プロジェクトマネージャーはプロジェクトを動かす役割であり、ITエンジニアの中核的な仕事のひとつである。
本シリーズ「プロジェクトマネージャーの本質とその鍛え方について」では、マネジメント能力やリスク管理能力といったプロジェクトマネージャーに求められる「スキル」ではなく、主体性や責任感などのような「各スキルの源になるプロジェクトマネージャーの本質」について、エンジニアを育てる立場から整理していきたいと思う。
- もくじ
1.プロジェクトマネージャーと「健康維持」の関係性
プロジェクトマネージャーの仕事を一言で表現するなら「健康維持」である。
実施者や設計者は往々にして一つの案件に複数名いることが多い。それに対してプロジェクトマネージャーというのは、ほとんどの場合一人である。
チームの一番の頭脳役も、一番の目安箱も、プロジェクトマネージャーである。その役割を務める人が健康不調で倒れてしまうとチーム全体がマヒしてしまう。
計画的な休みや低稼働ならいざ知らず、健康の悪化による予期せぬ休みや頑張る予定だったタイミングで低稼働になるとプロジェクトは甚だ混乱する。
その意味でプロジェクトマネージャーにとって大切な仕事の一つは「健康維持」である。
2.健康維持とは何か?
「健康維持」とは、基本的には、体の健康と心の健康の維持である。
体の健康については根源的には運動・睡眠・食事ではないだろうか。運動が不足すれば体が錆びれ、睡眠が不足すれば体がなまり、食事が荒れれば体が炎症する。
心の健康については運動・睡眠・食事・気分転換などが大切である。
「○○をすれば健康になる」や「健康になるには○○だけすればいい」などのような謡い文句の動画や書物が散見されるが、まずは基本である「運動・睡眠・食事・気分転換」を忠実に行うのがいいのではないだろうか。
3.プロジェクトマネージャーにとって「健康維持」はどうあるべきか
3-1 自分の時間を確保する
プロジェクトマネージャーは、意識的に自分の時間を確保することが重要である。なぜなら、プロジェクトマネージャーというのは、自分以外に時間を取られがちだからだ。
メンバーからの質問・お客様との打合せ・自社の上司への進捗報告。そういったものの多くは自分から生み出したのではなく、他者から引き起こされた業務時間である。
他者のペースで仕事をするというのは基本的に疲れるものである。
もちろんプロジェクトマネージャーである以上、他者依存の時間をゼロにすることはできないが、少しでも自分で自由にできる時間を増やしていくことで、一日の仕事に血が通う感覚がするだろう。
3-2 ほどよく手を抜く
プロジェクトマネージャーというのは負荷がかかるタイミングが局所的な仕事である。そのため、ほどよく手を抜くことも大切だ。
実施者・設計者も「実施が忙しい時期」というように波があるが、それにもましてプロジェクトマネージャーは瞬間風速の差が激しい。
お客様との打合せが続いて、とても忙しい数時間もあれば、実施者の作業を淡々と見守る時期もある。そうすると、必然的に多忙な時期以外も根詰めることとなり、気づかぬうちに心身に疲労が溜まってしまっているのである。
サッカー選手が試合時間の間、常に走っているわけではないように、野球選手が自分の番を待っている間、常に素振りをしているわけではないように、比較的余裕があるときには、仕事を詰め込まずに少しばかり、自主的に仕事のペースを落とすことが大事ではないだろうか。
4.プロジェクトマネージャーらしい「健康維持」を身に付ける方法
4-1 事前に体調の整え方を学ぶ
プロジェクトマネージャーになる前から健康について学んで健康的な暮らしを意識しておくのが良い。
十分な睡眠・適度な運動習慣・バランスの良い食事・リフレッシュになる趣味を持っておくと、いざプロジェクトマネージャーになったとき、多少忙しくなって生活が崩れても、健康が急激に悪化することを防いでくれる。
なにより健康的で急な休みの少ない人に、会社としてはプロジェクトマネージャーを任せたいものである。
プロジェクトマネージャーとして、メンバーを率いていく以上、体調の整え方は事前に学んでおくことが重要になるだろう。
4-2 あえて負荷をかけてみる
自分の体調について知るために、あえて負荷をかけてみる、というのも一つの手である。
負担をかけることで自分の健康の弱みというものが見えてくる。自分の弱みを見つけておくと体調の悪化に早く気づくことができる。
たとえば私は、体調が悪くなると決まって鈍い肩こりと目の不快感が強まってくる。
そのため、いつもと同じ程度の時間しか仕事をしていないのに、肩こりがひどくなって目の不快感が強まったら「あ、体調が悪くなっているな。今日は早めに寝ようか」などと体調の回復に向けて舵を切っている。
人それぞれの弱点ばかりは、負荷をかけてみないと見えないものである。プロジェクトが多忙になる前に負荷を自主的にかけて、自分の身体的/精神的な弱点を探ってみることをオススメする。
5.健康を維持するための本のすすめ
5-1 健康になる技術大全(林 英恵 (著))
睡眠、運動、食事という基本から健康を体系的に教えてくれる本。
まずは全部を読まずに自分が気になっている部分だけ取り組んでみるのがいいだろう。
たとえば私の場合は健康は初め食事から入った。ポテチなどジャンキーなものや炭水化物ばかり食べていたのを改めて肉野菜をちゃんと食べるようになった。それがある程度安定してから睡眠時間を増やすことに努め、今は運動量の向上に取り組んでいる。
全部を一度にやろうとせず「自分は特にここが足りないかも」というところから取り組んでいただければと思う。
5-2 まんがでわかる 最高の体調(鈴木 祐 (著), ながみちながる (イラスト))
まんがでわかる 最高の体調 Kindle版
鈴木祐 (著) 形式: Kindle版
累計10万部のベストセラー『最高の体調』待望のまんが化!疲労・不調を解消し、本来の自分を取り戻せ!!疲労、肥満、不眠、散漫な集中力、モチベーションの低下、弱い意志力など、一見バラバラのように見える問題も、根っこまで下りてみれば実は同じもの。 すべては「文明病」という一本の線でつながっています。 本書では、進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法を紹介。 10万本の科学論文をベースにした圧倒的な知識量と科学的根拠に基づいたメソッドを、まんがでわかりやすく解説します。
前記の一冊が分厚くて気後れしてしまうなら、この漫画から入ってほしい。
元になっている「最高の体調」では具体例としてやや突飛なアドバイスをしているのだが、マンガ版になるにあたり、突飛なアドバイスが省かれ、基本的なアドバイスにスッキリまとまった。
「本を読むこと自体が苦手だ」という人はここから始めてみるのがいいと思う。
最後に
今回はエンジニアを育てる立場から、プロジェクトマネージャーの「健康維持」をすることの重要性についてまとめてみた。
プロジェクトは往々にしてプロジェクトマネージャーに一番仕事が集まりがちである。しかしメンバーやお客様からすれば、倒れられて一番困るのもプロジェクトマネージャーである。
忙しくなりがちな状況の中でも、いかに無理しすぎずに働き続けられるか、いかに自分にかかる負荷をコントロールできるかが、プロジェクトマネージャーの「健康維持」には大切になるだろう。
今回紹介した2つの書籍も「健康維持」の安定のためにぜひ購読してみてほしい。