一般的なビジネスのプロジェクトには、必ず何らかのゴールがあります。そして、そのゴールへ到達するまでには「納期」や「完了期限」が付き物です。その期限内にゴールへと到達し、プロジェクトの目的を果たすためには「進捗管理」が欠かせません。
あらゆるプロジェクトに関わるビジネスパーソンには、進捗管理の基本を理解しておくことが求められます。
本稿では、ビジネスの基本である進捗管理とは何か、概要からポイントまで詳しくお伝えします。プロジェクト業務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
- もくじ
1. 進捗管理とは何か
進捗管理とは、プロジェクトにおける作業の進捗(進行状況)を把握し、計画に沿った進行を実現するための一連の管理業務です。タスクごとの進捗を可視化しながら計画どおりに進行しているか確認し、遅れていれば適切な対策を講じます。
単に作業の進み具合を眺めるだけではありません。目的地へ正しく向かうための、地図やカーナビのような役割を担います。納期や完了期限が決められたプロジェクトを遂行するにあたっては、適切な進捗管理が欠かせません。
2. 進捗管理を行う目的
進捗管理は、プロジェクトの目的を達成するために欠かせない業務です。具体的には、主に3つの目的があります。
2-1. プロジェクトの円滑な進行
進捗管理は、プロジェクトを円滑に進行するために不可欠です。作業者は多くの場合、複数のタスクを同時に抱えています。進捗が把握できていないと、どのタスクから手をつけるべきか迷い、非効率な順序で作業を進めてしまいがちです。
進捗管理を行えば、現在のタスクの進捗状況や次に着手すべきタスクが見えて、「次に何をすべきか」が明確になります。作業者は優先順位に沿って、無駄のない手順で業務を進行できるのです。たとえば、次に行うタスクが分かっていれば、現在のタスクと並行して段取りを考えるなど、より効率的に動くことにもつながります。
2-2. 遅延や問題の早期発見
プロジェクトは必ずしも計画どおりに進むとは限らず、遅延や問題が付き物です。遅延や問題に気づけなければ対応が後手に回り、挽回が難しくなることもあります。進捗管理は、こうした遅延や問題を早期発見するために欠かせません。
進捗管理では、計画と実績の差分を把握し、遅延の有無を確かめます。遅れていれば、その原因や発生している問題を分析します。その結果、計画を妨げる遅延や問題が浮き彫りになり、速やかに対策を講じられます。
2-3. プロジェクト状況の可視化・共有
進捗管理には、プロジェクトの状況を可視化し、関係者へ共有する目的もあります。作業者本人だけでなく、チームメンバーやプロジェクト管理者、場合によっては顧客にも、その状況を示すことができます。
全員がプロジェクト状況について共通認識を持つことで、報告や意思決定がスムーズに進みます。また、プロジェクト状況を共有することで、納期の調整や優先順位の見直しといった、チーム内だけでは対応できない相談もしやすくなるでしょう。
3. 進捗管理の基本的な流れ
進捗管理は、適切な流れで進めていくことが求められます。具体的な進め方はさまざまですが、ここでは基本的な流れを3ステップで見ていきましょう。
- 計画を立てる
- 進捗を確認・更新する
- 遅延や問題を検出・対処する
3-1. 計画を立てる
まずは、プロジェクト完了までの道筋を考え、具体的な計画に落とし込みます。進捗管理は、プロジェクト計画に沿って行うことが大前提です。各タスクの着手順序や所要時間・完了期限、担当者などを含めた計画を立てます。
たとえばソフトウェア開発では、設計、実装やテストの各工程をタスクに分け、各タスクに工数や完了期限などを設定します。
この段階で、進捗を測るための指標や基準も明確にしておくことが望ましいです。進捗率の算出方法がはっきりしていれば、判断のぶれがなくなり、管理の精度を高められます。
3-2. 進捗を確認・更新する
プロジェクトの開始後は、各メンバーの実作業と並行して随時、進捗を更新していきます。進捗の記録にはExcelや進捗管理ツールなどを用いることが一般的です。
各タスクの進捗状況は定期的に確認し、計画どおりに進行しているか把握することも不可欠です。定期的な進捗報告会などを設け、関係者と進捗状況を共有できる仕組みを整えると良いでしょう。
3-3. 遅延や問題を検出・対処する
進捗状況を確認する際には、計画と実績の差分を取り、遅延を検出します。計画よりも遅れているタスクは理由を明確にし、発生している問題を把握することが大切です。反対に計画よりも早く進んでいる場合も、品質面での不備や手戻りのリスクがないか確認し、問題があれば対処する必要があります。
