北欧諸国に学ぶ、生産性と健康を両立させる働き方のススメ

最終更新日時:2022.12.16 (公開日:2022.12.09)
北欧諸国に学ぶ、生産性と健康を両立させる働き方のススメ

「北欧」と聞いて何をイメージしますか? ヴァイキング? ムーミン?

実は北欧の国々が何年も幸福度ランキングの上位に居続けていることはご存知でしょうか。また、一人当たりのGDPが世界的に見てもこの10年、高い水準で推移しています。

北欧の国々では高いGDPを維持しつつ、仕事面においても、有給休暇を完全取得する方が圧倒的に多いなど、仕事とプライベートの両方を大切にする文化があります。

実は幸福度と生産性には相関があり、幸福度が向上すると生産性も向上することが研究で分かっています。幸福な北欧の人々の働き方には幸福になるヒントだけでなく、生産性を高めるヒントも隠れているのです。

私は数年前からそんな北欧の幸福度や生産性に興味を持ち始め、少しずつ北欧の暮らし方/働き方を学んできました。

この記事では、北欧をテーマに日本で始められる北欧的な働き方を紹介します。

もくじ
  1. 北欧の仕事との向き合い方
  2. 「北欧」との出会いと、文化/ライフスタイルに惹かれた理由
  3. 私が取り入れる北欧の働き方
  4. おわりに

1.北欧の仕事との向き合い方

北欧の会社といえば、どういったものをイメージしますか。

ルイスポールセンやカール・ハンセン & サンなど、スタイリッシュさと温かみを両立した家具メーカーで有名な北欧ですが、働き方にも北欧らしいデザイナブルな一面が見てとれます。

仕事もプライベートも大切にする

「フィンランドでは -中略- 16時を過ぎるころから一人、また一人と帰っていき、16時半を過ぎるともうほとんど人はいなくなる」というのは、フィンランドで5年間過ごした堀内都季子さんの著書『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』の中で語っていた体験です。

北欧の国々では残業をせず、有給休暇を完全に取得し、夏休みには1ヵ月まるまる仕事を休む人がとても多いそうです。

そんな北欧の国は、先述の通り、一人当たりGDPが日本より高く、かつ労働時間が短いことから、高い労働生産性を誇っています。

長期休暇が結果的に会社の業績に貢献する可能性も研究によって明らかになっています。

よく休むからよく働くことができる、ということを北欧の人は肌感覚で分かっているのかもしれません。

生産性を高めるために休憩を大切にする

日本では高度経済成長以降、長時間労働が美徳とされていた時期が長く続いていましたが、昨今ではIT化と並んで「効率化」も叫ばれて久しくなりました。

一方、北欧諸国に目を向けるとどのような取り組みが行われているのでしょう。

「4~6時間の労働なら1回、6時間以上なら2回」

これはフィンランドのとある労働組合で定められたコーヒー休憩を取得する権利です。効率化の大切な要素として「コーヒー休憩」が取り入れられています。

北欧の国々ではコーヒー休憩をとても大切にしています。一人当たりコーヒー消費量では6位までの間に北欧の国々が4ヵ国も含まれており、スウェーデンではコーヒー休憩のことを「フィーカ」という特別な1語で表したりもしています。

休息を適度にとることで、休憩を取らずに働き続けた場合より生産性が高くなることが明らかになっており、同様に休憩が過度なストレスを防止することも分かっています。

もしかすると、休息を大切にすることを文化的に持っている北欧の国々のGDPが高いのは、必然なのかもしれません。

健康を意識して仕事をする

2022年現在、Googleで「テレワーク」と検索すると「健康」や「運動」といったキーワードも一緒にサジェストされるようになっています。

テレワーク中の健康問題について意識している方は日本国内にも数多くいることが伺えます。

ここで北欧に目を向けてみましょう。日本ではコロナウイルスが流行してからテレワークが急速に進みましたが、北欧の国々はそれより前からテレワークが普及していました。

2017年頃の段階だと、東京都内の企業のうちテレワークを導入している会社は6.8%でしたが、その頃には北欧の国々では会社で働く従業員のうち20%以上の人が既にテレワークを実施していました。

そんなテレワーク大国の北欧の人々は、「運動」も意識している方が多いようです。

WHOによれば運動不足の人数の割合がアメリカも日本も33%前後であるのに対して、北欧は平均25%ほどに留まっています。またスタンディング勤務できる昇降式デスクの導入も進んでおり、特にスウェーデンやデンマークでは導入率が90%を上回っています。両国では雇用主が従業員に昇降式デスクを提供することが義務付けられました。

