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自動車関連 2024.01.18
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自動車のIoT化!「コネクテッドカー」で進化するソフトウェア開発

執筆: Qbook編集部

ライター

自動車のIoT化!「コネクテッドカー」で進化するソフトウェア開発

「コネクテッドカー」という言葉をよく目にするようになりました。「インターネットに接続できる車のこと」と思っている方も少なくないでしょうが、インターネットへの接続はこの新しい自動車技術の一部を表しているにすぎません。

注目すべきは、自動車をインターネットに接続して「何ができるようになるのか」という点です。「コネクテッドカー」は自動車を中心とした画期的な技術革新にとどまらず、私たちの生活を根底から変えてしまうような、新しい社会の到来を示唆しています。

もくじ
  1. コネクテッドカーがもたらす未来
  2. コネクテッドカーに使用されるソフトウェア技術
    1. OTA(Over the Air)ソフトウェア更新技術
    2. セキュリティ技術
    3. 車載エッジコンピューティング技術
  3. ソフトウェア開発者に求められる視点
  4. 求められるIoTセキュリティ対策
  5. まとめ

1.コネクテッドカーがもたらす未来

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コネクテッドカーは、IoT(Internet of Things)と呼ばれる技術領域の一つであり、インターネットを通じてさまざまなインフラやサービスとつながる車を指します。

単に自動車内にインターネットに接続可能な端末がある、というわけではありません。自動車を制御するあらゆるデバイスがインターネットに接続し、自動車の制御や安全性の確保、さらには交通情報の取得といった、トータルソリューションを提供するプラットフォームとなる技術です。

この技術を基盤として、現在別々に開発が進められている自動運転技術や、カーナビの渋滞回避システム、スマートスピーカーのような音声認識システム、さらにはe-Commerceといった技術が統合されます。

これによって、渋滞を避けて自動的に経路を見つけ出して自動運転してくれる車や、運転中に商品を注文し、店頭ですぐに受け取れる高度なドライブスルーのような技術が実現する時代がやってきます。

現在もコネクテッドカーと銘打つ車種はいくつか存在しますが、実現されている技術はまだ一部です。そのため、世界中の自動車メーカーやIT企業がコネクテッドカーの開発に取り組み、さらには政府もこれらの技術を早急に実現しようと後押しをしています。

このように、コネクテッドカーの実用化は新たなビジネスチャンス創出につながると共に、ライフスタイルや社会のインフラが大きく変わる可能性を秘めています。

2.コネクテッドカーに使用されるソフトウェア技術

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コネクテッドカーを実現する基盤技術を構成する各要素技術はすでにできあがっているか、ほぼ完成に近づいているケースが大半です。自動運転技術はまだ課題を残しているものの、現在は実際の路上で実証実験が行われている段階までこぎつけました。

コネクテッドカーを実現するために克服しなくてはならない問題として、法律や制度そのほかいくつかありますが、まずは現実的に商用利用できる技術基盤となるソフトウェアの構築が当面の課題となるでしょう。今後、コネクテッドカーを実現するうえで必要となる、主なソフトウェア基盤技術を以下に挙げます。

2-1 OTA(Over the Air)ソフトウェア更新技術

OTAとは無線技術を利用したソフトウェアの更新技術です。スマートフォンなどのソフトウェアが更新される技術と同様に車載のコンピューターのソフトウェアが更新される技術ですが、自動車の場合は安全性の問題があり、安全性を担保したうえでの更新という高いハードルが課されることになります。

2-2 セキュリティ技術

OTA同様、車載のコンピューターがインターネットに接続されているため、ハッキング、マルウェアなどのサイバー攻撃とは無縁ではありません。しかも、自動車の場合は人命に関わることから、より強固なセキュリティ技術が求められることになります。

2-3 車載エッジコンピューティング技術

「エッジコンピューティング」はエッジ処理とも呼ばれ、サーバーを分散配置し、端末から近いサーバーで処理するテクノロジーの一つです。端末の近くで分散処理することによってトラフィック量が最適化され、通信回線の圧迫やサーバーへの負荷を低減することができます。システム全体やネットワークリソースを有効利用できるようになると、大容量のデータ分析が可能になり、通信遅延も抑制されます。

