが、小説的な存在感もあります。AI技術とロボット工学が発達した近未来社会での人間とアンドロイドの関係を描いており、ゲームならではの複数のストーリーと結末がテーマの考察に深みを与えています。

デトロイトべカムヒューマン.png

Detroit: Become Human Value Selection|playstationサイトより

まとめ

現実の社会では、AIは人間を超えること(シンギュラリティ)はあるのかが議論のタネとなっています。この考察はともかく、2023年夏の現時点ではまだ現実にはなっていません。

映画『トランセンデンス』(2014)にはシンギュラリティがテーマとなっている珍しい映画です。この作品にはシンギュラリティ研究者と人工知能PINN(ピン)が登場し、AIが極限まで高度化したら発生する可能性がある危機が描かれています。

ここまで見てきた、フィクション作品に登場するほとんどのAIは自我を持ち、自ら考えることができ、何らかの欲求を持っています。つまり「人らしさ」があるともいえるのです。

映画『アイアン・ジャイアント』(1999)では、アイアン・ジャイアントは悩んでいるようです。この現実との違いを意識することも、AIエンタメ作を楽しむ上でのポイントのひとつになっていると思います。

人々がAIに対して潜在的に感じている希望や不安が、これまでのフィクション作品には現れているかもしれません。

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執筆: 大木 晴一郎

ライター

IT系出版社等で書籍・ムック・雑誌の企画・編集を経験。その後、企業公式サイト運営やWEBコンテンツ制作に10年ほど関わる。現在はライター、企画編集者として記事の企画・編集・執筆に取り組んでいる。