適度な運動は気分をリフレッシュするだけでなく、仕事の生産性を高めることも分かっています。

2.「北欧」との出会いと、文化/ライフスタイルに惹かれた理由

遠い遠い北欧の「働き方」に惹かれたのは、私が北欧に出会ってから20年の歳月が過ぎてからのことでした。

北欧との出会い

私と北欧の出会いは小学生の頃、きっかけは1本の映画でした。1989年に公開されたジブリ映画「魔女の宅急便」です。魔女の主人公が親元を離れ、見知らぬ町で苦労しながらも一人立ちしていく姿を、美しい街並みと共に描いた作品です。母がこの作品のビデオを持っていたので、小学生の頃から何度も見返しました。

時は流れて大学に進学、卒業論文で「アニメと聖地巡礼と町おこし」をテーマに研究する中で、私は再び「魔女の宅急便」に触れました。

卒論のタイトル中にある「聖地巡礼」というのは、作品のモデルになった街に訪れる趣味のことを指します。たとえばハリー・ポッターの映画には「9と3/4番線」という有名な汽車の乗車場所が登場します。このモデルはロンドンのキングスクロス駅にあり、一年中記念撮影を求める観光客で賑わっています。

それでは「魔女の宅急便」のモデルになった街はどこでしょうか? それがスウェーデンのストックホルムでした。

本がきっかけで文化にも興味を持つ

大学の時点では観光的な目線で北欧を好きになったに過ぎませんでした。私が観光地としての北欧ではなく文化/ライフスタイルとしての北欧に興味を持ったのは、2017年に出版された1冊の本『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』との出会いです。

日本で販売された書籍の多くは、主に観光目的や観光視点で北欧について書かれていました。素敵な絶景スポット、オシャレなカフェ、北欧雑貨を買える店。一方、この本では北欧に暮らす人々の日常に焦点を当てています。北欧の人は甘いものが好きだとか、よくコーヒーを飲むとか、ファッションを頑張らないといった、日々の暮らしのあり方について書いています。

この本を読んで以来、私の中で北欧の印象は「海の綺麗なオシャレタウン」ではなく「人々が穏やかに暮らす豊かな町」といったものに移っていきました。

休職で自分の働き方を見つめ直す

『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』に出会ってから2年後の秋、私に転機が訪れました。案件との相性が合わず体調を崩してしまい、2ヶ月間の休職を取得したのです。その2ヶ月は、人生で大病を患ったことがなかった私にとっては、自分を見つめなおすのに十分な期間でした。

復職後、私は休日や退勤後の時間を使って少しずつ自分の働き方を見直しました。今までの自分の時間の使い方や自分の心の持ちようを整理する中で、北欧の人々の暮らしに学ぶところが多いことに気づきました。自分をすり減らす程に自棄になって働くのではなく、仕事と適度に距離をとって仕事も自分も健全に保っていく大切さを少しずつ学んでいったのです。日本は法律も会社風土も人の気質も北欧とは違いますが、北欧に倣えることは多くありました。

3.私が取り入れる北欧の働き方

休職から復帰してからは、健康と生産性を両立させるために、北欧での働き方を参考に次のようなことを取り入れました。

仕事とプライベートも充実させるために

朝早くから働いて夜をプライベートに

日本は9-17時勤務が一般的ですが10-19時で勤務する人も少なくありません。特にIT業界は遅めの勤務をする人が多いです。一方北欧は反対で、オフィス勤務でも8-16時で勤務する人が少なくありません。そこを真似して私も8時前ぐらいから仕事を始めるようにしました。

私が勤めるバルテス株式会社はフレックスタイム制を取り入れています。私はなるべく朝早くに仕事をすることで、夜にまとまった自分と家族の時間を確保するようにしています。顧客によっては、夜の方が打ち合わせなどの都合をつけやすいことも少なくありませんが、そこはなるべく調整します。

定時後に仕事を入れる場合もなるべく1日にまとめることで、早めに仕事を上がれる日を増やしています。

水曜は休労日

あなたは、一週間の全ての日を全力で走り切れますか? 私は正直できないタイプです。月曜日から全力で頑張り続けると、水曜日ぐらいには疲労が溜まってきてしまいます。

そこで、疲れてから仕事の作業速度を落とすのではなく、計画的に仕事の速度を落とす日を作るようにしています。

今のところは毎週水曜日をローエネルギーの日に充てています。具体的には「打合せ少なめ、タスク軽め、休憩多め」に仕事を送っています。月火の二日だけ頑張ればゆっくりできる、という感覚が私には合いました。

自分の肌感覚で働くために、計画的な仕事配分をオススメします。

自分に合った労働環境を作る

北欧のオフィスはカラフル

北欧のオフィスはとても社員の働きやすさを重視しています。

オフィスのスタイルも変化し続けている-中略-集中したい人がこもれるスペースがあったり、
リラックスした雰囲気を好む人のためにソファーなどがあるエリア、
立って仕事ができるよう廃テーブルも一角に置かれている。
その日のスケジュールや気分に合わせて、それぞれ自分の好きな席が選べる。

『フィンランドはなぜ午後4時に仕事が終わるのか』 著:堀内都喜子 P.55より抜粋)

