昨今のIT業界において、「ソフトスキル」の重要性が高まっています。ソフトスキルは「ソフトウェアのスキル」ではありません。この言葉を聞いたことはあっても、正しい意味を知らない方は多いのではないでしょうか。
本記事ではITエンジニア向けに、ソフトスキルの基本からわかりやすく解説します。ITエンジニアに求められるソフトスキル7つや高める方法もお伝えするため、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1.ITエンジニアに求められるソフトスキルとは
ソフトスキルとは、人間が社会で活動していくうえで求められるスキル全般のことです。内面的な考え方や対外的な立ち振る舞いなど、個人の行動や性質に関わるスキルといえます。まずは、ソフトスキルの特徴やハードスキルとの違いについて把握しましょう。
1-1 ソフトスキルの特徴
ソフトスキルの主な特徴として、次の3つが挙げられます。
汎用的に使える
ソフトスキルは専門性がない分、IT業界に限らず汎用的に使えるスキルです。たとえば、ソフトスキルとして代表的な「コミュニケーション能力」は、業種を問わずビジネスパーソンであれば役立つスキルといえるでしょう。
「知識」よりも「経験」によって養われる
ソフトスキルは、「知識」よりも「経験」によって養われるスキルです。たとえば、コミュニケーションの知識を持っていても、コミュニケーション能力が高いとは限りません。実際に経験しなければ、コミュニケーション能力の大きな向上にはつながらないでしょう。
スキルの定量的な評価が難しい
ソフトスキルは、厳密に数値化できない「定性的」なスキルです。そのため、スキルレベルの程度を定量的に評価することが難しいといえます。たとえば、「コミュニケーション能力が高い」といっても、どれだけ高いかを厳密に数値化することは困難です。
1-2 ソフトスキルとハードスキルの違い
ソフトスキルと並列的に使われる言葉として「ハードスキル」があります。こちらも「ハードウェアのスキル」ではありません。ハードスキルとは、特定の業務をこなすために求められる、専門的な知識・スキル全般のことです。
ソフトスキルとハードスキルの違いを、3つの観点で表にまとめました。
ソフトスキル | ハードスキル | |
---|---|---|
スキルの適用範囲 | スキルの適用範囲 | 専門的 |
スキルの適用範囲 | 主に経験 | 主に知識 |
スキルの適用範囲 | 定性的 | 定量的 |
ITエンジニアの代表的なハードスキルとして、「プログラミングスキル」が挙げられます。プログラミングスキルはIT企業やシステム部門など、基本的に特定の範囲にのみ適用が可能です。また、そもそもプログラミング言語の知識がなければ養えません。
スキルの性質は定量的であり、例えば「1000ステップ(行数)のコードを書ける」のように具体的な評価が比較的安易です。
このように、ソフトスキルとハードスキルは大きく異なるものです。しかし、どちらもビジネスに欠かせないスキルのため両者の違いを把握しておきましょう。
2.ITエンジニアにおけるソフトスキルの重要性
昨今のITエンジニアにとって、ソフトスキルは重要なスキルです。ここでは、ITエンジニアにおけるソフトスキルの重要性についてお伝えします
2-1 ソフトスキルはチームの成果を左右する
ソフトスキルを発揮できるかどうかで、チームの成果も大きく変わってきます。ソフトスキルの多くは、コミュニケーション能力のように他者・チームに波及するものであるためです。「問題解決能力」のように、プロジェクトの成否に直結するものもソフトスキルに含まれます。
複数のITエンジニアが協調しながら成果につなげていくチームにとって、個々のソフトスキルを高めることは重要です。個々のソフトスキルを底上げすることで、チームの成果も高まるでしょう。
2-2 ソフトスキルが他者との差別化につながる
高いソフトスキルを養うことは、他者との差別化につながります。ソフトスキルは、ハードスキルと比べてテクノロジーによるカバーが難しいためです。
昨今では「生成AI」の発展・普及により、知識が重視されるハードスキルの価値低下が懸念されています。一方で、経験が重視されるソフトスキルは、テクノロジーの影響を受けにくいでしょう。つまり、相対的にソフトスキルの価値向上が期待されるのです。
ソフトスキルの向上には豊富な経験のインプットが欠かせず、生成AIではカバーできません。そのため、経験によって磨き上げたソフトスキルは、差別化できるポイントとなります。
2-3 ソフトスキルは自らのキャリアアップを加速させる
自らのソフトスキルを高めることは、キャリアアップを加速させることにつながります。高いソフトスキルによってチームの成果の向上を実現すれば、評価アップが期待できます。結果として、さらなる高みへのキャリアパスが描けるでしょう。
また、汎用性が高いソフトスキルは別業界でも使える可能性が高いといえます。まったく経験のないキャリアを志している場合も、積み上げたソフトスキルを活かしやすいでしょう。
3.ITエンジニアに求められるソフトスキル7選
ここでは数あるソフトスキルの中でも、特にITエンジニアに求められる7つをピックアップして紹介します。
3-1 コミュニケーション能力