コネクテッドカーは人工知能(AI)やビッグデータ処理など高負荷な演算処理を必要とするため、それらの処理はエッジコンピューティング技術を用いてサーバー側で処理を行う必要があります。

インターネットを介しユーザーから離れた場所にあるコンピューターを利用することはクラウド技術と似ていますが、クラウド技術の場合、大きなデータのやり取りは通信やクラウドでの処理時間がかかるといった課題が生じます。

そのため、リアルタイムで処理を行う車載コンピューターのネットワーク技術として、エッジコンピューティング技術とは相性が良いのですが、自動車の場合は絶えず移動をするため、街のあちこちでネットワークに接続可能なサーバーが設置されている必要があります。つまり、自動車そのものだけではなく社会的なインフラの革新も求められるといえるでしょう。

3.ソフトウェア開発者に求められる視点

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では、このような車載のソフトウェアシステムを作成するために、ソフトウェア開発者はどのような点に注意する必要があるのでしょうか。

すでにご説明した通り、第一に留意しなくてはならないのが、強固なセキュリティ技術です。コネクテッドカーが普及すれば、その分ハッキングの被害が増加することが容易に予想されます。

どんなに強固なセキュリティを構築してもハッキング被害を完全に防ぐことは不可能でしょう。そのため、仮にハッキングを受けたとしても、安全にシステムを強制停止できたり、攻撃を受けたシステムを短時間で復活させたりするなど、被害を最小限に抑える仕組みも必要です。

そしてもう一つ大事なポイントは、わかりやすいユーザーインターフェースを提供することです。特に事故のように緊急事態が発生した場合、車載コンピューターの操作が複雑で時間がかかってしまうと、事態の深刻化を招くかもしれません。そのため、素早い操作を実現する直感的なユーザーインターフェースが必要となります。

コネクテッドカーに関わるソフトウェアを開発する場合、精度の高さが必要であることはもちろんですが、人命に関わる危険性があることから、安全面への配慮が重要なことはいうまでもないでしょう。

4.求められるIoTセキュリティ対策

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先述の通り、自動車のシステムは人間の安全性を最重要視しなくてはならないため、コネクテッドカーの開発プロセスの中で圧倒的に重要となるのがセキュリティ対策です。

コネクテッドカーは情報家電と同様にIoT技術を基盤としています。さまざまなモノと接続されることで、ソフトウェアの不具合が与える影響範囲が広くなり、深刻度も増します。

スマートフォンなどと比べると通信データの種類も量も飛躍的に増え、従来の自動車とは比較にならないほどハッキングを受けるリスクが高くなります。とはいえ、起こりうる全てのサイバー攻撃を想定したテストというのは事実上不可能です。

そういった事態に対処するため、電気自動車の開発で知られるテスラ社は、あえて逆転の発想でコネクテッドカーのソフトウェアのセキュリティを高める試みをしています。それは、自らが主催するハッキングコンテストの優勝者に同社が開発した自動車をプレゼントするという試みです。

この手法は、「モデル3」という車種のシステムをハッキングさせ、そのデータをもとにセキュリティ性能を高めるとともに、同モデルの宣伝を行うという一石二鳥を狙っています。一見奇抜に見えるかもしれませんが、セキュリティリスクを感知し、より性能を高めるための手法としては有効な方法の一つといえるでしょう。

まとめ

コネクテッドカーの技術は可能性とリスクの両方を含んでおり、また、技術面だけではなくインフラ、セキュリティなどさまざまな領域での連携や改革を求められることも予想されます。

コネクテッドカーの実現は単なる技術レベルの話ではなく、世の中の仕組みそのものも変えてしまう可能性を秘めています。ハードウェアおよびソフトウェア開発に携わる技術者は、さらなる品質管理とセキュリティの向上が求められるようになるでしょう。

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執筆: Qbook編集部

ライター

バルテス株式会社 Qbook編集部。 ソフトウェアテストや品質向上に関する記事を執筆しています。