バルテスのオフィスにもソファーエリアや30分単位で借りることのできる一人用の集中部屋がありますが、私は在宅勤務でも快適な環境づくりを意識し、少しずつ働く環境を整えていきました。ダイニングで仕事していたのをやめ、少しずつ自分色の書斎をこしらえていきました。たとえば復職してから半年ほどは、5分も立っていられないほど体調が悪い日もあったので、一日中座っていても体が痛くなりづらい椅子を買いました。

仕事道具は価格より品質を

仕事道具にこだわる、というのも休職を経験してから始めたことです。それまでは仕事道具は100均で揃えていましたが、書斎作りに続く形でモノ選びも値段より心地よさを優先するように変わりました。例えば......

  • 陶器マグカップを保温性の高いステンレスマグカップに
  • 有線マウスを多機能なBluetoothマウスに
  • 油性ボールペンを滑りの良い万年筆に

少しでもストレス少なく、少しでも快適に。1つ1つ、自分の心地よさを積み重ねていきました。

ストレスを溜めない仕事管理術

自分のペースでできる仕事を持つ

「社員がストレスを抱えることを最大のリスクだと考える傾向が強い」というのが北欧の考え方だそうです。

厳しいノルマと期限があるIT業界で働く上で私が意識しているのは、自分のペースでできる仕事を持つことです。

たとえばこのQbookのライター業務は1年間の執筆ノルマを課せられているわけではなく、自分の裁量で執筆スケジュールを調整することができます。

仕事を楽しいと思えるために大切な要因の一つは「自分のペースでできる」であると考えます。忙しい業界だからこそ、急がなくてもいい仕事を取り入れることで緩急をつけています。

緊張を抜くコーヒータイムを設ける

復職してから私が意識するようになったのは、一日のスケジュールの中で休憩時間を事前に確保すること。

今までは仕事を詰め込んでから休憩を合間にとっていましたが、今は休憩時間を先に確保してから仕事の段取りを立てるようになりました。私はおおよそ、9:30 / 14:30の2回、30分ずつのコーヒータイムをとっています。

コーヒーは鍋からお湯を沸かして5~10分かけてゆっくりドリップを煎れることが増えてきました。

休職を経験してから自分の体と心の声に耳を傾けるようにしています。コーヒーを注ぐという無心になれる時間はそのきっかけを与えてくれる、私にとってとても大切な時間です。

おわりに

「特定の国の働き方が他の全ての国より完全に良い」ということはありません。ですが、違う国の働き方に目を向けることで、自分の働き方をよりよくするきっかけに繋がります。その意味で日本社会と全く異なる考え方で働く北欧諸国は参考になるのではないでしょうか。今回紹介した働き方の中で気になるものがあれば、ぜひ試してみてください。

参考文献
  • 第2節 労使双方からみる働き方の現状と課題 - 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/15/dl/15-1-3_02.pdf
  • 長期休暇が企業経営に与える影響 因果関係に関する一考察: https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/07/pdf/004-014.pdf
  • フィンランドのコーヒー消費量が世界一の秘密は、労働者の権利にあり: https://globe.asahi.com/article/12306569
  • 世界の一人当たりコーヒー消費量: https://ajca.or.jp/pdf/data09_20211122.pdf
  • Work Trend Index Pulse レポート「脳には休憩が必要なことが調査で明らかに」: https://news.microsoft.com/ja-jp/2021/04/23/210423-brain-research/
  • 平成29年度 都内企業のテレワーク導入状況:https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/donyu/29.html
  • 各国国民の運動不足割合:http://honkawa2.sakura.ne.jp/2243.html

  • Does Employee Happiness have an Impact on Productivity?:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3470734
  • Happiness and Productivity:https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/681096
  • The Impact of Breaks on Sustained Attention in a Simulated, Semi-Automated Train Control Task:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3334
  • In Denmark over 90% of office workers have a sit-stand desk:http://www.getbritainstanding.org/key-info.php

  • Exercising at work and self‐reported work performance:https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/17538350810926534/full/html
  • Sixth European Working Conditions Survey - Overview report:https://www.eurofound.europa.eu/sites/default/files/ef_publication/field_ef_document/ef1634en.pdf
  • デンマーク在住の機械学習エンジニアに聞く"幸福度の高い働き方"のヒント:https://type.jp/et/feature/12114/

執筆者:小谷 ひかり

バルテス株式会社 Webシステム品質サービス事業部 リーダー

業務系システムの開発・運用・保守にSE兼プロジェクトリーダー兼コンサルタントとして携わった後、バルテスに入社する。入社後は、テスト自動化プロジェクト・品質保証プロジェクトを経て、現在は品質向上支援に携わっている。また、その傍らで、専門分野である心理学の知見に基づいて、新卒社員の指導や社内委員会の品質向上に力を注いでいる。