さまざまな現場でQA業務に携わっている方々の「声」をお届けする『隣のQAに聞く!』。社会のデジタル化が推進され、QA・品質向上の重要性がますます増している現在、他のチームでは、どのようにQA業務が行われているか、気になっているエンジニアの方も多いと思います。
本連載では、その取り組みや「想い」などを伺い、エンジニアの皆さまにお伝えします。
今回は、株式会社メルペイの田中 学二さんにお話をいただきました。
今回インタビューを受けてくださった方
- 田中 学二 氏
株式会社メルペイ Merpay QA エンジニアリングマネージャー
家電メーカーでキャリアをスタートし、品質保証に関しての考え方や基礎を学ぶ。その後、ソフトハウスで第三者検証事業の立ち上げを行いカンパニー化に貢献。2013年からソーシャルゲーム会社の海外法人でQA/CS部門を立ち上げQA体制を構築。帰国後、第三者検証会社とスタートアップ企業のCPO/PMとしてプロダクト開発を経験。2019年3月に株式会社メルペイに入社し活躍を続けている。株式会社TSUMUGU、インスタンスゼロ株式会社のFounder。趣味は釣り。
- もくじ
1.ソフトウェア品質をより良くしたい
――はじめに、これまでのご経歴をお教えください。
田中氏:家電メーカーで品質保証に関する考え方や基礎を学び、QAエンジニアとしてのキャリアがスタートしました。その後、ソフトハウスで第三者検証事業を立ち上げや事業拡大、カンパニー化を経験、2013年からソーシャルゲーム会社の海外法人でQA/CS部門を立ち上げたりしました。帰国後は、第三者検証会社やスタートアップで、いくつかのプロダクト開発を経験して2019年3月から株式会社メルペイに入社しました。
――QAエンジニアとしてやっていこうと決心したきっかけは何でしたか?
田中氏:出会った人からの影響が本当に強いです。家電メーカーのQA部門で派遣として働いていた時、周囲に品質に対して熱い想いを持っている人が多く、そこで先輩や同僚達と話をするうちに、ソフトウェアが与える社会へのインパクトや、その品質の重要性に関して興味を持ちQAエンジニアとして更に経験を積みたいと考えました。
そのころはまだQAエンジニアが世間的に認知されてなかったこともあって、学びを得るため、社外の「JaSST(ソフトウェアテストシンポジウム)」などのシンポジウムや勉強会、テスト系の若手の集まり「wacate」などに参加していました。その時には、関西にテスト関連の勉強会も無く「WARAI」と言う、QAに関する勉強会を仲間と立ち上げたり、JaSST関西の運営をしたりと、色々と活動して知識や「人との繋がり」を増やして行きました。その中で、QA界の重鎮の方々と出会い、さらに品質の奥深さや多くの技術や知見が必要な事、そして、チームや組織が重要になる事を知り、品質に関する思いが更に強くなりました。
それからずっとQAと組織作りに両軸で取り組んでいます。今でも自分のQAスキルが落ちないように、メルペイのマネージャーとして業務を遂行しながら、副業でQAエンジニアとしても活動してます。
2.メルペイで展開されているQA業務の特徴
――御社のQA業務のミッションを教えてください。
田中氏:メルペイのミッションは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」ことです。メルカリ及びメルペイの利用情報からつくられる独自の「信用」を元に、お客さまが「お金」を、もっと自由に、そして安心、安全に使える社会を目指しています。メルペイQAでは、メルペイのミッションを達成するために「お客様に選ばれる品質のサービスを継続的に提供する」ことをQA組織のミッション掲げています。そのためには、安心して利用できるサービス開発・サービス運用体制を構築して行く必要があります。
――お客様に選ばれる品質にするため、どんな組織を作ろうとされていますか?
田中氏:私がメルペイに入社して一番初めにしたことは、みんながどういうQA組織を作りたいか、どういうQA方針で進めていきたいかをヒアリングして、メルペイに元からある文化や品質に対する想いを汲み取って形にしていくことでした。もともと0→1のフェーズでQAエンジニアとしてサービスの品質に向き合ったメンバーがおり、それぞれが考えをしっかり持っているので、特に、私が指示する必要はなく、コミュニティのように、QAメンバーそれぞれの考えを聞きながら組織を作っていくのが一番と考えているからです。敢えて何かしたかと言うと、聞いた事を絵にして向かう方向性を合わせたり、チーム制にして、組織がスケールし個々が活躍できるようにバックアップしたくらいです。そういう組織の作り方を現在も続けています。
――他のQAチームと比べて「ここが違う」というポイントがありましたら教えてください。
田中氏:メルペイではマトリックス型の組織作りをしています。この図のように、まずQA等のチームを横串、プロジェクトを縦串とします。
このようにチームのメンバーが縦のプロジェクトにアサインされて、プロダクトを開発していく組織の作り方をマトリックス型組織と呼んでいます。このため、基本的に上下がないフラットな関係です。マネージャーにしても管理、レポートの役割をしているだけで"偉い"というわけではないのがポイントだと思います。
――「マトリックス型組織」では、プロジェクト単位でチームが組まれるのですね。
田中氏:そうです。マトリックス型組織では、プロジェクトごとにQAエンジニアが入っていくことになります。
大きなプロジェクトを推進するとしても、小さなチームがいくつも集まってプロジェクトを進めていくイメージです。また、各プロジェクトで求められる品質が異なります。そのため、それぞれが裁量を持って各プロジェクトに適したQA活動をしています。
例えばペイメントのコア部分では、お客様のお金を扱っているため厳しいQAをする必要がありますが、キャンペーンやクーポンに関わるプロジェクトでは施策のタイミングに価値があることもあるためバランスをとらなければなりません。