問題が見つかった場合は原因を分析し、適切な対処方法を検討します。軽微な問題であればメンバーの役割変更や作業のフォローなど、チーム内で対応することも可能でしょう。
一方、納期の調整や外部メンバーの追加、リソースの確保などが必要なケースでは、チーム外との調整が欠かせません。
4. 進捗管理に用いられる代表的な手法
プロジェクトの進捗を正確・効率的に管理するために、さまざまな手法が活用されています。ここでは、進捗管理に用いられる代表的な2つの手法を紹介します。
4-1. WBS
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト全体を小さなタスクに分解し、階層構造で管理していく手法です。タスクを細分化することで個々の作業内容やボリュームがはっきりし、進捗を判断しやすくなります。タスクベースの進捗管理における基本的な手法といえるでしょう。
たとえばソフトウェアのテストでは、テスト対象の機能ごとにタスクを細分化し、それぞれのテストケース数をベースに進捗管理が可能です。この場合、各機能の総テストケース数(テストの総項目数)のうち、何件を消化したかで進捗を測定できます。
4-2. ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトのスケジュールを可視化するための図です。縦軸にタスク、横軸に日付を設定し、各タスクの作業開始・作業終了を横棒グラフで表現します。タスクごとに計画と実績の横棒グラフを上下に並べることで、差分がひと目で分かります。
タスクごとの作業期間や遅延の有無が直感的に把握しやすく、チームや関係者と進捗状況を共有する際に有効な手法です。また、前述のWBSと組み合わせてよく使用されます。WBSで「何をすべきか」を洗い出し、ガントチャートで「いつすべきか」を管理します。
5. 進捗管理を正しく行うためのポイント
進捗管理を正しく行うためのポイントは、次の3つです。
- 実現性のある計画を立てる
- 定量的な指標で進捗を測る
- 進捗管理ツールにより効率化する
5-1. 実現性のある計画を立てる
進捗管理の土台となる計画そのものに無理があってはいけません。最初の計画に無理があると、問題なく作業を進めても遅延が生じ、スケジュールが破綻してしまいます。遅延のたびにスケジュール調整が発生しないよう、最初から実現性のある計画を立てることを心掛けましょう。過去の類似プロジェクトの実績を参考にタスクの所要時間を見積もるなど、客観的なデータを活用すると効果的です。
5-2. 定量的な指標で進捗を測る
作業者の感覚で進捗率を判断すると、実態とずれが生じやすくなります。進捗を正確に測るために、数値にもとづく定量的な指標を取り入れましょう。たとえば、ソフトウェアのテストでは「総テストケース数に対する完了件数」を進捗率として算出できます。このように明確な数値を基準にすれば、進捗の精度と客観性を両立することが可能です。
5-3. 進捗管理ツールにより効率化する
進捗管理を紙やExcelだけで行うと、更新や共有に時間がかかりがちです。進捗管理に時間を奪われ、本来着手すべきタスクの作業時間が減るのでは本末転倒です。進捗管理を効率化するために、専用の進捗管理ツールを活用するのが効果的です。
進捗管理ツールであれば、進捗更新の操作が最適化された画面で行えるため、紙やExcelよりも効率的です。また、ガントチャートやグラフを使った状況の可視化も容易で、直感的に全体の流れを把握できます。
進捗管理ツールは数多くありますが、利用分野や用途に応じた製品を利用するのがおすすめです。たとえば、ソフトウェアテストの進捗管理には「QualityTracker」が適しています。進捗率計算にコストの観点を導入し、テストの進行状況を正確に可視化できます。クラウド上でテストケースを資産化・共有できるのも強みです。
なお、QualityTrackerは1人あたり月額1,430円(税込)から利用でき、30日間の無料トライアルもあります。チームで効率的にテストを進めたい、進捗を正確に把握したいといった場面で有効な選択肢となるでしょう。
6. まとめ
進捗管理とは、プロジェクトにおける作業の進捗(進行状況)を把握し、計画に沿った進行を実現するための一連の管理業務です。「円滑な進行」「問題の早期発見」「状況の共有」といった重要な目的があります。
進捗管理は計画・確認・対処といった流れで進めます。正確・効率的に進捗管理を行うためには、WBSやガントチャートといった手法が効果的です。また、より効率的に進捗管理を行いたい場合は進捗管理ツールを活用すると良いでしょう。
進捗管理を行う際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。