顧客やチームメイトとの関わりなくしてITエンジニアの仕事は務まりません。他者と円滑に連携しながら効率的に仕事を進めるために、コミュニケーション能力が不可欠です。相手の意図を正確にくみ取り、自分の考えを正確に伝える、という双方向の意思疎通がITエンジニアには求められます。
3-2 プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力は、伝えたいメッセージを効果的に他者へ伝えるスキルです。話術や立ち振る舞いに加えて、訴求力の高い資料の作成テクニックもプレゼンテーション能力に含まれます。伝えたいことをしっかり伝えられるかで、顧客からの評価はもちろん、その後の展開も変わってきます。高い成果につなげるうえで、IT業界でもプレゼンテーション能力は重要です。
3-3 マネジメント能力
マネジメント能力は、ヒトやモノといった経営資源を適切に把握・配分し、成功に向けて指導・運営するスキルです。納期が付きまとうITエンジニアにとっては、特に「時間」の適切なマネジメントが求められます。プロジェクトやタスクの進捗管理が適切に行えなければ、顧客やチームメイトからの信頼は得られません。
また、問題解決に向けた他者への働きかけなど、「ヒト」のマネジメントも重要です。高いマネジメント能力があれば、プロジェクトマネージャー(PM)のようなマネジメント職へのキャリアアップも近づきます。
3-4 論理的思考能力
論理的思考能力は、論理のピースを組み立てて矛盾のない合理的な結論を導き出すスキルです。設計や実装など、論理に矛盾があれば高品質なソフトウェアは開発できません。論理にもとづきプログラムやシステムを作り上げるITエンジニアにとって、論理的思考能力は重要です。
3-5 問題解決能力
問題解決能力は、発生した問題に対して解決策を導き出すスキルです。プロジェクト遅延やシステム障害など、ITエンジニアもさまざまな問題に直面します。発生した問題の本質を正しくとらえ、調査や解決策の検討を適切に行わなければなりません。こうした状況で問題解決能力を発揮できるかどうかで、チームの成果が変わることもあります。
3-6 学習能力
学習能力は、知識やノウハウを取り込み、活用できるスキルです。さまざまな経験から学ぼうとする姿勢も学習能力に含まれます。移り変わりの激しいIT業界では、トレンドの技術が数年後に廃れているケースも珍しくありません。ITエンジニアが生き残るためには新しい技術を継続的に取り込む必要があり、そのうえで学習能力が重要です。
3-7 分析力
分析力は、さまざまなデータや事柄から的確に分析し、傾向や規則性といった有用な情報を見つけ出すスキルです。仕様検討や問題調査、プロセス改善など、分析力はさまざまなシーンにおいて役立ちます。前述の問題解決能力やマネジメント能力など、ほかのソフトスキルとも関連性が高いため、分析力を高めれば相乗効果が期待できます。
4.ITエンジニアがソフトスキルを高める方法
ITエンジニアがソフトスキルを高める方法はさまざまです。ここでは、個人・チーム・企業の3つに分けて、おすすめのソフトスキル向上方法を紹介します。
4-1 本を参考にする
個人レベルで可能なおすすめの方法は、ソフトスキルに関する参考書を読むことです。ソフトスキルの向上には実践が欠かせませんが、コツを知ることでその効果が高まります。
たとえば、本に書かれたテクニックを取り入れることで、コミュニケーションがしやすくなるでしょう。チームや企業レベルで有用な本を購入し、共有することも効果的です。
4-2 チームビルディングを実施する
チームレベルで可能なおすすめの方法は、「チームビルディング」を実施することです。
チームビルディングとは、パフォーマンス向上・スキルアップを図るためにチーム単位で行う取り組みを指します。
メンバー同士の活発な交流を通して、コミュニケーション能力といった対人系のソフトスキル向上が期待できます。必ずしも業務に即した内容である必要はなく、「伝言ゲーム」のようなゲーム感覚でできる取り組みでも構いません。
4-3 社内研修を実施する
企業レベルで可能なおすすめの方法は、社内研修を実施することです。コミュニケーションやプレゼンテーションなどのコツを教えれば、社員全体のソフトスキルの底上げにつながるでしょう。効率性・確実性を重視したい場合は、外部の研修サービスを使う選択肢もあります。
また、各社員が実践できる取り組みも効果的です。たとえば、短時間のプレゼンテーションを行う「ライトニングトーク」を新人研修に取り入れる企業は多くあります。短時間で大人数に伝える経験を通して、プレゼンテーション能力を養えます。
まとめ:ソフトスキルを高めて市場価値の高いITエンジニアへ
ソフトスキルとは、人間が社会で活動していくうえで求められるスキル全般のことです。汎用性が高いためキャリアアップにつながりやすく、これからのITエンジニアにとって重要性が高まっています。ソフトスキルの向上には参考書やチームビルディング、社内研修といった方法が効果的です。
ソフトスキルは、新人であっても熟練者であっても変わらず求められます。キャリアを問わず、自らのソフトスキルを継続的に高めていくことが大切です。本記事の内容を参考にしてソフトスキルを高め、市場価値の高いITエンジニアを目指しましょう。